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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


二面楚歌 断章
二面楚歌 グラビアレビュー備忘録
寒空文庫(仮)
写真日記二面楚歌 隠居所
petri's fotolife
酒田へ行きたい
投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2017-05-06 男泣き [長年日記]

_ バシフェス Vol.1(29.05.05)

アイドルイベントやネット配信番組の司会進行と企画構成などを生業にしている石橋哲也が、見たい・聴きたいアイドルを集めて開催するごった煮ライブ。
こう言う形式のライブは苦手なのだけれど、顔付けが面白いので足を運んでみた。

チラシでは12:30開場となっていたが、開く気配が無いので調べ直すと、タイムテーブルでは13:30開場に変わっていた。
13:30にはきっちり開場。
TOKYO FM HALLは天井が高く、空調もしっかりしているので、ごった煮ライブ特有の暑苦しさや異臭などが濃くならないのが有難い。
前方は背もたれのある椅子が並び、年寄りに優しい。 後方は立ち見で、わいわい見る客はそちらへ。
中央ブロックの最前列は管理組合的な若いのが陣取って入れ代わり立ち代わり見たり見なかったりしていたが、諍いなどは起きず。

タイムテーブルが出ていて、出演者も掛け持ち、客も掛け持ちなので開演しても客の入りは薄く、どうなる事かと思ったが徐々に客は増えて中々の盛況。

並行物販なので客の出入りは激しいのは仕方が無いにしても、もう少しスマートに出入りできないものだろうか。
常識の持ち合わせがないのだと思うが、ライブのさなかにステージ前を堂々と横切ったりするのには呆れた。
出るにしても入るにしても、演目と演目の境目でささっとやるものだと思っていたが、昨今は寄席でも連中の親やその上の世代が臆面もなく出たり入ったりしているので躾けもへったくれも無いのであろう。
こういう形式のライブが苦手と言うのは、この躾けもへったくれも無い手合いと同じ空気を吸うのが嫌だと言う事。

閑話休題。
出演者の手配が付かなかったとのことで14:00からの最初の枠は石橋のDJ、繋いだり語ったり歌ったり煽ったり。
場を温めてから最初の出演者へ。

きゃわふるTORNADO
二月にお披露目ライブをやって以来、いくつかライブをこなしてきてはいるが、まだ斯界に知られているとは言い難く、ほぼオープニングアクトとして登場。
石川と杏斉が安定した歌唱で下支え。 別所と神咲は初々しく、道地は元気に、宮瀬は可愛らしくしっとりと。
歌って踊っての部分はしっかりしており、楽曲も(オケも)丁寧に作られている。
最低限の事は出来ているので、あとは「どう売るか」。
新曲が披露されたが、盛り上がる曲を作ろうとする目論見が透けて見えすぎてしまって、私は醒めてしまった。

最後は「星空ディスティネーション」で〆。 難しい歌いだしだが、別所の懸命さに引き込まれる。
キラーチューンに成り得る佳曲。 大切に歌って欲しい。

閃光ロードショー
映画をモチーフにしたグループ。
流行ったものが主だが、その映画のエッセンスを詰め込んだ楽曲が愉しい。
バスドラが疾走するイントロから激しい曲が始まったと思ったら胸の前に両腕でバツを作って飛び跳ね始めたのにはやられた。
映画とは関係なさそうだが、面白ければ細かいことは良い。

エルフロート
激しめの邦楽ロックの楽曲に可愛らしい歌声。 落差が面白い。

2o Love to Sweet Bullet
ミニ丈のチャイナドレスで登場。 髪は両側頭部でお団子にして、さながらリン・ミンメイ。
曲は当世風EDMだが、淡々とした曲調のものが多く、歌い踊っても感情を露わにしない。
フォーメーションに変更があったらしく、振り付けは間違えないものの移動が覚束ず、挙動不審なメンバーが居たが、覚束ないなりになんとかしているのが面白かった。

notall
芸人に 上手も下手も なかりけり 行く先々の 水に合わねば
なんて事をよく言うが、行く先々の水を変えて味方にしてしまうのがnotallのnotallたる所以。
出てきただけで場が明るくなる。
其処此処に潜伏していたnotallの客が一斉に隠し持っていたカメラを鞄から出して撮り始めるのも愉快と言うか滑稽と言うか。
最初期から仕事をしてきた石橋が男泣きに泣いているのを茶化し、舞台に上げて一緒に踊らせるなど、沸かせ方も心得ている。
格にしては浅い出番なのだけれど、これはまぁ定期公演との兼ね合いであろう。

