前座勉強会なのだけれど、ゲストが琴調先生。 客の出足は読めないが入れない事も無かろうと何時も通りに家を出て、何時も通り軽く手繰ってから福徳稲荷に額づき、のんびり歩いて日本橋亭へ。
開演時間まではまだ少しあったが、既に20人から並んでいた。
「熊田甚五兵衛」田辺いちか
前に聴いた時は半ばまでだったが、通して演っていた。
途中で絶句してとっちらかったりもしたが、持ち直して最後まで。
口調も声も悪くないので、あとは場数であろう。
「三方ヶ原軍記 五色備」神田みのり
修羅場読みである。 客の前で演らない事には 身になっていかないので出来不出来は兎も角、こうした場があるのは良い。
リズムも抑揚も些か単調ではあったが、先ずは読めてからの話。
「中村仲蔵」宝井琴調
前座時代、三方ヶ原軍記の稽古をする場所に困って開場前の本牧亭で浚っていたら前進座の面々が見学に来てしまった思い出から話に入る。
張り扇をパタリと鳴らして場面転換、会話と地の文を行き来。 聴く方が前のめりになってくると軽く入れ事をして空気を入れる。 程が良い。
言葉が綺麗。 仲蔵が蕎麦屋で出っ食わす御家人の江戸言葉が、実にらしくあった。
タワーレコード錦糸町店の十周年を記念したイベントウィークの最後に里咲りさ。
例によって仕込みから進行から特典会まで、全部ひとりでやる里咲。 勿論歌もうたう。
リハーサルの最中も間繋ぎに喋っているくらいで、歌っているか喋っているかなのだけれど、黙っているときは黙っているときで何かしら考えている。 企んでいるて言った方がより正確だろうか。
ポケットに隠しているのが別れの気配ではないことを祈りたい。
機材の扱いであるとか、拙いところはまだまだあるのだけれど、客の転がし方は実に上手い。
無手勝流で出たとこ勝負のイベントも、顧客満足度は高い。
なんだか良く分からないまま足を運んでも、なんだかんだで楽しめることは私が保証する。
その他の写真はこちらに。
里咲りさ
ペンタックスK10D
ノボフレックス ノフレクサー240mm/f4.5
iso=800 1/100s f5.6 -1補正
「円山応挙の幽霊画」田辺一乃
「徂徠豆腐」一龍斎貞寿
一乃さんは浚っている感じで、チラリチラリと何やらメモのようなものに目をやる。 客前で演って練り上げていくものなのでこれはこれで良い。
完成したものをまた聴きたい。
貞寿さんはパァパァ良く喋ってガチャガチャと入れ事が入る。 「洒落小町」のガチャ松っつぁんみたいな感じ。
嫌いな人は嫌いであろう。 私は好きな種類。
貞心先生の「徂徠豆腐」と較べると矢張り早口で、単位時間当たりの情報量に占める言葉の割合が多い(溜めが少ない)。
早口でも不快ではないのは間が良いからだと思う。
まだ花粉症は辛そうだった。
今日の朝練講談会は客筋が聴きに来ている客(面白ければ笑うが、笑うためには来ていない)と、笑いに来ている客(演芸は「笑う為のもの」と言う先入観がある)に二分されていた。
笑いに来ている客は「入れ事=ギャグ」だと思ってるので、息詰まる場面で空気を入れるためにやってるのも説明のために入れるのも全部笑う。 義務ででもあるかのように笑う。
今日は笑い袋みたいなのが後ろに来てしまい一寸不快。
まぁ、こう言う客が笑わないと、釈場の空気なんざ重くて演りにくいとは思う。
四ツ谷のギャラリーニエプスで開催中の写真展へ。
現代の(現在の)パリで撮影されたストリートスナップ。
撮り方は相手に気配を感じさせない掏摸的手法と、相手に正面からぶつかる強盗的手法の丁度中間の、かっぱらいの様な感じ。 撮られている事に気付いている人もいるし、気付いていない人もいる。
サン・セヴラン教会、サン=ポール駅etc...街そのものはブラッサイやドアノーやエルスケンで見てきた、紛うことなきパリなのであるが、闊歩する人々の肌の色や服装は、これ迄に見てきたパリのストリートスナップより多種多様。 アフリカ系でも東西南北様々。
