池袋サンシャインシティの新星堂も、以前は駅に近いスペイン階段を上がってすぐの所にあったのあったのだけれど、商業スペース奥の奥に移転。
迷いつつも開演15分前くらいに現地着。 この時点でつばなれしていないどころかこの先つばなれする気配すらなく、予約済み者の優先入場が始まっても人が増えずに厭な汗が出たが、優先入場が終わった頃合いで客が入り始めて、なんだかんだで50人から入っていた。
店内にも近隣店舗にも時間潰しを出来るところが無く、開演する頃合いを見計らって現場に来た向きが多かったようだ。
ライブは「僕を信じて」「選ばれたから」「きっとぐっとサマーデイズ」「PIP Move On!」の4曲。
曲出しが遅かったり、エコーが強すぎたりしたくらいで、スタッフの仕事には特に問題なく。
危惧されていた「奇声を発しないと死んじゃう系の客」は、口に手で蓋をしてミュートを掛けた上で何やら叫ぶと言う、彼等なりに無い知恵絞って考えた妥協案を提示。
横合いに屯して、時折人波を掻き分けて最前列まで行って戻ってくるってのを繰り返し、拍手の一つもしないしそもそも歌なんざ聴いちゃいないと言う感じで、お行儀自体は地味に悪かった。
「選ばれたから」は長大なソロパートがあるのだけれど、現状で石川について書かれた歌詞しか存在しないので石川以外歌うことが出来ない。
歌詞の書き方についてのメソッドは既に濱野が提示しており、メンバーが下書きをして添削をさせれば良い。 それくらいはやるだろう。
喉を痛めたこともあったか、無理に張るような歌い方をしなくなったのは良い。 聴きやすくなった。
「PIP Move On!」は矢張り私の耳にはまるで引っ掛からず、何等の感興も催さないが、盛り上がる曲に育てようとする意欲は感じ取れた。
空井のMCは例によって旧社会党系の情宣っぽいが、喋り方には気をつけていると見えて、だいぶ柔らかくはなってきている。
小室は一字一句間違えないようにする余り棒読みになっていたが、慣れればこなれて来るだろう。
歌にも振り付けにも喋りにも柔らかさの出ていた瑞野。
トンネルの向こうに見えた光明。
お馴染みのグループ展も6回目を迎え、今回も箱崎のクリエイションギャラリー日本橋箱崎にて開催。
門嶋淳矢
顔の無いヌード5点。
ここ最近のグループ展では色を強めに出す作品が多かったが、一転して落ち着いた色合い。
彩度は抑えているがカラーで、背景や仮面、腰掛は冷黒。 身体は温黒に近く表現。
身体の一部が隠れるようなポーズを付けて構図を工夫することによって、全体を撮りつつ欠損のあるように撮れている。
離れて見るとフォルムに目が行き、近付くと精緻な質感描写に驚かされる。
野澤亘伸
「足舐むる女」と題してタペストリー的なものを7点。
抱え込んでむしゃぶりついたり、ひょいと持ち上げて咥えたり、舐め方も様々に七態。
踏み込んで迫れるから出せる生々しさ。 明るくも湿り気のある写真。
吉田浩之
先日まで開かれていた個展と同様、掛け軸に仕立てたものを5本。
ヌードと言うテーマに沿わせてか、あぶな絵的なものを選っていた。
背景は無く、真っ白な紙に盛装の女性を配しているのだけれど、全体的に明るくカラリと描かれた中で陰になる部分があり、そこだけ湿り気を帯びた肌が覗き、目が吸い寄せられる。
小池伸一郎
2:4:4くらいの割で夜空、夜景、地面。 その地面の暗がりの中に写るか写らないか朧ろげに浮かび上がる裸婦一対。
スタジオなのかロケなのか、はたまた合成なのか判然としないが、表情が読み取れるか読み取れないかギリギリの暗さ。
3枚でそれぞれ微妙に照明を当てる角度が違っていたのだけれど、あれは意図したものだったのだろうか。
上野勇
畳の上に寝転んだり絡みついたり炬燵に入ったりするさまを、真上からと横から。
ざらついた紙に濃緑の縁を付け、畳に見立てたようなプリントをイーゼルに立て掛けて展示。
寄って細部を見ようとすると、横からの照明が邪魔になる。
一寸引いて見ると、丁度上から見下ろす格好になる事に気付いた。 屋根裏の散歩者の視点。
ゾクリとする背徳感。
松田忠雄
パネル5枚、それぞれにテーマがあり写真が3~6枚。
プリントが美しい。 肌であったり空であったり、白と灰色、黒と灰色の間の諧調が豊かで、且つ眠過ぎることも無い。
周辺を心持ち焼き込んだようなものも、それが解るか解らないかのところで抑えてある。 程が良い。
各パネルに一枚は好みの写真があり、被写界深度浅めのものに心惹かれる。
ピントの置きどころや深度がピタリと決まり、それでいて決まり過ぎていないから息苦しさが無い。
released from nude の左下。
attached a rubber の真ん中。
remove the eyeglass の下。
transfer of the lace は右。 芯のあるブレボケ。
flutters something の左端。 水玉のワンピースがボケと光線の加減で鹿の子絞りのように見えるのが面白い。
三輪憲亮
湊莉久を撮ったものを大小取り混ぜてズラリ。
髪のあしらいやメイクで描き分けて二態。 表情の切り取り方は悪くない。
ただ余白が多く、今一つ寄り切れていない事から来る隔靴掻痒感は有る。
矢鱈と点数が多く、散漫で冗長。 プリントはコッテリ色を盛った塗り絵。
これが良いと感じる向きもあるのだろう。
湊莉久の客相手であったようだが、自分の展示スペースの前で延々と自作を語る独演会。
自作を語りたくなるのも分からないではないが、先ずは写真で語るべきだと私は考える。
写真より撮り手が饒舌と言うのはぞっとしない。