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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


ペトリあんてな
二面楚歌 断章
二面楚歌 グラビアレビュー備忘録
寒空文庫(仮)
写真日記二面楚歌 隠居所
petri's fotolife
酒田へ行きたい
ザ・インタビューズ

投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2014-11-23 アップフロント・ノーメンクラツーラ [長年日記]

_ アサヒカメラ 2014 11月号

BELLRING少女ハート
表紙と巻頭グラビア8ページ7カット、見開き2箇所。 撮影は小野啓。

それ目当てで買ってくれる層が或る程度見込めないと起用しにくいアイドル専門誌ではなく、しがらみの無い写真雑誌だからこそ成立し得た顔付けではあるのだけれど、面白い試み。

綺麗に飾り立てるのではなく、普段の格好から滲み出る「らしさ」を切り取った7カット。
送り手の「人の悪さ」がプラスに働いている。
1ページ目と6~7ページ目の見開きが秀逸。

栗山千明
6ページ6カット、撮影は笠井爾示。
芸暦の振り出しの頃に厭な撮られ方をした所為か、静止画の仕事は少ないように思われるが、何かになっていないとカメラの前に立てない息苦しさのようなものを感じる。
役者にはありがちなのだけれど、正体を現さないと言うか、素でカメラと向き合えぬ哀しさ。

旧態依然であるが故の革新
アサヒカメラの(日本カメラもそうなのだけれど)誌面構成は焼き畑農業的と言うか何と言うか、周期的に繰り返す企画の組み合わせで出来ており、撮影指南のページには眉に唾を付けて読んだ方が良い物も見られる。
金を払うだけの価値を感じられるページは巻頭グラビアのみだったのだけれど、前述の通り未だあまり売れてはいないけれど面白い存在であるアイドルを巻頭に持ってこられるのも、旧態依然とした写真雑誌であるからこそである訳で、なかなかどうして悩ましい。

_ UTB+ 2014 11月増刊

リニューアルして判型が変わり、文字ものページが増えた。 写真そのものより情報に重きが置かれており、ワニブックスが作るBomb!と言った趣。 紙も薄く、印刷は本誌より一寸落ちるが、写真の質も含めてB.L.Tほど酷くは無い。

℃-ute
表紙と巻頭グラビア8ページ20カット、撮影は Shu ASHIZAWA
まぁ何と言うか近況報告。
それ以上でもそれ以下でもない。 褒めるほど良くは無いが、敢えて貶すほど酷くはない。

Berryz工房
5ページ9カット、撮影はSHITOMICHI
こちらも近況報告的顔見世グラビア。
今後はこうした誌面構成になって行くのであろう。

モーニング娘。'14
ハワイツアーのついでに撮ったようなヤッツケ感。
ノーメンクラツーラ層が取り仕切る巨大組織ならではの、統制感溢れる8ページ。 撮影は鈴木さゆり。
小田と鈴木の並び水着だけウエストより上で切ってある、あけすけな「配慮」と言う悪意。

乃木坂46(若月、桜井、生駒)
5ページ6カット、撮影は西田幸樹。
スタジオでポンと撮ったような6カットなのだけれど、きっちり写真にはなっている。
生駒里奈は置いただけで絵になり、すっと目を惹く。

乃木坂PORTRAIT
日の当たらないメンバー掘り起こし企画、初回は永島聖羅。 2ページ2カット、撮影は佐藤裕之。
あまり紙幅は割けない中でもきちんと撮って貰える機会が有るのは良い。

ななせまるが撮らせて頂きます
3ページ3カット、対談で1ページ。
乃木坂46西野七瀬がメンバーを撮る企画。 今回は西野自身がモデルとなり長野博文に撮られるの巻。
長野博文が構図のセンスを褒めているのが面白い。 撮影技術はあとからどうにかなっても、構図を切るセンスだけはどうにもならない。
西野に場を安らがせる力と構図を切るセンスがあれば、この先面白くなる企画なのでは無いかと思う。
長野博文の撮った3カットも、肩の力が抜けていて良い。

川口春奈
8ページ8カット、撮影は佐藤裕之。
カレンダーの other カットで構成。 流石に大人びて来ているが、カメラの前に衒わずに立てているところは変わらない。
変わらぬ良さを残しつつ垢抜けてきた。

小松菜奈
6ページ7カット、撮影は細居幸次郎。
何かしら演じていないとカメラと向き合えない暑苦しさは無きにしも非ずだが、人を惹きつけるものはある。
2カット目が秀逸。 閉鎖空間での光の廻し方は矢張り巧い。

