寝て起きて気が付いたら予約フォームは既に公開されており、慌てて申し込んだが後の祭りで81番。
例によって予約するだけして来ない手合いと立ち見の良い場所を取ろうとする人々のお陰で椅子にはありつけた。
立ち見も含め、ほぼ大入りの盛況。 葬式でも賑やかな方が救いがある。
前半のバラエティ番組部分は、後半のライブに時間を割きたいとの事で短く30分。
メンバーには「PIP年表クイズ」と言ってあったようだが、蓋を開けてみると例によって差し替え。 「クイズ卒業メンバーに聞きました」で澤村、高城、福田が登場。
福田は落ち着きが増し、澤村と高城は磨きが掛かっていた。
濱野智史が一筋縄では行かない連中しか採っていない事もあり、辞めた連中の書く「答え」もメンバーの想像して当てに行く「答え」もなかなかの物で、最後だと言うのも忘れて笑わせて貰った。
ネタの爆発力は意図したものもしないものも小室が頭抜けて凄いのだけれど、滑った後の石川の受け身のうまさが光る。
そして瑞野の「常識的対応」の完璧さ。
これがあるので他の連中もボケやすいし与太も飛ばしやすい。
後半はライブ。 開演前の影アナは全員で。 休演が予め発表されていた豊栄を含む六人の卒業公演と言う位置付け。
山下の出演は「未定」となっていたが結局最後まで現れず。
この「未定」と言うのも連絡が取れずに未定になった訳ではなく、出演の可否を訊ねたところ山下から「未定としておいて欲しい」と頼まれた由。
山下は自分の中では理屈として通っているのだとは思うが、それを他のメンバーと擦り合わせる努力を客の目に触れる形では全くと言って良いくらいしておらず、今回が実質的にPIPとして開催する最後のイベントとなるにも関わらず「残る人」としての最後の説明の場も放棄してしまった。
影アナの段階で既に何かを刺激されてしまったのか意味の汲み取れない奇声を発して騒ぎ始める客もちらほら。
こうした「高まり無罪」系の客の何割かは物販に於ける接触が主目的であり、それ以外のすべてを弁当幕扱いしてしまう。
ライブは無料にして客が金を落とす機会を接触営業に集約してしまった事が客民度を下げた事は否めないし、多種多様な趣味嗜好の客の棲み分けを図ろうとした試みによって一定の治安は保たれたにせよ、根本的な部分では失敗であったと思う。
濱野智史がこれについてどう考えているのか知りたくはあるが、そう言う機会ももう無いのだろう。
「Baby! Baby! Baby!」→「アーモンドクロワッサン計画」→「禁断のカルマ」
2014年6月15日に田町のSHIBAURA HOUSEで行われたお披露目の日に初めて客前で演った曲を演った順に。
あの日の3曲はなんとかみられる物に仕立ててきた感じであったが、一年有半を経て、きちんと見世物になっていた。
「ハート型ウィルス」(小室・石川・瑞野)
この曲の為に色違いのタンバリンを三つ買っていたと記憶しているが、今日は使われず。
「てもでもの涙」(濱野・空井)
体調不良で休演することが多く、出演できても体調が万全ではないこともまま有った濱野。
歌で金の取れる連中が軒並み辞めてしまう中、伍して歌える面子も限られてしまい、ユニットコーナーでの出番も少なくなってしまっていたが、最後の最後でたっぷり聴く事が出来た。
全員出てきて「RUN RUN RUN」から間繋ぎMC。
調子の悪いマイクを交換していたが、専門のライブハウスでは無いところは割り引くにしても、レベルを上げていないだけなのか死んでいるのか判断が遅い。
「誘惑のハートビート」
四つ打ちの佳曲。 なぜこっちを音源化しなかったのか理解に苦しむ。
濱野舞衣香がこの曲に手古摺りつつ歌いこなして行く過程を見ていられたのはPIP: Platonics Idol Platformを見に来ていて良かった事の一つ。
