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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


ペトリあんてな
二面楚歌 断章
二面楚歌 グラビアレビュー備忘録
寒空文庫(仮)
写真日記二面楚歌 隠居所
petri's fotolife
酒田へ行きたい
ザ・インタビューズ

投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2016-09-24 羊頭狗肉 [長年日記]

_ BRODY 2016 10月号

手に取ってみると、厚さの割に重い。 カラーページの紙に薄い(安い)ものを使って頁数を稼いでいる。
印刷は頑張っていると思うが、色校が甘く追い込みが足りないと言うか、写真集品質には程遠いのであるが、価格を考えれば妥当なところか。
写真とインタビュー中心の読み物と、どちらも充実させようとしているのは面白い。
商業ミニコミ誌としては良く出来ている。
然し乍ら白夜書房からいかがわしさの欠片も無い出版物が出ている事に驚く。

白石麻衣
表紙と巻頭18ページ14カット、見開き4か所、撮影は桑島智輝。
ページ毎の色味がばらばらで、白く飛ばし過ぎたところは見るに堪えないのだけれど、これはカメラマンではなく編集者に係る部分であろう。
8ページ目の肩越しに軽く振り向くようなカット。 写真そのものは良いだけに勿体ない。
暗い部屋で撮ったカットは、まぁなんとか見られる出来。
写真を生かすも殺すも編集次第。

衛藤美彩
10ページ9カット、撮影はLUCKMAN( 樂満直城 )。 スタジオでの撮影風景のオフショットのような体。
身体の線を出そうとする衣装の選択があからさまに過ぎるのは興醒め。
ル・コルビュジエのグラン・コンフォールに寝そべらせたカット。 取らせたポーズは下衆なのであるが、衛藤美彩と言う素材が中和。

乃木坂46
16ページ14カット、撮影は細居幸次郎。
齋藤飛鳥、若月佑美、生駒里奈、中元日芽香、秋元真夏、高山一実、白石麻衣、星野みなみ、北野日奈子、堀美央奈、衛藤美彩、生田絵梨花、松村沙友里、西野七瀬が、夏に因んだテーマで1ページ1カット(齋藤飛鳥と西野七瀬のみ2ページ)ずつ 。

衣装は伊勢丹とのタイアップとなっているが、Tシャツに紺のプリーツスカート。
細居幸次郎の無駄遣いでさして面白くもない企画グラビアだが、蚊取り線香を親指に嵌めて謎のポーズをとる堀未央奈は、妙に可笑しい。

向井地美音
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は熊谷貫。
スリップドレスであったり、上はビキニで下はスカートだつたりとか、多少は工夫をしているものの、ほぼ水着。
仕草も表情も悪くないし、水着にして映える体形ではあるのだけれど、その上で不自然に寄せて底上げしたところを見せられても蛇足以外の何物でもない。
向井地美音はきっちり仕事をしているが、編集者の下衆な魂胆が透けて見えて不快。

平手友理奈
7ページ17カット、撮影は松田忠雄。
新極真会に入門の巻。
練習風景では和やかな場面も見せつつ、突きや蹴りでは真剣な表情。
後ろ廻し蹴りの打点も高いのだけれど、楽し気な表情ながら目だけ笑っていない。
付録のポスターの裏面が黒バックの前で半身に構える平手友梨奈なのだけれど、目に気圧される素晴らしい出来。 眼福。

長濱ねる
6ページ13カット、撮影はこちらも松田忠雄。
着付けがしっかりしている。
詰めたアンコが多すぎるのは疵だが、襟の合わせ方、帯の高さなど、「らしく」着せている。
髪も編み込んで纏めつつ、鬢だけ残して垂らし、アクセントに。
少し斜め下から見上げるように撮ったところに、流し目。
思わず背筋が伸びる。

柳ゆり菜
10ページ11カット、見開き1か所、撮影は小塚毅之。
白夜書房らしい、湿り気のある猥雑なグラビア。
被写体貶める様な衣装やポーズ、下卑た構図などはなく、肉感的なところを切り取りつつ、綺麗に纏めてある。


中綴じから平綴じになったのを「創刊」と銘打つ羊頭狗肉ぶりは白夜書房らしいし、巻頭は写真の出来を台無しにするようなところもあり、指名買いをするほど信用は出来ないのだけれど、巻末の松田忠雄の撮影によるグラビア2本は実に良く出来ていた


2016-09-22
[長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 43号

新井愛瞳
6ページ13カット、撮影はTakeo Dec.
間違えて講談社の青年マンガ誌を買ってしまったかと思うほど塗り絵補整が激しい。
身の丈に合わない箱でワンマンライブを打つ羽目になって集客に苦労しているにしても、グラビアにそれを絡めて来るのも判らない。
送り手の独りよがりの物語をメンバーに背負わせて悦に入るいつもの遣り口。
新井愛瞳そのものは悪くないのであるが、寄ってたかって駄目にしてしまっている。
小細工なしに撮っても、十分絵に成り得る被写体だと私は思う。

アップアップガールズ(仮)の送り手は小細工以外にすることは無いのだろうか。 武道館が埋まらなければ例によってメンバーに責めを負わせるのだとは思うが。 毎度そう言う儀式を見せられるのは気分が悪い。

西野七瀬
巻中6ページ7カット、撮影は川島小鳥。
イタリアとマルタで撮った写真集からのグラビア。 フジではなく、コダックとかアグファのような色合いが撮影地の町の建物や調度、光の強さや回り方に合っている。
5ページ目、ベッドに横たわり蒲団を抱きすくめるカット。 潤ませた目と、蒲団を抓むような掴むような指の動き。
写真集への期待を高める7カット。

黒田真友香
5ページ8カット、撮影は藤本和典。
一枚羽織ったり穿いていたりはするが、ほぼビキニと言う割り切った構成。
ティーン向けファッション誌とは勝手が違うようで、笑顔が硬直。
4ページ目だけは、硬いなりに訴求力のある表情。 体形上の美点も捉えられていると思う。


2016-09-19 The Long Goodbye [長年日記]

_ UTB 2016 04月号

深川麻衣・堀未央奈
表紙と巻頭15ページ12カット、見開き3か所、撮影は西田幸樹。
二人組のグラビアは、時として 1+1 が 3 にも 4 にもなることがあるが、そうした稀有な例の一つ。
深川はいつもの諦観と言うか、出さずに引き込むと言うか、受容する柔らかな表情。
堀は対照的に感情の揺らぎのような物を見せるのだけれど、その悲しさや寂しさを湛えたまま微笑んだを見せられるのも、棒組になったのが深川であったればこそであろう。
それでも徳俵で堪えて土俵を割らないのは堀らしい。

深川麻衣は身体が横を向いたカットが多く、9ページ目はこちらを振り返るような形。
乃木坂46からの退場を象徴するような、印象的な写真。
こうした暗喩に敏感に反応出来る堀未央奈の感情の揺らぎが、良いアクセントになっている。 眼福。

秋元真夏
10ページ11カット、見開き1か所、撮影は長野博文。
長野らしさが出過ぎて単に露出オーバーになって収拾がつかないだけのようにすら見える白っ茶けた写真はいただけないが、光を柔らかく回すことによって表情は切り取れている。

岡田奈々
10ページ14カット、見開き1か所、撮影は桑島智輝。
表情に険と疲れがあるのだけれど、それは(遅きに失した観はあるが)カメラの前に素で立てるようになったと言う事でもある。
水着になると痛々しさが勝ってしまうが、服を着たカットは辛うじて「儚げ」くらいで踏みとどまっている。
復調後に期待したい。

太田夢莉
9ページ11カット、見開き1か所、撮影は山口勝己。
カメラを睨めつけるように撮ると映える。
ポケットに親指を掛けたり、指を組ませたり、何らかの指示を与えると手に表情が出る。
素材も勘も良いと思うのだけれど、ポーズも表情も一本調子で少々物足りない。

樋口日奈
8ページ10カット、撮影は佐藤裕之。
短い紙幅の中にも物語があり、畳の上に投げ出した爪先を撮ったブリッジのようなカットが利いている。
アパートと言うより下宿屋然とした昭和の日本家屋。
畳まれた布団、糊の利いたシーツ、しなだれ掛かる樋口日奈。
干された布団の温かみと日向の匂いが感じられるような一齣。
共同物干し台の便所サンダルも輝いて見える。

