今回の副題は「猛暑に負けず、新富町の会議室で鈴木伶奈生誕!今回は久しぶりのチーム曲も披露!もちろん二時間を超える大ボリューム公演!!」。
2時間どころの騒ぎではない長丁場だったが、ダレ場も無く、気が付いたら終わっていた。
今回から入場が整列ではなく呼び出しに変わり、客の側でスマートフォンの画面に整理番号を表示し、番号順に入場。
確かに酷暑の中、短時間とは言え密集して並んでいなければならない必然性は無いし、客の自律性を信頼するところはPIPらしさなのかも知れない。
これまでで最もスムーズな入場。
大規模屋外イベントと日程が重なったので、集客はいつもより少なめ。 特に沸ければ良い系の客にその傾向が顕著。
これはPIPに何を求めてきているのか、その層の優先順位が何処にあるのかが、その選択と行動に影響しているのではないかと思う。
少なくとも私がアイドルに求めるものは、件の大規模イベントには無かった。
入場が一段落し、影アナは空井。 元気がありすぎるくらい元気だが、それだけ充実しているということだろう。
開演時間になり、暗転して出囃子。 曲が終わる頃合で並び終えて一曲目。 入り捌けについても考えられ、練習も重ねられているのが見て取れた。
例によってDreamin' girls から RUN RUN RUN。 狭い所で歌い踊りながら移動するのと、まだ不慣れなのでぶつかりそうになることがあるのだけれど、お見合いになってしまうのはいただけない。 ぶつかってもよいくらいに躊躇無く動き、見切って交わすのが理想。
曲が終わってからの自己紹介は簡潔にして、お披露目の際にざっくり分けた3グループ対抗ので歌とMCの対決。 それぞれ工夫が凝らされていたが、空井がパワーポイントと言う飛び道具を駆使し、自らは脇に回ってメンバーの個性を引き出すのに専念したのは実に良かった。 一歩引く事で空井自身の個性も浮き出ていた。
石川は髪型から衣装から妙に気合が入っており、MCも主導していたのだけれど、漲るやる気は空回りするところもあり、いつも通りのメンバーの中で独り一寸硬いのが気になった。 この理由は最後の最後で氷解するのだけれど、リーダーとしての責任感が石川を育てているのが見ているだけでも判る。
プロデューサーの濱野智史は洗濯し過ぎて透け掛かったパタゴニアのティーシャツに七分丈のパンツと言ういつもの出で立ち。
照明を購入した事を前日の別のイベントで話していたが、早速3つ買い足したとのこと。
ユニットコーナーは入り捌けにしてもマイクやマイクスタンドの扱いにしても、かなりこなれて来た。
セーラー服など、衣装然とした衣装では畳み皺が目立ったが、小道具を含めて充実させようとしているのは評価できる。
リーダーの石川はユニットでもピリピリする気合と、細部まで神経の通った動き。 これがさり気なく出来るようになれば本物。
羽月・濱野(舞)で新カバー曲「ライオン」。
只の鼠ではない二人による金の取れる芸。
小林希望はソロ・ユニット含めて大車輪。 押し付けがましさが無く、丁寧で味のある歌声。 オケはガイドメロディー付きのショボさでも、小林の歌声に説得力が増した所為か気にならなくってきた。
ユニットコーナーのあとは、鈴木の生誕企画。 ソロで一曲歌い終えたところで、本人から辞める旨発表。
石川のピリピリしていたのも、牛島の冴えない顔をしていたのも、鈴木の噛み締めるように歌っていたのも、全てはこの事に起因していた。
知らなかったメンバーの方が多かったと見えて動揺が走り、そこかしこで嗚咽、そして号泣。
本業のイラストの仕事が多忙を極めての決断とのことで、今後はイラストレーターとしてPIPに関わって行きたい、と鈴木。
読み上げられた濱野からの手紙は、まさに担当教官からの惜別の辞であり、文字通りの「卒業」であった。
La Dernière Classe...