「選ばれたから」
オケを魔改造して5人分の二番の歌詞のみで再構築した特別篇。
歌えども歌えども終わらず、さながら鉄道唱歌。
「きっとぐっとサマーデイズ」
歌いっぱなしても息が上がらなくなった。
泣いたり笑ったり忙しい小室。 将に「今泣いた烏」。
「PIP Move On!」
この曲の昭和19年頃の軍歌のような空元気には全く感情が揺さぶられないままだった。
PIP: Platonics Idol Platform のオリジナル曲も好きなものからそうでないものまで色々有ったが、「駄曲」と切って捨てられるのはこの曲のみ。
「僕を信じて」
「桜のまた咲く日まで」
濱野智史は信じられないし、PIP: Platonics Idol Platformも桜が咲く季節を前にして瓦解してしまった。
最後の曲を歌い終え、一礼して去る。
裏に引っ込むや否や嗚咽とも悲鳴とも嘆息ともつかぬ声が響く。 小室志織だった。
「10年桜」
「最後なのでメンバーの名前でお願いします」的な予定調和のアンコールの後、初期衣装を模した紺ポロシャツをで出てくる5人。 本当はこれと一緒にしつらえたメンバーの名前入りタオルを持って出てくる筈だったようだが、見事に忘れていた。
先月の定期公演ではリーダーの石川からの発表のみであったので、改めてそれぞれから辞めるに至った経緯や今後など。
元々裏方志望であった、と瑞野。
舞台の上と下、表と裏の両方を知っている裏方と言うのは実に貴重な人材であり、石橋のイベントの裏方でも何でもサークルではなく金銭の動く仕事としての現場に潜り込んで欲しい。
舞台に立った経験に裏打ちされた聡明さと謙虚さは、必ず役に立つと思う。
空井は内定を蹴ってPIP: Platonics Idol Platformに入った訳であるが、就職した同期には何をやっているのか話す気にならない時期が長かったとのこと。
CDを出して漸くと言うから、PIP: Platonics Idol Platformとして活動したほぼ全てが鬱屈期であった事になる。
今後どうするかは未定であるとの事だが、喋る仕事は向いていると思う。
小室は嗚咽交じりと言うかほぼ嗚咽で何を言っているのかよく分からない大平正芳の答弁のような感じ。
・辞めたくはなかった
・アイドルは続ける
・今後の事は決まっていない
・違う場所に行ってもよろしくお願いします
大意を汲むとこんな感じ。
濱野舞衣香は休演が多かった事について自虐的に。
「健康になりたい」「長生きしたい」
今後も何かしら活動はしていきたい由。
石川はもうすぐ映画の撮影が始まるが、仕事で地元に帰れるようになる迄、まだまだ頑張るとのこと。
山下以外全員卒業により、PIP: Platonics Idol Platformが事実上の瓦解に至った経緯については、傷つく人が居るかも知れないとのことで多くは語らず。
これはまぁ仕方がない。
説明はなされるべきだと思うが、それは石川の仕事ではない。
「タンポポの決心」で〆。
長いようで短く、短いようで長いPIP: Platonics Idol Platformの一年有半が終わった。
山下が残る形になるのでPIP: Platonics Idol Platformが消えて無くなる訳ではないが、歌って踊る部分は覚束無い、運営業務も担っていない、グループどころかセルフプロデュースも出来ていない人に何が出来るのかは考えなくても判る。
改めて何かが始まるにしても、これまでのPIP: Platonics Idol Platformとは全く別のものにはなるであろう。
ここのところ宵っ張りで起きられなかったり、顔付けに魅力を感じなかったりして足が向かなかった朝練講談会であったが、久々に聴き応えのありそうな会だったので早起きをしてみた。
