らくごカフェにはビルの裏から回らなきゃいけないのを忘れていて上がって降りてまた上がる。
「熊田甚五兵衛」田辺いちか
落ち着いた口調、作り過ぎない声。
悪くない。
「真田の入城」一龍斎貞橘
今年はそこら中でいろんな人が演ると思いますが、と前置き。
大坂の陣は終盤だと思われるので、来年の初めまでは使いまわされ続けるネタだと思われる。
「木村又蔵 鎧の着逃げ」一龍斎貞寿
花粉症が酷いと言う話から始まるが実に酷そうであった。
本編に入る前に「木村又蔵が如何に好きか」についてひとしきり。
講釈の愉しさは、実在するんだかしないんだか判らない人物のエピソードが活き活きと詳細に描かれているところにもある。
「相馬大作 最初の本懐」一龍斎貞橘
本所の上屋敷から平井聖天へ野駆けの途中で哀れ藩主は縊り殺されるのであるが、丁度住まっている辺りでもあり、しみじみ聴いた。
<仲入り>
「裸川由来」一龍斎貞橘
青砥藤綱が川に落とした銭を落とした額以上の投資で回収する納得の行くような行かないような美談。
美談の部分より駆り出された人足の狡く情けない部分に重きを置いたような感じで楽しく。
たっぷり五席なのであるが、肩に力が入り過ぎていないので草臥れない。
貞橘先生目当てで行った会だが、貞寿さんもいちかさんも当たりだつた。
昼の会の受付の時に訊いたらまだ空きが有ったので予約を入れて出直し。
「一心太助一代記 喧嘩の仲裁屋」田辺凌天
「寛永宮本武蔵伝 狼退治」神田みのり
講釈で苦手なのは女を全面に出す媚びたようなのと、声が甲高くて耳に付くのと、無理に男になろうとするのなのだけれど、前座二人がそれだったので一と休み。
こなれて来たらまた違うかもしれない。
「寛永三馬術 度々平住込み 」宝井琴調
小津安二郎の映画や先代文楽の落語にも通ずる、「心地よいフレーズ」を浴びる心地よさ。
侍は侍らしく、中間は中間らしく在り、活きた科白が流れるように耳に入ってくる。
「法然上人御一代記 明石定明」宝井琴星
平安時代の地方豪族の話が発端で、法然上人は「のちに法然上人となる少年」としてちょろっとしか出て来ないのだけれど、琴星先生が悪い奴をヤニっこく悪そうに演ると、それだけで面白い。
<仲入り>
「清水次郎長伝 小政の生い立ち」宝井琴柳
最初の師匠の芦州先生の思い出をひとくさり。
「仕事したくないんですよ」「あ、読むのは好きなんですよ。」
なかなかそうも行かないけれど、出来れば好きなことだけしていたいと言う事だと思う。
そのあたりの心持ちと口調に芦州先生を感じる。
三人三様みっちり三席、満足しつつ聴いていて草臥れない。
良い会だった。