このタイミングで新メンバー加入の発表。 新メンバーと言うか「PIP京都」立ち上げのお知らせ。 世界同時革命さながらの無茶な展開。
アンコールの「初恋サイダー」は、派手に泣いた後なので歌い出しが安定せず、悔しそうに声を整えつつ持ち直していく羽月が良かった。
何故斯界で歌われすぎているこの曲なのかと訝しく思っていたが、濱野智史曰く「地下の定番曲ですが、その中でも一番を目指します。」 確信犯だった。
見る度に何かしら変わっているPIP、その多くは良い変化であり、悪い変化も無くは無いが、着実に前に進んではいる。
回を重ねるごとに(まぁ、前回はヒド過ぎたが)ダレ場も減っており、3時間からの長丁場であったが楽しく過ごすことが出来た。
木戸御免でそこにしか金を落とす場所が無いと言うのもあるが、アイドルの接客業としての側面には惹かれない私ですら物販に行くくらいには楽しい。
NHKの「恋する地元キャンペーン」に連動したイベント。 地方発のアイドルが良い環境で纏めて見られる機会なので足を運んでみた。
NHKオンデマンドのイメージソング的なものを歌うOS☆Uが口開け。 司会の芸人さんとOS☆Uの清里千聖が進行役。 どう言うシステムでそうなったのかよく分からないが、シード権のあるOS☆Uとasfiが1曲ずつ披露し、残りの6組が二手に分かれてライブ対決と言う流れ。
Aグループは愛の葉ガールズ(えのはがーるず 愛媛)、アイリス(元テクプリの3人 宮城)、フルーティー(北海道)
愛の葉ガールズは歌って踊って耕すアイドルと言う事で、小麦色に焼けた肌が新鮮。 サウンド・オブ・ミュージックに出てくるカーテン生地で作った服のような衣装が面白い。 粗さは有るが明るく元気なのも良い。
アイリスは歌もダンスも頭抜けていて場違いな位であるが、売れそうな切っ掛けを何度も掴み損ねてきただけに、こういう機会でも何とか利用していただきたい。
フルーティーは土地柄なのか煽りがしつこく、口上まで強いるような下衆なステージ。 私の好みではなかった。
Bグループはミルクセーキ(長崎)、JK21(大阪)、アイくるガールズ(福島)
ミルクセーキについては後述。 JK21は曲もPVもナニワな感じが強く、興が乗らない。フォーメーションも有機的な変形や移動ではなく、陣形の組み換え中心で物足りない。
アイくるガールズは曲にMIXが組み入れられているなど、客に媚びたところが鼻につく。 こちらも立ち位置の切り替えのみで、舞台の広さを演出に生かせていない。
客前で見せる芸として一頭地を抜くアイリスの勝ち抜けは分かるが、曲もパフォーマンスもぱっとしなかったアイくるガールズの勝ち抜けには疑問が残る。
準決勝は「バラエティ適正も必要」と言うこじつけで、グルメレポート対決。 別府温泉の「地獄蒸しプリン」を食べてレポートする体だったのだけれど、こちらは観客ではなく「別室にいるNHKの偉い人が決める」とのこと。
厭な予感はしていたが、ここでもアイくるガールズが謎の勝ち抜け。
決勝はasfiと「(ライブの)煽り対決」。
キラーチューンの「HAPPY DRIVER」を持ってきたasfiは押し付けがましくなく客を乗せていく術に長けていて、この日一番の盛り上がり。
これで勝負あったかと思いきや、案に相違して優勝はアイくるガールズ。
アイくるガールズは特に酷かったと言う事はなかったが、特筆すべき美点もなく、福島県でもいわき市が地元となると、官邸→籾井ラインの圧力による「政治的に正しい結末」として作られたヒロインではないのか・・・と、下衆な勘繰りの一つもしたくなる不可解な結末。
イベントとしては金の掛かった茶番であり、判定もインチキに過ぎたが、設備の整った広い舞台の上でアイリス、ミルクセーキ、asfiを見られたのは収穫だった。
歌と振り付けの完成度ではアイリスが、広い舞台を広く使う演出の巧みさではミルクセーキが、厭味なく客席を盛り上げる技術ではasfiがそれぞれ飛び抜けており、審査結果がどうでもそれぞれ収穫はあったように思う。
原爆忌を東京で向かえたミルクセーキは、曲に入る前に