中山莉子
8ページ14カット、撮影は細居幸次郎。
屋内と屋外両方での撮影だが、曇天が細居幸次郎に味方した。
総じて柔らかい表情、薄い深度、的確なピント。

中山莉子はカメラの前で余計なことをすべき時とすべきでない時の見極めが出来ており、役を与えられた中山莉子と中山莉子本人役の演じ分けが出来ている。

平手友梨奈
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は熊谷貫。
熊谷貫がぐいぐい迫るように撮っており、平手友梨奈もたじろいだような表情は見せているのだけれど、一定以上の距離からは詰めさせないような、存在としての強さがある。
歯応えのある被写体を前にして仕事以上の仕事をした熊谷貫の写真を久しぶりに見た。

橋本愛奈
7ページ7カット、見開き1か所、撮影は西田幸樹。
私は読み解くのが下手なのであるが、どの光が何処からどう来てどう当たっているのか、考えながら見ると面白い写真。
ピントの置きどころ、どこまで絞るかなど、教科書的なヒントの詰まった7ページ。

小芝風花
5ページ7カット、撮影は橋本雅司。
役者属性の人にありがちな、役になっている自分でないとカメラの前で上手く振る舞えない人であるようで、演技過多なカットが私には物足りなく感じられる。
逆に何らかの役になることでカメラの前に(この場合は役としての小芝風花)立っているので、破綻は無い。
これが良い人には良いのだろう。

工藤遥
10ページ11カット、見開き1か所、撮影は大江麻貴。
前半の浜辺で撮った水着グラビア然とした水着グラビアは陳腐。
後半の服を着た写真は上手い事表情を切り取ったり掬い上げたり出来ている。

_ UTB 2016 01月号

欅坂46(今泉佑唯、平手友梨奈、鈴木美愉、渡辺梨加)
17ページ18カット、見開き1か所、撮影は西田幸樹。
まだ海のものとも山のものともつかない時期のグラビアなので顔見世的に一人2ページ2カットずつ顔見世的に使い、学校モチーフで。
今撮るとまた違ってくると思うが、公立高校的な制服とスポーツウェア。
平手友梨奈にも未だ他を圧する貫禄のようなものは無い。
月日の経つのは早いものだ。
6ページ目、鈴木美愉を正面から撮ったカットが素晴らしい。

小嶋真子
10ページ15カット、見開き1か所、撮影は小池伸一郎。
背景に直線があるところでは例によってそれで絵を作っているが、何もないところでも遠近感を上手く使って奥行きのある写真。 4ページ目が良い。
小嶋真子はそつは無いが表情が単調で面白味は薄い。

矢倉楓子
9ページ17カット、撮影は佐藤裕之。
ベレー帽にスモッグのようなワンピース、マルマンのスケッチブック。
三菱鉛筆のの9852EWはHBのみなので、スケッチ向けには適さないが、鉛筆としてわかりやすい形ではある。
矢倉楓子は素でカメラの前に立たせると幸薄そうなのが際立ってしまうが、鉛筆を鼻の下に挟ませてみたり、お茶目なところを挟み込むことで中和。
部屋の中で着ている水着は毛糸で編んだビキニ。 これにニット帽やマフラーをあしらって季節感を出している。
冬のグラビアとしては面白い出来。

山下エミリー
8ページ11カット、撮影は桑島智輝。
青い空と白い雲の描かれた背景紙の前でオーソドックスなセーラー服。
ここまでは柔らかい表情なのだけれど、水着になると少々硬い。
硬いとは言え、ガチガチで右手と右足が一緒に出てしまうようなオモチャの兵隊トテチテタ感までは流石に無いので、初々しさと言えなくもないが、もう少し布面積の多い衣装で見てみたい。

吉岡里帆
8ページ15カット、撮影は西條彰仁。
そろそろ役者一本で食えそうな吉岡里帆。
カメラに対する向き合い方が程よく、直視しても意識だけを向けても絵になる。

水谷果穂
6ページ8カット、撮影は長野博文。
昔ながらの「水着もある写真集」からの蔵出し。
私が良いと思うカットは扱いが小さく、青少年のリビドーを刺激したい為に採ったであろうカットは扱いが大きい。
写真の良し悪しは兎も角、編集が退屈。

平祐奈
6ページ8カット、撮影は西條彰仁。
カメラを前にしても全く物怖じするところが無いが、射すくめる様な視線に見る側が気まずさを感じるくらいカメラを見ているので少々重い。

山岸理子・谷本安美
7ページ8カット、見開き1か所、撮影は佐藤裕之。
反政府ゲリラの捕虜になった正規軍の兵士の見せしめビデオのようなどんよりした表情のバストアップを見開きで使って始まる意図の判らない構成。
バレエのレッスン風景のような3~4ページ目、特徴的な椅子から自由学園明日館と判る5~6ページ目は良いのだけれど、眩しがると冴えない顔になってしまう山岸理子を屋外で撮ったのは失敗だった。
ロケーションも衣装も良かっただけに、画竜点睛を欠いた観がある。

井上小百合
10ページ11カット、見開き1か所、撮影は丸谷嘉長。
ポーズでも仕草でも表情でも語れる井上小百合。

扉の前で真っすぐ立っているようでいて、若干左肩が上がっているカットが生々しい。
巧まず衒わずカメラの前に立っても絵になっている。
身体を捻ったカットが少なく、もう少し動かしても良かったように思う。

松村沙友理
10ページ12カット、見開き1か所、撮影は長野博文。
長野博文にしては珍しく、切り分けた林檎タルトを食べる絵で鼻の頭にクリームをつけて見たり、ベタな演出が目にも鼻にもつくが、松村沙友理の人徳と言うか人柄と言うか、そのあたりで中和されて許せる出来。

先入見というのもあるとは思うが、笑顔はまだ無理に作ったように見えてしまい、カメラと素で向き合えば虚無的な表情に見えてしまう。
そうなると過度であろうと何だろうと演出はせざるを得ない訳で、こうなるのは必然だったのかもしれないし、松村沙友理をなんとか笑顔にしたいと思ってしまうのも判らないではない。
これはこれで良かったのかもしれない。

_ UTB 2016 03月号

私立恵比寿中学
表紙と巻頭15ページ15カット、見開き1か所、撮影は佐藤裕之。
8人となると、15ページあっても顔見世で始まって終わる。
8人横並びの見開きで始まり、続いて一人1ページ1カットずつ。
そこから3人2人2人、・・・一人足りない。
続く全員のカットも判り難いながら7人しか確認できない。
最後の最後の集合は8人揃っているのだけれど、やはり途中で一人抜けている。
(居ないカットが有るのは柏木ひなたらしく、体調不良による休業期と重なっていたものと思われる。)
流して見ていると分からないように誤魔化してあって、この辺りは編集者が上手い。

紅白のマントで全体の色味を揃えつつ、それぞれに合わせた小物で差別化する衣装も良い仕事。
顔見世グラビアとしては良く出来ている。

木﨑ゆりあ
11ページ14カット、撮影はサトウノブタカ。
その言動から馬鹿扱いされがちであるが、撮られる人としての勘は悪くない。
指示されてやっているところは勿論あると思うが、言われたから出来る物でもない。
4ページ目の身体を反らせつつ横向きに立ったカット。
前後方向には細いウエストと量感のある臀部の対比、ぽってりとした唇とつぶらな瞳。 粗を隠して美点を上手く見せている。
切り取り方も良いし、それに答えた立ち姿も良い。

松岡菜摘
10ページ10カット、見開き1か所、撮影は熊谷貫。
カーブする高速道路を借景に、見上げる形のカットから。
熊谷貫が例によって例の如く寄って撮っても動じないし、構えない。
相性としてはかなり良いと思う。
撮り甲斐があると意気に感じて良い仕事をするカメラマンと、がっぷり四つに組んでも寄り切れる松岡菜摘。
特に表情を作るでもなく、切り取るに任せているが、カメラの向こう側にあるものを巨視的に見据えているような、大きな表情。
見れば見るほど味わい深い10カット。 眼福。

