長引いた風邪も漸く癒えたので日本橋へ。 さほど混まないことが予想される顔付けだと出足は遅いのだけれど、開演前にバタバタと駆け込む向きも多く、なんだかんだで埋まる。
「佐野源左衛門駆け付け」神田みのり
「徳川天一坊 紀州調べ(下)」神田春陽
田辺いちか・神田みのりで棒組になったところに真打の先生をゲストに迎えて前座勉強会と言う体での開催が多かったが、それぞれ一本立ちと言う事なのか、みのりさんと春陽先生と言う顔付け。
と、言う訳で長めに「佐野源左衛門駆け付け」、鉢の木の話。 蹴躓くところ無きにしも非ずだったが、それ以外は悪くなかった。
春陽先生は来月の連続読み企画で演る「徳川天一坊」から "中途半端で続きが気になるところ" として紀州調べの(下)を。
謎だった部分が次々に解き明かされ、さぁどうなる・・・と盛り上がったところで「続きはゴールデンウィークに」と読み終わり。
まさに、惜しい切れ場。
確かに続きは知っていても気になる。
4月8日と9日の両日(搬入が早く済んだので7日も開けたらしい)にギャラリー・ニエプスで開かれた写真展。
終わり間際に駆け込みで見て来た。
自家焙煎のコーヒーを淹れていたり、ライブが有ったり、趣向を凝らした写真展だったようだが、雨が止むのを待ってから行った頃には、既にあらかた終わって余韻の中に在った。
床に置かれたギター、コーヒーの残り香。 楽し気な空気。
写真は全てモノクロ。 ベスト・ポケット・コダックで撮ってプリントしたもの。 撮影地はパリ。
現代のパリなのだけれど、撮った機材とプリントが古風なので、何処で撮ったのかは分かるが何時撮ったのかは曖昧模糊としていて、車であったり広告であったり、現代を感じさせる何かが画面内から見つけられると、漸く現代と繋がる。
ファインダーは有って無きが如し、シャッターも怪しく、ピントは目測。 ほぼノートリミングで、ネガの長辺側を少し切るくらい。 それでだいたい絵になっている。
対象を大掴みにするしか無い状況に在って、厳密でないが故に却って撮り逃がしが無いと言うか、ともすれば気になってしまうあれこれに囚われ過ぎずに写真が撮れている伸びやかさ。
柔らかく濃いプリントは私好みで、暗室作業がしたくなる、心浮き立つ写真展だった。
好事家仲間に「桑原みずきって、今何やってるんですか?」と訊かれ、ダンスと歌で構成した自主興行をやっていることを伝えたところ、見に行きましょうと話がまとまり小岩へ。
南口からバスが軒先をかすめるような商店街をしばらく行ったところにあるショーパブ的な店舗を借りての "イベント" よく調べずに行ったので見ているうちに知ったのだけれど、歌とダンスをノンストップで見せるのが "公演" 歌とダンスの合間にゲーム大会的な余興を挟むのが "イベント" と言う事らしい。
明らかに熱心な客が集うなか、場違いな我々は後方の席へ。 入口から会場への通路の脇の部屋で前物販が行われていたようで、知らずに通り過ぎようとした際に桑原が愛想を振りまいていたらしく、そのまま行ってしまった我々に「何だよ、無視かよ!!」と毒づいたので、私は「あぁ、桑原だなぁ」と微笑ましく思ったが、何も知らずにつれて来られた同行の知己は面食らっていた。
まぁ、それは桑原なりの緊張をほぐすためのコミュニケーションであることが明かされる訳なのだけれど、なかなかどうして分かり辛い。
出演は桑原みずき、桑原彩音、岩永亞美、高橋りら、Kie、若林倫香、MAO の7人。
桑原みずき、岩永亞美、若林倫香が元SKE48。 MAOは元とちおとめ25。 この4人がアイドル方面から。
桑原彩音は桑原みずきの2学年下の妹で、ミュージカル畑の人。 高橋りらはミュージカルダンサー、Kieはチア出身。
出自の違いが舞台上での振る舞いにも出ていて面白い。
桑原みずきと桑原彩音は高知のミュージカル劇団の叩き上げで根っこは同じなのだけれど、アイドルを経由した分姉の方が演じる要素が強いと言うか、表情を作るところが有るのに対し、妹の方はその時々の感情が表情に柔らかく乗る。
kieはチアの経験からか大きな動きではっきり表情を作り、高橋りらは柔らかく繊細な動きで指先まで神経が通っている。