「長崎では、今日、8月9日は69回目の原爆の日を迎えています。私の、そしてあなたの、当たり前の日常がこれからもずっと続きますように。」
振り入れをする時間が取りたいとのことで、定期公演の変わりに軽いイベントとしてカラオケ大会。 いつもと変わらないのではないかと思ったが、このカラオケ大会の為の練習はしないと言うことらしい。
会議室は会議室としての配置のまま開催する為、余り人が来ても(また来なくても)困ると言う事で告知は薄めに。
それでも開場時には20人から集まっていた。
先週買い足したと言っていた照明が早速稼動。 カラオケボックスの個室のような感じでは有るが、大分雰囲気は出てきた。 機材への投資金額は、ぱっと見ただけでも洒落の利かない額になりつつあるが、それを自慢するでもなく自嘲するでもなく。 野暮に堕しないのは良い。
濱野の前説のあと、メンバーを招き入れるが肝心の歌う順番を決めていない。 結局、立っていた順と言う事になり、出入り口に近いところに居た御坂ゆき乃から。
カラオケとは言え、一人々々を見る時間は長く、それなりに人となりも見えてくる。
御坂ゆき乃は度重なる機材トラブルなどありつつも、とりあへずは歌いおおせていた。
機材トラブルで出来てしまった「間」を埋める事までは出来ないが、動揺を表に出さないのは良い。
小室志織の撰んだ「フィンランド・ミラクル」に向田茉夏を思い出し、うろたえ取り乱す濱野智史(34)。
機材トラブルからの「繋げ」指示にUFOを見た話を始める高城。
ボソッと呟いた「出るかなぁ・・・」が下の音域の事だった牛島。
「濱野さん、嫌いでしたよね?」と渡り廊下走り隊から選曲する羽月。
上手いと褒めるほど上手くはないが、大きな声で自信たっぷりに歌うことで大物感を出す空井。
カラオケ以上になっていたのは石川、羽月、濱野(舞)、長瀬、柚木、牛島、小林、福田あたり。
福田のセットリスト構成力を褒める濱野。
先日の受験アイドルStudy☆Starsの自習イベントで濱野は「科目が違うだけで、国語も英語も数学も、問われるのは"論理的思考"」と語っていたが、「やりたい事」「出来る事」「求められている事」を勘案してその時その場所でやるべき曲を選ぶ能力も、やはり論理的思考に係ってくるのではなかろうか。
「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を撰んだ福田本人はそこまで深くは考えていなかったようだが、濱野が何故其れを良いと思ったのかについて、他のメンバーも含めて訊いておくと良いと思う。
この流れの中でトリを取る事になった石川の選曲は、ホワイトベリーの「夏祭り」。
「この曲で本当に良いのか?」と濱野。
これもセットリスト構成能力の話だけでなく、濱野と石川の「リーダーとしての責任」の捉え方の違いから出た遣り取りであったように思う。
石川の自分を殺してまで全体に尽くそうとするリーダーとしての在り方は、PIPの空気を自由にしない方向に働く危うさは有るにしても、自律的なリーダーと言うのも得がたいものであり、既にやっているとは思うが、考えていることを擦り合わせて行く必要はあるように感じられた。
今日も酷かったのが客のリズム感の無さ。 クラップケチャの悪影響だと思われるが、殆どの曲で手拍子が表拍で始まり、転調が入るとひっくり返ったり、また元に戻ったり。
表で打つ手拍子は、時としてオケの打楽器と喧嘩をしてリズムを取りにくくする弊害もあるのだけれど、それにも気付けない。
浴衣の(※一部甚兵衛)線香花火をやりつつツーショットチェキと言うアトラクションを導入し、「他に無いでしょう」と豪語する濱野。
アイドルに於いてありえないようなアレコレは、前世紀の段階で制服向上委員会がやってしまっていることが多く、下手に自慢すると車輪の再発見になりかねないが、顧客満足度とValue for Moneyを追求する姿勢は買える。
コラム的備忘録
リーダーとしての責任と自己犠牲
をアップロード。
