今回の副題は「猛暑に負けず、新富町の会議室で鈴木伶奈生誕!今回は久しぶりのチーム曲も披露!もちろん二時間を超える大ボリューム公演!!」。
2時間どころの騒ぎではない長丁場だったが、ダレ場も無く、気が付いたら終わっていた。
今回から入場が整列ではなく呼び出しに変わり、客の側でスマートフォンの画面に整理番号を表示し、番号順に入場。
確かに酷暑の中、短時間とは言え密集して並んでいなければならない必然性は無いし、客の自律性を信頼するところはPIPらしさなのかも知れない。
これまでで最もスムーズな入場。
大規模屋外イベントと日程が重なったので、集客はいつもより少なめ。 特に沸ければ良い系の客にその傾向が顕著。
これはPIPに何を求めてきているのか、その層の優先順位が何処にあるのかが、その選択と行動に影響しているのではないかと思う。
少なくとも私がアイドルに求めるものは、件の大規模イベントには無かった。
入場が一段落し、影アナは空井。 元気がありすぎるくらい元気だが、それだけ充実しているということだろう。
開演時間になり、暗転して出囃子。 曲が終わる頃合で並び終えて一曲目。 入り捌けについても考えられ、練習も重ねられているのが見て取れた。
例によってDreamin' girls から RUN RUN RUN。 狭い所で歌い踊りながら移動するのと、まだ不慣れなのでぶつかりそうになることがあるのだけれど、お見合いになってしまうのはいただけない。 ぶつかってもよいくらいに躊躇無く動き、見切って交わすのが理想。
曲が終わってからの自己紹介は簡潔にして、お披露目の際にざっくり分けた3グループ対抗ので歌とMCの対決。 それぞれ工夫が凝らされていたが、空井がパワーポイントと言う飛び道具を駆使し、自らは脇に回ってメンバーの個性を引き出すのに専念したのは実に良かった。 一歩引く事で空井自身の個性も浮き出ていた。
石川は髪型から衣装から妙に気合が入っており、MCも主導していたのだけれど、漲るやる気は空回りするところもあり、いつも通りのメンバーの中で独り一寸硬いのが気になった。 この理由は最後の最後で氷解するのだけれど、リーダーとしての責任感が石川を育てているのが見ているだけでも判る。
プロデューサーの濱野智史は洗濯し過ぎて透け掛かったパタゴニアのティーシャツに七分丈のパンツと言ういつもの出で立ち。
照明を購入した事を前日の別のイベントで話していたが、早速3つ買い足したとのこと。
ユニットコーナーは入り捌けにしてもマイクやマイクスタンドの扱いにしても、かなりこなれて来た。
セーラー服など、衣装然とした衣装では畳み皺が目立ったが、小道具を含めて充実させようとしているのは評価できる。
リーダーの石川はユニットでもピリピリする気合と、細部まで神経の通った動き。 これがさり気なく出来るようになれば本物。
羽月・濱野(舞)で新カバー曲「ライオン」。
只の鼠ではない二人による金の取れる芸。
小林希望はソロ・ユニット含めて大車輪。 押し付けがましさが無く、丁寧で味のある歌声。 オケはガイドメロディー付きのショボさでも、小林の歌声に説得力が増した所為か気にならなくってきた。
ユニットコーナーのあとは、鈴木の生誕企画。 ソロで一曲歌い終えたところで、本人から辞める旨発表。
石川のピリピリしていたのも、牛島の冴えない顔をしていたのも、鈴木の噛み締めるように歌っていたのも、全てはこの事に起因していた。
知らなかったメンバーの方が多かったと見えて動揺が走り、そこかしこで嗚咽、そして号泣。
本業のイラストの仕事が多忙を極めての決断とのことで、今後はイラストレーターとしてPIPに関わって行きたい、と鈴木。
読み上げられた濱野からの手紙は、まさに担当教官からの惜別の辞であり、文字通りの「卒業」であった。
La Dernière Classe...
このタイミングで新メンバー加入の発表。 新メンバーと言うか「PIP京都」立ち上げのお知らせ。 世界同時革命さながらの無茶な展開。
アンコールの「初恋サイダー」は、派手に泣いた後なので歌い出しが安定せず、悔しそうに声を整えつつ持ち直していく羽月が良かった。
何故斯界で歌われすぎているこの曲なのかと訝しく思っていたが、濱野智史曰く「地下の定番曲ですが、その中でも一番を目指します。」 確信犯だった。
見る度に何かしら変わっているPIP、その多くは良い変化であり、悪い変化も無くは無いが、着実に前に進んではいる。
回を重ねるごとに(まぁ、前回はヒド過ぎたが)ダレ場も減っており、3時間からの長丁場であったが楽しく過ごすことが出来た。
木戸御免でそこにしか金を落とす場所が無いと言うのもあるが、アイドルの接客業としての側面には惹かれない私ですら物販に行くくらいには楽しい。