9:15開場だが、早く着きすぎてしまい9:00過ぎに日本橋亭へ。
既に5~6人が開場待ち。
「楠屋 義士勢揃い」 一龍斎貞弥
「動員が必要な会がある」とかで告知から入って、しかもそれが長いときて一寸ダレたが、媚びるようなところは無いので鼻に付かないのは良い。
場面展開で張り扇を使う際、静かにパタリとやるのが口調に合っている。
大島だったろうか、華美でない装いにも好感。
「CCN25周年物語」 田辺鶴遊
岐阜のケーブルテレビ局の25周年で頼まれたという新作。
本邦放送の父である後藤新平と板垣退助の縁から語り起こす、地方ケーブル局の社史とは思えないスケールの大きな話。
創業時の貧乏臭い逸話なども織り込みつつ、聴く者を飽きさせない一鶴門下らしい一席。
講談の会と言うのは平日の早い時間から始まるのが殆どで、働いていると中々行く機会がないのだけれど、この会は若手中心乍ら日曜の朝に定期で開いてくれているので実に有り難い。
日本橋亭を出て、さてどうするかと思案しながらツイッターを開いてみると、Chelipの出る渋谷のイベントに間に合いそうだったので三越前から銀座線で渋谷へ。
会場のチェルシーホテルは初めて行く箱だったので少々迷ったが、何の事は無いテイクオフセブンの入っていたビルの地下であった。
入ると遠藤麻生の出番が佳境に入ったところ。 恋するBeatが30分演ってから目当てのChelip。
主催が中村綾(ex.ミラクルマーチ)と鈴木花純(テレジア)なのに実質的なトリがChelipなのは、元々この日のイベントはChelipの主催だったところが運営主体の変更などもあって白紙になってしまい、付き合いの深い二人(と裏方)が代わりに打ったライブであり、且つ新規蒔き直しとなったChelipの壮行会のような意味合いもあったようだ。
セットリストを組んだり、それに合わせて2~3曲ずつ繋いだオケを作ったり、藤井美音の裏方仕事の確実さに唸る。
井次麻友と言う神の恩寵を賜るために、舞台上で楽しく歌い踊れる環境を整え、横から下から支えつつ、客を楽しませて自らも楽しむ。
セルフプロデュースになった事で、それまでに入っていた仕事は一度白紙になってしまったそうで、そこで言葉を詰まらせる場面もあったが、努めて明るく前向きには振る舞っていたし、多少は危惧していた送り手としての質の低下も見られなかった。
音源制作などで越えなければならない山もあるとは思うが、越えて行こうとする覚悟は見て取れた。
開場時間に合わせてモエファーレへ。 覚悟はしていたもののなかなかの民度であり、屯した客で路地は塞がり、路上喫煙防止条例のある千代田区内ながらそこかしこから立ちのぼる紫煙。 携帯灰皿を持ち歩かない向きも多い。
多少の遅延は有りつつも開場。
消防法的に大丈夫なのか心配になる入り組んだ細い通路と階段を抜けて中へ入ると、ライブハウスとしてのスペースはそれなりに取られているが、物販を行える余地はほぼ無いに等しい。
見るものを見たら早々に退散する覚悟を決めて開演待ち。
ミルクセーキ
遠征に帯同できなかったメンバーが二人居たようだが、新メンバーを連れてきていた。
これがまた実に初々しい。
前回見たときは刈り揃えられて整った印象のあった振り付けは練度の差などもあってか再び独自解釈が進んでいたが、客とのやり取りに重心を移し、揃えることは程々にしてその場の盛り上がりを大切にしているように感じられた。
これが「いつもの客」だけを相手にした近視眼的なものだとあまり宜しくないのだけれど、会場全体を巻き込む事は忘れておらず、いつもの客ではない私も十分楽しめた。
出番が終わった後、通路で物販と言う事になっていたが、入る客出る客がっつく客で混沌を極めていたので、音源のみ購入して退散。
出来る事なら金を貰っても二度と足を踏み入れたくないイベントであった。
