朝練講談会を主催する神保町講談会(わかりにくい)の連休特別企画。
続き物を毎日十日間読み継ぐ。
毎日来る客もいるので、チラシが要るかどうか一々訊いてくれるのが嬉しい。
この会は差配をする人が「わかってる」人なので、客としてのストレスが送り手には溜まらないのが良い。
「青龍刀権次(2)偽札」 玉川太福/玉川みね子
開演前、幕の向こうから三味線の調子を合わせる音が漏れ聞こえて来て、徐々に聴く気分が盛り上がってくる。
マクラまでは黒縁眼鏡の太福さん。 本編に入る前にスッと外して畳む。 この儀式めいた所作が絵になる。
小悪党が巨悪を強請ろうとして嵌められて翻弄され続ける、情けなく救いもない話なのだけれど、全く感情移入出来ない奴しか出て来ないのに、きっちり聞かせて飽きさせない。
「清水次郎長外伝 荒神山の間違い 三本椎ノ木お峰の茶屋」 神田春陽
時節柄ナニですが、博奕打ちのお話をと一と笑いさせてからおずおずと。
まだ導入部で小競り合い程度。 次郎長の乾分も出て来ないのだけれど、そこは巧く作られていて、個性的な脇役が見せ場を作るので楽しく聴ける。
落語で言うと子別れの上とか中とか、単体では物語としての魅力に欠けるし大して面白くもなく、端折っても見せ場の部分だけで物語として成立する場合端折られてしまう部分。
そう言う「つまらないなりに味のある部分」。 ゲラゲラ笑うだけではない部分の話芸の魅力。
全員が全員受ける根多で勝負してくるホール落語みたいな会では味わえない、有意義な「人生の暇潰し」。
四谷四丁目のギャラリー・ニエプスへ。 小体だが静かで見やすい。
文字通り「みずとか はなとか はっぱとか」をスクエアフォーマットのモノクロで展示。
水や濡れた葉、泥濘などを撮っても乾いた感じになり、ピントが合ったところはきっちりと、アウトフォーカスは暴れる三枚玉っぽい描写。
ポストカードを購った際にどんなカメラを使っているのか尋ねたところ、リコーフレックスを使っているとのこと。(他に国産スプリングカメラなども)
これで腑に落ちた。 確かに富岡光学の三枚玉らしい描写で、これがトリオターとかノバーとかツァイスの三枚玉だとしっとりしてしまうし、テッサーだとカリカリしてしまう。
柔らかくも乾いた感じなレンズの味が、作風に合っていた。
プリントも芯がしっかりしていて美しい。 私の好きな、風邪を引いた時に見る夢の様な写真。
Gallery NIW は江戸川橋から鶴巻町方向へ少し行ったところに出来た新しい展示スペース。 二人展と四人でのグループ展を同じ会場で開催すると言う珍しい形態。
面白かったものを掻い摘んで。
Nishi Norimasa
黒と灰色の間の色と黒の間の色合いが美しい、風景と静物の間の暗がりを切り取った写真。
暗闇で目を慣らすように、じっくり見ていると諧調のはざまの色まで見えてくるような、何時までも眺めていたい写真だった。
黒滝千里
凍らせた花で6点。
凍らせることによって細胞壁が壊れ、透けた花びらの濡れ濡れとした美しさ。
Megumi Michelle Kawaguchi
動物園で撮ったカラー4点。
キャビネより更に小さいプリント。
大きく伸ばさないからこそ感じられる、 黒い台紙の向こうの覗き穴の世界。
写真もさること乍らギャラリーそのものも居心地の良い空間であった。