ダイヤモンドルフィー
エルフロートと同じ送り手、曲調も同じく激しめの邦楽ロックなのだけれど、こちらは四人が四人ともきっちり歌えて、振り付けも自棄糞に激しい。
振り付けの激しさに髪飾りが外れて飛んで行ってしまったりもしたのだけれど、自然な動きで安全なところに蹴り出すなど、舞台度胸もあり、状況判断も的確。
沸かせに沸かせて降りるであろうnotallの後に上がって、しっかり自分たちの空気に換えていた。
(これは石橋の組み方も巧い。)

絶対直球女子!プレイボールズ
野球モチーフのグループなので衣装もユニフォーム然としたもの。
足元はコンバースのバスケットシューズだったので訝しく思ったが、よくよく見ると野球のボールのような赤い糸のステッチが入っていた。
打ったり捕ったり、野球に因んだ楽曲は総じて明るく楽しく、振り付けは体育会系の体力勝負のもの。
グローブやメガホンの小道具も楽しい。
見世物としてきっちり練られているので、アイドル目当ての客のいない野球絡みのイベントでも受け入れて貰えているのだと思う。
オケのレベルが上げ過ぎなのではないかと思うくらい大きく、被せも強めなのだけれど、見世物としての均質さを考えての事だと考えると納得が行く。
前半の〆には相応しく、お祭り気分を盛り上げて降りていた。

長丁場のライブは耳が持たないので、ここで失礼したが、木戸銭以上に愉しむことが出来た。
大箱でのライブではないにしても、長らく別形態イベントは打っており、芸人としての常識もある所為か、開場開演も時間通り。
自らのDJの時間を調整用に確保しつつ、その必要が無いくらいタイムテーブル通りの進行。
仕切りに関しては専業のイベンターよりしっかりしているくらいで、主催者側に起因する不愉快は皆無。
次回開催にも期待したい。 

_ notall定期公演(29.05.05)

前日の昼間に思い出して予約サイトを見たところ、前売りの枠が残っていたので予約して見た。
チケットの販売方法に会場のwallop放送局ならではの決め事が有り、チケット引き換え開始時間(19:20)以降に3階の受付に行き。

1. チケットの自動販売機で、チケット代金と同じ額のものを購入する。
2. 受付に渡して予約番号を申告する。
3. チケットに予約番号を記入してもらう。

これでチケット購入が完了。 
予約番号はそのまま入場順となる。
当日券が出ることもあり、その際は予約番号の手続きは無く、予約者の後からの入場になるとの事。

19:30から21:00までは2階の別室で事前物販。
その後、ライブ会場となる3階のスタジオ前で整列し、21:20ころから整理入場と言う流れ。

鉄道が2路線通っておりバスの便もあるとは言え場末と言えば場末の押上だが、21:20入場なら勤め人でも頑張れば間に合わない事は無いし、ライブが正味一時間だったとしても、22:30ならまだ帰れる。
終演後物販は厳しいが、前倒ししてライブ前にやれば一定時間確保できる。
よく考えられた時間設定。

定員の98人が動員目標(※これを3回連続で達成すると、別の場所で無料イベントが打てるらしい)なので、椅子は片付けられて立ち見のみ。
撮ろうとすると2列目までならまぁ何とかという感じ。

notallは撮りたい層とわいわい盛り上がりたい層が上手く共存しており、統制はされないが一定の秩序はある状態。
前の方に撮る客がいても場は盛り上がっているし、場は盛り上がっていても撮っている客が邪険にされる事も無い。