闊歩するのはスマートフォンを手にした現代のパリ市民。 それでも依然としてパリはパリなのであった。
大和田南那
巻頭グラビア7ページ11カット、撮影は小池伸一郎。
腰回りを正面から撮らず、腰から下を出来るだけ太く見せないように秘術を尽くしたような撮り方。
珍しくハイキーに仕上げているのも含め、粗を隠して良いところを引き出そうとする努力は見て取れ、或る程度は成功してている。
表情は単調だが、カメラと素で向き合えているのは良い。
入山杏奈
5ページ7カット、巻末には珍しく見開き1か所。 撮影はサトウノブタカ。
割り付けが上手い。 巻末で紙幅は少ないながら、訴求力のあるカットを厳選して大きく使っての5ページ。
それだけ入山に被写体としての魅力が有るという事でもある。
1ページ目と見開きが特に良い。
最上もが
9ページ29カット。 カラーコンタクトで読めない表情まで含めて「作り込まれた最上もが像」を愛でる為の写真としては良く撮れているが、ブツ撮りに近いので、質としての高さは認めつつも好きには慣れない種類の写真。
どう作り込んでも最上もがらしく在ると言う事については称賛に価すると思う。
御伽ねこむ
巻末も作り込み系グラビアで6ページ12カット。
瞳孔が開いたまま硬直したような表情が多く、良し悪し以前に生理的に受け付けない。
長澤茉莉奈
7ページ10カット、撮影はTakeo Dec.
放プリユースと言う、ライブを中心に活動しているアイドルを視野に入れている人々以外には未だあまり知られていないグループに所属する、童顔のトランジスタグラマー。 講談社主催乍ら講談社色の薄いオーディションでファイナリストに選出される過程で注目された事からの抜擢人事なのか、表紙無しでの巻頭グラビア。
どうしても肉感で押す感じになるのだけれど、カメラを見つめる眼差しは強く、陰惨さを感じさせないのは良い。
松井咲子
巻末5ページ9カット、撮影は山口勝己。
長身痩躯乍ら凹凸は少なく、水着にしても映え難いところを人を使ったブツ撮りの名手が職人の技と言うか錬金術と言うか、無から有を生み出して9カット。
皮肉なことに、1ページ目の服を着ていて且つ身体が殆ど写らないカットが実に良い表情。
篠田麻里子
表紙、巻頭、巻末、オマケ写真集が2冊。 1号丸ごと総計37ページ。
巻頭は5ページ8カット、巻末も5ページ13カット。撮影はTakeo Dec.
「ラスト水着」「総計37ページ」と大きな事を書いてある割に寂しい紙幅。
写真の方はいつもの篠田。 可もなく不可もなく。
武田玲奈
巻頭7ページ16カット。 撮影はTakeo Dec.
素材としては悪くないのであるが、例によって瞳を大きく見せるコンタクトレンズで目が死んでいる。
にこやかな表情でも、カメラを拒絶するような。 「見禮俗之士、以白眼對之」と言う事なのか。
高橋ひかる
巻末4ページ5カット、撮影は桑島智輝。
鎖骨を見せたカットが有るくらいで、きちんと服を着ている。
それが心穏やかにカメラと向き合える効果を上げたのか、柔らかな表情。
生田絵梨花
7ページ10カット、A3の割と良い紙のオマケポスターが付く。 撮影は細居幸次郎。
写真集の販促グラビアなのだけれど、選り抜きで良い写真を使っている。
写真集にはあるが、正直申し上げて蛇足だった水着部分は無し。
諸般の事情やら決まり事でそうなっているのだとは思うが、それが吉と出ている。
高緯度で光が柔らく廻っていると言うのもあると思うが、屋外で撮った細居幸次郎の写真としては出色。
北野日奈子
巻末6ページ14カット、撮影は細居幸次郎。
生田絵梨花の写真集は、細居幸次郎にとっても転機となる仕事だったのかもしれない。
前半の屋内で撮った部分は高いレベルで安定した仕事だが、後半の屋外撮影分がまた良い。
北野日奈子の表情はまだ諧調に乏しいところがあるが、動かすと生き々々してくる。
麻亜里
巻頭7ページ18カット、撮影はTakeo Dec.