開場前に現地へ。 並ぶともなく壁際に屯している感じだったが、人が増えるにつれて圧縮され、なんとなく二列に整列。 その間に先頭に居た若い衆の所へ後から来た仲間らしいのがなし崩し的に合流。 そろそろ客の自治ではどうにもならない状況になりつつあるのではないか。
それでも20人凸凹なので、揉めずに入場。
衣装をお願いしている人が見に来ているとかで、メンバーの人となりを見てもらうために何曲か。
急遽出演できることになってクリーニングに出しっぱなしのままの北川以外は全員浴衣。
さすがに踊りにくそうではあり、また和装に慣れていないとすぐに着崩れてしまうので、あちこちで軽い事故が起きていた。その辺りは着付けの心得のあるメンバーで修整。
ヘアアレンジに凝る者も多い中、敢えて垂れ髪にした御坂が異彩を放っていた。
MC大会と言うことで、いつものグループと重複しないよう濱野が選んで3~4人ずつのフリートーク。
空井の生ものとしての強さが際立つ。 静止画で見ると girl next door なのだけれど、目の当たりにするとそんじょそこらには居ない過剰さ。 常に何かしら考えているようなギラギラした瞳が細い目の奥にある。
古狸然とした羽月ののらりくらりとした喋りが楽しい。
喉を痛めた橋田は昨日以上のウィスパーヴォイス。 これが実にエモーショナルだった。
着付けの巧拙はあからさまに出ていて、浴衣と帯さえ持っていれば着られると思っている向きは裾もつんつるてんで、つんつるてんの浴衣を着ている連中は着崩れるのも早かった。 アインシュテュルツェンデ・ツンツルテン。
ワンポイントのお洒落で帯留めを付けていた御坂、橋田、工藤は理に適った着付け。 このあたりは生育環境に左右されてしまう部分なので、送り手の側が平均化する必要がある。
浴衣、帯以外の紐であったり大き目のバスタオルであったり、必要な小物を準備させて玄人が纏めて着付けるのが効率的。 プロの着付けの人でなくても、着物を着せなれた人なら良い。
石川も綺麗に着こなしてはいたが、帯の下に詰めるアンコが少ないので身体の線が出すぎて色気過多になっていたのは惜しかった。 もう少し清楚に見せた方が良い。
着物は職業によっても年齢によっても相応しい着こなし方が異なるので、そのあたりも含めて分かっている人が居ると間違いが少ない。 その点に於いても橋田と御坂は最適解に近かった。 工藤は着こなしは良かったが、浴衣を着るにしてはヘアアレンジが華美に過ぎた。
重大発表は10月の末でこの会議室が使えなくなるというお話。 ディアスポラの始まりである。
原因は客が何かをしでかしたと言うことではなく、騒音問題でもなく、メンバーの楽屋・練習場所としての会議室および化粧室の使い方があまりにも汚いと言う予想外の理由。 化粧室については、同フロアの女子社員から強硬なクレームがあったとの事。 女子の聖域を聖域として尊重して自主性に任せたのが裏目に出た形となった。
覆水は盆に返らざるものであるにしても、立つ鳥としての後始末はきちんとしていただきたい。
ここのところ、濱野の石川への当たりがきついような気がしていたのだけれど、リーダーとして求めていたものと、石川がリーダーとしてやろうとし、やっていたことの乖離があったのかもしれない。 MC大会でも、石川の盛り上げ方と濱野の考える其れの間にズレがあるように感じられた。
濱野と石川の遣り取りを見ていると、石川の側に「かくあるべし」と言う固定観念が強いように感じる。 濱野は考えに考えて導き出された答えを欲しており、定型文の回答には価値を見出さない。
濱野の職場の会議室はロハで借りられて交通至便で冷暖房完備。 よほど羽目を外さない限り苦情も来ないと言う、立ち上げ期には実に有り難いイベント会場だったのだけれど、一年持たずに石もて追われることになった。
現状で濱野が思いつくライブハウスで22人からのメンバーが出られるような所は無いとなると、出演者は絞らざるを得ず、賃貸料も掛かるので物販の還元率も下げざるを得ないし、入場料も取らねば成り立たなくなる。