場内で掛かっていたBGMの音量が上がり、客電が落ちて開演。 出囃子が掛かって手拍子が始まる。
notall目当ての客が集まる主催興行とあって、客とメンバーが分かち合って喜ぶ祝勝会のような雰囲気。
感極まりそうな雰囲気はありつつも、笑顔多めの祝祭空間。

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DSC_9491 posted by (C)2petri2

そもそもが収録用のスタジオなので音響は兎も角照明に関しては厳しいところはあり、着席観覧前提の舞台なので舞台も低い。
ライブ会場としては難しいところは有るのだけれど、本拠地ならではの気安さと使いやすさもあり、今のところは良いバランス。

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DSC_9634 posted by (C)2petri2

ライブはほぼ一時間。 予定調和のアンコールなどは無く、すっきりした構成。
木戸銭も安く(1500円)、ダレ場も無くたっぷり見られる(聴ける)。
対バン形式のライブなどで気になったら、見に来やすい敷居の低いライブだと思う。

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DSC_9689 posted by (C)2petri2

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DSC_9710 posted by (C)2petri2

_ その他の写真

写真を纏めてアップロード。

RSSnotall@バシフェス(29.05.05)
notall定期公演(29.05.05)


2017-04-30 静かな朝 [長年日記]

_ 朝練講談会(232回)

前日の喧騒が嘘のように静かな朝。
まぁ、訳知りの客はのんびり来ても座れるのを知っているので開演までにはそこそこ埋まる。

「関東七人男 林蔵高坂へ斬り込み」宝井梅湯
あまり有名ではない北関東の侠客を描いた続き物。 侠客そのものは荒唐無稽な脚色が為されていないので実在感が有ると言えば実在感が有るのだけれど、出てくる人物が揃いも揃って小物で悪事もぱっとしない。
ところが今回の主役の落合の久五郎は「神道無念流の免許皆伝」。 「戸賀崎熊太郎道場」とか「秋山先生」なんて単語が出てくると私の中ではそれなりに盛り上がって来る。 

「徳川天一坊 網代問答」神田春陽
天一坊の山場の一つである、大岡と山内伊賀亮の問答。
緊迫感のある場面なのであるが、春陽先生締めるところは締めつつも、例によって要所々々で混ぜっ返すので肩が凝らない。
伊賀亮の悪役っぷりがまた良い。
続きは三日からの連続読みの会で、と言う良い流れ。

_ Mihama Music Jack!! Vol.115

ミハマニューポートリゾート ニューポート広場で開催される野外ライブへ。
出演は 東京CLEAR’S と きゃわふるTORNADO。

郊外型の商業施設なので自家用車で来る前提の立地。 無料シャトルバスもあるにはあるのだけれど、平日限定らしい。
稲毛駅から新港車庫行のバスに乗り「ニューポート第一」で降りると、そこが会場であるニューポート広場だった。

ミハマニューポートリゾート を構成する専門店は、ゲームファンタジアマウンテン、サイクルベースあさひ、 湯快爽快 「湯けむり横丁」、イエローハット、ロピア、スギ薬局、イエローハット、東京靴流通センター、イエローハット、エコタウン、ザ・ダイソー、ユニクロ、眼鏡市場、ソフトバンク 美浜ニューポート。
これらが駐車場を囲むように建っており、車で来た客は目的の店に近いところに停めて往復。

ニューポート広場は商業施設と駐車場の動線の外側にはなるが、施設の飲食部門を担うびっくりドンキー、牛繁、ラーメンばんだいが集まる一角に在り、そこを利用する人々は駐車場を越えてやってくる。
逆に言うとここで飲食をしない利用者は通らない位置にある。
更にはステージが駐車場を背負う形になっているため、音が人の多くいるところに届きにくい。
館内放送でイベント告知をしている様子もなく、ポスターは貼られているものの買い物客への告知は充分とは言い難い。
そんな訳でライブイベントの観客は出演者目当てで来た人々が中心。 通行人のうちの幾許かが足を止める。