整った顔と肢体に年齢が追い付いてきた。 発掘されたような扱いにはなっているが、そう言う売り出しになっているのだろう。
温泉で水着と言う趣向のページ。 当たり障りのないカットを大きめに、煽情的なカットを小さめに使っているところに編集者の苦労が偲ばれる。
生田佳那
巻末4ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
顔見世グラビアとしては、良く撮れている。
植村あかり
巻頭7ページ19カット、うち見開き1か所。 撮影は細居幸次郎。
細居幸次郎で屋内、外れようがない。 水着中心ではあるがどうやっても煽情的にはなりようもなく、そう言う狙い無しに仕草や表情を切り取ったカットは良く撮れている。
無理に水着にすることも無いと思うのであるが、これも商売。
西岡葉月
巻末ページ5ぺージ9カット、撮影はTakeo Dec.
肉感的なところを前面に出して9カット。 粗を隠しつつ見せたいところを強調する定石。
石川恋
巻頭7ページ15カット、撮影は佐藤裕之。
佐藤裕之は強い光を好んで使う作風でも無いが、眩しがるタチなのか下瞼が上がったカットは硬さのある表情。それでも壊滅的に駄目と言う事にはなっていない。
倉持由香
巻末5ページ、一点豪華主義 の18カット。 撮影はHIROKAZU。
自分の売りになる部分を如何に効率よく見せるかについて突き詰めた倉持由香の職人芸。
金子理江
巻頭6ページ7ページ、撮影は桑島智輝。
金子理江のみが写っているカットは悪くないのであるが、所属しているユニットの3人で写ったカットが挟み込まれており、全体として私の嗜好と正反対のものになっている。
「カワイイに国境も法則もない」との事であるが、私の基準に照らすとカワイイではなく醜悪である。
麻亜里
巻中5ページ8ページ、見開き1か所。 撮影はTakeo Dec.
一服の清涼剤。 見開きの写真が良い。
RaMu
巻末5ページ14カット、撮影は熊谷貫。
熊谷貫ではあるが「お仕事モード」。 引いたカットが多い。
悪くはないが良くもない。
宮脇咲良
巻頭7ページ10カット、撮影は桑島智輝。
撮られ方の傾向がまた変わって来ており、指原の影響を強く感じる。
何処からどう撮られても動じない肚の据わり方。
こう強くなってしまうと、かつての儚げな表情も懐かしい。
松田るか
巻中4ページ9カット、撮影は唐木貴央。
映える角度の探し方が上手い。
演出過多なところは好みではないが、3ページ目に唸る。
平手友梨奈
巻末5ページ16カット、撮影は細居幸次郎。
14歳らしいあどけない笑顔も見せつつ、カメラと素で向き合うと引き込まれるような凄みも見せて来る。
3ページ目が秀逸。
諸国諸大名は弓矢で殺す、平手友梨奈は目で殺す。
松岡菜摘
巻頭7ページ16カット、撮影は佐藤佑一。
HKT48は誰が出てきてもカメラときちんと向き合えていて驚かされるが、松岡菜摘も表情を無理に作らないのが吉と出て、上手く撮られている。
今泉佑唯・小林由依
巻末4ページ10カット、撮影は佐藤裕之。
実際に弾けるだけあって、楽器の持ち方も様になっており、そうした道具立ても功を奏してか柔らかな表情。
河村美咲
さらに巻末4ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
古びた旅館で撮られているのだけれど、四畳半グラビアになっていないのは良い。
しかし煽情的な方向に舵を切らねばならないのは判るが、あからさますぎると醒めてしまう。
白間美瑠
巻頭7ページ10カット、撮影は山口勝己。
前号の巻末に次号予告のページが無く、目次のページに小さく告知が有っただけだったので何かしらあったのだとは思うが、災い転じて福と言うか、面白いものが出てきた。
顔が顔として認識できる角度は狭いが造作に瑕疵は無く、体形にも粗は無いので山口勝己も余計な仕事に煩わされずに「綺麗に撮る」事に注力出来ている。 4ページ目と6ページ目が秀逸。
宮脇咲良
13号のアザーカットで巻末4ページ7カット、撮影は桑島智輝。
上手く大人になれて来ている。 若くして売れるとこれが難しい。
松永有紗
さらに巻末4ページ7カット、撮影はサトウノブタカ。
1ページ目で既に顔見世グラビアとして成立している。
構成の妙。
深川麻衣
巻頭6ページ18カット、オマケポスター(これが実に良い)付き。 撮影は藤本和典。
兄弟誌のミラクルジャンプとの連動グラビアになっているようだが、そちらは未見。
水族館の新米職員と言う設定なのだけれど、「自分ならざる誰かになってもらう」と言うやり方は深川麻衣を撮る上で有効だったようで、いつも以上に柔らかい表情。
些か塗り絵が過ぎるのが疵だが、オマケのポスターの表情も実に良い。
広瀬すず
写真集の宣伝方々巻末4ページ11カット、撮影は倉本GORI。
薄着になると骨太で且つ肉々しいのを隠してみたり、意図しない形で強調してしまったり、ポーズを付けている割に意味がない。
商売用の自分が出過ぎる被写体をコントロールしきれていないので、面白味も薄い。
麻亜里
巻頭8ページ18カット、撮影はTakeo Dec.
