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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


ペトリあんてな
二面楚歌 断章
二面楚歌 グラビアレビュー備忘録
寒空文庫(仮)
写真日記二面楚歌 隠居所
petri's fotolife
酒田へ行きたい
ザ・インタビューズ

投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2016-11-20 ひとつき十冊 [長年日記]

_ 第23回「ひとつき十冊」(11月19日(土) 神奈川公会堂和室)

先月見に行った好事家が集まってその月に読んだ本十冊について語り合うイベント。
今月は出る方に混ぜていただいた。
喋る人は丸岡巧(漫画家/イラストレーター)、倉庫の二階 村田席亭(演芸コンサルタント)、墨田ペトリ堂(好事家)。
司会はドジブックス 佐藤晋(古本屋)
それぞれのリストは以下の通り。

丸岡巧
ロマン優光「間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに」(2016/コア新書)
町山智浩「さらば白人国家アメリカ」(2016/講談社)
畑中純「愚か者の楽園」(2000/新潮社)
いましろたかし「新釣れんボーイ」(2016/エンターブレイン)
彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」(2016/光文社文庫) ※親本・2014
村上春樹「職業としての小説家」(2016/新潮文庫) ※親本・2015/スイッチパブリッシング
広瀬和生「僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集」(2016/淡交新書)
立川志らく「雨ン中の、らくだ」(2012/新潮文庫) ※親本・2009/太田出版
「落語とメディア」展パンフレット(2016/早稲田大学坪内博士記念演劇博物館)
「この世界の片隅に」劇場パンフレット(2016)

倉庫の二階 村田席亭
スペンサー・ジョンソン「チーズはどこへ消えた?」(2000/扶桑社)
吉行淳之介「夕暮まで」(1982/新潮文庫) ※親本・1978
天津木村「天津 木村のエロ詩吟、まだまだ吟じます。」(2009/河出書房新社)
朝井リョウ「少女は卒業しない」 (2015/集英社文庫) ※親本・2012
加藤千恵「卒業するわたしたち」(2016/小学館文庫) ※親本・2013
川上弘美「ニシノユキヒコの恋と冒険」(2006/新潮文庫) ※親本・2003
春日太一「鬼才 五社英雄の生涯」(2016/文春新書)
ロマン優光「間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに」(2016/コア新書)
市川しんす アダム徳永・監修「スローセックス相談所」(2010/講談社)
愛内なの「どんな時でも巨乳女子と子作りOK!! ~目が覚めたら全ての女が俺に惚れていた!?~」(2016/ぷちぱら文庫 Creative)

ドジブックス 佐藤晋
外山滋比古「思考の整理学」(1986/ちくま文庫)
内村光良「アキオが走る」(1996/角川書店)
村田席亭「業務日報」1~5巻(2006~2008/倉庫の二階)
矢野誠一「落語とはなにか」(2008/河出文庫)
南原清隆「僕の「日本人の笑い」再発見 狂言でござる」(2010/祥伝社)
丸山健二「田舎暮らしに殺されない法」(2011/朝日文庫)
前田敦子「前田敦子の映画手帖」(2015/朝日新聞出版)
「ユリイカ」2016年6月号 ※特集・日本語ラップ (青土社)
「BRUTUS」2016年11月15日号 ※特集・漫才ブルータス (マガジンハウス)
「ヒトハコ」創刊号(2016/書肆ヒトハコ)

墨田ペトリ堂
成島柳北「柳橋新誌」(1987/岩波文庫)※1刷1940
齋藤緑雨「かくれんぼ 他二篇」(1991/岩波文庫)※1刷1939
大杉榮・伊藤野枝「二人の革命家」(1985/黒色戦線社)
子母澤寛「味覚極楽」(昭和63年/中公文庫)
青木正児「華国風味」(1984/岩波文庫)
平井正「ゲッベルス」(1991/中公新書)
太宰治「もの思う葦」(昭和54年/新潮文庫)
立川談志「談志楽屋噺」(1990/文春文庫)
東京都写真美術館「ドキュメンタリーの時代 名取洋之助・木村伊兵衛・土門拳・三木淳の写真から」(2001/財団法人東京都歴史文化財団)
JOHN R.BAIRD「collecters guid to KURIBAYASHI-PETRI cameras」(1991/CENTENNIAL PHOTO SERVICE)

全ての本について語り切れるはずもなく、それぞれが選んだ十冊について簡単に説明した後、旬な話題にまつわる本などから。

ロマンポルシェが「浅草おにいさん会」にどの時期からどういった経緯で出演していたのかの検証から騒動の経緯を考えたり、広瀬和生「僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集」から落語家同士の対談があまりない理由を考えたり、縦糸と横糸が意外な形で織られて行って、思いもつかなかった図柄が現れたり、有意義な3時間だった。
日本語ラップのルーツが企画もののノベルティーソングにあり、新しいジャンルの音楽が持ち込まれる際にはえてしてそうなってしまうと言う話。 日本語をリズムに乗せようとすると、どうしても阿呆陀羅経のような音頭のような感じになってしまい、その実例とそこから抜け出す苦労を実際の音源から辿れたのも有意義だった。
予想通り聞いているだけより話の輪に入った方が愉しい。

私が興味を引かれたのは丸山健二の「田舎暮らしに殺されない法」。
一文の長さが異常で噛んで含んで回りくどく、ねちねちと読者を殺して行く理想の文章。
これは探して買いたい。

_ 朝練講談会(第206回)「吉例 芝居名優役者列伝」

混むであろうと踏んで早めに出て、九時前には着いたのだけれど既に蕎麦屋の先まで列が伸びていた。
こうなると椅子席は選びようがないので久しぶりに桟敷へ。
百人から入ったとの事。

「中村仲蔵」神田松之丞
門閥の無い役者が努力と機転で這い上がっていく様に焦点を当てた演出。
仲蔵を押し上げていくものが「四世団十郎の引き立て」「己の力」「客の後押し」に絞られていて、女房のお岸も師匠の伝九郎も出て来ない。
蕎麦屋で見本になる侍と出くわす時も観察するのみで会話は無し。
主題を「大部屋の役者がのし上がっていく様」に絞って枝葉を削り、幹を太らせて力技で押して行く。
話をぬるくする要素は徹底して省かれ、仲蔵は苦悩を通り越して苦悶の体。
役の工夫は成功するのだけれど、これで安泰とは到底思えない。
よかったよかったにはならない重い一席。

「名人小團次」一龍斎貞寿
善意を善意として受け取れなかった若き日の過ちのエピソードから、時が経って初めて判る人の心について語り、熱せられた客席を常温まで戻してから読み始める。
モールス信号のように細かく刻むリズム、丸いが角はある発声、芝居掛かった科白廻し。 しみじみ聴く。
貞心先生の口調を消化しつつ、貞寿さんなりの講談を読めるようになって来ているタイミングでの真打昇進。

大入りになるのも納得の二席。
私の好みに合うか合わないかと言う話になると、まぁ合ったり合わなかったりなのだけれど、凄いものを見たのは間違いない。



「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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