NGT48(加藤美南、山口真帆、太野彩香、荻野由佳、山田野絵、中井りか)
11ページ10カット、見開き1か所、撮影は西條彰仁。
覚醒前夜の中井りか。 旧ソ連式に集合写真の並び順から序列を読み取ると真ん中から下くらい。 これが海千山千を手玉に取る今の中井りかに化けるとは思わなかった。
閑話休題、県内だけでなく、他県から来たメンバーも多いのだけれど、面相も様々。
上手く集めたものだと思う。
しかし目に付くのは中井りか。 しどけない、へたり込む様なしなだれかかる様な座り方をさせたら右に出る者はいないのではないか。

桜井玲香
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は大江麻貴。
衣装と大道具小道具に凝った外連味たつぷりの写真。
小細工なしに撮った10ページ目は良い。

若月佑美
10ページ9カット、見開き1か所、撮影は西田幸樹。
魔術と言うか幻術と言うか、光を自在に操る西田幸樹。
屋内はまだわかるのだけれど、屋外で撮ったカットも細工がありそう。

ミリ単位の角度調整の指示などを出されていそうな若月佑美であるが、カメラマンの撮影意図をきっちり咀嚼してポーズを取り、表情を作っている。
乃木坂46は撮られる仕事についても多士済々であるが、その場で何が求められているかを嗅ぎ分ける能力に於いては若月佑美も中々のものだと思う。

渡辺梨加
10ページ9カット、見開き1か所、撮影はサトウノブタカ。
インタビューの中では全開の撮影で口の力を抜くよう指示が出たと語っているが、確かに口元が強張ることで表情を硬くしている。 意識して口を開けるのではなく、意識を抜いて口元を弛緩させられれば良いのだけれど、こうして選ばれて撮られる機会を生かしていけば、構えずにカメラの前に立てるようになる。

真野恵里菜
10ページ10カット、見開き1か所、撮影は上原朋也。
コダクロームっぽい、黄色味掛かった色合い。
粒子粗目と言うかノイズを乗せたと言うか、ざらっとした質感。
あまり好きではない撮り方だが、真野恵里菜は流石にカメラとの向き合い方が上手く、すべてのカットで求められる真野恵里菜であり続けている。

聞間彩
2ページ4カット、撮影は國方大。
メンバーカラーである赤の背景紙に赤の小道具。
気負いなく撮られているのは良い。

_ it's me 桑島智輝 × 杉本有美

夕方から恵比寿の tokyoarts gallery へ。
15:00まではレセプション的なものがあると聞いていたので時間をずらして伺ったが、まだ祝祭の余韻の残る廊内。

写真は全て販売されており、かなり頑張らないと購えない物、頑張ればなんとかなりそうなもの、頑張らなくてもなんとかなるもの。 各種取り揃えてある。

最後の水着姿と銘打たれているが、衰えて止める訳ではなく、体型も崩れてはいない。
肌の張りは二十台半ばのそれではあるが、塗り絵的な補正をしなくても絵にはなっていた。

メイクはある程度しているものの厚くはなく、前述の通り塗り絵的な補正もしていないので肌の質感は生々しいが、それでも絵として破綻しない強さはある。

正面奥の右側に飾られた、木の床に横たわった写真が印象に残った。
手前の床から顔までが被写界深度内。 若干前ピンかなとは思ったが、近付いたり離れたり、まじまじと見てみると、顔から先がぼけている事で視線が手前に誘導されている。

相手の懐にすっと入って撮れる桑島智輝と、小細工せずにありのままを撮らせる杉本有美の、息の合った写真。


2016-09-18 Leipziger Schwarz [長年日記]

_ UTB 2016 10月号

宮脇咲良
表紙と巻頭16ページ17カット、うち見開き2か所。 撮影は山口勝己。

大道具小道具衣装、すべてが宮脇咲良の透明感を強調する為に透明、銀、白に揃えられている。
山口勝己が新機軸。 動きのあるカットに驚く。
それでも被写体ブレなどは皆無で、時は止まっているのが山口勝己らしさか。

UTBでは桑島智輝に撮らせる事の多い種類の写真だが、求められる物を取りつつ、「らしさ」は存分に出している。

被写体の宮脇咲良は高いレベルで安定しており、その場その時に求められる宮脇咲良としてかっちり決められた構図の中に納まっている。
ところどころあどけなさの残る表情も見せているが、すっかり大人びた。

古畑奈和・大場美奈
11ページ16カット、撮影はTakeo Dec.
過去の一時期精彩を欠いこともあった大場美奈もすっかり復調、柔らかく優しい表情。
古畑奈和は表情が諧調に乏しいのが疵だが、悪くはない。
二人共、縦長で良い臍。

太田夢莉
10ページ13カット、撮影はサトウノブタカ。
メイド服、水着、制服の3種。 メイド服はミニ丈のものとロング丈のものと2種類。
ロング丈のものは、クラシカルなデザインかと思いきや透ける生地になっており、内側に着るものによって、また付けるエプロンによって、清楚にも挑発的にもなる。
1ページ目を4分割にしてメイド服2種を見せ、2ページ目でロング丈、3ページ目でミニ丈。
ページを繰ると4ページ目5ページ目は黒のチューブトップワンピース水着、6~8ページ目は白のビキニ。
流れの作り方が上手い。

最後に夏服の制服なのだけれどブラウスが黒、黒と言うかブルーブラックと言うか。
判り難く書くとローラー&クライナーのライプツィヒアンブラックのような、濃い濃紺と黒の間の色。
非実在制服だと思う(汗を掻くと白くなってしまうので現実的ではない)のだけれど写真映えはする。 臙脂のリボンタイと言うのも良い。

太田夢莉は口が閉じきらない表情が多いのだけれど、引き結んで閉じたり歯を見せて微笑んだり、微細な変化で表情に諧調を持たせているのが良い。
スカートの裾であったりカーテンであったり、何かを掴ませたり握らせたりすると手に表情が出る。
これが自然に出来るようになると、もう一と皮剝けるのであるが。

太野彩香
9ページ11カット、撮影は佐藤裕之。
服を着ているカットと水着のカットで表情がガラリと変わる。 無理に作った泣き笑いのような笑顔はさておき、表情を作らずにカメラの前に立ったカットはなかなか良い。
笑うと口角が上がり過ぎるきらいがあり、表情がクシャッとしてしまうのだけれど、意識して口を閉じると楚々とした感じに。
この落差をうまく使えるようになれば、表情の諧調も豊かになると思う。

肌の白さは七難隠すと言うが、難の無いところに持ってきて肌が白い。
斜めからの光を使って身体の線を下品にならない程度に描き出す佐藤裕之の撮り方も相俟って、意外に水着映えしている。

中田花奈
10ページ9カット、うち見開き1か所。 撮影は西田幸樹。
インタビューの中で細かい指示の入る撮影だったと語っているが、それを踏まえて見ると様々な発見がある。
左目が光に敏感で、ともすれば瞼に力が入って表情に険しさが出てしまうのだけれど、光を柔らかく当てたり、険しく見えない角度で撮ったり。
5ページ目の、一寸俯き加減に横を向いたカット。 表情もさること乍ら、首筋の陰翳が美しい。
1ページ目2ページ目も、似たような角度ながら顎を引くか上げるかで異なる印象。
どう撮れば映えるか、観察し考察し、伝わる指示を出すことで成り立った9カット。

渡辺みり愛
10ページ10カット、うち見開き1か所。 撮影は西條彰仁。
判型の大きさを生かした割り付け。 紙幅を割いてもらっているからこそなのであるが、大きめの写真で押す構成。 風に髪が揺れるカットがアクセントになっている。
光を柔らかく回したカットではカメラと上手く向き合えており、2ページ目6ページ目、8ページ目が良い。

鈴木美愉
10ページ13カット、撮影はサトウノブタカ。
浴衣姿で木桶に冷やした胡瓜や西瓜を頬張り、お茶目なところを。
ページを繰ると縁側に腰掛けて水を張ったブリキの盥で足を浸ける、日本画の題材にありそうな、いにしえの夏の光景。
引いた構図で切り取ってあるので、裾から覗く白い脚を垣根越しに見るてしまったような、そこはかとない背徳感。
浴衣を着て映えると言う事は、細くは無いと言う事でもあるのだけれど、 部屋着のような白いキャミソールも、ウエストはゆったりしていて身体の線は描き出さない種類のもの。 これはこれで良い。