現状で集客できているのは無料であるのが利いている訳で、外へ撃って出るにして、もう少し地力を付けたかったと濱野。
八月一杯で追い出されても文句の言えないところを頼み込んで得た猶予期間。 暫くは現状の公演が続けられるにしても、その間に次の拠点を見つけなければならないし、金の取れるコンテンツに仕立てねばならない訳であり、諸事多端の濱野にとっては頭の痛い出来事であろう。
しかし「劇場があって劇が演じられるのではない。劇が演じられると、劇場になるのである。」との寺山の言にもある通りで、神は祈らるるところに坐し、噺家も扇子と手拭いと座布団があればそこが高座、アイドルもまた然り。
交通至便で冷暖房完備などと言う都合の良い施設が見付かるとは限らないが、あばら家でも廃工場でも、志を持ってやっている限り、そこは劇場たり得ると私は思う。
盆休みにはなったもののやる気も起きず、外に出ようにも自棄糞な雨が降ったりしてウンザリしていたが、夕方になってカラリ晴れたので散歩がてら錦糸町へ。
セッティングの様子を見たかったので早めに出向いたら、仕事帰りに押っ取り刀で駆けつけたメンバーの入りに出くわす。
若干草臥れた勤め人然としていたのが、衣装に着替えて出てきたらしっかり舞台の上の人の貌になっていた。
このグループはアイドルとしては異端といってよい変わった成り立ちで、リーダーが楽曲の全てを作っている。 ライブでの曲出しもリーダーの操るノートパソコンからで、そこに効果音やキーボードでの煽りが適宜加えられてライブならではのグルーヴになる。
そこでセッティングから見ていたのだけれど、作業中は完全に裏方の顔。 てきぱき仕事をして音を確認し、修正指示を出しながらその先の作業を進める。
軽くリハーサルをして、ほぼ定時に開演。 新メンバーは途中から出るらしく、既存メンバー3人でスタート。
メインボーカルの erica は兎に角上手い。 その上手さが押し付けがましくないのも良い。 目を三角にして歌っていないので周囲に目配りするゆとりがある。
これ見よがしな所がなく、醒めた部分も残しつつ羽目も外せる。
もう一人のボーカルである NAOMi は、兎に角細い。 手足が心配になるくらい細いが、顔色は悪くないので体調が悪いということではないと思われるが、それにしても細い。
リーダーは曲中もコンピューターで微調整し、効果音を叩き込み、キーボードで煽り、コーラスを入れ、踊り、スタッフに指示も出す八面六臂。
裏方の顔と舞台の上の人の貌が目まぐるしく入れ替わるのが面白い。
新メンバー Azumi はまだ一寸硬いが、このメンバーの中に居れば厭でもほぐれてくるだろう。
この八月一杯でエレクトリックリボンも含めた凡ての芸能活動から足を洗う NAOMi はインストアライブも残り少ないからか目を潤ませる場面もあったが、そこは堪えて笑顔で終演。
メンバーにトラックメイカーが居るというのは矢張り強みで、オケをただ流すのではなく、その時々の状況に合わせてオカズを入れたり煽ったり、生ならではの演出も出来る。
大人が音楽活動をする方便としてやっているアイドルなのであるが、凡百の専業アイドルより余程アイドルとしての自分を全うしている。
あまり早く行くのも野暮だがリハーサルも見ておきたい。 そう言う下衆な思惑が裏目に出て、開演30分前に着いたらちょうどリハーサルが終わった所で且つ寿司詰め。 それでもまぁ見えないことも無い位置を確保。
早々に店舗スタッフからお膝送りのお願い。 開演を待つ間にも人は増え続け、振り返ると奥まで人、人、人。
RYUTistのマネージャーA氏(a.k.a 天の声)の縄文人化が著しく進行していたり、振り付けの未来先生が人妻の色気を放っていたりするのを観察しているうちに時間となり、時報のの出囃子に乗ってメンバーが登場。
「Wind Chime!〜街のトンネル〜」からスタート。 客が沸くような曲ではないのだけれど、一曲演っただけで室温が上がる。
入れる必然性の無いところで脊髄反射的にmixを入れようとしたのが尻すぼみになったのが象徴的だったが、客の側が演者にちょっかいを出すような振る舞いは自然に淘汰され、目に見えて沸騰はしないがふつふつと煮えるような盛り上がりがそこにはある。