元SKEでも鬼軍曹の桑原に付いて来られるだけあって、岩永亞美も若林倫香も歌って踊れて肚が据わっている。
まぁ、本公演を見に来ている熱心な客向けの息抜きイベント的なところはあり、自己紹介も碌にしないような内向きのものではあったが、きっちり2時間飽きさせないところは流石。
本公演にも足を運びたい。
若林倫香の歌の説得力と、一歩引いて全体を俯瞰しているような桑原彩音の落ち着きが印象に残った。
ああ見えて強くはない桑原みずきを上手く支えている。
司会・漫談 猪馬ぽん太
シネマトーク 根本貫一
「鼓ケ滝」一龍齋貞鏡
「講談四方山話」稲田和浩
ぽん太さんはいつもの時事漫談。
だらだら聞いてニヤニヤ笑える。 貫禄が付きすぎて、益々「顔役」っぽくなってきている。
ネモカンの映画漫談はスケッチブックに貼ったスクリーンショットをめくりながらの進行。
スケッチブックにボヤいたりツッコミを入れたり投げ捨てたり。
練れて来ている。
貞鏡さんは入門のいきさつをマクラに「鼓ケ滝」。 講談初心者向けの会と言うオファーだったのが、蓋を開けてみたら訳知りの佃煮みたいなのが雁首揃えていて一寸困惑の体。
そう言う客をおいてけぼりにもせず、講談を見慣れない聴き慣れない客でも分かり易いように落語との言い回しの違いなどの話も織り込みつつの一席。
二種類の客のどちらも納得させると言うのはなかなか難しいものなのだけれど、なかなかの出来。
稲田和浩も講釈のイロハを語って聴かせる客筋ではないのを見て取って、芸人の団体の離合集散と芸人の矜持、芸の好みに難癖を付けたがるスノッブな爺についてなど。
排他的で面倒臭い客がジャンルの発展を阻害するのは、どこでも同じなのだなぁと嘆息。
泉里香
表紙と巻頭9ページ17カット、撮影は阿部ちづる。
連載漫画のキャラクターに扮する「コラボグラビア」なるもの。 大抵は無残な出来になるのだけれど、珍しく成功している。
これは撮られる仕事も役を演じる仕事もこなして来た泉里香と、安心して撮られるに任せられる状況を作った阿部ちづるの功。
後半の、服の上から身体の線を見せるカットが特に良い。
清水あいり
巻中6ページ10カット、撮影は中山雅文。
中山雅文がアパートと思しき屋内で撮っても、現代的な内装だと四畳半グラビア感が薄まって湿度は低め。
マンガのキャラクターの髪型を再現することに血道を上げた結果、どこからどう見てもヅラと言うのが目に付いてしまい、どうにもならない。
表情もポーズも作り込み過多で興醒め。
岸波みお
巻末5ページ8カット、撮影は唐木貴央。
初グラビア、眼鏡、水着、キャラクター設定。 詰め込まれ過ぎた要素が喧嘩をして中途半端な出来。
「コラボグラビア」なるもの、こうした出来だと漫画の方のファンには忌避され、グラビアとしても詰まらない。
良い事は無いように思うのであるが、企画として通しやすいのであろうか。
甘夏ゆず
表紙と巻頭7ページ17カット、撮影は細居幸次郎。
グループアイドルの代表者の人気投票企画での勝利者に贈られる巻頭グラビア。
当該号一冊に一枚付いている投票券を確保するために各陣営が東奔西走。 積み上げたヤングジャンプを誇示するがごとく写真に撮ってツイートする様には吐き気すら催した。
これでヤッツケ仕事のグラビアだと目も当てられないのだけれど、裏表紙に載ったグループ全員のカット以外はしっかり撮って貰えている。
沖縄ロケながら曇天。 担当したカメラマンが曇天と屋内には強い細居幸次郎だったので、災い転じて福。
郡司英里沙
巻中6ページ10カット、撮影は細居幸次郎。
投票だけでなく、動画配信の課金額の多寡を競う企画も行われ、そちらの優勝者の巻中グラビア。
キャリアの振り出しがモデルだっただけの事はあり、物怖じせずにカメラの前に立てており、ポーズも仕草も的を得ている。
ソツが無さ過ぎて面白味は薄いが、破綻の無い6ページ。
鹿目凛
巻末6ページ7カット、撮影は岡本武志。
投票企画で僅差の二位の巻末グラビア。
撮られる機会が増えてきている中でのグラビアとあって、カメラの前での振る舞いは堂々たるもの。
元気でかわいい系ではなく、敢えてカメラとじっくり向き合わせる撮り方。
企画意図も良いし、鹿目凛もそれに応えて良い出来。