扇風機を両手で挟むように持ち、吹き付ける風に声を震わせて遊ぶようなカットや、前述の頬張るカットなど、ところどころにお茶目さを鏤めて楚々とした部分との対比で見せている。

中山莉子
6ページ12カット、撮影は上原朋也。
スターダスト所属のアイドルグループは、事務所主導での企画物めいたグラビアが多いのだけれど、今回はケレン味薄めで綺麗に撮ってある。
綺麗には撮ってあるが些かファッション誌的な道具立てと構成。
私が見たいのは服でも小道具でもない。 それらは主たる被写体たるモデルを引き立てる物であって欲しい。

高木悠未
6ページ7カット、見開き1か所。 撮影は唐木貴央。
グループの看板を背負っているだけの事は有り、隙の無い7カット。
私にはその隙の無さが息苦しくもあり、商売用の自分を不足無く少し多めに出すそつの無さが詰まらなくもあるのだけれど、万人向けの顔見世グラビアとしては最適解に近い。
無理に表情を作らずにカメラと向き合った4ページ目は良い。

矢島舞美
10ページ11カット、見開き1か所。 撮影は西條彰仁。
貶すところが、無い。

撮る側も撮られる側も、やるべき仕事をきっちりやっていて、完璧に組み上げれば組み上げられるところを、一寸外す。
カメラを虚心に見つめる事も出来るし、カメラを見ずに意識だけを向ける事も出来るし、まるでカメラなど無いかのように振る舞う事も出来る。

4ページ目。 鎖骨から肩にかけてのライン。 高く聳える鼻梁。 思わせ振りに少し開いた唇。 何かを語るかのような指。
様々な要素の詰まった一カット。
眼福。

兒玉遥
10ページ11カット、見開き2か所。 撮影はTakeo Dec.
そう悪くはないのだけれど、頑張りが見えてしまうのが興醒め。
可愛くなろう美しく在ろうと言う意欲と言うか義務感と言うか、そう言うものに囚われ過ぎているような息苦しさ。
これを健気さと受け取る向きには好まれると思う。
そう、良否ではなく、好悪に係る部分。

_ UTB雑感

競合誌が増えて来たのは二匹目三匹目の泥鰌が居ると踏んで、算盤が合うと判断しての事だと思うが、載せて金になるアイドルの原資は限られており、それを捌けるカメラマンも無限に居る訳ではない。
そう言った状況下にあって、UTBはしっかり手間と時間と智慧を投入しているのが、見ていて判る。
指名買いの出来る品質を安定して保っている事には敬意を表したい。

_ 菅野絢子写真展『connect』

新たな写真展が始まっていたので四ツ谷へ。
市ヶ谷富久町のバス停から歩いてみたが、四谷三丁目の駅から歩くよりも近かった。 路地が入り組んでいるのが難だが、歩いて楽しい道ではある。
街の中で暮らす小動物や昆虫を撮った写真なのだけれど、小動物や昆虫そのものではなく、暮らしている場所まで含めて切り取っているのが面白い。
背景の中にある直線や曲線を組み合わせて画面を組み立てて、そこにそれらが収まる。

ブロック塀の上でこちらを窺う蟷螂、地を這う芋虫、谷中と思われる墓地の野良猫然とした野良猫のふてぶてしさ、雨上がりの路地に這い出してきた蟇蛙、カーテンの隙間から撮ったふくら雀の集会、どちらに行こうか思案する蝸牛。
嫌われがちな生き物に対しても温かい視線。
血を吸って満腹になった藪蚊に対しても、憎しみは感じられない。

私が苦手なうねうねと動く種類の虫を撮ったものもあったのだけれど、グロテスクな切り取り方はしていないのでなんとか我慢して見られた。

_ HASEO 人魚展

富久町からバスを乗り継いで俎橋。 駿河台下まで歩いて神保町画廊。
絵画的な写真を撮る人として認識していた HASEO の作品展へ。
大変な労作だが、私の中の基準では写真ではなく、レンズが描き出した部分が筆で上塗りされている事への違和感が拭い難く、私向きではないのでざっと見て退出。

分かってはいたが、改めて私向きでは無いことを確認してきた感じ。


2016-09-15 Loreley [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 42号

金子理江
巻頭7ページ10カット、撮影は桑島智輝。
海辺の町で撮った水着多めのグラビアなのだけれど、夜の浜辺、林の中、木陰etc...、夏らしさは感じさせつつも光が強く当たり過ぎない状況下で撮っているので、1ページ目のような光溢れる海に立ち眩し気にこちらを見つめるカット以外は表情が生きている。
眩しさに必然性があれば、強い光の下でも写真にはなる。

髪の傷みが激しく、安手の鬘のような質感。
仕事で染めなければならない事情があったのであれば仕方がないが、趣味嗜好で色を入れたり抜いたりしてこうなってしまったのであれば、自分の仕事に対する思慮が浅すぎる。
やるなら破綻しないように金と手間は掛けるべき。

髪はあしらい方で上手く誤魔化せているところもあり、破綻しているところもあるが、肩甲骨の下あたりまで伸ばした髪を出来るだけ写り込ませずに撮って絵を作る桑島智輝の仕事には唸らされる。

水着は大き過ぎたり小さ過ぎたり、意図してサイズの合っていないものを着せているが、見せ方が下衆でいただけない。
サイズの合わないものを敢えて着せる事によって身体の線を描き出そうとしているのかもしれないが、成功していない。

眩しげであることに意味を持たせた1ページ目と、髪が傷んでいない生え際の部分でうねりを出して視線を誘導する6ページ目が上手い。
モデルは撮られるがままで仕事をしていないし、衣装も首をかしげざるを得ないが、桑島智輝の腕で持たせている。

毀誉褒貶相半ばする金子理江であるが、人の心に波風を立てる何かは持っていると思う。
それがプラスに働くと、この撮影のように裏方に盛り立てて貰えることもあるが、マイナスに働くと「盛り立てて貰えている事」自体が不快に思われてしまう。

私は何というか、気味が悪い。 関わると不幸になりそうな、躓きの石。 Loreley 的な何か。
人の心に波風を立てる何かは幻想に過ぎず、中は空洞なのではないか。

堀みづき
巻中4ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
表情は悪くないが、こちらも髪の傷みが激しい。
プールで撮るのにかこつけて髪を濡らして撮ったのは良い。
作為は有るが笑顔になると表情の諧調は豊富で、そこに特化した写真の選択と割り付け。 力技ではあるが見られる物にはなっている。

加藤里保菜
巻末5ページ6カット、撮影は西村康。
眼鏡がトレードマークになっている訳であるが、眼鏡と言うものは実に厄介で、正面から撮らないと目に掛かってしまう事がまま有り、目に掛からないようにすると位置が不自然になってしまう。
レンズが入っていれば透過した光は影響を受けてしまうし、表面の反射も邪魔になる。

そんな訳で顔を撮る事の出来る角度が限られてしまう為、些か冗長。
ポーズも表情も、湿板時代のそれのような固まった写真。
退屈な5ページだが、カメラマンが何とかしようとしている形跡はある。
モデルが頑なだと写真にはなりにくい。


2016-09-11 抒情的で質の高いグラビア [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 41号

馬場ふみか
巻頭8ページ9カット見開き1か所、巻中4ページ9カット。撮影は藤本和典。
緩く結んだポニーテール、白の半袖ポロシャツにグレーの膝上丈のプリーツスカート、短めのソックス。 靴はアディダスの SS 80s だろうか、青のラインの入った古風な白いスニーカー。
制服っぽいようなそうでないような出で立ち。 身体の線を描き出し過ぎないブラウスのサイズと、スカートへの裾の入れ具合も程よく。
衣装などは伊井田礼子。

グラビアのモデルもやるが、服を見せるモデルも芝居もやっている。 これらの相乗効果で見応えの有る18カット。
服に「着せられた感」がなく、服だけを見せるグラビアにも自分だけを見せる写真にもなっていないのが良い。
水着はどうしても肉感的なところを強調したなるのであるが、服を着たカットでは露出は抑えて仕草や表情で見せる。
巻頭2ページ目上段のヘアゴムを加えて髪を束ねようとするカット、巻中の扉のワンピースの裾を少したくし上げるようなカットが、撮りも撮ったり撮られも撮られたり、頭抜けて良い。