朝八時に家を出て三越前の駅に着くのが九時前、軽く手繰ってから福徳稲荷に詣でて日本橋亭へ。
顔付けからして出足は早そうだったのだけれど、予想以上の客足で開場前に既に30人から並んでいる。
満員とは行かないがほぼ一杯の入り。
「海軍カレーの父 高木兼寛」神田真紅
発声に少々無理があり、低い声を出そうとして喉を絞め過ぎているのが疵だが、演技過剰になっていないのは良い。
二つ目になってSNSを始められるようになり、食べ歩きの写真を投稿するのが趣味になったと言う話からカレーどら焼きを食べた話、そして本編へ綺麗に繋がる構成に唸る。
気になったのは軍の階級が把握出来ていない事。 兵、下士官、士官の別がついておらずあやふや。
詳述する必要は無いのだけれど、「判ってますよ」と言うのは仄めかしておいた方が良い。
海軍の脚気対策の手柄を全部高木に持って行くのは正確では無いと思うのだけれど講談なのでそのあたりの脚色は許容範囲か。
「大岡政談 村井長庵」から「雨の裏田圃」神田松之丞
見巧者の知己が揃って嵌まっているので興味はあったのだけれど、漸く観る機会に恵まれた。
顔が大きく、首から上がぐいと迫り出した写楽の役者絵のような容貌。
松鯉先生の口調の名残は感じられつつ、猥雑で胡散臭く、色気がある。
師匠である松鯉先生が食って行くために編み出した「ビジネス講談」的な物とは逆の芸になっているのが先ず面白い。
ホームページが出来た話、渋谷らくごの話など、マクラは面白いのだけれど、本編に入るとガラリと変わる。
目先の笑いは取りに行かず、ピカレスクロマンを聴かせることに徹する。
そうそう、これこれ。 これなのである。 笑わせるだけが話芸ではなく、聴かせる芸。
楽しいと言うか、愉しい。
陰惨なうえにも陰惨な話なのだけれど、後味は悪くない。
浅草橋駅西口にほど近いギャラリードレインで開催されている写真展を見てきた。
鎌田紘子Presentsだが、撮影はすべて黒澤奨平。
エンピツビルの三階にあるギャラリーで、一階から真っ直ぐ伸びた、擦れ違うのにも難渋するような細い階段を昇って行くのだけれど、こちらが昇り切ろうかと言う頃合いで「微笑みデブ」みたいなのが無頓着に降り始める。
客筋はそういうところに在り、写真そのものより写っている人にのみ興味のある向きが中心。
肌色の水着的な何かを着用した上から紗と言うか絽と言うか、透けた生地を羽織っている。
カラーコンタクト着用、肌のレタッチは強目。 分かりにくく書くと「写真見世」のような感じで、可愛らしくない写真は一枚も無いが、人物写真としての面白味は薄い。
見応えがあるのは構図の妙。 癖のある顔、地味な顔でも、可愛らしく見える角度を探して撮っている。
それでいて自撮り的な決まり切った角度だけで凝り固まった窮屈さも無い。
見に来ている客には全く伝わっていないと思われるが、巧い。
昨日のあれは何だったんだと言う感じの平和な開場待ち。
開場前はぱらぱらと云う感じであったが、開演までにはそれなりに埋まった。
「寛政力士伝 小田原遺恨相撲」宝井梅湯
漁師上がりのならず者である荒岩の腕を雷電が閂で圧し折ってしまうと言う凄惨な場面もあるのだけれど、温和な口調もあってめでたしめでたしで終わる。
のんびり見られて、程よく面白くて草臥れない。 こう言う芸も良いと思うのである。
「金比羅利生記 金比羅船」一龍斎貞橘
枕から本編に入っても脱線と余計な入れ事が入って、肝心なところを忘れてしまうようなぞろっぺえなところもあるのだけれど、締めるべきところは背筋を伸ばしてきっちり締めてくる。
梅湯さんは「良い人の良い講談」、貞橘先生は「胡散臭い人の胡散臭い講談」 。
昨日今日ではっきり判ってきたのは、私が欲するのは「胡散臭い人の胡散臭い講談」であると言うこと。
