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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


ペトリあんてな
二面楚歌 断章
二面楚歌 グラビアレビュー備忘録
寒空文庫(仮)
写真日記二面楚歌 隠居所
petri's fotolife
酒田へ行きたい
ザ・インタビューズ

投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2011-08-22 Nec spe nec metu [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2011 38号

柏木由紀
7ページ6カット、オマケで両面ピンナップ。 撮影はTakeo Dec.
柏木由紀のグラビアが面白かった事はついぞ無いので期待もしていなかったが、これまで見た中では一番。 通り一遍の撮り方では現れない柏木由紀の生の感情のようなものが写りこんだ稀有なグラビア。

紋切り型の表情は例によって例の如くで、全く以って詰まらないのだけれど、分かりやすい物のみを求める層への訴求力はあるのだろう。
これはカメラマンが下手な訳でも、柏木がモデルとしての仕事をしていないと言う事でもなく、柏木由紀と言う人の個性の発露。
上っ面だけで金になるグラビアを作れる柏木が凄いか凄くないかと言う話になると、間違いなく「凄い」のだけれど、これが面白いか面白くないかと言う事になると話は別で、見ていて欠伸が出るくらい詰まらない。 退屈の極み。
そんな中でも鏡に囲まれたカットだけは別で、柏木由紀の生の感情のようなにものが写り込んでいる。
土門拳が梅原竜三郎を、林忠彦が谷崎潤一郎を撮る際に試みた手法に近いものを Takeo Dec. が意図して試みたかどうかは判らないが、(それが正の方向に振れたものではないにしても)被写体の感情の揺らぎを呼び起こして、九本くらいは有るであろう尻尾のうちの少なくとも一本くらいは写し取ることに成功している。

柏木由紀本人は(そして事務所も)「是」とはしない類の写真ではないかと思うのだけれど、上っ面のグラビアでは何時か飽きられる日が来る。 その時になってから縄を綯っても間に合わない。
今回のグラビアで何がどう撮られ、何が採られて何が棄てられたのか、そしてそれは何故なのか、今のうちに考えておくことをお奨めする。

AKB48
巻末グラビアページに、今年も例の茶番絡みの水着ムック本の宣伝グラビア。
撮影者のクレジットが入るべきところに入っておらず、誰が撮ったのかと思ったら今村敏彦。 お疲れ様でした。
そして何時の間にかシレッと神が一人増えている。 御同慶の至り。

ぐるぐる48 vol.19
カラー1ページ1カット、モノクロで2ページ6カット。 モノクロまで桑島智輝の撮影と言う贅沢。
企画の趣旨と多田愛佳の思考と嗜好が噛み合って、読み物としてもグラビアとしても面白く仕上がっている。
意図した通りに動いてくれない難しさは有ると思うが、嵌まった時の多田愛佳は面白い

_ UTB+ 2011 9月増刊号 続

島崎遥香
6ページ6カット、撮影は國方大。
島崎遥香と言うと思い出されるのが週刊プレイボーイの 2010 No.09 (※その時のレビューはこの辺に。)
抜擢はされたものの引き攣り笑顔が痛々しく、印象は良くなかったし、その後は運営の方針変更なのか依怙贔屓に近い扱いも沙汰止みになったので目にする機会もなかったのだけれど、久しぶりに現れた島崎遥香はまるで別物になっていた。
メディア露出が少ないにしても劇場公演で客前に立つ経験と言うのは矢張り馬鹿に出来ないもので、物怖じせず・気負わずにカメラの前に立てている。
研究生公演を避けて通っているうちにAKB48劇場とも疎遠になってしまったのだけれど、こういう化け物が研究生として板の上に居たかと思うと、今更ながら臍を噛んでいるところ。

屋内での白ビキニには緋色の布を、屋外での白いワンピースには稲荷社の朱の鳥居をあしらう、何かの暗喩であるかのような構成。
水着も悪くないが、白ワンピースの写真の方がより凄みがある「目で殺せる」グラビア。 それも睨めつけて射竦めるのではなく、ニッコリ笑って人を斬るタイプの。

ワンピースの丈の短さ、肌の白さ、何か問い掛けるような瞳にドキリとさせられる。
これはもう騙されても良い、寧ろ騙されたい。 Femme fatale と言う躓きの石は、思わぬところに転がっている。

これまで「撮られる仕事」としては、流れ作業で撮られて作り笑顔を強制される生写真の撮影くらいしか無かった筈だが、下手に撮られ慣れた連中よりも放つ輝きは強い。
媚びたところも無く、かと言って突き放すでもなく、イザベッラ・デステのような強靭な意志を湛えた表情。 タチの悪そうなところがまた良い。
「夢もなく、恐れもなく」、か。

