向井地美音
表紙と巻頭13ページ14カット、見開き1か所、撮影は山口勝己。
全篇スタジオ撮影だが、魔法少女がテーマになっており、ベロア地のワンピースは真紅。 バックルがリボンになっている、ワンピースより少し明るめの赤のベルト。 黒いレースの縁取りのある猩々緋のケープ付きマント。
足元は白のロークルーソックスに黒のアンクルストラップ付きパンプス。
これが1パターン目の基本の出で立ちで、徐々に薄着になり、ベロア地のビキニは矢張り真紅。
ビキニのみになると、足元は赤いオーバーニーのタイツに。 厚手のものだが、ここはこれが良い。
2パターン目は森の中で動物と戯れるような場景で白のキャミソールとショートパンツ。
髪は湿らせて、ざっくりとお団子に。
3パターン目はお団子をほどいたような髪型で白ビキニ。
床に描かれた魔法陣の上に寝そべる形。
状況ごとに表情の出し方も変えており、大道具小道具の扱いも上手い。
ただ手に持ったり掴んだりするのではなく、その行為に何かしらの意味を持たせている。
モデルと言うより役者なのだと思う。
その時々でやるべき事のヒントを与えると、「役」として消化して出してくる。
それを写真として固定する役割を担うのが山口勝己と言うのも、実に任に合った人選。
子役上がりの喰えない仕事師としては大島優子に通ずるところがあるが、大島ほどの過剰さはなく、胃もたれするような写真にはならないのは良い事なのか悪い事なのか、未だ一寸判断が付きかねる。
ただ、大きな役を振ればそれだけの仕事はする。 これだけは間違いないと思う。
朝長美桜
10ページ14カット、見開き1か所、撮影はサトウノブタカ。
固まった笑顔が自棄に多いが、レンズを見ると硬直する傾向があるのでその中でも見られる表情と言う事で笑ってもらっているのだと思われる。
6ページ目のカメラを見ないカット。 これのみ例外的に柔らかい表情。
ポーズの面でも苦心惨憺は偲ばれる。
村山彩希
9ページ14カット、撮影はHIROKAZU。
表情は諧調に乏しいが、カメラと素で向き合えているのは良い。
ウエストの位置が高く、スラリと細いのにデッコマヒッコマは合って水着映えしており、水着になっても表情が強張らないので使えるカットも多かったのではないかと思われる。
思わぬ拾い物。
佐藤七海
7ページ9カット、見開き1か所、撮影は門嶋淳矢。
AKB48でも、チーム8は乃木坂同様、いやそれ以上の縛りがあるようで、グラビアでも水着になることは無い。
そこが使い難さに繋がっているのか、素材の割に引き合いが無い。
ここが頭の使いどころであって、工夫次第で訴求力のあるグラビアを組み立て得ると言う絵解きの9カット。
藍色で白い丸襟の付いた古風な七分袖のワンピース。 袖口とウエストも白で纏めてある。
ウエストは緩めなのだけれど高い位置にあり、細かい襞のプリーツスカートの部分は長めなのだけれど、丈としては膝上10cmくらいと短い。
足元は白のソックスに黒のアンクルストラップ付きパンプス。
肩まである髪は真っ直ぐに下ろし、夏蜜柑の木陰に佇む姿から。
一寸斜に構えて立っているだけなのだけれど、身体の脇に添えた手は力を抜いて握るでもなく開くでもなく、所在無げな感じも良い。
撮られ慣れていない被写体を扱う門嶋淳矢の丁寧な仕事。
白のタンクトップとホットパンツの部屋着的なものは規制を守った上で肌と身体の線を見せる為の工夫なのであるが、佐藤七海の表情が硬くないのは撮影現場の空気の良さのお陰だと思う。
一と昔前のアイドルの歌衣装のような物を着ても微笑みを湛えてはいるが表情としては単調で、物足りなさは感じなくもないが、それでもカメラの前で作った表情で固まってしまっていないのは良い。
佐藤七海の魅力は充分引き出され、伝わっていると思う。
志田愛佳
10ページ9カット、見開き1か所、撮影はサトウノブタカ。
青藤色のブレザーに緑のタータンチェックのスカート、リボンタイは太めの緑。
シャツの第一ボタンは留めていないのだけれど、これがブレザーを脱いだりタイを緩めたりすると効いてくる。
キリッとしていたのが、徐々に気だるげに。
制服ではカメラを見据えるような表情だったのが、部屋着になると一転して柔らかさを見せたり、ページを繰るとカメラを見つめていたりする編集の妙。
最後は淡いピンクのワンピースで動と静。 翻弄されるのを楽しむ9カット。
廣田あいか
8ページ11カット、撮影は西村康。
昭和40年代から50年代にかけての調度に囲まれ、衣装を纏い、時が止まったような、薄気味悪さすら漂う空気の中で、あまり表情を作らずに立つ様に廣田あいか。
意図したとおりのグラビアにはなっていると思うが、見ていて気持ちの良いものでは無い。
カントリー・ガールズ
8ページ13カット、見開き1か所、撮影は佐藤裕之。
濃い目のアイラインに大げさなカラーコンタクト。
素材の力が強い嗣永桃子以外、個性が殺されてしまっている。
「素材を矯めて殺す」
ハロープロジェクトの悪弊が色濃く出た13カット。
浅倉樹々・山岸理子
7ページ8カット、撮影は西條彰仁。
屋外で撮った分は少々眩しげではあるが、それでも光を弱める工夫はしてあって、表情に破綻は無い。
屋内撮影分は非常に上手く光を廻してあって、顔の立体感も出しつつ、良いところを切り取っている。
浅倉樹々は振れ幅が狭く、安定しているが、山岸理子は光の当て方や切り取る角度によって当たり外れが大きい。
今回の山岸理子は大当り。
中元日芽香
10ページ13カット、撮影は長野博文。
出来として悪くは無いのだけれど、これだけしか引き出せなかったのかと言う不満はある。
長野の光の廻し方で長野の色、長野の写真特有の被写体を動かしてかっちり決めない構図。 最低限の仕事はしているのだけれどルーティンワーク以上のものは無く、やはり物足りない。
松村沙友理
10ページ12カット、撮影は熊谷貫。
細くて長くて昔ながらの店も残る、キラキラ橘商店街である。
肉屋の店先でコロッケ(と思しきもの)を齧り、キラキラ会館の向かいの花屋で鉢植えを眺め、ハトヤのコッペパンを頬張る。
塗ってもらったのはジャムだろうか、ピーナツバターだろうか。
カットソーにペナペナのスカート、パーカーを羽織ってバスケットシューズで買い物。
靴がコンバースのキャンバス オールスターであったり、パーカーのフードがチェックの裏地付きであったり、細かいお洒落が鄙には稀な感じを醸していて良い。
中盤は暗めの屋内で、熊谷貫らしい寄った構図でぐいぐいと。
虚ろな眼差しと閉じきらない唇。 吸い込まれるような負圧を感じる表情。
迫る熊谷貫を押し返すでもなく受け流すでもなく、ぴたりと止めて或る程度以上に距離を詰めさせない。
ビルの屋上を歩く2ページは蛇足なのではないかと思いながら眺めると、松村沙友理の陰と陽の振れ幅の大きさが現れていて、これはこれで良く見えて来る。
松村沙友理の魅力は「負圧」と「柔らかな拒絶」にあるのではないかと、ふと思った。
折れ口
想定読者のひとりであった旧友のR君が亡くなった。
長らく有難う。