水着も肉感的なところを生かしたものが選択され、煽情的ではありつつもあからさまなポーズはとらせず、程の良い色気。

そして小さめの活字のキャプションポエム。 これが珍しく琴線に触れた。

ロケーションや衣装まで含めて、ヤングジャンプらしい抒情的で質の高いグラビア。
藤本和典の仕事の中でも出色。

片山萌美
巻中3ページ6カット、撮影は唐木貴央。
写真集の広告のような感じであるが、悪くは無い。

早乙女ゆう
巻末5ページ10カット、撮影は細居幸次郎。
曇天の屋上が一枚ある他は屋内。
ワイシャツっぽい白のセーラーブラウスに臙脂のリボンタイ、ミニ丈のライトグレーのプリーツスカート、白のミニハイソックスに黒のペニーローファー。
合皮のスクールバッグを提げたり抱えたり。
一寸面白いデザインのブラウスなのだけれど、大きく使われたのは最初のページのみで、あとは小さく3カット。
リボンタイの結び方が雑なのだけれど、これが現実的な形なのかもしれない。
水着を見せなければならないので仕方がないと言えば仕方がないのであるが、道具立てが面白い。
「スタイリング:森千鶴子」これは記憶しておきたい。

薄いピンクと濃紺の三角ビキニ。
水着になると隠したり切り取ったりぼかしたりして粗を隠す戦略。
そこまでするのであれば服を着ているカットをもう少し増やしても良かったように思うが、まぁ色々あるのだろう。

柿崎芽美
欅坂46のメンバーが週替わりで12人プレゼントページに登場との事で、不覚にも見落としていて、これが3週目。
モノクロ1ページ1カット、カラー1ページ1カット、撮影は細居幸次郎。
一寸白く飛ばし過ぎなような気もしないでもないが、表情の切り取り方は良い。


2016-09-04 紅色高棉 [長年日記]

_ ・・・・・・・・・(the artist formerly known as ナカグロ(仮))初観測ライヴ(28.09.04)

「PIP思想の良質な部分を継承した、都市とメディアとアイドルを横断する意欲的なプロジェクト。」と言う感じの戯言が流れて来たので、確認するために足を運んでみた。

開場5分前くらいに現地へ。 既に開場を待つ行列が出来ていたが、主催者による整列などは行われず。

ライブハウスの告知ページに予約フォームが有ったのでとりあへず予約を入れたら確認メールが来たのだけれど、入場時にそのあたりの確認は無し。
PIP: Platonics Idol Platform のノウハウはこの時点で既に生かされていないことが分かる。

見たところ PIP: Platonics Idol Platform からの客は少なめ。 開場と同時に入った客は4~50と言ったところであったが、徐々に増えて開演までに二回ほど影アナでお膝送りのお願い。
お披露目から大入りと言うのは幸先が良いが、入れなかった客への対応は満員で入れない旨の貼り紙一枚。
木で鼻を括ったような対応に、入れなかった知己は憤慨していた。

舞台の奥の壁に白い衣装が掛け並べてあって、無言で出て来たメンバーがそれを身に纏い、整列したところでライブが始まった。
衣装
衣装を着る
全員サングラスを掛け、動いて落ちるのを防ぐためか黒いレースのリボンを巻いてあるから表情どころか面相もはっきり見えない。
自己紹介もしないので誰が誰なのかも知り得ないし、そもそも何人出て来たのかすらだにも分からない。
歌い踊る
歌い踊る
メンバーは楽し気に喋ったり歌ったり踊ったりしているが(スタッフも楽しそうであった)、何の説明もなく手前勝手な世界観を押し付けられ続ける我々は良い迷惑であり、最前列に張り付いた客と後方でオダを上げている連中がワイワイやっている他はおいてけ堀を喰らって困惑の体。

グループ名の表記は ・・・・・・・・・ なのだけれど、

「読み方は決まっていません」「皆さんで決めてください」

マークになってしまった時のプリンスですら、読み方についてのルールはあったが、それすらも無い。

検索できない
図に示した通り、検索エンジンからも拒否されてしまう。
読めない上に検索すら出来ないグループ名を付けてしまうと言うのは、全く理解できない。
面倒なので以下「ナカグロ(仮)」と表記することにする。

メンバーの心拍が感じられると言う小道具も回ってきたが、そもそもどのメンバーのものかも分からないし、そのメンバーについての情報も提示されていない。
何の思い入れも無い状態でそんなものを渡されても気味が悪いだけであり、客席を盥回し。

演る曲はと言えば、別にアイドルがやる必要も無さそうな当世風のロック。
振り付けや歌は、お世辞にも上手いとは言えないが、上手くなくても良いと思ってやっていそうな捻りの無いもの。

前述の通りサングラスを掛けっぱなしで表情も面相も窺い知れないのだけれど、その奥にあるものに興味を持たせるような演出も無い。
これは中の人が誰でも良いと言う事なのかもしれないが、メンバオーディションに落ちたと話している女子が見に来ていた。 コンセプトも杜撰に過ぎるが、何も考えないで考えたふりをしているのだろう。

ボーカロイドが歌っている間に踊っていたり、直立不動で立っていたりするのまでは我慢して見ていられたが、最後が酷かった。

ひとり一冊文庫本を持って並び、インストゥルメンタルの曲に合わせて朗読を始めるんだが全く聞き取れない。
そのうちに文庫本のページを破り捨て始めた。
本を破る
書物は人類の叡智を象徴するものであり、それを破り捨てるのは文化文明の否定である。
何らかの寓意が込められていたのかもしれないが、実に不快だった。

そして曲の終わりとともに全員が倒れ込み、開演時に着込んだ白い衣装を脱ぎ捨てて楽屋へ引っ込んで行く。
全員が引っ込んだ頃合いに楽屋から「ありがとうございました!!」と叫び声。
客電が灯って終演。

コンセプト倒れと言うかコンセプト負けと言うか、小一時間拙い自慰を見せられたような後味の悪さ。

本を破いて捨てるのは文化文明の否定であり、顔を見せない名前も明かさないのは個の人格の否定である。 それをインテリ崩れの大人が指示して、良く分かってない子供を使嗾してやらせる。
さながらクメール・ルージュ。  醜悪以外の何物でも無い。

終演
「ナカグロ(仮)」は PIP: Platonics Idol Platform の遺伝子など欠片も無い、天一坊みたような食わせものだった。

映像記録スタッフとして元PIP: Platonics Idol Platformの瑞野が入っていたが、元演者として演者の人格を否定するようなもの、PIP: Platonics Idol Platformの後継者を僭称するような紛い物に関わることについてどう考えているのであろうか。

PIP: Platonics Idol Platform のお披露目は、駄目なりに良かったと言うか、その後の展開に希望を持てるところがあったが、「ナカグロ(仮)」のお披露目は、其の底に希望すらだにも残らない、絶望のみが詰まったパンドラの匣であった。
衣装の残骸

_ その他の写真は

こちらに。


2016-09-01 Water [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 40号

高橋朱里
巻頭8ページ10カット、見開き1か所。 撮影は佐藤裕之。

・表情は諧調に乏しく
・仕草に意味を持たせる事も出来ない上に
・カラーコンタクトで目が死んでいる

と言う三重苦。 苦し紛れの作り笑いが無いのが救いではあるが、それだけ。 何もない。

表情の単調なのは切り取り方で変化を付け、能動的に動けないところは指示を出し、体形の粗は衣装とポージングで補正。
高橋朱里を盛り立てている人々で営為で何とか間を持たせた8ページ。
当たりカットを選って大き目に使った割り付けも良い。

「佐藤裕之のブツ撮り」と言う、滅多なことでは見られないものが載っていると捉えると、これはこれで良いような気もして来る。
横からの光による陰翳で身体の線を描き出したカットは美しい。

モデルとしての高橋朱里には何もない事は露呈してしまったが、それを補って余りある裏方の仕事振りは堪能出来た。

ほのか
巻末5ページ9カット、撮影は唐木貴央。
前半は夏の晴天の浜辺やプールサイドで水着、後半は薄暗い屋内で水着。

太陽を背負わせようが何をしようが眩しいものは眩しい訳であり、前半はほぼ固まった笑顔。
後半はどう振る舞えば良いのか分からなくなっているような表情。

カメラマンの腕以前に、編集者の発想の貧困によって予め失敗が運命付けられている悲劇。


2016-08-31 額装したポストカードに見る心配り [長年日記]