顔を顔として認識できる角度と身体の線が綺麗に見える角度が広いのでポーズの自由度が大きく、何処からどう切り取っても絵になる。
粗を隠す必要が無いので窮屈なボーズをとる必要がないのも表情の柔らかさに繋がっており、撮られ慣れてはいるが擦れたところは無いから上手く隙が作れている。
余計なものを入れていないから瞳に自然な輝きと表情があるのも良い。
渡辺幸愛
巻末5ページ7カット、撮影は桑島智輝。
表情は諧調に乏しく、水着になると硬さもあるが、妙に作り込んで誤魔化さないのは良い。
1ページ目の危険なようで安全に切り取ったカットが良い。 桑島智輝には珍しい、人の悪い写真。
武田玲奈
発売される写真集からのダイジェストと言う位置付けで巻頭7ページ15カット、撮影はTakeo Dec.
服を着ても水着になっても絵になり、道具立ても舞台も衣装も、カメラとの向き合い方も良いのだけれど、文字通り画竜点睛を欠くのはあからさまなカラーコンタクト。
表情は生きているだけに、目が死んでいる事に薄気味悪さすら感じる。
後藤萌咲
巻末4ページ7カット、撮影は門嶋淳矢。
鼻の標高が高く下顎が小さい。 軽く顎を引いたところを斜めから撮ると実に絵になる。
笑顔と真顔と、唇つんと尖らせて何か企む表情くらいしか出来ていないのだけれど、そんな細かい事はこの際どうでも良い。
目の前にある美を小細工せず誠実に切り取った門嶋淳矢が良い仕事。
畠山愛理
巻頭7ページ13カット、撮影はTakeo Dec.
新体操日本代表である。 笑顔は絵に描いた様な作り笑顔なのだけれど、練習風景になると表情が生きて来る。
Takeo Dec.がスポーツも撮れる事に驚く。
鈴木優華
巻末7ページ13カット、撮影は細居幸次郎。
ファッションの仕事をしていると、自分を見せなければいけない仕事でも服を見せるための撮られ方をしてしまう事が良く有るが、鈴木優華は自分を見せる撮られ方が出来ている。
意識しないと口が閉じないタチなのか歯見せ笑顔が多いのだけれど、口の開き方で変化が付いているのは面白い。
外で撮ったカットも悪くは無いが、屋内で撮った分の出来が実に良く、4ページ目が秀逸。
内田理央
巻頭7ページ11カット、撮影は桑島智輝。
台湾での撮影なのだけれど、桑島智輝の「その場にあるもので絵を組み立てる」技術とセンスが生きている。
後ろから撮ると映える内田理央であるが、要所々々でそれを挟み込み、ほぼ1ページ1カットにして大きめの写真で押す構成も良い。
牧野真鈴
巻中4ページ8カット、撮影は西村康。
原駅ステージAで歌って踊っている時は堂々として見えたのだけれど、打って変わって借りてきた猫のような大人しい表情。
どういう力が働いているのかは判らないが、写真の取捨選択が不可解。 小さく使われているものの方が良い表情。
「こう売りたい」に合致しないのかもしれないが、実に勿体ない。
渡邉理佐
巻末5ページ11カット、撮影は藤本和典。
きりりと濃く引いた眉が前髪の分け目から覗く。
黒のニットワンピースのカットが良い。
クーラーの無い部屋でもそんなものは着ないであろうと思われるような布面積の少ない部屋着で無理に薄着にさせるより、着せることで身体の線を美しく見せる工夫。
ページ目の、本で鼻から下を隠したカットが秀逸。 口元を隠すことで、視点が誘導されて目の表情が生きて来る。
今週の朝練講談会は「朝練二扇会」は神田松之丞さんと上方落語の月亭天使さんの二人会。
松之丞さんの出る回は熱心な人が早くから並ぶが、遅く行っても入れないと言う事は未だ無いので何時もの時間に何時ものバスで向かう。
「太閤記 太閤と曽呂利」田辺いちか
開口一番で短めに。
落ち着いて聴ける。
「寛永宮本武蔵伝 偽巌流」神田松之丞
悪い奴が出てくるとねっとりと実に悪そうに、職人が出てくると早とちりとおっちょこちょいをてんこ盛りに演る。
この過剰であるが故の面白さと言うのは、今の松之丞さんならではのものであると思うので、見られるうちに見て聴いておこうと思う。
