「PIP思想の良質な部分を継承した、都市とメディアとアイドルを横断する意欲的なプロジェクト。」と言う感じの戯言が流れて来たので、確認するために足を運んでみた。
開場5分前くらいに現地へ。 既に開場を待つ行列が出来ていたが、主催者による整列などは行われず。
ライブハウスの告知ページに予約フォームが有ったのでとりあへず予約を入れたら確認メールが来たのだけれど、入場時にそのあたりの確認は無し。
PIP: Platonics Idol Platform のノウハウはこの時点で既に生かされていないことが分かる。
見たところ PIP: Platonics Idol Platform からの客は少なめ。 開場と同時に入った客は4~50と言ったところであったが、徐々に増えて開演までに二回ほど影アナでお膝送りのお願い。
お披露目から大入りと言うのは幸先が良いが、入れなかった客への対応は満員で入れない旨の貼り紙一枚。
木で鼻を括ったような対応に、入れなかった知己は憤慨していた。
舞台の奥の壁に白い衣装が掛け並べてあって、無言で出て来たメンバーがそれを身に纏い、整列したところでライブが始まった。
全員サングラスを掛け、動いて落ちるのを防ぐためか黒いレースのリボンを巻いてあるから表情どころか面相もはっきり見えない。
自己紹介もしないので誰が誰なのかも知り得ないし、そもそも何人出て来たのかすらだにも分からない。
メンバーは楽し気に喋ったり歌ったり踊ったりしているが(スタッフも楽しそうであった)、何の説明もなく手前勝手な世界観を押し付けられ続ける我々は良い迷惑であり、最前列に張り付いた客と後方でオダを上げている連中がワイワイやっている他はおいてけ堀を喰らって困惑の体。
グループ名の表記は ・・・・・・・・・ なのだけれど、
「読み方は決まっていません」「皆さんで決めてください」
マークになってしまった時のプリンスですら、読み方についてのルールはあったが、それすらも無い。
図に示した通り、検索エンジンからも拒否されてしまう。
読めない上に検索すら出来ないグループ名を付けてしまうと言うのは、全く理解できない。
面倒なので以下「ナカグロ(仮)」と表記することにする。
メンバーの心拍が感じられると言う小道具も回ってきたが、そもそもどのメンバーのものかも分からないし、そのメンバーについての情報も提示されていない。
何の思い入れも無い状態でそんなものを渡されても気味が悪いだけであり、客席を盥回し。
演る曲はと言えば、別にアイドルがやる必要も無さそうな当世風のロック。
振り付けや歌は、お世辞にも上手いとは言えないが、上手くなくても良いと思ってやっていそうな捻りの無いもの。
前述の通りサングラスを掛けっぱなしで表情も面相も窺い知れないのだけれど、その奥にあるものに興味を持たせるような演出も無い。
これは中の人が誰でも良いと言う事なのかもしれないが、メンバオーディションに落ちたと話している女子が見に来ていた。
コンセプトも杜撰に過ぎるが、何も考えないで考えたふりをしているのだろう。
ボーカロイドが歌っている間に踊っていたり、直立不動で立っていたりするのまでは我慢して見ていられたが、最後が酷かった。
ひとり一冊文庫本を持って並び、インストゥルメンタルの曲に合わせて朗読を始めるんだが全く聞き取れない。
そのうちに文庫本のページを破り捨て始めた。
書物は人類の叡智を象徴するものであり、それを破り捨てるのは文化文明の否定である。
何らかの寓意が込められていたのかもしれないが、実に不快だった。
そして曲の終わりとともに全員が倒れ込み、開演時に着込んだ白い衣装を脱ぎ捨てて楽屋へ引っ込んで行く。
全員が引っ込んだ頃合いに楽屋から「ありがとうございました!!」と叫び声。
客電が灯って終演。
コンセプト倒れと言うかコンセプト負けと言うか、小一時間拙い自慰を見せられたような後味の悪さ。
本を破いて捨てるのは文化文明の否定であり、顔を見せない名前も明かさないのは個の人格の否定である。 それをインテリ崩れの大人が指示して、良く分かってない子供を使嗾してやらせる。
さながらクメール・ルージュ。 醜悪以外の何物でも無い。
「ナカグロ(仮)」は PIP: Platonics Idol Platform の遺伝子など欠片も無い、天一坊みたような食わせものだった。
映像記録スタッフとして元PIP: Platonics Idol Platformの瑞野が入っていたが、元演者として演者の人格を否定するようなもの、PIP: Platonics Idol Platformの後継者を僭称するような紛い物に関わることについてどう考えているのであろうか。
PIP: Platonics Idol Platform のお披露目は、駄目なりに良かったと言うか、その後の展開に希望を持てるところがあったが、「ナカグロ(仮)」のお披露目は、其の底に希望すらだにも残らない、絶望のみが詰まったパンドラの匣であった。