高橋ひかる
4ページ6カット、撮影は長野博文。
撮られる仕事は初めてとのことで、長野博文が撮っても緊張はしているが、カメラと向き合えてはいる。
グランプリになることが貧乏くじであるコンテストのグランプリと言う、厭なものを背負わされた所から始まる芸能活動ではあるけれど、良いほうに転んでくれることを祈りたい。 そう思わせる柔らかい笑顔。

橋本環奈
3ページ2カット、見開き1箇所。 撮影はレスリー・キー。
ポーズから何から作りこんで撮るレスリー・キーにしては自棄にあっさりしているが、造形美の切り取り方の巧さは流石。
そのブツ撮り寄りなところが私の好みとは合わないのだけれど、綺麗に撮れてはいる。

渋谷凪咲
6ページ9カット、撮影は桑島智輝。
3~4ページ目の半見開きのカットや、6ページ目の下から見上げるようなカットなど、桑島智輝にしては人の悪い写真。 ギリギリな線で攻めた構図とポーズ。
キャプションや全体の構成から見て、編集者の方に「こうしたい」と言う腹案があったのかもしれない。

指原莉乃×荒巻美咲
指原莉乃ディレクションのグラビアがUTB+に移転。 6ページ8カット、撮影は桑島智輝。
子供である。 作為も打算もない子供。
小道具の羽毛を舞わせて遊んでいるカット以外、すべて表情が硬いのだけれど、それを宥めすかして撮ったカットに味がある。

島崎遥香
6ページ8カット、撮影はMARCO。
引いたカットも絵になっていて驚く。
白と黒の衣装で二面性を引き出す企画。 白島崎の方はさして面白みもないが、黒島崎は「らしさ」が出ている。
真正面からではなく、上下なり左右にり多少角度を付けて撮ったカットが良い。

_ UTB 2015 1月号

増刊のUTB+は別雑誌化し、UTBは月刊誌に戻った。 吉と出るか凶と出るか、試金石となる通巻225号。

宮脇咲良・向井地美音
18ページ17カット、見開き2箇所。 撮影は佐藤裕之。
ブレザー系制服、傾向は揃えつつ意匠の異なる紺ビキニ、白いチュチュ。 衣装三態。
ブレザーは上着の有無で変化を付け、競泳水着を模したような紺ビキニで清楚さを演出し、チュチュであったり小道具としての聴診器であったり、編集者の fetiches が控えめながら通底しており、スパイスとして利いている。
AKB48に未だ在籍するメリットが有るとすれば、それは棒組で仕事をさせることによる化学変化が期待出来るところにある。 撮られる仕事について一つの答えを見出した宮脇咲良と共に仕事をする機会に恵まれた向井地美音は、この先どう変わって行くだろうか。

窓から一杯に射し込む光を受けて、敢えて逆光で撮りつつモデルを浮かび上がらせる佐藤裕之の腕の冴え。

制服もロケ地の校舎も地方の公立高校と言った趣。 ミッションスクールの女子高のように世俗から隔絶された場所ではなく、世俗の中に在りつつ浮き世離れしたような不思議な空気。
宮脇咲良の醸す ennui に向井地美音が引き込まれ、モデルとカメラマンと編集者の仕事が噛み合って生まれた奇蹟。

柴田亜弥
9ページ12カット、撮影は桑島智輝。
衣装4パターン。 上京したスケジュールの中での撮影となると時間的に厳しかったのでは無いかと思われるが、その分工夫が凝らされている。
目が売りであるだけに、カメラを直視したカットで構成。 その中で一枚だけ挟み込まれた横顔。 これが凄い。
空を見上げた横顔を心持ち下から撮っているのだけれど、正面から撮ったカットよりも柴田亜弥の目に宿る力を可視化している。

カメラに視線は行っているのだけれど、衒ったり取り繕ったりする所はなく、自然にカメラと向き合えてはいる。
まぁ、カメラに視線と意識と両方が向いている圧迫感はあるし、視線の行っていないカットも意識はカメラに向いているので、写真を見ている側までもが常にロックオンされているような怖さはある。 自分だけを見ることを強いるような、石にされそうな恐怖。
これも好きな向きには堪らないのであろう。
柴田の目はカメラを捉えているのだけれど、撮っているカメラの方はさまざまな角度から柴田を切り取っていて、前述の横顔のほか、立て膝で振り向いたカットが良かった。

岡田奈々
10ページ11カット、見開き1箇所。 撮影は桑島智輝。
これまでに見た岡田奈々のグラビアは、常に何かに凝り固まったような窮屈さがあったのだけれど、一と皮も二た皮も剥けて柔らかい表情でカメラの前に立てるようになっていた。 ここまで出来れば、カメラマンや編集者でハズレを引いても、撮られる仕事で結果は出せると思う。
凝り固まった部分の残滓はまだ前髪のぺったり加減に在るが、松井玲奈がそうであったように、撮られ慣れていくうちに氷解して行くと思う。 兎に角、カメラと素で向き合えるようになったのは大きい。