「饅頭こわい」月亭天使
米朝-可朝-八方-八天-天使、となるので、米朝師の玄孫弟子にあたると言うマクラから。
上方ではこう演るのかと感心しながら聴く。
朝練講談会を主催している滝田ゆうが化けて出たような容貌の神保町講談会の人は毎度面憎い顔付けをしてくる。
二人出るうちのどちらか片方は観たい(聴きたい)ようになっているので、うーむと唸りつつも日曜の朝に早起きをする羽目になっているのだけれど、これが実のところ私の食わず嫌い(女流忌避)を治すのに効いている。
東京かわら版の人がツイッターで
講談に男も女もなくて、あるのはただ、かっこよくて素敵な講談とそうでない講談だけだなあ
今泉佑唯・小林由依・平手友梨奈(欅坂46)
表紙と巻頭グラビア12ページ13カット、うち見開き1か所。 撮影はサトウノブタカ。
三人で撮ったカットと一人2ページ2カットずつで構成。 三人で撮ったカットは小林と今泉を脇侍にした三尊形式。 平手の上背が拳半分ほど大きく、実にバランスが良い。
小林と今泉は真っ直ぐおろすか軽くうねらせるか程度のアレンジに止めているが、平手友梨奈は編み込んだり前髪の分け目を変えたり三態。 ちょっと弄るとガラリ印象が変わる。
眉尻が少し下がっているので、隠すと意志が強そうに、出すと心細げになり、「撰ばれてあることの恍惚と不安」を象徴するかのよう。
小林と今泉が居てこそ成り立つ三幅対。
鈴木美愉・渡辺梨加(欅坂46)
10ページ12カット、撮影は西條彰仁。 一人2ページ2カットずつ、残りは二人で。
洋館の中と庭での撮影。 強い光を直接当てずに撮っているので、総じて柔らかな表情。
表情の変化は少ないのだけれど、その分造形美は素直に切り取れている。
伊藤万理華(乃木坂46)
探偵と依頼者の少女の二役を演じる10ページ10カット、見開き2か所。 撮影は佐藤裕之。
2か所ある見開きでは合成して二人の伊藤万理華が向き合う。
視線と意識の何れかだけを向ける事も出来るし、外す事も出来て、カメラに対して正面も切れる。
空恐ろしい選抜の三列目。
高山一実(乃木坂46)
10ページ9カット、見開き1か所。 撮影は西村康。
ミニ丈のニットワンピースでガーリィに、デニムのショートパンツと襟ぐりの広いTシャツに刺繍の無いスカジャンと言った趣のものを羽織ったカットを中心にボーイッシュに。
表情を作らずにカメラと向き合う戸惑いが出たような表情が良い。
3ページ目の光が柔らかく廻り過ぎて顔の立体感が希薄なカット。 顎に添えた人差し指とそこに連なる右手の醸し出す ennui な表情に唸る。
このカットに限らず、高山一実は手の作る表情が美しい。
川本紗矢(AKB48)
9ページ10カット、撮影は佐藤裕之。
擦れること狎れることなく、カメラと自然に向き合えるようになっている。
意味があるような無いような腕や指の絡みが、写真に奥行きを持たせている。
カーディガンやセーター越しに出る身体の線を斜めや背後からの光で描き出したカットが美しく、冬らしいグラビアに仕上がっている。
後藤萌咲(SKE48)
8ページ10カット、撮影は長野博文。
長野博文の毒気に中てられてか怯えたような表情や笑顔になり切れずに開けた口を歪めたようなカットも散見される。
引きのカットは然程悪くないので、撮られ慣れていないのが災いしたのだと思う。
5ページ目は辛うじて良い。
中井りか・荻野由佳(NGT48)
8ページ11カット、撮影は門嶋淳矢。
雪の降り積む屋外でセーラー服、壁も床も白いスタジオで水着の二本立て。
丸顔の中井と瓜実顔の荻野。
水着と部屋着のパーカー、バスケットシューズを、中井は暖色、荻野は寒色で纏めた対比の妙。
冬の新潟の鉛色の空から差す光を廻したような屋内撮影分のライティングも相まって、季節感が上手く出ている。
長濱ねる(けやき坂46)
10ページ10カット、撮影は長野博文。