そうならざるを得なかったというのは有りそうだが、ネット上に落っこちてる講釈も「軍記物」「忠臣蔵」「偉人伝的新作」が多く、「感心」「感動」「笑い」ばかりで、猥雑・陰惨なものは見かけない。
これは落語でもそうなのだけれど、救いのない話でも良い演目はある。
探して拾って観て歩きたいと思う。
貞橘先生、来週の朝練講談会にも出演。
一度は観ておきたかったので原宿へ。 まぁ、それで秋葉原でも木乃伊取りが木乃伊になった訳であるがそれはさておき。
事務所の入っているビルの上の階なので、飛んだり跳ねたり多少暴れても文句は出ないと言う事のようだ。
もっとも文句が有っても言いやすい事務所ではないが。
天井や壁に吸音材は貼ってあるが、アリバイ的なものであろう。
その代わり音響や照明には手間も金も掛かっている。
内張りを剥がしたところで天井は低く、舞台は10cmくらいの高さ。
幅も奥行きも取れない代わりにランウェイと言うか出舞台と言うかを設えてある。
それでも上背のあるメンバーは梁に手がぶつかりそうになっていたくらいで、天井そのものが低い。
こんな感じの舞台を取り囲むような客席は、少々高めの座面の椅子を床に螺子で固定。
入口に同じデザインの椅子が積んであったので、多少は増減させる事が出来るものと思われる。
椅子には番号が振って有って、座席指定チケットにはなっているものの、客の間で融通するのは黙認されているようで、座りたい場所がある客は交渉次第ではあるが、目的を達しているように見て取れた。
身の回りの連中の中ではTPD(旧)の客が食いついたので、そっち方面の偏差値とプライド高めの面倒臭い客が主流なのかと思いきやそうでもなく、屋内では帽子は取るものと言う常識を持ち合わせていない手合いが片手に余ったところから考えて、少なくとも偏差値は低そう。
開演時間が迫り、スタッフから携帯電話やタブレットの電源を切るようお願い。
それとは別にメンバーの影アナで注意事項など。
影アナで印象に残った言葉としては「ショー」「ご鑑賞」。
何を提供しようとしているかが読み取れる。
CD発売に伴い、リリースイベントで4チーム中2チームが不在。 留守部隊による公演。
自社楽曲遺産を上手く使った構成だが、その分古さも感じる。
喋る際には生きているマイクも、歌う段になると切られているのか被せが強いのかほぼ生歌感は無い。
それでも歌おうとする意志は感じられて、手抜きとしての口パクではないのが視覚的にも分かる。
自己紹介やらファッションショーやらで花道に出てきてぐるぐる回る場面があるのだけれど、幕内土俵入りの緩い顔見世感が楽しい。
販売されているグッズ類は、メンバーの名前入りTシャツやタオルなど、客の側が忠誠心を示すためのものが多く、メンバーの方もそれに合わせて餌をやったりやらなかったり。
フリの客としてただ見ているだけでもそれなりに楽しくはあるのだけれど、通っている客の多くは曲に合わせて踊り、棒状の光るものを振り、メンバーの名前入りのTシャツを着て名前入りのタオルを掲げて忠誠心を示し、それによって餌を貰ったり貰わなかったりする遣り取りに興じており、ショーの構成もシアターの構造も、そうした楽しみ方に即して作られているように感じた。
花道を挟んで客同士が向かい合う形になるので、相互監視下にあって横車は押しにくいが慣れあいはし易く、集団の中の個人としての振る舞いに長けていればより楽しめるだろう。
私向きでは無いだろうと思っていたが、面白くはあった。
ただ、即物的な楽しみ方(楽しませ方)に寄せすぎている観はあり、或る程度出来上がった物を出して来ていることもあって咀嚼し解釈する愉しみ方には向いていない。
要するに私向きではない。
スイス人傭兵部隊みたいなピンクダイヤモンドと、ランツクネヒトみたいな原宿乙女。