真面目とか優等生とかそう言うレッテル貼りが岡田奈々を縛ってしまっていたように私は思う。
見せたい自分が魅力的なものでは必ずしも無く、破綻の無い「岡田奈々」として小さく纏まってしまっていた頑なさが人としての面白みを封じてしまっていたようにも思われる。
意識して閉じられていた扉は開け放たれた訳であり、岡田奈々にとって転機となり得る仕事となったように思う。

込山榛香
8ページ10カット、撮影は國方大。
初めてのソログラビアの割に硬さは無く、撮る側の持って行き方も上手いのだと思うが多彩な表情。
内斜視気味でありつつ、角度を付けて撮った際に遠い方の目が生きてくる面白い造形。 可愛らしく見える角度が上下左右に広い。
口の開き方で表情に諧調を付けるところなどは既に玄人の域。
悪い仕事ではないが、國方大は些か素材に食われた感がある。

AKB48 チーム8(下尾みう、中野郁海、人見古都音、倉野尾成美)
7ページ8カット、撮影は小池伸一郎。
運転資金をトヨタに出させることで、リーマンショック以来些かせせこましくなってしまったAKB48本体とは別趣のものになっているチーム8。
身の回りの古い客も焼け棒杭に火が点いたのか、はたまた燃え尽きる寸前に一と際明るく燃える蝋燭なのかエライ騒ぎになっている。 劇場公演の楽しさを知る層、お台場などで撮れた楽しさを知っている層には堪らないらしい。

ハイキーに飛ばした前半はあまり好きな撮り方ではないが、後半は面白い。
6ページ目の集合などはその場にある構造物を生かして構図を作る小池伸一郎の上手さが生きている。

中元日芽香
10ページ9カット、見開き1箇所。 撮影は桑島智輝。
ピントを薄めにして迫ったアップ、大道具小道具を配して構図を切る引きの絵。 スルリと懐に入り込む技も冴えて桑島智輝の写真を堪能できる10ページ。 ライフワークとしていたものが一つの完結を見たことで、桑島智輝の仕事により厚みが増した。
それもロケハンや道具立てがあってこそのものであり、ワニブックスの編集陣の底知れぬ怖ろしさが垣間見られる。

椎名ひかり
6ページ7カット、撮影は長野博文。
上が白、下が臙脂のセーラー服でリコーダーを吹きながらハチ公前の交差点を渡るカットから始まり、長野博文のスタジオに移動して一枚ずつ脱いでビキニになっていく流れを追った7カット。
既に出来上がってしまっている物を見せるやり方としては上手い。
どう撮ってもそうなってしまう事が予想されるモデルに対しては、こう言うやり方が最適解に近いのであろう。

プリンセスBambina
15歳以下のモデル10人を起用してワニブックスが創刊するファッション&カルチャー誌の宣伝で5ページ4カット、見開き1箇所。 撮影は上原朋也。
あからさまな宣伝の場合は読み飛ばすことが多いのだけれど、なかなか出来が良い。
ファッション誌らしい、コダクローム感のある色合いと作り込まれた構図なのだけれど、道具立てまで含めて詰めてあるのが良い。
佐々木莉佳子の、頭抜けた大物感。

真野恵里菜
9ページ8カット、見開き1箇所。 撮影は西田幸樹。
薄着ではありつつ、水着でも下着でもなく、何かしら着てはいるが部屋着にしては薄い。 この匙加減の妙。
様々な解釈の成り立つ表情で押しつつ、笑顔で〆て落としどころをつくる構成も上手い。
2カット目の魔術的ですらある光の廻し方。 判り難いが質は高い仕事の積み重ねで出来ている。
求められる真野恵里菜ではありつつ、媚びず衒わず。 裏方も上手く大人にしたし、真野恵里菜も上手く大人になった。

鈴木愛理
ビューティーブックなるものからの8ページ10カット、撮影は玉井俊行。
伸ばした前髪も落ち着き、大人びた姿も馴染んで来た。
鈴木愛理の「こう在りたい自分」と言うのはこのあたりなのであろう。
悪くはないし歳相応でもある。 しかしこうした「やさぐれ感」が主たる客層にどう受け取られるのか。
そこから自由になりたいのかもしれない。

_ UTB 月刊化による変化

UTB+ を別趣のアイドル情報誌として切り離したことで、より写真に注力できるようになり、グラビア1本あたりのページ数が増えた。
そうなると写真を詰め込む必要が無くなり、判型を生かした見開きも生かせる。
私にとっては嬉しい変化であった。



「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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