背後からの光で起こしたハレーションをアクセントにしたり、ハイキーに飛ばしたり、白ずくめのスタジオで撮ったり、如何にも長野らしい10カット。
上手く撮られてくれており、破綻は無いのだけれど自己模倣の陥穽に落ちていると言うか、定石通りで面白味は薄い。
松野莉奈(私立恵比寿中学)
7ページ11カット、撮影は河西遼。
彩度を落としてハイキーに。 こう言う撮り方だと諸々雑になるカメラマンが多いが、ピントや深度、露出は丁寧で且つ適切。 構図を切るセンスも良い。
撮られる側も肚が据わっていて、カメラときっちり向き合えている。
大当たり。
植村あかり・工藤遥・矢島舞美・宮本佳林・佐々木莉佳子(ハロープロジェクト)
8ページ7カット、見開き1か所。 撮影は佐藤裕之。
集合で2カット、あとは光を強く当てて背景紙の前で 一人1ページ1カットずつ。
まぁ、詰まらない。 カメラマンの仕事以外の部分がどうしようもない。
最上もが
巻頭7ページ14カット、撮影は桑島智輝。
髪型からカラーコンタクトから作り込んで人前に出る姿が「最上もが」なのであろう。
裏方もしっかりしているのだと思うが、綻びを見せることは先ず無い。
松本愛
巻末5ページ9カット、撮影は桑島智輝。
ファッションの撮られ方を引き摺っているようなところはあるが、囚われ過ぎていないのは良い。
武田玲奈
巻頭6ページ18カット、巻末3ページ6カット。 撮影はTakeo Dec.
悪くない、寧ろ良いのだけれど、やはり目に生気が無いのが気になる。
素材の良さに寄り掛かってばかりで、生かそう伸ばそうとする工夫が感じられない。
撮る方は何とかしようとしているのであるが。
藤原令子
巻中4ページ4カット、撮影は細居幸次郎。
すっかり大人びて役者の貌である。
4ページ目の睨め付けるような表情が良い。
佐藤美希
巻頭7ページ16カット、撮影はTakeo Dec.
とっかえひっかえほぼ水着。 程の良い体形と煽情的でありつつも遣り過ぎないポーズと構図。
4ページ目のみ、上に一枚着たカット。 タートルネックの白いニットの描き出す肩から二の腕にかけての線が美しい。
伊藤しほ乃
巻末5ページ10カット、撮影はHIROKAZU。
巻頭とは打って変わって「これでもか」と煽情的な5ページ。
そう言う売り方なのだと思うが、狙い過ぎているのが一寸鼻につく。
松岡菜摘
写真集の未使用カットから巻頭7ページ12カット、撮影は佐藤裕之。
水着とセーラー服なのだけれど、どちらを着ていても表情にブレが無く、カメラと素で向き合えている。
上だけセーラー服だったり、水着の上に薄物を羽織っていたり、暗喩で青少年のリビドーを刺激するようなカットが憎らしく巧い。
何気なくページを繰っているうちにコロリと殺られる。
買わずに済まそうと思っていたが、この写真集は買わなければならない気がしてきた。
太田夢莉
巻末5ページ8カット、撮影は門嶋淳矢。
気が付いたら死んでいる(こちらが)感のある松岡に対して、向こうから積極的に殺しに来る太田夢莉。
前門の虎、後門の狼。
物怖じせずにカメラの前に立つ太田夢莉は、カメラのその先を見ている。
アイデア勝負の大道具も含めて面白い8カット。
伊藤萌々香
巻頭7ページ20カット、撮影は桑島智輝。
10月1日発売なのであるが、夏らしい南国の浜辺で撮った20カット。
惨憺たる出来。
眩しがると眠そうになるので太陽を背負わせたり出来る工夫はしているのだけれど、如何せん光線が強すぎる。
モデルにもカメラマンにもこの不出来の責任は無い。
松井珠理奈
写真集からの未公開カットで巻末5ページ12カット、撮影は渡辺達生。
全編商売用の松井珠理奈。 そのままお蔵入りさせた方が良かったようなカットが並ぶ。
獣脂とグルタミン酸ナトリウムがコッテリと効いたようなのが好きな向きには堪らないのかもしれないが、私は真っ平御免被る。
篠崎愛
巻頭6ページ、撮影は桑島智輝。