_ From Life ― 写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展

廃れてしまった技法でも、やり残したことは必ずある、と私は考えているのだけれど、神保町画廊で開催されている七菜乃の写真展で感じたピクトリアリズムの可能性についてのヒントになるかもしれないと思い、足を運んでみた。

絞り込んでパンフォーカスにせず、ピントを薄くして前後をぼかす手法の嚆矢ではあるのだけれど、意図したところには焦点を合わせられていない隔靴掻痒感と、長時間の露光が必要であったために仕方がない事なのであるが硬直した表情とポーズがどうにも好みに合わない。
良し悪しではなく、好悪に係る部分の問題。

ただ、人物の配置で有ったり、小道具大道具衣装に込められた寓意には唸らされる。
その作り込みが鼻に付いたりもするのであるが。

ジュリア・マーガレット・キャメロンの作品はさておき、親交のあった同時代人としてチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)の作品が一点、影響を受けた写真家としてアルフレッド・スティーグリッツの作品が数点展示されていたのが、私にとっては有り難かった。

丸の内の三菱一号館美術館で開催される本格的な写真展は初めてとの事であったが、見やすい配置と照明でストレスなく鑑賞。

写真を見るための必要最低限の照明を高い位置からのLEDライトで柔らかく当てており、目にも作品にも優しい。
説明文は重要度によってパネルの大きさもフォントも変えられており、多くの人が立ち止まることが想定される位置にあるものは大きく、スポットライトを当てて明るく見やすくしていた。
こうした心配りは写真専門のギャラリーでも出来ていない事が多く、私の中の三菱の企業イメージは向上した。

もう一つ良かったのは、ミュージアムショップの品揃え。
開催されている写真展に合わせて関連作家の写真集やオリジナルプリントなどが丸の内ならではのブルジョア価格でずらり。 想定顧客層の財布の厚さと紐の固さ緩さを勘案した絶妙の値付けと品揃え。
私には手が出ないが眺めるだけでも心が豊かになる。

懐に年中秋風が吹いている私のような者にも優しく、ポストカードも何種類か置かれているのだけれど、見本が額装されているのも良い。
ポストに投函する葉書としてではなく、手元に置いて眺める写真として購うと言う選択肢をさりげなく提示。

館内様々なところに心が配られた、快適な美術館であった。


2016-08-30 「たっぷり」 [長年日記]

_ 朝練講談会 第193回(28.8.28)

うっかり寝過ごしたが、バスの接続が良く、なんとか開場する頃合いに到着。

講釈師でも噺家でも、その芸風によって付く客筋は異なるのだけれど、今日はは「楽しい時間を過ごしに来ている客」が多かったように思う。
私も久しぶりに声を出して笑った。

「円山応挙の幽霊画」 一龍齋貞寿
貞寿さんは「サザエさん」の花沢さんのような、「洒落小町」のガチャ松っつぁんのような、ざっかけない感じなのだけれど、狙っていない色気があるのが面白い。
召し物も清潔感は有りつつ華美ではなく、読み物の邪魔にならないような物を選っている。
南左衛門先生のに教わった「円山応挙の幽霊画」を掛けたのだけれど、稽古風景や酒席での様子など、師の人柄を伝える楽しいマクラをたっぷり振ってから。

他所で聴いたものと設定が異なっており、応挙が描くことになる花魁が臥せっているのが行燈部屋(あんどべや)。 髪をおどろに振り乱し、饐えたような臭いすらする惨状。
生きているうちに幽霊として下絵に描かれた姿と、息を引き取ってから全盛の姿で夢枕に立った本当の幽霊としての姿の対比の妙。
為にする演出無しにゾクリと背筋を寒からしめる話術。
良いものを聴いた。

「幸助餅」旭堂南左衛門
貞寿さんのマクラを受けて、講談界の東西交流や稽古会が始まる以前から稽古に来ていたことなど、たっぷり枕を振ってから「幸助餅」。
かっちりした講釈の口調で有りつつ、上方ことばの柔らかさもあり、聴きやすい。
気前は良いが優柔不断で見栄っ張りな幸助にやきもきさせられたが、最後の最後でハッピーエンド。
時計を見たら一時間以上経っており、まさに「たっぷり」。
心地よい疲れを感じつつ外へ出た。


2016-08-29 全てが美しい [長年日記]

_ ミラクルジャンプ 2016 09号

平手友梨奈
週刊ヤングジャンプ 2016 39号との連動グラビアで、巻頭4ページ7カット、巻末4ページ5カットのブチ抜き。 A3になるオマケピンナップが付く。撮影は細居幸次郎。
流通は少ないようで、コンビニエンスストアと書店を何軒か回り、漫画専門の売り場を作っている書店に残っていた最後の一冊を入手。
買うまでに一と苦労。

アザーカット程度だろうと多寡を括って買ったのでけれど、ところがどっこい質が高い。 見慣れた決め顔以外の多彩な表情。
平手友梨奈のグラビアを抑えるなら、むしろこちらを買うべきかもしれない。

前半はノースリーブだがダボッとしたワンピース、大き目のサイズの半袖ワイシャツなど、身体の線は出ない衣装なのだけれど、喜怒哀楽のどれにも当て嵌まらないような、どれにも当て嵌まるような表情は、それだけで煽情的であり、引き込まれる。

後半は吊った蚊帳の中で午睡から目覚めて、起き上がりしなに振り向いたカットから。
こちらは蚊帳越しのソフトフォーカスで幻想的に。

ページを繰ると、半袖ワイシャツにグレーのプリーツスカートを合わせた夏の制服のような衣装(前半でも使われたもの)で「世界には愛しかない」の歌衣装を持ち、身体に宛がって姿見を見るような3カットで見開きに。
右端にライカ判的な縦横比で縦に二枚、左側は正方形フォーマットで大きく使っているのだけれど、この正方形の構図が実に良い。
ワンピースを持つ指、抱きしめる腕、畳を掴む様に立つ足の指。 それぞれに表情が有る。

最後に蚊帳の中のカットで使われた衣装で縁側に立ち、引き戸に寄り掛かるようにして小首を傾げたポーズ。
今回のヤングジャンプ・ミラクルジャンプの連動グラビアの中で唯一身体の線が出ている。
そう「この1カットのみ」なのだけれど、それ以外のところで勝負をし、あまり日の当たらない「平手友梨奈の年相応の可愛らしさ」を引き出すことに成功した一連の写真は評価に値すると私は考える。

ピンナップの裏面、「世界には愛しかない」の歌衣装を身体に宛がったまま踊るようなカット。
縁側からの日差し、揺れるスカートの裾、少し上気したような頬。
全てが美しい。 眼福。


2016-08-28 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 39号

平手友梨奈
銀河英雄伝説が盛り上がってきたタイミングに当たった所為か表紙での扱いは小さいが、巻頭6ページ8カット、撮影は細居幸次郎。
夏休みがテーマになっており、服装も夏らしくあるのだけれど肌の露出は少なく、身体の線も殆ど出ない。
夏の日差しの下でにっこり微笑めば15歳なりのあどけなさ、それが次のページでは一転、目で殺しに来る。
上瞼に少し力が入ると、眼光に鋭さが増す。

3ページ目右上の扇風機を前に爪先立ちしたカット。 大きく使えば映えるのだけれど、大きく使う訳にも行かなかったであろう透過光で身体の線が描き出されたカットに唸る。

顔の輪郭を囲うような髪型であり、正面から睨め付けるような表情を切り取った写真の印象が強かったので気付かなかったが、顔が顔として認識できる角度が広く、6ページ目のように髪を後ろでまとめると別趣の平手友梨奈。

加藤ナナ
巻末5ページ7カット、撮影は桑島智輝。
スタイリストが上手い。 整った顔立ちであり、細身で脚が長いのだけれど、量感には乏しい。
美点となる「脚の長さ」と言うのが写真として見せるのは中々に難しいのだけれど、視覚的に分かりやすくする衣装。
それを桑島智輝が上手く組み立てて構図を作っている。
見せ方も隠し方も上手く、2ページ目3ページ目が実に良い。

カメラマンとモデルだけでは成立し得ないグラビアの難しさと面白さを垣間見る。


2016-08-21 再訪 [長年日記]