12時頃には現場の設営は済んでおり、当日の出演者の音源が流されていたのだけれど、12時半ころに流行歌に差し替えられ、開演までそのまま。 東京CLEAR’Sは12:30、きゃわふるTORNADOは12:40頃に到着。 きゃわふるTORNADOは商業施設にチラシ配りに。
リハーサルも無く、音響機材を使ったイベント告知も直前のみ。 客を集めようとする工夫が主催者側に見られないのが不思議だった。
少人数のスタッフでも十分コントロール出来得る集客ながら、撮影録画は禁止。

きゃわふるTORNADO
ほぼ時間通りに開演。 出囃子に乗って一人ずつ登場してそれぞれが決めポーズ。 全員揃ったところで一曲目。
結局持ち歌の全てを演って30分持たせていた。
リハーサルも無く、バミリも有って無きが如しの状態ながら、フォーメーションもきっちり揃っており、歌って踊っての部分はお披露目ライブから長足の進歩を遂げていた。
全員「動ける躰」になっており、振り付けにも情緒が有るし、それぞれの解釈の差はありつつも一定の幅には刈り込まれており、集団として美しく動けている。

石川野乃花の歌が上手くなっていて驚く。 自己流ではなく、きっちり鍛えられている感じの上手さ。 「ほうら巧いだろう」的な嫌味は無く、グループを構成するパーツの一つとして磨きが掛けられている感じ。

別所佳恋と神咲くるみも動きがこなれてきた。 まだ曲の世界観と乖離して表情が厳しくなるところが無くは無いが、舞台に立つ人としては及第点。

道地文子は肚が据わっている。

杏斉ゆかはニューポート広場のイベントステージの特徴である橋をその場の機転で使っていたのが面白い。

宮瀬しおりは動きのキレはそのままに、指先まで神経の通った柔らかい動きを身に着けており、表現の幅が拡がっていた。
愛嬌ある歌い方でありつつ、上達したような気がしてよくよく聴いてみると、オケが丁寧に作られていて、弱い部分に裏打ちがされている。
これで生歌感は保ちつつ、より「上手く」聞えるようになっている。

物販は千円で一枚籤か引けて、そこでハズレだと予め撮っておいたメンバーのソロショットチェキ、あたりだとサイン色紙、ワイドチェキ(全員)、ツーショットチェキなど。
時間の掛かる特典から先に行うなど、効率を考えていないのと、(これでも改善されたらしいが)ハズレの多さによる割高感が気にはなった。
客の方もその日その時の思い出の為に金を落とす気はある訳で、もう少し効率的に収奪していただきたい。

撮影禁止にしておきながら、スタッフの撮る現場写真がスマートフォンの引きの絵ばかりと言うのも如何なものか。
その程度の機材しかないのであれば、商用使用前提で許可して客に撮らせて使える物を使えばよい。

メンバーの歌って踊っての部分や楽曲の出来に関しては貶すところが無いが、裏方の大人の仕事ぶりには辛い点を付けざるを得ない。

特典会などで接する限りに於いては客を踏みつけにするような不遜さは見られないのだけれど、芸能の裏方をするにはあまりにも無知であるが故の慇懃無礼な感じは気になる。
良いものを作れば売れると言う時代ではなく、それ相応の工夫をしなければ商売になりにくい時代に我々は生きている。
初期を支える客をどう囲い込むか、まずそこに頭を使って欲しい。


2017-04-24 仲の良さ+α的な暗喩 [長年日記]

_ アップトゥボーイ 2017 6月号

宿題は溜まりっぱなしだが、最新号を。

中井りか
表紙と巻頭16ページ21カット、うち見開き1か所、撮影はHIROKAZU。
和装と洋装、水着2パターン。
和装は屋外。 「衣装協力= 撫松庵」とあったので、ちょっと調べてみたら提供したものが紹介されていた。
「レディスゆかた/ストライプブロッサム」と言う、ダズル迷彩のような白と黄の斜めのストライプに桜があしらわれたもの。
飛ばし気味に撮ってあるので、着こなしの細かい部分が見えないのは惜しい。 レースの半襟、柄足袋、リボンの髪飾りetc...、細部も見たかったが使える物が少なかったのか2カットのみ。