ピンクダイヤモンドの「近代化改修した岡部マリ」と言うか「ノックダウン生産したオリビア・ラフキン」みたいな子がなかなか良く、原宿乙女では「装甲を厚くして突撃砲に改装したマルシア」みたいな人が異彩を放っていた。
こうなるとリリースイベント中のチームも見たくなるもので、知己に手引きしてもらって池袋。
会場は東京総合美容専門学校7Fホール。 こういう箱をよく見つけたものだと思うが、学校だから長期休暇中なら借りやすく、廉価でもあるのだと思う。
客席前方は着席観覧、後方に立ち見の区画を設けていた。
音響は簡素な持ち込み機材で、照明も申し訳程度のものなのだけれど、舞台が高いのでどこに座っても(立っても)舞台全体が見渡せる。
ふわふわ
先に登場して2曲。
練度は高くないが兎に角ありとあらゆる種類の「かわいい」が詰め込まれている。 「かわいい」の飽和攻撃。 呆れるほかない。
蝶よ花よとちやほやばかりはしてくれない事務所ではある訳で、楽しいばかりではない日々の中で、どこ迄やる気を維持させることが出来るか。
大衆に見つかるまでどうにか出来れば、売れるのではないかと思う。
原駅ステージA
叩き上げである。 本来の感情と全く関係のない表情を、作り、維持しながら歌って踊れる地力がある。
高いレベルで安定していてブレが無いことは、時として生ものとしての魅力を削いでしまうことにもなるのだけれど、その辺りは本人たちも分かっているようで、ゆとりが持てる部分では客を煽りに行ったり動きにオカズを入れたりして、その日その時のそのライブでしか味わえないものを出せている。
恐らくはカイロスの前髪をすんでのところで掴み損ねてきた悔恨を、一回々々の仕事を遣り切る力にしているのだと思う。
執拗なまでに多種多様な美形を集めた原宿駅前パーティーズ。
既視感の正体は銀座「白いばら」の「47都道府県から女の子集めました」システムであった。
原駅ステージA・・・第1SS装甲師団
ふわふわ・・・イエニチェリ
原宿乙女・・・ランツクネヒトもしくはフランス外人部隊
ピンクダイヤモンド・・・スイス人傭兵部隊
ライジングが多種多様な美形を揃えて、客を皆殺しに来ているのはよく判った。
余程のグルメでもない限り、自分に合った躓きの石は見つかる。
サンストリートも今月限りと言う事で、ここでリリースイベントを打ってきたところが名残を惜しむようにスケジュールを入れて来ている。
callmeのリリースイベントは発売日が閉所後と言う事で、引き渡しが近隣店舗になると言う変則的なもの。
それでもやろうと言う義理堅さもこの三人らしい。
時間にはゆとりをもって出掛けた筈だったのであるが、何時からか始まっていた歩行者天国の余波でバスが遅れに遅れ、着いた頃には四時を回っていたが、準備も遅れていたと見えて丁度リハーサルが終わるところ。
一旦引っ込んで定刻より少し遅れて開演。
楽曲資産がゼロになったところからの新規蒔き直しでキラーチューンがまだ無いのが辛いところではあるが、聞くに堪えない曲もなく、芯になる曲が出来れば構成も楽になるだろう。
振り付けで頑張り過ぎるスクール出身アイドルの悪癖を危惧していたのだけれど、半分当たっていて半分は外れていた。
矢張り動きの難易度や正確さに重きを置きすぎるところはあって、体系の嫋やかさまで損なわれていたりもしたが、三人三様違った振り付けで動きのタイミングのみを合わせてみたり、判りにくくはありつつも遊び心は感じられたし、激しい動きの中でも歌を届けようとする姿勢は感じられた。
秋元瑠海の歌が、嫌味無く上手くなっている。 これは核に成り得るのではないか。
ほっとする歌声。
動画で見ただけでは、本当のところは矢張り判らない。
この三人は、また生で観たい。
らくごカフェにはビルの裏から回らなきゃいけないのを忘れていて上がって降りてまた上がる。