_ 七菜乃写真展 私の女神たち -My Venuses-(再訪)

先日、アイドル方面の古い知己との飲み会に出た際に「最近どの辺に」的な話になり、意外な人と神保町画廊の話で盛り上がった。
コスプレとかAVとかその両方とかに行っていると言う話だったのだけれど、その辺りが被写体になっている事があって神保町画廊に行くようになった由。
曰く「ぎりぎりアウトなことまでやるのが面白い」
好みに合ったり合わなかったり様々であるが、一度ならず観に行きたくなる企画は多い。

今回は観覧者に対する年齢制限は無く、「強い表現が有ります」的な注意喚起も無い。
「強い表現」のある写真が良いとか悪いとかではなく、見たら見たで面白くはあるのだけれど、私は今回の写真展のような写真が好きだ。
昔話に喩えるなら血が沸き立つような光景は無いが誰も不幸にならない 「おむすびころりん」、季節に例えるなら春から初夏。 熱くも寒くも無く、穏やかでゆったりとした時間の流れ。

昨日見た際には目にしなかった作品があったような気がするが、増えたのか差し替えになったのか、変わっていないのか判然としない。
ただ配置は少し変わっていたようだった。

「ピクトリアリズム」「フォト・セセッション」「光大派」などの言葉が脳裏に浮かぶが、帰宅して調べてみると(アン・ブリグマンの作風が近いような気もするが)どれとも異なる。 古いようで新しく、懐かしいようでいて新鮮でもある。
これ迄に有ったものを否定・破壊するだけで新しいと思っている人がまぁどの業界でも多くて、既に使われた技法などはそれだけの理由で否定されがちなのだけれど、手法については撮影者のセンス次第だと、私は思う。
(まぁ私なども Neue Sachlichkeit の落穂拾いをしている訳なのであるが。)

晴れた日曜の午后とあって少々込み合っており、譲り合い体を交わしながら見て回ると、女性客が多かったと見えて室内の空気にはさまざまな化粧品・香水の匂いが入り混じって漂い、写真も心なしか華やいで見える。

制約済の赤い印が増える事を祈念しつつ帰宅。


2016-08-20 戯れる女神たちを覗き見るような、厳かで美しい写真たち [長年日記]

_ 七菜乃写真展 私の女神たち -My Venuses-

荒天の日曜。 空いているうちにじっくり見たかったので、開廊した頃合いに観覧。
七菜乃が在廊していると場は華やぐのだけれど、じっくり見られる状況にはなり難い。 そもそも私が落ち着かない。

今回、七菜乃は撮影者であり、被写体はこの撮影のために募られて集まった18人の「女体をもった人」。

A4サイズの紙の真ん中にキャビネくらいのサイズでプリントしたものが中心で30数点。
飾りやすい大きさで落ち着いたデザインの ガラス張りの白い箱のような額装が、写真と良く合っていた。
奥の方でチェキやポラロイドも同様に額装。
心理的なハードルも低い、総じて納得すれば手の出せる値付け。

正面奥の壁に巨大なプリントが一枚。
クリップで挟み、そのクリップを画鋲で壁に留めていたのだけれど、作品を挟むクリップにも緩衝材として畳んだ紙を噛ませているなど、細やかな心配り。

森の中で撮った裸婦像。 七菜乃は「女体」と言う表現をすることが多いが、今回の写真展は「私の女神たち」。
柔らかく写る効果を用いて撮ったものが多いのだけれど、カットごとに効果の出方が変わっているので、スカイライト系のフィルターに脂をつけたのだと思われる。

モデルの配置やポーズに押しつけがましいところは無く、指示ではなく啓示と言うか、何かに導かれるようにして自ずとそうなっているような感じ。
実家の所有する森なので安心して撮り撮られていたであろう事もあり、表情も柔らかい。
膝を抱えて組んだ手の甲、透き通るような白い肌に浮かぶ静脈に目を見張る。

戯れる女神たちを覗き見るような、厳かで美しい写真たちだった。


2016-08-16 文字通り「たっぷり」な会 [長年日記]

_ 神田愛山・宝井琴調 夏の会(28.8.10)

仕事を片付けて神保町へ。 19:00の開演にはなんとか間に合った。
前座で神田こなぎさんが入っていたが、楽屋仕事のみで前講は無し。
(まぁ文字通り「たっぷり」な会なので。)

「隅田川乗っ切り」琴調
「忠治の娘」愛山
<中入り>
「若山牧水酒の歌」愛山
「五貫裁き」琴調

「若山牧水酒の歌」は、牧水が酒で身を持ち崩していく過程を酒について詠んだ歌を通して追って行く。 このあたりの実体験に基づく考察は愛山先生ならでは。
言葉でむ心地よく酔える、岩波の牧水歌集を読み返したくなる一席。

「隅田川乗っ切り」は大久保彦左衛門が狂言回しの武芸もの。
寛永三馬術に絡めた訳知り向けのクスグリが愉しい。

武芸もの、侠客もの、新作、取り交ぜてたっぷり。
心地よい言葉が耳に流れ込むに任せるひととき。


2016-08-15 真打としての格 [長年日記]

_ 第1回 立川志ら玉の会

昨秋の真打昇進から間が開いたが、両国亭での独演会が再開。

「真田小僧」立川笑坊
「試し酒」立川志ら玉
「目黒のさんま」快楽亭ブラ坊
<中入り>
「鏡ヶ池操松影」立川志ら玉

開口一番は談笑門下の三番目(今のところ)の弟子の笑坊さん。 だいぶこなれては来ている。

ゲストは紆余曲折ありつつも二つ目昇進を果たしたブラック門下のブラ坊さん。
季節には一寸早いが、二つ目昇進の際の課題となっていた「目黒のさんま」。
志ら玉師と続けて聴くと癖のない口調がどことなく似ていて、快楽亭の血筋のようなものを感じた。

志ら玉師は根多おろし二席。「試し酒」と「鏡ヶ池操松影」(※所謂「江島屋騒動」)から古着の買い付けに鎌ヶ谷へ向かった江島屋の番頭金兵衛が吹雪の夜に怪しげな老婆に巡り会うくだり。 残暑厳しい折、怪談で涼を採る趣向。
江島屋は圓朝作の怪談なのだけれど、クライマックスに多少あるくらいで陰惨な場面は少なく、怖さより気味の悪さがじわじわと沁み出すような噺。
(この噺については、正岡容の「我が圓朝研究 -「怪談牡丹燈籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について-」に詳しい。)

演目の選択も「らしく」在り、立場が人を作るとはよく言われるが、真打としての格を感じる納得の二席。

_ 朝練講談会 第191回

久しぶりの朝練講談会。 うっかり寝坊をしたがなんとか開場直前に到着。

「鹿島アントラーズ誕生」神田真紅
知っている話なのだけれど、焦らされるとやきもきもし、「川淵テメェ!!」となったり「川淵、いいぞ!!」となったり。
言い淀んだり詰まったりするところもあったが、マクラから本編への入り方や話の構成は巧いので、さほど気にならずに聴けた。

「四谷怪談 恨みの南瓜」神田春陽
入れ替わりで客電が落とされて演目が怪談であることを察する。
何を演るかによっては逃げっちまおうとも考えていたが、語りはじめで大丈夫な奴だと分かったのでそのまま聴く。
春陽先生は怖がらせるところは怖がらせるが適度に空気を入れてくれるので、陰惨なのがダメな私のような者でも安心して聴ける。
下手打つと話がぐっちゃぐちゃになってしまうような乱暴な混ぜっ返し方をしても、なんだかんだで本筋に戻って来られるのが凄い。


2016-08-12 瑕疵は紙一重 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 36号

根本凪
巻頭6ページ9カット、うち1カットは所属グループであるところの虹のコンキスタドール全員での集合。 撮影は細居幸次郎。
グループアイドルの代表による投票企画で目出度く一位となった根本凪が巻頭グラビアを得た訳であるが、そう言うややこしい手順を踏まずとも巻頭でグラビアをやれるだけの素材ではある。
水着は三角ビキニと肩紐無しのバンドゥビキニを併用、肩紐の日焼け跡がどうにも煽情的なのではあるが、敢えてそこに視線を誘導して見せることで、ポーズや構図は当たり障りないものにしている。
捻ったり隠したり切ったり、粗になりそうなところも上手く誤魔化して美点のみを引き出しており、表情も単調と言えば単調だが、カメラとの向き合い方は素直で、妙にひね媚びた笑顔を作ったりしないのは良い。 特に4ページ目の横顔などは味わい深い。
水着仕事の取っ掛かりとしては良い巡り合わせ。 肉感的な部分を無暗に強調する媒体でなくて良かった。

