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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


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投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2012-11-10 川崎から広小路へ(続) [長年日記]

_ 『談大LOVER ~談大の咄をしよう~』

今は亡き立川談大さんを偲ぶ落語会。 早いものでもう三回忌。
開場時間に広小路亭に着くと、既に何人か。
開演する頃には椅子席はほぼ一杯の入りに。

「子ほめ」寸志
「平林」志獅丸
「ろくろっ首」吉幸
「だくだく」龍志
<中入り>
「うなぎ屋」錦魚
「らくだ」キウイ

それぞれが談大さんのよく演っていた根多、一緒に稽古に行った根多、教えた根多、etc... 由縁のある噺を。
2年前からすると、皆変わった。 巧くなったり、面白くなったり、味わい深くなったり。
「生きていたらどうだっただろう?」と考えてみるも、最後の一年となってしまった年の頭から自分の会を始めて、物凄い勢いで変わりつつある中での死だったので想像もつかない。

志獅丸さんは安定して面白く、吉幸さんは明るく楽しく賑やかに。 ワッと沸いた「ろくろっ首」のサゲのあとに淡々と始めて何時の間にか自分の空気にしてしまう龍志師匠。 錦魚さんが軽く演った後にキウイさんが文字通りの長講一席。

この日のキウイさんのみっちり加減は尋常ではなく、家元を絡めた入れ事も、いつもの大脱線も、自虐根多も無しにして屑屋と半次の遣り取り(・・・と言うか一と騒動終えてからの屑屋の独白)に力点を置いて噺を膨らませていた。
それはキウイさんの持ち味である「楽しさ」を殺すことにもなっていたし、退屈なところもあったのだけれど、マクラで「三度破門になって三度戻ったのは僕と談大だけ」と語っていたような、家元と談大さんの繋がりであったり、キウイさんと談大さんの繋がりであったり、傍からは窺い知れぬ愛憎入り混じった複雑且つ濃密な関係性のキウイさんなりの解釈が籠められていたように思った。
面白いとか詰まらないとか、そういうのを超えたところの聴き応え。

顔付けとか、この会の意義とか、掛けられた根多とか、疑義を呈する向きも有り、それはそれで正しくはあるのだけれど、そのチグハグは「談志直弟子の会」の頃から続く伝統的チグハグであり、このチグハグ加減も懐かしかった。

故人と遺された者の関係は、年を経るごとにそれぞれの中で独自の熟成を遂げてしまい、共有しえない物になって行く。 それを大掴みに纏めて一つの落語会にしてくれたお陰で、食い違う部分は多々ありつつ、それぞれがそれぞれに偲ぶ会となった。
そもそも談大さんは存在そのものが一つの謎であったので、その解釈には幅があり、偲び方にも正解は無い・・・と、私は思う。

談大さんにとっての私は、嫌な客であったようでもあり、そうでなかったようでもあり、良い客だったのかどうかは今でも分からないし、この先も当然分からない。
しかし私にとっての談大さんは、巧いと言う意味に於いても、面白いと言う意味に於いても、最良の落語家の一人であった。
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「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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