「熊田甚五兵衛」田辺いちか
落ち着いた口調、作り過ぎない声。
悪くない。
「真田の入城」一龍斎貞橘
今年はそこら中でいろんな人が演ると思いますが、と前置き。
大坂の陣は終盤だと思われるので、来年の初めまでは使いまわされ続けるネタだと思われる。
「木村又蔵 鎧の着逃げ」一龍斎貞寿
花粉症が酷いと言う話から始まるが実に酷そうであった。
本編に入る前に「木村又蔵が如何に好きか」についてひとしきり。
講釈の愉しさは、実在するんだかしないんだか判らない人物のエピソードが活き活きと詳細に描かれているところにもある。
「相馬大作 最初の本懐」一龍斎貞橘
本所の上屋敷から平井聖天へ野駆けの途中で哀れ藩主は縊り殺されるのであるが、丁度住まっている辺りでもあり、しみじみ聴いた。
<仲入り>
「裸川由来」一龍斎貞橘
青砥藤綱が川に落とした銭を落とした額以上の投資で回収する納得の行くような行かないような美談。
美談の部分より駆り出された人足の狡く情けない部分に重きを置いたような感じで楽しく。
たっぷり五席なのであるが、肩に力が入り過ぎていないので草臥れない。
貞橘先生目当てで行った会だが、貞寿さんもいちかさんも当たりだつた。
昼の会の受付の時に訊いたらまだ空きが有ったので予約を入れて出直し。
「一心太助一代記 喧嘩の仲裁屋」田辺凌天
「寛永宮本武蔵伝 狼退治」神田みのり
講釈で苦手なのは女を全面に出す媚びたようなのと、声が甲高くて耳に付くのと、無理に男になろうとするのなのだけれど、前座二人がそれだったので一と休み。
こなれて来たらまた違うかもしれない。
「寛永三馬術 度々平住込み 」宝井琴調
小津安二郎の映画や先代文楽の落語にも通ずる、「心地よいフレーズ」を浴びる心地よさ。
侍は侍らしく、中間は中間らしく在り、活きた科白が流れるように耳に入ってくる。
「法然上人御一代記 明石定明」宝井琴星
平安時代の地方豪族の話が発端で、法然上人は「のちに法然上人となる少年」としてちょろっとしか出て来ないのだけれど、琴星先生が悪い奴をヤニっこく悪そうに演ると、それだけで面白い。
<仲入り>
「清水次郎長伝 小政の生い立ち」宝井琴柳
最初の師匠の芦州先生の思い出をひとくさり。
「仕事したくないんですよ」「あ、読むのは好きなんですよ。」
なかなかそうも行かないけれど、出来れば好きなことだけしていたいと言う事だと思う。
そのあたりの心持ちと口調に芦州先生を感じる。
三人三様みっちり三席、満足しつつ聴いていて草臥れない。
良い会だった。
開場一寸前に行って縁台に腰掛けて待って観たい席に座る。
その日観たいものをその日の気分で選べる幸せ。
開演する頃合いにはそれなりに埋まった。
「寛政力士伝 谷風七善根 出羽屋幸吉の改心」神田すず
下手ではないし話の運びに破綻も無いのだけれど、どうにも合わない。
良否ではなく(私の中では「否」なんだが)好悪の問題で全く受け付けない。
以前も「蘇生奇談」の中だったか、五世団十郎の 「たのしみハ 春の桜に 秋の月 夫婦仲よく 三度くふめし」を「三度たべるごはん」に変えていた事があって呆れたことがあるのだけれど、表通りに店を構えていることになっている出羽屋幸吉に職人言葉で喋らせてしまうところにも、美学の欠落を感じる。
嘘でも誇張でも、最後まで騙して気持ち良く聴かせてくれれば文句は無いのだけれど、あちこち引っ掛かって醒めてしまう。
それで良いと言う人が少なからず居るから生業になっている訳で、そっち方面を相手に演っていただき、私は避けて通ろうと思う。
「笹野名槍伝 海賊退治」一龍斎貞橘
相変わらずいい加減なところはいい加減なのだけれど、締めるところは締めて来る。
主人公がなかなか出て来ない不思議な構成の話を、言い訳はしつつも妙に変えずに読み進めていく。
