六条と半日東京をぶらぶらした訳だが、これが以外と〔と言っては何だけど〕面白かった。 浅草にしろ谷中にしろ、大体このあたりが面白かろうと思って連れて行くとそれなりに面白がってくれて、「あっちへ行きたい」「こっちへ行きたい」「何々が見たい」「何がしたい」と能動的に動いてくれるし、幾ら歩いても文句を言わないし、私が普段入らない店や見落としていた露地に入って行ってくれるので、十年以上前から暇さえ有ればぶらぶらしてきた谷中の露地にも色々な発見が有り、かといって「そこはマズイだろう」と言う露地や店には何故か入って行かないので気分的にも非常に楽であり、置き引きの一件を差し引いても大変楽しい1日ではあった。 道端の草花に目を留めて「あれは何」「これは何」と一々反応するのも面白かった。 吾亦紅なんて字は書けるけれど現物にお目にかかったのは初めてだ。
独りで歩いていると得てして点間移動に成りがちなのだけれど、久々に散歩らしい散歩、そぞろ歩きをした。
しかしながら上野公園の治安の悪さは、リトルテヘランと化していた数年前の比では無く、よくよく考えてみればこれだけの数の人間が堂々と定住しているのは終戦直後以来であり、254の仕事がそう有る訳でも無くシケモク拾いや雑誌拾い、地見屋なんぞで生活が成り立つ訳も無い訳であって、ラジカセやら自転車やらを持っているのは当たり前、中には犬を飼っている者すらいる現状を見るにつけ、盗み・かっぱらいが横行するのも無理からぬ事であると思はざるを得ない。
なんだか達観したようなことを書いているけれど、やられた直後はそれなりに憎悪が渦巻いてて、実の所「モロトフカクテルでそこら中火の海に・・・」とか「ホスゲン、イペリット、ルイサイト、チクロン・ベー」「マスタード臭よりアーモンド臭のほうが足がつき難いか・・・」とかいけない考えが頭の中をぐるぐるまわっていた。
レンズは出て来ないと思う。 質屋、道具屋、中古カメラ屋。 CかKかAか、もしくはNか・・・。 向こうはプロだからそれがどう言う品物かは持って来たヤツを見れば判る。 判ればそれなりの値段で買い叩く。 持って来たヤツも後ろ暗いからあまりごねる訳にもいかない。
払ったとしても2。 3までは出していないのではないだろうか。 そうだとすると普通に売れば10位にはなるから、店にしてみれば旨いはなしなわけだ。 これ以上具体的な話は書けないし、書いたところで楽しくもなんともない。 読まされるほうも不愉快だろう。