その日見たいものがその日見たいかどうかはその日にならないと分からない。
ふらっと行って入れるのが、それでも客はある程度いるのが、そして混みすぎないのが理想。
演者からしてみれば予約が入ることで安心できると言うのはわかる。
しかし縛られたくはない。
朝練の常連客は、開場してから開演までの時間に三々五々やって来る。
それなりに埋まって開演。
「藤堂高虎 出世の白餅」田邊いちか
「紺屋高尾」一龍齋貞橘
いちかさんは良い意味で図太くなったと言うか、物に動じなくなった。
安心して聴ける。
貞橘先生、例によって脱線を繰り返すがなんとか戻ってくる。
盛り上がってきたところではぐらかす。 間合いを一寸外す。
で、締めるところは締める。
誰が良いですか、ひとに訊かれたら「貞橘先生」と答えている。
講談にしても浪曲にしても、朝練講談会は顔付けも敷居の低さも「入り口」として好適。
千円持ってふらりと行けば確実に楽しめる。
桑原みずき、桑原彩音姉妹率いるレビュー集団「ツルノヒトコエ」が何故か団地のお祭りに出ると言うので見に行ってきた。
豊島五丁目団地は豊島区も外れ。 江北橋を渡れば足立区。
環七の西新井大師付近から江北橋を渡って明治通りに出る古い参詣道路の途中にある。
鉄道駅は遠く、何路線か通っている都バスが主たる交通手段。
王子駅前からが一番早い。
急拵えの舞台では、吹奏楽やダンススクールの発表会などが行われ、その流れで「ツルノヒトコエ」。
何故このお祭りに出て来るのか分からなかったのだけれど、次回公演を日暮里辺りの劇場で打つかららしい。
直線距離としては遠くないのであるが、交通の便で考えると近くもない。 やはりよく分からない。
歌い手抜きのダンサーのみの編成。
桑原姉妹は喋りは達者なので間延びはしないし、踊る技術と練度に関してはケチのつけようがない。
ただ、如何せん曲が古い。
分かり易さを採ったのかもしれないが、「ダイヤモンド」と「年下の男の子」で耳目を集めることは出来ない。
やっている事自体のレベルは高いのに、見せ方が上手くないのは勿体無い。
「凄いもの」ではなくて「凄そうなもの」に人は集まる。
虚仮脅しみたいな事を好んでやる桑原ではないだろうし、今のやり方でも興行としては続けられているので、これはこれで良いのかもしれない。