こういうところで「脱線して、戻って、また脱線して」と言う遣り方が利いてくる。
面白いんだか面白くないんだか良く分からない部分を端折らないのが良い。
刈り込めばすっきりはするかもしれないけれど、聴いていて草臥れる話になってしまうのだと思う。
ひとしきりへらへら笑って過ごす。
「溝口半之丞 産女の指物」田辺いちか
太福さんのテーブル掛けが釈台に設えられており、張り扇で叩いても張り合いの無い音しか出ないらしく、序盤は一寸やり難そうではあったが尻上がりに良くなった。
「曲垣平九郎 梅花の誉れ」玉川太福/みね子
お馴染み「出世の石段」である。 時間の都合で上がるところまで。
マクラの間は眼鏡を掛けているのだけれど、取ってパタパタと畳むと本編へ。
「曲垣平九郎 曲垣と度度平」神田松之丞
寛永三馬術 リレー口演と言う触れ込みながら、途中すっ飛ばして国詰めになった曲垣先生のお話。
琴調先生に習ったとかで、上げて貰うまでのエピソードがマクラ。
昨日の今日で聴き比べになるとは思わなかったが、端折るところあり、膨らませるところあり、 まるで違うので驚いた。
曲垣先生、かなり変な人になっていたが、これはこれで面白い。
二つ目んなって漲ったやる気と、これでいいのだろうかと逡巡する心と、微妙なバランスの上に在るから聴いていて面白くはあるが草臥れる。
聴く者に真剣勝負を強いる談志のような芸で行くのだろうか。
お仲入り
「トメ」神田松之丞
最後の最後で講談っぽくなる以外はほぼ年寄り夫婦の会話で進行する落語に近い新作。
遣る事の幅が広すぎて、もう少し聴き込まないとなんだか分からない。
「祐天吉松 飛鳥山親子対面の場」玉川太福/みね子
生き別れた親子が期せずして対面する、泣かせる場面。
こう言う情景を描き出すにあたって、これでもかとドラマを盛り上げて来るのだけれど、これが嵌まるか嵌まらないかで浪曲との相性が測れるのではないか。
私は一寸引いてしまう。
こってり、たつぷりな五席。
亀戸サンストリートも明日で閉館。
様々なリリースイベントが行われてきたマーケット広場の掉尾を飾るのはNegiccoであった。
仕事を片付けてから押っ取り刀で向かったが、着いたのは六時半過ぎ。
既にベンチは埋まり、立ち見も三列目くらい。
開演が30分近く遅れたこともあるが、始まるころにはステージ前は大入り。
二階通路も鈴生りになっていた。 足を止めた通行人かと思ったら光る棒を振っていることで「目当てで来た客」と判る。
2004年頃にやったリリースイベントはベンチすら埋まらなかったと話していたが、そうした「過去の自分たち」への落とし前を付けに来たような気がした。
「リトルレンズ」「ハレンチパンチ」「SHIP」etc... 話の端々に懐かしい名前が出て来る。
同じ時期に始まったSHIPはとうの昔に活動を終え、 Pinkishも先週末に最後のライブを終えた。
紆余曲折は有りつつも、Negiccoが続いている事に感謝。
リリースイベントなのでタイトルチューンとカップリングの曲を先に歌うが、あとは持ち歌からの選り抜きを予め繋げた音源で畳み掛ける構成。
持ち札から場に相応しい曲を撰ぶと、やはり connie 楽曲が多めになる。
叩き上げの強さで押しつけがましくなく場を盛り上げて行き、最後の曲を歌い終えて捌けるや否やスッとBGMが流されて妙に引っ張らない。
特典会の喧騒を聞き乍ら駅へ向かう。
亀戸サンストリートとも、長いお別れ。
# らっくす [ご無沙汰してます。 ミランダ研究会の一員?だった らっくすです。 Negicco 聞かれるのですね~ サンスト..]
# 新潟のたけだ [どうもお久しぶりです。 Negiccoってホント凄いですねえ。 10年以上続けているのですから。 「SHIP..]