「Beat Goes On!~約束の場所~」から「ラリリレル」と畳み掛けて、鳴り止まぬ拍手の中終演。
「ラリリレル」を聴くと時空が歪み、金曜の夜なのに日曜の夕方のような切なさが胸に去来する。
しみじみと帰宅。
嚢中も寂しくなってきたので家に篭ってボーっとしようかとも思っていたのだけれど、昨日の興奮冷めやらず、そぞろ神のものに憑きてふらふらと渋谷へ。
12時過ぎに当日券を購うと整理番号は既に280を超えていた。 私の後からも陸続と入っていたので、有料入場者は優に300を超えていたのではないかと思われる。
流石に殆ど見えないので、「見える」より「快適」を採って空調の下の壁際へ。
一番上背のある乃々子さんでも首から上くらいしか見えないけれど、モニターである程度の状況は把握できるし、重低音に身体の芯から揺さぶられつつ音の波にたゆたえるのは現場ならでは。
その日その時その場に居合わせて初めて共有できる何か、共有できる喜び。
一曲目の「Zero and Perfect Moon ~変わらない想い~」は新潟でのライブでしかやっていなかったのではないかと友人が話していたが、曲が始まるたびに客が唸ったりどよめいたりする。 「哲学するのだ」から始まって終わるメドレー、「若者のすべて」でしんみりさせておいて「チュララ」で柔らかく浮揚させる繋ぎ etc... 練りに練られた選曲。
「チュララ」は聴き込むと味わいの増す佳曲なのだけれどリズムが複雑で、他所から定型の盛り上げツールを持ち込んで嵌め込もうとしても噛み合わない。 そう言うものを無理に使う必要はそもそも無くて、曲の中に散りばめられたヒントを読み解けば振る舞いの最適解も自然に得られる。
その点では客の側も試されていると言える。
アンコールは「Wind Chime!〜街のトンネル〜」「Beat Goes On!~約束の場所~」から「ラリリレル」。
「Beat Goes On!~約束の場所~」を歌い終えての拍手は将に万雷。
四つ打ちの魔法を振り掛けられ、五割増し幸せな気分で帰宅。
受験アイドルStudy☆stars projectの自習イベントの為、竹橋へ。
案内には「1b出口直結」と書いてあったが文字通りの直結で、改札を出た所にビルの入り口があり、そこから会場であるマイナビスペースへ。
まずイベントの説明があり、1コマ1時間の自習と休憩が繰り返される。 自習は計4コマで、最後に特典会。
その時々で借りられる部屋は異なるそうだが、今日は一番奥の広い部屋。 南面と北面は天井から床までガラス窓。 北側は殺風景な高速道路だが、南側はお濠を隔てて平川門。 皇居の緑が目に優しい。
メンバーは教壇の上に設えられた机に向かい、こちらに背を向けて自習。 椅子の背もたれに名前が大書してある。 我々はその背中を見るでもなくも無いでもなく自習。
「自習」と言っても受験勉強をしなければならないわけではなく、或る者は読書し、或る者はメンバーと同じ小論文の課題に挑み、私はと言えば溜まりに溜まったグラビアレビューなど。
ボールペンをノックする音、ページを繰る音、筆記音がかすかに聞えるくらいの静寂。 適度に効いた空調。 容積が大きいので二酸化炭素濃度もさほど上がらず、書き物が捗る捗る。
物販で幾らか使っても自習室を借りるより喫茶店に居座るより、自室で煩悩を刺激するアレコレに囲まれるより、遥かに集中できる環境。
長めに取られた昼休憩の後、ミニライブとミニ特典会。
イベントの性格上、騒いで盛り上がりたい向きにはお奨めできないが、読むのも書くのも考えるのも驚くほど捗るので、締め切り前の物書き連中などには特にオススメ。
今回の副題は「PIPのエースもかろんが沖縄帰省中で不在だけど頑張るぞ!いよいよPIPポロシャツ販売も開始!新曲というか初オリ曲に関する発表もあるかも!?」。
沖縄に帰省中の柚木が不在と言う事もあってか、大胆に組み替えられたセットリスト。