ページを繰ると一転して屋内で洋装。 緋毛氈のような絨毯の敷かれた洋館の窓辺。 赤い古風なパフスリーブのワンピースに、これまた古風な赤いエナメルのメリージェーン。 白のアンクレットソックスが映える。
顔の横に来る髪を、鬢の辺りに少しだけ残して後頭部で編み込んで纏めてすっきりと。
ワンピースの生地は薄手のもので、透過光で少しだけ透ける。
16ページ目の最後のカットなどはこの「透け加減」が絶妙。 唸らされる。

水着部分は撮られ慣れてきたこともあってか、表情も柔らかく諧調も豊か。 それ以上にポーズや仕草に幅が出ている。
何かを掴む、握る、絡める。 指先の意味ありげな動きに引き込まれる。
眼福。

小熊倫美×長谷川玲奈
10ページ14カット、撮影は小池伸一郎。
襟にグレーの線が二本入った白のセーラー服に薄水色のスカーフ、白のロークルーソックスにペニーローファー。
髪の長さは同じくらいだが小熊は前髪を作って二つ縛り、長谷川は前髪を作らないストレートのロングボブ。
ページを繰ると場面変わって音楽室。 似通った意匠でありつつ一寸違う白のキャミソールワンピース。 足元はヒールの無い白のパンプス。
仲の良さ+α的な暗喩。 受け身に回った小熊の見せる感情の揺らぎを捉えたカットが良い。
更にソフトボールのユニフォーム。 経験者だけあって、道具を持たせてもサマになっている。

太田夢莉
10ページ10カット、撮影は塩原洋。
オレンジのビキニ。 顔のアップから徐々に引いていく三枚から。
ボタンを留めずに来た紺のブレザー、第一ボタンを外したワイシャツに紺のネクタイを緩く締め、グレーのスカートは膝上20cmくらいに穿いた、鼻っ柱の強そうな女子高生的な風体。
ここから色々脱ぎ捨てて白ビキニになって行く。
今の太田夢莉の「食えない感じ」を活写。
最後のカットの、自棄糞に高いハイヒールも「らしさ」を出していた。

渡辺みり愛
10ページ12カット、うち見開き1か所、撮影はサトウノブタカ。
ケーキやお菓子、縫いぐるみ、さまざまな「カワイイ」に囲まれ「カワイイ」を具現化したような衣装に身を包んだ12カット。
引き結びすぎると作為が感じられてくるのは瑕だが、口の開き方閉じ方で表情に諧調をつけられている。

梅澤美波
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は西村康。
立っても座っても寝転んでも、見せ方を知っていて隙らしい隙が無い。
既に出来上がってしまっていて面白味は薄いが、間違いなく上質ではあるし、撮り方によってアウトプットも変わってくると思う。
その点では楽しみ。

高本彩花
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は西條彰仁。
満開の白木蓮の下、オーソドックスな紺のセーラー服、紺のハイソックス、ペニーローファー。
屋内で白のキャミソールとショートパンツ。 ベージュのソファーに寝そべらせたり、白い壁の前に立たせたり、暗がりを背負わせたり。
最後は緩く巻いた髪を下の方で二つ縛り、レースのブラウスにウサギの耳のようなサスペンダーの付いた水色のフレアスカート。
これでくるりと回ると裾の拡がりが綺麗なのだけれど、翻させるには丈が短すぎるか。
ネモフィラであろうか、顔の前に青い花を一輪。 歯並びなど粗もあるのだけれど、上手く切り取ってそれを感じさせない。

