松田忠雄にとってのホームグラウンドとなりつつある Tokyo Arts Gallery で開かれている写真展を見てきた。
コラージュ物が4点ある他は、表題通りモノクローム作品。 巷間溢れる色抜きカラーの擬似モノクロームではなく、白と黒の濃淡で描き出されたもの。
入り口を含めて広くガラス張りになっている東側から入る光が柔らかく回り、概ね見やすいが、天井からのLEDライトが上から当てられているものは一寸見づらかった。
スペースの問題もあり、仕方の無いところではあるが、斜めから当てられれば反射したライトが目に飛び込むこともなくなるのではなかろうか。
全て売り物になっているのだけれど、大きさに比例した価格設定。 相対的には安いと思うが、絶対的価格としてはそれなりになってしまうのだけれど、大キャビネくらいの大きさのプリントをアクリル板に貼り付けたものは価格も手ごろで、年末調整やらボーナスやらが懐にあったらコロっと行きたくなるものが何枚も。
Acrylic photos と題されたその小品群は15種類。 サイズは小さいが、その分情報がぎゅっと詰まったような濃密さ。
印刷物になったもの、モニター越しにみるものとは、一枚に込められた情報量が桁違いなので、小さいものでも一枚購って矯めつ眇めつされることをお奨めする。
良い写真には、見るたびに発見がある。
懐都合でプリントは諦めて、部数限定の冊子写真集を購入。
手にしたもので既に51/100. 会期中に無くなるのは目に見えているので、早めの購入をお奨めしておく。
私が良いと思った写真は生憎収録されていなかったが、紙も印刷も良く、プリントそのものと較べれば矢張り落ちるのだけれど払った代価以上の満足は得られた。
杉本有美は撮られ慣れてはいるが狎れたようなような厭味は無く、過不足無く商売用の自分をカメラの前に晒し、カメラマンに委ねている。
正体を表さない食えなさのようなものは有りつつも、隔意がある訳ではなく、只々美しい。
松田忠雄の撮り方も、底の底まで暴くような事はせず、上っ面を撫でてお仕舞いにするような事もしない、程の良い掘り下げ。 生々しく有りつつ、下卑ない。
黒バックにシンプルな照明で撮った "Put on roses" と題された連作の 04 と 06、Acrylic photos の 4 と5 が実に良かった。