いつもは端に寄せてある教卓がプロジェクターの下に置いてあるのを訝しく思っていたが、暗転してイントロが掛かるとコスプレめいた和装の空井が飛び出してきて「檄!帝国華撃団」からスタート。 サイズがまったく合っておらず、胸元がはだけて危うい場面もありつつ、零れるものも無かったようで大過なく。 喩え茶番でも遣り切る空井。
20分教卓の中に着物で隠れていたので汗だくだと息せき切って語る空井。 さながら「青菜」の植木屋のかみさん。
うーん、弁慶にしておけ。
そのまま空井、北川、牛島、永瀬で「ひまわり」。
北川はこの曲も含めて様々な場面で登場。 上手くは無いが兎に角遣り切る姿勢は買える。 これは空井もそうだし、御坂や永瀬などもそう。 濱野の薫陶が効いているのではないかと思う。
その濱野、なんとパタゴニアのティーシャツを新調していた。
石川は今日も大胆な丈のミニスカート。 黒のニーハイに黒の厚底スニーカーを合わせて脚を細く長く見せようと言う戦術。
戦術としては悪くないのだけれど、石川は「目に見える部分」を整える方に神経を使いすぎているようにも見える。 戦術があって戦略に欠けると言うか。
プロデューサーとしての濱野は客から見えにくい部分での振る舞いを改善させようとしているように感じられるが、そこで客から見える部分を整えようとすると、どうしても衝突はする。 その折り合いを何処でどう付けて行くか。
各チームごとに歌ってから自己紹介とお題トークと言う流れだったのだけれど、これの段取りが周知されておらず、チームごとに違ってしまっていたり、間延びするし時間も掛かる平安時代型の名乗りを始めてしまって濱野に止められたり。
濱野はマイクを持って介入するのを極力控えるようにしているらしく、ミキサー卓の前でうずうずしているのも視界には入っていたが、それでも最低限の介入に留めていた。 その親心をメンバーがどこまで汲み取れているか。
頭にひまわりの髪飾りをつけた小室は「頭に花が咲いてしまった」かのようにすら見えたのだけれど、歌って踊っての部分では愚直。 手抜きが無い。
御坂が珍しくユニットとソロで登場。 うろ覚えの部分もあり、決して上手くは無いのだけれど動きの端々に出る日本舞踊の素養が面白い。 スーっと動いてピタリと止まり、軸がぶれない。
入り捌けは大分スムーズになってきた。 羽月・濱野(舞)は前の出番の連中が手持ちマイクで歌っている間にスタンドの高さと角度を調整するなど、客の目に触れにくい部分でもきちんと仕事をしている。 これが波及していくと良いのだけれど、優先順位として後回しにされがち。
「Hello,Again~昔からある場所~」は橋田が担当。 驚いたのは客の手拍子が裏で揃ったこと。 まぁヨレヨレのppphを入れるようなのも居たのだけれど、そう言う手合いは間の悪いmixを入れたがり、ハンドクラップのストロークも長いのでリズムも取れない。 カスタネットの練習からやり直した方が良い。
閑話休題、橋田の歌の話。 先週はウィスパーすぎる掠れ声でどうなるかと思ったが、今週は歌えるまでに回復。 小林と同じ系統で、切々(訥々)と歌う。
アンコールの「初恋サイダー」は羽月・濱野(舞)と小林。 音のとりにくいオケらしく、歌は上手いメンバーが歌っても、何故か外れる。 外れると言うか、ずれる。
オケの音量としては十分出ているので、打楽器の音(リズム)が取りにくいのであろう。
今回から物販にポロシャツが導入された。 生地は薄く、裏をめくると洗濯の際の禁忌も幾つか書かれているのだけれど、下手なティーシャツよりは選択耐性もあるだろうし、他所のファンとの差別化も図れる妙策。
シンプルな白のティーシャツにお馴染みのロゴが入っているだけなので、懐に余裕のある向きにはラルフ・ローレンかどこかの生地の厚い(高い)のを買って刺繍でロゴを入れる富豪プレイをオススメする。
ざっくりと散文的に。
今回の副題は「久々のPIP定期公演は、高城桃花・御坂ゆき乃の合同生誕祭!夏休みの最後に会議室で沸くしか!」
贔屓の生誕公演と言う事で進物など仕込みつつ、いつもの「踊る会議室」へ。
