早めに日本橋へ。 野良猫の毛繕いを眺め乍ら開場待ち。
バス停と違って割り込まないだけマシなのだけれど、並ぶの厭さにその辺に屯していて、開場するや入り口に寄ってくる手合いが居る。 たいていは老人。
「赤穂義士銘々伝 中山安兵衛 婿入り」宝井梅湯
高田馬場の後、留守居役らしい堀部弥兵衛の巧妙な罠に掛かった安兵衛が婿入りするまでのドタバタ。
すっとぼけた弥兵衛の食えない爺ィっぷりが楽しい。
こう言うほのぼのした話は実に良い。
「澤村淀五郎」一龍斎貞寿
暫く長野で学校寄席だったとか。 一と口に学校寄席と言っても、小学校、中学校、高校では求められるものが違うので演り方も演目も異なる。 それに対処する日常から、久しぶりに「講釈を聴きに来た客」向き合う事になり、そうなると演目にも悩むとの事。
「村越茂助なんか演ったら怒られますよねぇ」と軽口。 居住まいを正し、張り扇を一と叩きして「淀五郎」。
講談らしい地の文を読む口調と、情感の籠る会話のバランスが良く、臭くなり過ぎないのが良い。
義士伝と忠臣蔵では登場人物の名前が異なるので、読む方も聞く方もこんがらがりがちになるのだけれど、上手く丸め込んでいた。
団蔵がただの食えない爺ィではなく、茶目っ気もあるところが描き出されていて、仲蔵とは別のやり方で淀五郎を育てようとしていたと言う解釈。 後味良く、読み終わり。