上國料萌衣
8ページ9カット、撮影は唐木貴央。
薄い黄色のキャミソールとショートパンツ。 襟と袖口が紺で白いラインが3本入った白のセーラー服、スカーフは緑で紺のスカート、紺のソックスに焦げ茶のペニーローファー。 黒いレースのワンピース。
打ち合わせ擦り合わせはしているのだと思うが、似たような衣装でも被らないのに改めて驚く。
上國料萌衣は非の打ち所の無い美形なのだけれど、正面より心持ち斜めから撮った方がより映える。
微調整しつつ様々な角度から切り取った最適解が6ページ目の横顔。
カメラの前で構えず衒わず、素で向き合えているからこそ撮り得たカット。

山岸理子
1st写真集からの8ページ9カット、撮影は唐木貴央。
眩しいと凶相になるのは分かっている筈なのに、敢えてそうなる絵を撮りたがるのは事務所の方針だろうか。
光を背負わせたり柔らかく廻る時間に撮ったり、工夫はされているので破綻はしていないが、その工夫が何かを糊塗する為のものでは無ければ、より良い写真が撮れたのではないかと思われてならない。

北原里英
10ページ13カット、撮影は山口勝己。
何時か見たような組み合わせだと思って調べてみたら2010年にヤングジャンプの巻頭をやっていた。
相変わらずの物撮り錬金術で遣り過ぎが鼻に付く部分が無くはないが、捉えにくい美点を写真として固定する技には唸らされる。
5ページ目からの4カットは貶しようのない出来。 こと北原に限っては、ここまで上手く撮れるのは山口勝己が一番かもしれない。
思えば5期で最初にグラビアの仕事が来たのは北原で、掲載誌はアップトゥボーイであったと記憶している。
あのガチガチの笑顔から考えると、紆余曲折は有りつつも、よく此処までの高みに達したものだと思う。


2017-04-18 カストリグラビア誌を掴まされるの巻 [長年日記]

_ My Girl vol.17

既存誌の増刊と言う体際の物も多いが、グラビア誌も増えてきた。 顔付けの面白かった物をサルベージ。

中井りか
巻頭10ページ18カット、撮影は藤代貴則。
撮影者のクレジットが胡麻粒のように小さい事からも、この本に於ける写真と言うものの扱いが窺い知れる。
カメラマンも編集者も「首切り」「串刺し」と言った人物を撮る上での禁忌に無頓着。 被写体とは或る程度向き合えているが、画面全体に神経が行っていない。
ヘアメイクもスタイリストも仕事は出来ているので、編集者にどんな絵でどんな物語を紡ぐかのイメージが出来ていない、カメラマンに伝えられていない、もしくは丸投げ、と言う事なのであろう。
ページ毎に色味もバラバラ。 グラビア誌を作るだけの力量がそもそも無いようでもある。
中井りかは静止画になると、その妖しげな魅力が引き出されない憾みがある。 一寸勿体ない。
違う媒体でお目に掛かりたい。

北原里英
8ページ13カット、こちらも撮影は藤代貴則。
「首切り」「串刺し」の写真がちらほら。 画面を構成する線のうち、手前に来ているものは見えていて、構図に生かしたりも出来ているが被写体より奥にあるものについては丸で見えていない。
悪くない構図だと今度はレタッチが左官屋。 漆喰で塗り固めたアイドルなんざ、ゾッとしない。
北原の撮られ方、こちらは出来ている。 一時期は表情もポーズも硬く強張っているようなところもあったが、大きな器を任せられて肚が据わったのか、カメラと上手く向き合えている。
違う媒体でお目に掛かりたい。

本間日陽
8ページ12カット、やはり撮影は藤代貴則。
人生照る日もあれば曇る日もある。 ちゃんと撮って貰える機会もまたあるだろう。
5ページ目、窓際で伏し目がちなカット。 これだけは良く撮れている。
違う媒体でお目に掛かりたい。

柏木由紀
7ページあるインタビューの中に5カット、撮影は桑島智輝。
色々有って住み替え(兼任だが)をしたうらぶれ感のようなものが髪や肌に出てしまうのを糊塗せずに写し取りつつ、きちんと絵にもしている。
最後の見開きのカット、今の柏木の、それでもゾクリとさせられるところを掬い取っている。
違う媒体でお目に掛かりたい。

