昨日のあれは何だったんだと言う感じの平和な開場待ち。
開場前はぱらぱらと云う感じであったが、開演までにはそれなりに埋まった。
「寛政力士伝 小田原遺恨相撲」宝井梅湯
漁師上がりのならず者である荒岩の腕を雷電が閂で圧し折ってしまうと言う凄惨な場面もあるのだけれど、温和な口調もあってめでたしめでたしで終わる。
のんびり見られて、程よく面白くて草臥れない。 こう言う芸も良いと思うのである。
「金比羅利生記 金比羅船」一龍斎貞橘
枕から本編に入っても脱線と余計な入れ事が入って、肝心なところを忘れてしまうようなぞろっぺえなところもあるのだけれど、締めるべきところは背筋を伸ばしてきっちり締めてくる。
梅湯さんは「良い人の良い講談」、貞橘先生は「胡散臭い人の胡散臭い講談」 。
昨日今日ではっきり判ってきたのは、私が欲するのは「胡散臭い人の胡散臭い講談」であると言うこと。
そうならざるを得なかったというのは有りそうだが、ネット上に落っこちてる講釈も「軍記物」「忠臣蔵」「偉人伝的新作」が多く、「感心」「感動」「笑い」ばかりで、猥雑・陰惨なものは見かけない。
これは落語でもそうなのだけれど、救いのない話でも良い演目はある。
探して拾って観て歩きたいと思う。
貞橘先生、来週の朝練講談会にも出演。
一度は観ておきたかったので原宿へ。 まぁ、それで秋葉原でも木乃伊取りが木乃伊になった訳であるがそれはさておき。
事務所の入っているビルの上の階なので、飛んだり跳ねたり多少暴れても文句は出ないと言う事のようだ。
もっとも文句が有っても言いやすい事務所ではないが。
天井や壁に吸音材は貼ってあるが、アリバイ的なものであろう。
その代わり音響や照明には手間も金も掛かっている。
内張りを剥がしたところで天井は低く、舞台は10cmくらいの高さ。
幅も奥行きも取れない代わりにランウェイと言うか出舞台と言うかを設えてある。
それでも上背のあるメンバーは梁に手がぶつかりそうになっていたくらいで、天井そのものが低い。
こんな感じの舞台を取り囲むような客席は、少々高めの座面の椅子を床に螺子で固定。
入口に同じデザインの椅子が積んであったので、多少は増減させる事が出来るものと思われる。
椅子には番号が振って有って、座席指定チケットにはなっているものの、客の間で融通するのは黙認されているようで、座りたい場所がある客は交渉次第ではあるが、目的を達しているように見て取れた。
身の回りの連中の中ではTPD(旧)の客が食いついたので、そっち方面の偏差値とプライド高めの面倒臭い客が主流なのかと思いきやそうでもなく、屋内では帽子は取るものと言う常識を持ち合わせていない手合いが片手に余ったところから考えて、少なくとも偏差値は低そう。
開演時間が迫り、スタッフから携帯電話やタブレットの電源を切るようお願い。
それとは別にメンバーの影アナで注意事項など。
影アナで印象に残った言葉としては「ショー」「ご鑑賞」。
何を提供しようとしているかが読み取れる。
CD発売に伴い、リリースイベントで4チーム中2チームが不在。 留守部隊による公演。
自社楽曲遺産を上手く使った構成だが、その分古さも感じる。
喋る際には生きているマイクも、歌う段になると切られているのか被せが強いのかほぼ生歌感は無い。
それでも歌おうとする意志は感じられて、手抜きとしての口パクではないのが視覚的にも分かる。
自己紹介やらファッションショーやらで花道に出てきてぐるぐる回る場面があるのだけれど、幕内土俵入りの緩い顔見世感が楽しい。
販売されているグッズ類は、メンバーの名前入りTシャツやタオルなど、客の側が忠誠心を示すためのものが多く、メンバーの方もそれに合わせて餌をやったりやらなかったり。
フリの客としてただ見ているだけでもそれなりに楽しくはあるのだけれど、通っている客の多くは曲に合わせて踊り、棒状の光るものを振り、メンバーの名前入りのTシャツを着て名前入りのタオルを掲げて忠誠心を示し、それによって餌を貰ったり貰わなかったりする遣り取りに興じており、ショーの構成もシアターの構造も、そうした楽しみ方に即して作られているように感じた。
花道を挟んで客同士が向かい合う形になるので、相互監視下にあって横車は押しにくいが慣れあいはし易く、集団の中の個人としての振る舞いに長けていればより楽しめるだろう。
私向きでは無いだろうと思っていたが、面白くはあった。
ただ、即物的な楽しみ方(楽しませ方)に寄せすぎている観はあり、或る程度出来上がった物を出して来ていることもあって咀嚼し解釈する愉しみ方には向いていない。
要するに私向きではない。
スイス人傭兵部隊みたいなピンクダイヤモンドと、ランツクネヒトみたいな原宿乙女。
ピンクダイヤモンドの「近代化改修した岡部マリ」と言うか「ノックダウン生産したオリビア・ラフキン」みたいな子がなかなか良く、原宿乙女では「装甲を厚くして突撃砲に改装したマルシア」みたいな人が異彩を放っていた。
こうなるとリリースイベント中のチームも見たくなるもので、知己に手引きしてもらって池袋。
会場は東京総合美容専門学校7Fホール。 こういう箱をよく見つけたものだと思うが、学校だから長期休暇中なら借りやすく、廉価でもあるのだと思う。
客席前方は着席観覧、後方に立ち見の区画を設けていた。
音響は簡素な持ち込み機材で、照明も申し訳程度のものなのだけれど、舞台が高いのでどこに座っても(立っても)舞台全体が見渡せる。
ふわふわ
先に登場して2曲。
練度は高くないが兎に角ありとあらゆる種類の「かわいい」が詰め込まれている。 「かわいい」の飽和攻撃。 呆れるほかない。
蝶よ花よとちやほやばかりはしてくれない事務所ではある訳で、楽しいばかりではない日々の中で、どこ迄やる気を維持させることが出来るか。
大衆に見つかるまでどうにか出来れば、売れるのではないかと思う。
原駅ステージA
叩き上げである。 本来の感情と全く関係のない表情を、作り、維持しながら歌って踊れる地力がある。
高いレベルで安定していてブレが無いことは、時として生ものとしての魅力を削いでしまうことにもなるのだけれど、その辺りは本人たちも分かっているようで、ゆとりが持てる部分では客を煽りに行ったり動きにオカズを入れたりして、その日その時のそのライブでしか味わえないものを出せている。
恐らくはカイロスの前髪をすんでのところで掴み損ねてきた悔恨を、一回々々の仕事を遣り切る力にしているのだと思う。
執拗なまでに多種多様な美形を集めた原宿駅前パーティーズ。
既視感の正体は銀座「白いばら」の「47都道府県から女の子集めました」システムであった。
原駅ステージA・・・第1SS装甲師団
ふわふわ・・・イエニチェリ
原宿乙女・・・ランツクネヒトもしくはフランス外人部隊
ピンクダイヤモンド・・・スイス人傭兵部隊
ライジングが多種多様な美形を揃えて、客を皆殺しに来ているのはよく判った。
余程のグルメでもない限り、自分に合った躓きの石は見つかる。