全編肉感で押し捲りつつ、くびれるところはくびれていることを見せてバランスを取った15カット。
内田理央
巻末5ページ、撮影は桑島智輝。
好対照な「線で見せる」14カット。
巻頭もそうだが、美点を生かすことで被写体を生かしている。
充実は欠落の不足であり、欠落は充実の不足であって表裏をなす・・・とか何とか埴谷雄高が書いていたような朧げな記憶があるが、対称的な巻頭と巻末であった。
西野七瀬
全篇屋久島ロケ。 巻頭「麓の章」6ページ12カット、巻末「山の章」6ページ16カット。 撮影はTakeo Dec.。
降らないがすっきり晴れない、私好みの空模様。 11月の半ばの発売だが、南の島と言う事もあってか全体的に薄着。
仕草やポーズも、不器用と言うか馬鹿正直と言うか、思わせ振りなものにはどうやってもならない。
誘いの隙のようなものは無いので蠱惑的ではないが、嘘偽りは無さそうで、そこが魅惑的ではある。
煽情的なカットは無いのだけれど、ページを繰って行きつ戻りつ眺めていても飽きない、不思議な出来。
眼福。
おのののか
巻頭6ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
ビキニのみで4着、水着のみで押す構成。 ポーズやら何やらでの補正が目に付くが、そう言う方針なのであろう。
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔と作った笑顔の二態で6ページ。 凄いものを見た。
松元絵里花
巻末6ページ20カット、撮影は佐藤裕之。
大きく使えるカットが少なかったのか、コラージュ的に小さめの写真を鏤める割り付けが過ぎて煩わしい。
まぁ顔見世と割り切ってみれば悪くは無い。
馬場ふみか
巻頭7ページ13カット、撮影は佐藤裕之
光を強く当てると眩し気な表情になって険が出るのだけれど、柔らかい表情を切り取れているのは夕景の一枚のみ。
身体の線を切り取ったカットも少なく、何を目指したのか良く分からない7ページ。
松田るか
巻末5ページ13カット、撮影は唐木貴央。
前後左右から映える角度を探りつつ撮っている。
笑うと些か品下がるのは瑕だが、軽く俯いて目を伏せた表情などは実にどうも。
篠田麻里子
巻頭7ページ14カット、撮影はTakeo Dec.
04・05合併号で「ラスト水着」と言うのをやってしまったので、薄着のグラビア。
水着にはならないと言うだけで、撮られ方はいつもの篠田。
1~3ページ目は抜けるような青空の砂丘で大き目に、4・5ページ目はモノクロ、6・7ページ目は光を強めに当てた屋内。
4ページ目の右下、鏡に向かうカットが美しい。
加藤里保菜
巻末5ページ8カット、撮影は西村康。
眼鏡込みで「顔」になっている人が、敢えて外したカットを後半に3枚。
眼鏡ではにこやかに、外して睨めつけるように。
アイデアとしては面白い。
HKT48に所属する松岡菜摘の初写真集、撮影は佐藤裕之。
期待はしていなかったと言うか、そもそも買うつもりもなかったのだけれど、積んであった週刊ヤングジャンプ 2015 43号のグラビアを見直して驚いた。 これは買わねばならない。
セーラー服で始まり、セーラー服で終わる構成。 その間に水着やランジェリーも含めた様々な衣装で撮ったカットが挟まる。
水着やランジェリーは体形には合わせていて、布面積が小さめな物もあるが穏当なデザイン。 煽情的なポーズを取らせる訳でもなく、Les sucettes的な暗喩を込めた小道具を使わせる事も無い。
松岡菜摘は撮られるにあたって「撮られるに任せる」と言うか、感情を露わにしない。
時折笑顔は見せるが、機嫌が良いのか悪いのか、楽しいのか楽しくないのか、眠いのか。
どうとでも解釈できる曖昧な表情が大半を占める。
主張はしないのだけれど、その分よく分からない負圧の様なものが働いていて、知らず知らずのうちに引き込まれてしまう。