こう言うときは銀座と言う立地が有り難い。
並び並ばせるのにも慣れてきて、恙無く整列→入場。
出囃子からメンバー入場。 会議室の時計はここ数ヶ月5分遅れのままだ、濱野の手元の時計で進行している様だ。
生誕公演と言う事で出番もやる事も盛りだくさんなのであろう。 御坂の挙動が如何にも怪しく、さながら操り三番叟。
それでも糸が絡まるような事も無く、動きも徐々にほぐれて大過なく。
とっ散らかることもあるが、おどおどした所は無くなって来た。
さらに怪しく、衛星中継でディレイが掛かっているかのようなズレで踊っているのが居て、よくよく見たら山下緑だった。
立ったまま踊るだけで四苦八苦していたのが、ついにここ迄来た。
石川が髪色を暗くしていた。 リーダーとしての決意の表れであろうか、前に出て仕切るより、俯瞰してフォローする場面が増えた。
小林が2006年式板野友美のような、自動空戦フラップ付きの髪型。 高い位置の二つ縛りが動くたびに撥ねて目を惹く。
北川に良い変化。 やるべき事はきっちりやった上で楽しめている。 自信が持てるようになった故の事であろう。
濱野智史の投資はインフラから衣装に移行。 誂える程の贅沢はしていないのでサイズが合っていないものも有るが、曲のイメージに沿ったものにはなっているし、センスは悪くない。
濱野本人は例によってティーシャツにバミューダ、無精髭に寝癖という出で立ちではありつつ、着た切り雀だったパタゴニアティーシャツではなく、沖縄で入手したと思われる別のティーシャツに変わっていた。
自分の客を認識し始めたのと、歌い踊る中で客席を見るゆとりが出てきたのとで、釣った魚への餌付けが始まった。
これに囚われ過ぎると客席を大掴みで見られなくなるので注意が必要なのだけれど、PIPには舞台監督としての視点を持つスタッフが居ないのが危うい。
柚木は評価が高い割に三味弾いてやがる感が鼻に付いて碌すっぽ見ないで来たのだけれど、周りのレベルが上がってきたり外部イベントで格上と当たったりしたのが刺激になったのか、目の色が変わってきた。
さらりと踊っているのだけれど、割と踊れているメンバーでも鎧袖一触にするシームレスな動きと切れ。
客席を見渡しても目配りの三点バースト。 流さず一寸ずつ止めて客を確実に仕留めて行く。
柚木は鮎は鮎でも琵琶湖の鮎で、外に出さないと大きくならない。 どんどん外部イベントやライブに出して格上にぶつけて欲しい。
帰省していた柚木と乗り込んだ橋田・福田と自腹切って連れて行った濱野とで沖縄の話しで繋いでから生誕企画へ。
御坂は「ラッパ練習中」、早い動きではあたふたするところもあるが、表情には出さない。
息継ぎにもあやうさがあるが、こちらも表情には出ない。得体の知れない大物感。 鳳雛。
高城は危なげなく「夜風のしわざ」。 きっちり歌い切って聴かせる。
運び込まれたケーキの蝋燭の火を吹き消させるのは定石通りだが、PIPはここからが違う。
メンバーが一と匙ずつ掬って食べさせて行く。
主役の二人でもう一曲歌ったあとは通常公演に戻り、空井・濱野・羽月で一曲ずつ。
難しい曲だったので不安そうに出てきたところは猫背のタヌキ然としていた羽月だったが、歌い始めると背筋もシャンとして貶す所の無い歌いっぷり。
オケの音量にマイク音量が負けてしまうバランスの悪さは気になったが、ハウリングの収束は大分早くなってきた。
ただ、モニタースピーカーが無い事によるトラブルは散見され、マイクが入っていない事に気付かなかったり、オケの音を取り損ねたり。
終演後は「追加発注したポロシャツが届いていない」との事で、2ショットチェキ会のみ開催。 最初期の時間と体験を換金する種のアトラクションは無くなったが、客の求めているものと提供できるものを勘案してこうなったのだと思われる。
前回までの反省を踏まえ、システムを変えて流れを良くしていた。
まだまだこんなものでは無いと思うが、柚木の凄みが垣間見られたのは収穫だった。
本人は手を抜いているとは思っていないのだと思う。 周辺状況が柚木の尻に火を付けつつある。