栗城、瑞野、山下が休演。 PIP京都から安斉が来演。
イレギュラーな公演と言う事もあり、送り手側がリハーサルで手一杯らしく、客が自主的に整列したりさせたり。 統制されないが故の横紙破りをするような手合いは今のところ居ないので平和裏に入場。
舞台中央に何やら棺状のものが置かれており、ヴァンパイヤだと言い張る羽月の門出に因んだ演出がなされることが分かる。
何やらおどろおどろしい曲で開演。 やろうやろうと言いつつ出来なかったハロウィンにからめた演出で幕開け。
血みどろのネグリジェに球体関節ストッキング、背中には天使の羽を背負い切腹した塩冶判官みたような青褪めメイクで口の周りを血糊で汚した羽月が棺桶から出てきて歌い出し、曲の途中からは最初期のチーム分けで出来た所謂「Babyチーム」の連中も仮装で加わる。
この辺りも含め、羽月の最後っ屁と言うか、好きなことを好きなだけやらせた、纏まりは無く冗長だがのんびり楽しめる新富町時代のような公演となった。
前半は羽月の持ち歌をユニットも含めて持ってけドロボー式に蔵浚え。 小林希望と「てもでもの涙」、濱野舞衣香と久しぶりに「ライオン」など。
中盤は選抜組によるオリジナル曲多め。 予約受付が深夜にずれ込んだことによる偶発的事故により前の方で見られたので何時もとは視界が異なり、細部に目が行く。
選抜の衣装はそれぞれの管理に委ねられているらしく保管状態にも個性が出ていたが、アイロンの設定温度が高すぎるのか、テカりが出てしまっていたのが気になった。 既製品ならタグに素材と選択の仕方やアイロンの推奨温度が記載されるが、誂えだとそうも行かないし、素材も組み合わせて作られているので扱いも難しいのであろう。
これに限らずなのであるが、石川野乃花の自負心の強さ。 「ちゃんと(しゃんと)しよう」とする意識の強さが空回りしている。 状況や立場からしてそうせざるを得ないのも解からないではないが、ちょっと肩肘を張りすぎているように思える。
これは石川の置かれた立場上必然的に起こり得る事態であり、補佐職の働きでのみ緩和できるのだけれど、これもまた難しい。 忍従の時なのかもしれない。
「僕を信じて」で小室の靴が脱げるハプニング。
何食わぬ顔で一曲務めおおせたのは良かったが、舞台上に靴が在り続けたので気を揉んだ。
出来れば本人若しくは気づいた人間が端に寄せるべきなのであるが、そこまでのゆとりはまだ無いようだ。(この手の事はAKB48の小林香菜が目ざとく、処理も上手い)
入れ替わり立ち代わり目の前にメンバーがやって来るのだけれど、同じ振付けでも柚木だけ桁違いに情報量が多い。
誘蛾灯の様に目が引き寄せられ、植芝盛平翁の空気投げの如く「柚木が見た客」ではなく「柚木を見た客」が投げ飛ばされて行く。
以下、散文的に雑感など。
泣かないと決めたら意地でも泣かない橋田。
身体的辛さや感情の乱れを意志の力で抑え込んで平静を装い切る。 Triumph des Willens.
その中で見せる「揺らぎ」に惹きつけられる。
「誘惑のハートビート」の濱野舞衣香ソロパートは大分聴けるものになって来た。
これが歌いこなせれば表現の幅はかなり拡がる。
ALLOVER兼任組に目を見張る進歩。 特に北川が良い。
これ迄意識してやっていた事が無意識下で出来るようになり、その分視野が広がっている。
側頭部で二つ縛りにした柚木。 後頭部の髪の分け目がジグザグになっており、石川の手によるものと思われるが芸が細かい。
こうしたヘアアレンジのセンスには毎度唸らされる。
羽月あずさがなぜ辞めるのかについては最後まで具体的な説明が無かったが、濱野舞衣香が読んだ送辞的な手紙の中で昨年の晩秋には決めていたようなくだりがあり、辞めることを決めた時期だけは分かった。
辞めるに至った経緯について触れられず、もやもやしたまま卒業の美名の下に送り出して感動してしまうところに私は違和感を抱くが、もっともらしい嘘を語らせないところも濱野智史の流儀なのかもしれない。
石川の表情が公演を通して硬く、羽月の件以外にも何かありそうだとは思っていたが、最後の最後で牛島千尋から3月末で辞める旨発表。