川崎駅前のショッピングモール、ラゾーナ川崎の5階にある「プラザソル」にて、ヒロセプロジェクト・第13回目公演『キミと星空に未来を描いた日』を観覧。 客席も舞台も、奥行きはあまり無いが幅は有る、思ったよりしっかりした劇場。
全席自由だったが、私が好んで座る舞台も客席も見渡せる席は例によって不人気で、あらかた埋まった中でもぽっかり空いていた。
裏にいる裏方はどうだか判らないが、場内整理や物販などに携わる、表に出る裏方は総じて若い。 場内を廻る物販や膝送りのお願いなどで押しが弱いところはあったが、仕事そのものはきちんとしていて悪く手馴れたところが無く、好感が持てた。
客層はキャストの父母や家族、この送り手の固定客と思しき筋、そして客演のジュニアアイドルやプレアイドルの客など種々雑多。 センターブロックの最前列と二列目は子供用になっていたが、その後ろにズラリ雁首を並べるアイドル方面と思われる出席確認強要系田舎大尽客。
この手合いが早くから並んで最前列に陣取る為に、後ろに座った子供が見えないと言う御意見が寄せられ、対策として子供席が作られた由。 良い対応だと思う。
山田渚の初舞台と言う事で観に行った訳だが、そのあたりを抜きにしても芝居として面白かった。
キャストはアイドルからミュージカル系子役から叩き上げの役者まで多岐に渡り、ダンスや演技のレベルもバラバラ。 出来る人は出来る人なりに、出来ない人は出来ない人なりに、それぞれの懊悩や苛立ちを抱えて稽古を続けて来たのではないかと終演後の挨拶からも窺い知れたが、それを上手く纏めて客前に出して来ている。
張られた伏線も丁寧に回収され、多少強引なところはあるが無理の無い展開と結末。
以前上演した芝居の世界を敷衍しつつ、身分で雁字搦めになった社会の改革を試みる下層階級出身者が絶望からクーデターを企図していくさまとそれを鎮める為に異世界から召喚された主人公の活躍を縦糸に、孤児院の子供たちを中心としたその世界の人々の人間模様を横糸に物語は進み、クーデターの芽は未然に摘み取られて一滴の血も流れず、誰も死なない(捕まらない)玉虫色の結末にはなっているが、社会の変革ではなく個々人の意識を強く高く持つことで未来を切り開こうと言うメッセージは、こんな世の中だからこそ胸を打つ。
劇中で使われる曲も凝っていて、孤児院の子供たちが歌い踊る曲はアコーディオン、祭りのクライマックスの群舞の曲はパイプオルガン、奏でる楽器で身分と階級を暗示。
山田渚は宮廷女官三姉妹の一人で、台詞もそれなりにある役。 上手いとまでは言えないが役には成れていたと言うか、役の人生を生きていた。
芝居が詰まらなかったら山田渚だけ見ていようと思ったのだけれど、思いの外芝居そのものが面白く、珍しく没入して観てしまったので山田渚に限って書くことはあまり無い。
それは芝居の中の役としてきちんと機能していたと言う事でも有り、実に上手く廻した芝居だった。
脚本、配役まで含めた演出、音楽、照明や音響。 裏方の仕事もしっかりしていて不快なところは一つも無い。
終演後に劇中曲で構成したライブ。
樂日と言う事でAチームBチーム取り混ぜて全員出演。 Aチームの岡崎みさとも見る事が出来た。
山田渚は上手側に行きっぱなしだったので碌すっぽ見えなかったが、下手側に来た岡崎みさとが凄かった。
バケツやモップ、雑巾などを持って歌い踊る曲があるのだけれど、岡崎みさとが振り回すとボロ雑巾もレースのハンケチの如くふわりひらりと翻る。
人を押しのけて前に出るような振る舞いはしないのだけれど、飲まれた人波の中でも目を惹く。
山田渚も同じように人波に飲まれがちなのであるが、こちらはくっきりした動きでそれと判る。
この二人の群衆の中での突出の仕方も面白かった。
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