高倉萌香
4ページ7カット、撮影は大石隼士。
背景を描く線に貫かれているカットはあるのだけれど、正中線を外していたり、目の高さに通していたり、気にならないようにする工夫がなされている。
構図も悪くない、表情も良い、レタッチの拙さが画竜点睛だが、差し引きでプラス。
違う媒体でお目に掛かりたい。

村雲颯香
4ページ8カット、撮影は大石隼士。
正面からより心持ち斜めから撮ると映える。 撮られ慣れていない硬さはあるが、そこで無理をさせずに撮ったのが良かった。
違う媒体でお目に掛かりたい。

金子理江
4ページ6カット、撮影はM.キセキ。
写真そのものは悪くないのであるが、それを雑誌として生かし切れていない。
違う媒体でお目に掛かりたい。

黒宮れい
4ページ6カット、撮影はM.キセキ。
こちらも同じく。 この二人の一筋縄ではいかない部分を活写できてはいる。 それを生かせてはいない。
違う媒体でお目に掛かりたい。

上西恵×藤江れいな
インタビュー込みで11ページ9カット、撮影は山内洋枝。
インタビューに添える為の写真。 それ以上でも以下でもない。
違う媒体でお目に掛かりたい。

吉田朱里
10ページ19カット、うち見開き1か所、撮影はLUCKMAN。
撮られ慣れていて見せ方も巧い。 商売用の見せたい自分しかカメラの前には晒さない退屈さはあるが、吉田朱里を支持する層はこれで良いのだろうし、そこに特化してセルフプロデュースでなんとかしたからこそ、一旦底まで沈んでも浮かび上がって来た分けでり、これはこれで良い。
違う媒体でお目に掛かりたい。
しかし、巻末グラビアに一番力が入っていると言うのも解せない。

総評
酷い出来だった。 これで1389円と言うのは費用対効果が悪すぎる。 二度と買わないとは言わないが、指名買いは出来ない。
角川の編集能力の低下、雑誌造りを担える人材の枯渇が如実に表れた一冊。
写真にも印刷にも紙にも金を掛けないグラビア誌は、やはり碌なものにならない。

_ 週刊ヤングジャンプ 2017 21号

山口真帆
巻頭6ページ12カット、撮影はHIROKAZU。
佇まいに色気はあるが、いざ水着になってみると、体型には特筆すべきものが無い。
そこを仕草と表情で魔法に掛けて、見る者を誑かす。 尻尾が何本あるか定かではないが、ただの狐ではなさそう。
水着になると硬さも見られるが、その硬さが切迫感を醸していて訴求力が有り、服を着ているカットは目で殺しに来る。
水着映えしないが故に水着映えする、なんとも妖しく、不思議な12カット。

松川菜々花
巻末5ページ14カット、撮影はTakeo Dec.
表情が諧調に乏しく、ほぼ全カット歯見せ笑顔。
写真の選択や配置にも首を傾げざるを得ないところが有るにしても、被写体として退屈。


2017-04-17 匠の技 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2017 20号

泉里香
表紙と巻頭9ページ18カット、撮影は中村和孝。
発売された写真集の未使用水着カットで構成。 女性向けファッション誌での仕事に差し支えない、これ迄に築いたイメージを毀損しないように編集された写真集では使えなかったカットなのかもしれないが、どれが使われてもおかしくない質は保たれている。
あざといポージングや媚びた表情をしなくても、薄着になるだけで十二分に青少年のリビドーを刺激するあれこれは持ち合わせている訳であり、意味深長でありつつも穏やかな表情、隠しはしないが誇示もしない程の良い身のこなし、過不足なく求められる自分をカメラの前に晒している。

三城千咲
巻末5ページ11カット、撮影は山口勝己。
飛ばした方が良いところは思い切って白く飛ばし、細かいポーズ指定で身体が綺麗な線を描く、山口勝己ならではの写真。
粗を隠して美点を強調する匠の技。



「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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