表紙と巻頭グラビアに篠山紀信の撮ったAKB48。
グラビアは16ページで、見開きで7カット。
これ迄のAKB48劇場でのステージ写真は、巻末で篠山が語っている通り、確かに詰まらない物は多かった。 然し乍ら篠山の写真も褒められた出来では無い。
撮影時に感度の設定を上げられるだけ上げてシャッタースピードを稼ぐ事自体は悪くない。 しかしそれが行き過ぎていて、ストロボを焚いて止めるよりはマシだが、瞬間が固定され過ぎていて生々しさがまるで無い。
その場にある筈の熱気や音は写り込まず、温度も音も無い世界。
AKB48劇場に渦巻く"あの熱気"を写真として表現出来ておらず、上っ面を削り取った鉋屑のような写真になっている。
公演を一回や二回、招待席で踏ん反りかえって見たくらいで判った気になっているのも片腹痛い。
公演の中で、何処で何が起こるのかを頭に入れて、それを切り取れる適切な位置から撮るのが舞台写真だと私は考えている。
公演の流れのみならず、何処に誰が居て何をやっているのか。 前列で踊っている連中だけが輝いている訳ではなく、後列に埋没しまいとあがく輝きもあれば、後列から客席を俯瞰するような醒めた眼を見せる鈍い光を放つ者もいる。
柱の陰の碌すっぽ見えない席にだって、そこからしか見えない光景はあるし、お立ち台の端からしか劇場全体は見渡せない。 撮り易い位置からだけ見ていては、劇場公演が人を惹き付けた理由は判らない。
下手な鉄砲ではないから数撃ちゃ当たるんだと篠山は胸を張っているが、十分下手な鉄砲であり、威張れた出来では無い。
さらっと見て流す分には綺麗に撮れているが、見れば見る程不愉快。
きれいきれいに撮れてはいるが 写るすべてが上っ面
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