気鋭のグラビア系カメラマン5人のグループ展「sharaku vol.001 [Until Nude]」を見た来た。
南青山でドアノーとブレッソン、ミッドタウンのフジフイルムで植田正治を見てから行ったのだけれど見劣りしない刺激的な写真。
写真展告知欄以外に紙幅を裂いた媒体は私の知る限りにおいて(ネット以外は)フォトテクニック デジタルの6月号だけだったが、私が見ている間にも何人か入っていたので、それなりに知られてはいるようだった。
フリの客が入ってくるような場所ではないので、目当てで来ているひとばかりだったと思うのだけれど、人を撮ることを趣味としていたり生業にしていたりする向きは見ておいて損は無いと思う。
小池伸一郎
アパートと思しき調度品の無い畳敷きの部屋で撮ったカラー4点。
温度と湿度は低めの色調。 調度品の無い殺風景な感じが生活感を消し去っていて、前述の色調とも相俟って四畳半写真でありつつさらりと。
広角で撮っているが歪みは無く、柱や梁、畳の縁が描き出す縦横の線を使って画面を構成。 串刺しとか首切りと言った禁忌に囚われず、それでいて見る者を不快にもさせない。
三輪憲亮
モノクロで4点。
黒と暗灰色の間のトーンの妙。 暗がりに躍る黒髪。
引いて見た位置で映えるようなライティングで、寄って見ようとすると照明が邪魔をするのには閉口したが、綺麗なプリントだった。
門嶋淳矢
カラーで5点。
温度と湿度高め、5人の中では「写楽」のあの頃に一番近い感じ。 粗にして野だが卑ではない、程の良い生々しさ。
肉感的なモデルを撮りつつ、その「肉感」に寄り掛かり過ぎずに撮った、顔にピントの来ている写真が印象に残った。
松田忠雄
カラーで5点。
水の中に浮かぶ身体の線を美しく描き出した5枚。 下着やストッキングの痕、毛穴や産毛まで写し撮っていながら、描き過ぎる事による不快さは無い不思議な写真。
門嶋淳矢と同じく肉感的で puffy nipple なモデルを撮りつつ、対照的な作品に仕上げていた。
吉田裕之
カラー5点。
赤バックと白バックでモデルが異なるようなのだけれど、私は寄って撮った赤バックの写真により興味を惹かれた。
ピント薄め。 ピンを置いた位置の意味を考えつつ見る。
カラーコンタクト着用の所為なのか目に力が無いのは気になったが、表情そのものは良かった。
小ぢんまりしたギャラリーで、些か窮屈ではあるのだけれど、出点数を絞ったことによりそれぞれの作風は明瞭になっていた。
こうしたグループ展がいきなり商売には結びつき難いとは思うが、作品撮りをする事によって自分の撮りたい写真を明瞭にし、作品を仕上げる過程での気付きが普段の仕事にも生きてくるのではないかと思う。
見る側の好みの問題で評価の分かれる作品は有るかもしれないが、写真の質として劣悪なものは無かった。
細くとも長く続いて欲しいグループ展。
日程:6/15(金)~6/21(木)
会場:SPACE eje
Facebook:http://www.facebook.com/sharaku.project
入場無料
ミッドタウンのフジフイルムスクエアで開かれている写真展。
ちょっとだけなので量的には物足りないが、作品の選定と照明が素晴らしく、質的には申し分ない。
このスペースでは常に何かしら見たくなる写真展が開かれていて、それ"だけ"の為に行くには一寸アレだが、何かのついでに近くに行ったら見ておいて損は無い。
六本木へ行く前に、南青山の路地裏にあるギャラリー「ときの忘れもの」に寄ってみた。
全品正札付きなので見に来たお客様は「お買い上げになるかもしれないお客様」として遇される。
それが重く感じる向きにはお奨めできないが、好きな写真がこれくらい出せば買えるという目安を知ることが出来るので、私は見ておいたほうが良いと思う。
出品点数は写真美術館などには及ばないが、全品コンディションの良いオリジナルプリント。
会場の渋谷WWWは、スペイン坂の上と言うおよそ私のような人間には似つかわしく無い場所にあるライブハウス。 元は映画館だったとかで、客席は大きく3段に分かれていて圧縮が起きにくく、後方からでも非常に見やすい。
整理番号が良かったので前に行こうかとも思ったが、圧縮の危険性に鑑みて二段目中央付近へ。 極端な圧縮は起きなかったが、のんびり見るなら矢張り後方。
先頭入場で最前列に居た知り合いに話し掛けるふりをして3列目あたりに無理やり潜り込む女子二人組が目に付いたくらいで、醜悪な行動をする客は殆どおらず、昨今の殺伐を極めるアイドル現場の中では例外的に客の理性による平和が保たれている。
先に書いてしまうと、自己顕示のための「ジャンプ」「オーイングと称する奇声」「MIXと称する荒らし行為」「アンコール発動に関するヘゲモニーの取り合い」などは最初から最後まで見られず、(アンコールは拍手のテンポの切り替えの為に発せられ、統制棒もテンポを保つために振られ、巷間よく見られる悪目立したがる馬鹿が居なかった。)それでいてきっちり盛り上がってはいる奇跡。
暗転した中で流れるアメイジング・グレイス(曲名が思い出せず、採ったメモには「風に立つライオン」と書いてあった)から1969年のドラッグレースで口開け。 チョコミントフレーバータイムの私服。
中盤はシングルを時系列で並べる構成。
「迷走期」と呼ばれる2009年から2010年あたりにリリースされた LOVE&HATE や D&D は、久し振りに演ったとのこと。
どちらもリリース当時は「ナンダコリャ」と思ったものだが、今聴くとそんなに悪くは無い。 これは演る側にも聴く側にも心のゆとりが出来たからだと思う。
後半は新曲の私服に着替えて登場。 前半と後半では照明や演出を含めてガラリ変えてきていて、細かい知恵と工夫の積み重ねが感じられた。
恒例のオリジナルチロルチョコ撒き大会(投げられたチロルチョコが側頭部を直撃したり)、東京は夜の七時では天井からマンハッタンの戦勝記念パレードの如くヤケクソな量の紙吹雪が舞ったり5周年の祝祭感もありつつ、ここから先を見据えた未来志向の終演。
ライブ中叫んだ訳でもなく、朝から立ち食い蕎麦屋の親父くらいとしか口をきいていないのに、終わってみたら声が枯れていた。 心地よい疲れ。