Femme fataleと言う物は、実に意外極まるところに転がっているもので、斯く言う私も松岡菜摘に躓いて転んで途方に暮れているところである。
何が良いのか何処が好きなのか、説明らしい説明をする事が出来ないのだけれど、説明のつかないもどかしさに、答えを探してまたページを繰ってしまう。
おそらくそうさせるような意思が、この写真集を作り上げる際にハンバート・ハンバート氏によって込められていて、それに我々は踊らされるのだと思う。
さっきまでは好きでも嫌いでもなかった松岡菜摘を、最後のページをめくる頃には好きになっている。
まだ四分の一も終わっていないが、今年一番の悩ましい写真集。
朝練講談会を主催する神保町講談会(わかりにくい)の連休特別企画。
続き物を毎日十日間読み継ぐ。
毎日来る客もいるので、チラシが要るかどうか一々訊いてくれるのが嬉しい。
この会は差配をする人が「わかってる」人なので、客としてのストレスが送り手には溜まらないのが良い。
「青龍刀権次(2)偽札」 玉川太福/玉川みね子
開演前、幕の向こうから三味線の調子を合わせる音が漏れ聞こえて来て、徐々に聴く気分が盛り上がってくる。
マクラまでは黒縁眼鏡の太福さん。 本編に入る前にスッと外して畳む。 この儀式めいた所作が絵になる。
小悪党が巨悪を強請ろうとして嵌められて翻弄され続ける、情けなく救いもない話なのだけれど、全く感情移入出来ない奴しか出て来ないのに、きっちり聞かせて飽きさせない。
「清水次郎長外伝 荒神山の間違い 三本椎ノ木お峰の茶屋」 神田春陽
時節柄ナニですが、博奕打ちのお話をと一と笑いさせてからおずおずと。
まだ導入部で小競り合い程度。 次郎長の乾分も出て来ないのだけれど、そこは巧く作られていて、個性的な脇役が見せ場を作るので楽しく聴ける。
落語で言うと子別れの上とか中とか、単体では物語としての魅力に欠けるし大して面白くもなく、端折っても見せ場の部分だけで物語として成立する場合端折られてしまう部分。
そう言う「つまらないなりに味のある部分」。 ゲラゲラ笑うだけではない部分の話芸の魅力。
全員が全員受ける根多で勝負してくるホール落語みたいな会では味わえない、有意義な「人生の暇潰し」。
四谷四丁目のギャラリー・ニエプスへ。 小体だが静かで見やすい。
文字通り「みずとか はなとか はっぱとか」をスクエアフォーマットのモノクロで展示。
水や濡れた葉、泥濘などを撮っても乾いた感じになり、ピントが合ったところはきっちりと、アウトフォーカスは暴れる三枚玉っぽい描写。
ポストカードを購った際にどんなカメラを使っているのか尋ねたところ、リコーフレックスを使っているとのこと。(他に国産スプリングカメラなども)
これで腑に落ちた。 確かに富岡光学の三枚玉らしい描写で、これがトリオターとかノバーとかツァイスの三枚玉だとしっとりしてしまうし、テッサーだとカリカリしてしまう。
柔らかくも乾いた感じなレンズの味が、作風に合っていた。
プリントも芯がしっかりしていて美しい。 私の好きな、風邪を引いた時に見る夢の様な写真。
Gallery NIW は江戸川橋から鶴巻町方向へ少し行ったところに出来た新しい展示スペース。 二人展と四人でのグループ展を同じ会場で開催すると言う珍しい形態。
面白かったものを掻い摘んで。
Nishi Norimasa
黒と灰色の間の色と黒の間の色合いが美しい、風景と静物の間の暗がりを切り取った写真。
暗闇で目を慣らすように、じっくり見ていると諧調のはざまの色まで見えてくるような、何時までも眺めていたい写真だった。
黒滝千里
凍らせた花で6点。
凍らせることによって細胞壁が壊れ、透けた花びらの濡れ濡れとした美しさ。
Megumi Michelle Kawaguchi
動物園で撮ったカラー4点。
キャビネより更に小さいプリント。
大きく伸ばさないからこそ感じられる、 黒い台紙の向こうの覗き穴の世界。
写真もさること乍らギャラリーそのものも居心地の良い空間であった。