今年見た全てのグラビアの中でも屈指の出来。 島崎遥香の今後には大いに期待したい。

小木曽汐莉
5ページ5カット、撮影は桑島智輝。
制服衣装で2カット、薄着の部屋着で3カット。
公式ブログの本人エントリに上がる写真は岡本太郎にインスパイアされ過ぎた、目を見開いて硬直したようなものばかりだが、桑原みずきの撮ったものはわりかし可愛らしく撮れている。 今回のグラビアはその中間くらいの出来。 貶すほど酷くはないが、褒めるほど良くもない。
表情が単調で、可愛らしく撮られようとする意識が強く出すぎてしまっている。
ただこれは自らの可愛らしさに過剰な自信を持っているからではなく、寧ろ自信の無さから頑張り過ぎてしまった結果なので、あざとさや厭味は無い。
素材は良いのだからもう少し肩の力を抜けば良いと思うのだけれど、それも簡単には行かないのだろう。
どうしても目を見開く癖があるので、次回はもう少し光を弱めに撮って頂きたい。

高田里穂
制服、部屋着、水着取り混ぜて、最新写真集からの先行掲載で6ページ7カット。 撮影は佐藤裕之。
正面から光を当てて正面から撮るとノッペリして見えるのだけれど、実は立体感の有る顔立ちで且つ可愛らしく(美しく)見える角度が非常に広い役者向きの顔立ちの高田里穂を、当てる光や撮る角度に変化を付けて実に上手く撮っている。
2ページ目下段と6ページ目の横顔が良い。
斜めから当てた光で陰翳を付けて撮ると、正面からでも立体感が出る。

森田涼花
6ページ8カット、撮影は桑島智輝。
雨だったらしく、屋内で着衣と水着。 小道具としてカメラやら文庫本やら。
カメラの持ち方や覗き方が素人丸出しで興醒めなのだけれど、小道具に意識が行った分、表情は柔らかい。
底意の透けて見える陰惨なグラビアが多い森田涼花だが、今回は水着も含めて綺麗に撮って貰えている。

秋田成美
4ページ7カット、撮影は佐藤裕之。
今月も東宝シンデレラオーディションから一人。
このオーディションが流行り廃りとは離れたところで原石を掘り当てようとしている事が、こうして並べて見せられるとよく解る。
横須賀から自然豊かでのどかな島となると、ロケ地は猿島ではないかと思われるが、周りを気にせずに撮り撮られると言うのは、撮影慣れしていないモデルの為にも、写真の仕上がりの為にも良い。
林の中で撮った2ページ目上段と3ページ目が良い。
3ページ目は狙ったところに来なかったのか、狙ってこうしたのか、奥の瞳に焦点を合わせたのが写真の味わいを深めている。

スマイレージ
6ページ6カット、撮影は佐藤裕之。 新メンバー加入前最後のグラビア。
集合1ページずつで個別カットを挟む構成。
集合は一寸眩しそうだが、個別はまあ良い出来。 小川紗季が柔らかい表情。
しかし最近は「串刺し」とか「首切り」とか、そう言う事を忌避しなくなったのだろうか? これがチト気になった。

鞘師里保
矢張り渡辺達生には明るい屋外で撮らせちゃいけないと今更ながら。
良いと思えるのは4ページ目のみ。 あとは無理に目を見開いて硬直した表情が並ぶ。
折角の素材に「グラビアは頑張って目を見開くのが仕事」と思われては堪らない。

真野恵里菜
6ページ5カット、撮影は佐藤裕之。
栗山秀作撮影の最新写真集で一と皮剥けた感のある真野恵里菜。 写真集からの蔵出しも漸く終わり、この号から新展開なのだけれど、これもまた文句無しの出来映え。
明らかにそれと判る笑顔は1カットも無いのだけれど、笑っては居ないが機嫌が悪い訳でも悲しんでいる訳でもない、如何様にもとれる表情で5カット。
ピアノを弾く2ページ目が秀逸。 思わず引き込まれる。
ピント、露出、構図、モデルの動き、籠められた感情、全てが噛み合って撮れた一枚。
この一枚だけでも1200円の価値は有る。 このカットだけで売って欲しいくらいの、一枚で語り切れる写真。 眼福。

NMB48(山本彩、渡辺美優紀、山田菜々、吉田朱里、小笠原茉由、近藤里奈)
8ページ8カット、撮影は細居幸次郎。
スマイレージと同じく、集合で個別を挟む構成。
写真映りのあまりよろしくない渡辺も、まぁ及第点。 山田、吉田、近藤あたりも良い意味で撮られ慣れて来つつあり、うかうかはしていられないのではないかと思うが、気負ってどうなるモノでも無いので、頑張り過ぎないようにしていただきたい。
渡辺の場合、写真映りが悪いと言うより「撮り難い」と言った方がより正しいかもしれない。 カメラマンの側が撮り慣れてくれば、また変わって来ると思う。 今のところ良い方に転がっている。
吉田朱里が面白い。 澄ましすぎないところが良い。

総評
指原莉乃や島崎遥香も素晴らしかったが、真野恵里菜には驚かされた。 写真集一冊で一と皮剥けた、・・・と言うか「化けた」。
笑顔以外の表情に幅と深みが出たので、これまで以上に笑顔が輝きを増す。
紋切り型の作り笑顔でグラビアをこなしているだけでは到底辿り着けない高み。

_ 島崎遥香は「育った」

危惧は杞憂に終わったようです(今のところは)。


「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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