横井ほなみ
投票企画で3位の横井ほなみ(FES☆TIVE) が巻中3ページ6カット、撮影は細居幸次郎。
表情もポーズも硬いのだけれど、そこが初々しくはある。
細居幸次郎をして撮りあぐねた感はあるが、悪い出来ではない。

荒川優那
巻末4ページ5カット、撮影は細居幸次郎。
少々味付けが濃いような気がしないでも無いが、グラビア3本撮り分けとなると開けにくい引き出しも開けねばならないのであろう。
目が死んでいるのは撮影者ではなく被写体の責任。 その辺りを判り難くするためのソフトフォーカスなのかもしれない。 撮られる側の気構え次第ではもう少し良くなったと思われるが、そこはそれ、致し方ない。

_ 週刊ヤングジャンプ2016 37・38合併号

武田玲奈
巻頭7ページ、広告3ページ、巻末6ページ、ずらりと武田玲奈。
Leslie Kee 3ページ3カット。
MARCO 2ページ1カット(見開き)
Takeo Dec. 2ページ2カット+広告2か所。
笠井爾示 3ページ3カット。
ホンマタカシ 3ページ2カット、うち見開き1か所。
5人のカメラマンを向こうに回して堂々と撮られているのは流石。
青年マンガ誌でここまで思い切った企画が出来るのも、それだけのモデルだと言うことなのであろう。
拍子や広告の担当がTakeo Dec.と言うのが象徴的で、想定読者層に対して訴求力のある写真を撮れているからこその人選。
プレゼントページの写真までTakeo Dec.と言うのも贅沢な話ではある。
好みの写真ではないが、企画としては面白い。

全国美少女 mini Book
フリーペーパー「美少女図鑑」の協力を得て、北から南から選りすぐった原石を紹介する体のオマケ冊子。
撮影は細居幸次郎と北条俊正。 どちらが誰を撮ったのかまでは明記されていないが、加藤真美と山田愛奈は細居の撮影であろうと思われる。
仕方のない事ではあるのだけれど、昆虫採集的に手あたり次第撮った写真が多く、統一感が無いのが疵。


2016-08-09 睡魔との長く辛い戦い [長年日記]

_ 『SUNDAY GIRLS Vol.3』(第2部)

第1部と第2部で入れ替えは無しだが、終演後に一旦椅子を片付けてゆるゆると第1部の物販。
終電で帰る人々を見送り、ゆったり目に椅子が並べ直され、日付けが変わった頃合いから第2部スタート。


辻林美穂
i-podに用意し来たオケと重ねたりしつつピアノ弾き語り。
オケのデータが1曲分クラッシュしていたとかで、予定にない曲を2曲ほど。
辻林美穂1
明けて月曜はアルバイトだそうで、「なんとかなるでしょう」と笑っていた。
辻林美穂2
辻林美穂3
そんな感じの肩の凝らない歌唱とピアノ。 次は眠くない時間に聴きたい。


澤部渡 (スカート)
紙の束を携えて登場。 京阪の各駅停車の上半分みたいな色のリッケンバッカーをアンプに繋いで弾き語り。
澤部渡1
紙の束は歌詞を印刷したもので、次の曲をやる前にバサバサと探す。
澤部渡2
何を歌っても(弾いても)澤部渡の歌になっており、無造作に弾いているように見えるギターだが、時折とんでもない技巧を挟み込んでありえない音を出すので、心地よさに眠気を催してもその度に「なんだコリャ!?」と目が覚める。 心臓によろしくない。


プラスチック米
木造アパートの自室でラップの練習をしていたら通報されて国家権力が来たとかで、その模様を録音したものを流したり、それをサンプリングした曲を演ったり。
プラスチック米1
静かな狂気。 攻撃的で無いのが良い。
関美彦のピアノ伴奏でプラスチック米が一曲歌った後、「僕も歌って良いですか?」と関。 そのままピアノを弾きつつ「HAWAI」。
関美彦1 プラスチック米2
何故か正座して謹聴するプラスチック米。
最初から最後までどうかしていた。 面白い。


浦郷えりか
ラケットを持ち、テニスルックで登場。
浦郷えりか1
テニスに因んだ曲の後に無用の長物と化したラケットは、その辺に立て掛けられ、いつしか忘れられ、ふとした拍子に蹴り飛ばされたりしていたが、この「なんだかよくわからない感じ」が通奏低音としてあって、上手くは無いが下手ではない歌、能弁では無いが訥弁でもなく、さして面白くも無いがつまらなくは無いとりとめのない話をニコニコと続ける様を眺めているうちに持ち時間が終わって去って行った。
浦郷えりか2
これはこれで有りだと、私は思う。 寝物語に聞く「おむすびころりん」のような時間。


柴田聡子
眠さが極まった頃に始まり、心地よい歌声とギターの音色に、遂に眠気が限界を超える。
柴田聡子1
しかし澤部渡の時と同じく時折耳の奥に響くギターの音と、脳みそに引っ掛かる独特な言葉遣いが現実に引き戻し寝たり起きたり。
柴田聡子2
混乱しているうちに終演。

いつの間にか総武線緩行線にも始発が走る時間となっており、表に出ると既に空は白んでいた。
熱帯夜の明けた朝の、冷めきらぬ都市の火照りと湿り気を感じつつ帰宅。
長丁場で眠くはあったが、楽しい時間を過ごせたのは間違いのない事実。
次回は眠くない時間帯にお願いしたい。


2016-08-08 なんとも不可思議 [長年日記]

_ 『SUNDAY GIRLS Vol.3』(第1部)

神保町試聴室で開催される不可思議なライブへ。

前回お誘いいただいた Vol.2 が楽しかったので、予約フォームが出来たところで予約。
予約してからタイムテーブルを確認したら二部制になっていて、二部の開始は日付が変わってから。 終演は月曜の朝、始発が走る頃。 完全にどうかしている。
仕事はまぁ、何とかなるだろう。(※何とかした。)

日曜の夕方の水道橋駅界隈にはタバコの煙に悩まされずに時間を潰せるところが無く、少々早かったが会場へ。 蚊の餌になりながら開場待ち。
中ではリハーサル。 K&Mミュージックの面々と中村綾が「あぁ、あなたが」的な感じで挨拶をするさまが微笑ましい。

15分遅れて開場。 席を確保して一と息ついている裡に開演。


越智灯子
「SUNDAY GIRLSの妖精」から「SUNDAY GIRLSの座敷童」に肩書が変わっていた。
越智灯子1
長崎発のアイドルであるところのMilkShake(ミルクセーキ)の東京遠征の手伝いで準備が出来なかったとのことで、松任谷由実の初期楽曲から。
越智灯子2
ピアノ伴奏はMilkShakeの楽曲提供者でもある唐川真。
唐川真1

時間が盛大に余っていることからミルクセーキの話にもなり、唐川真の来歴と楽曲を提供することになったいきさつなどが語られる流れ。

そうした側面から語られることは多くなく、送り手の側にもそこを売りにはしていないので仕方がないと言えば仕方がないのだけれど、ミルクセーキの売りに成り得る部分として「唐川真の手掛ける楽曲の良さ」は確実にあり、もう少し押し出しても良い。


中村綾
以前在籍していたグループがファンの総称などを作って客席が息苦しくなり、足が遠のいているうちに色々あってグループそのものが無くなってしまい、仕切り直してソロで活動を始めて一年になるとのこと。
中村綾1
Chelipにしても鈴木花純(ex.テレジア)にしても中村綾にしても、世渡りが上手くないことから回り道を強いられたりもしているが、難局に当たって互いに助け合い、倦まず僻まず歩を進めることで客の信頼を勝ち得ているように思う。
客筋は良い。
中村綾2

普段はアイドルが複数出演するライブへの出演が多く、今回のように座って聴く形式のものに出る機会は少ない。 いつも演っている曲の他にバラード調の曲も用意したとの事で、レゲエ風のアレンジになっているバラードを挟んだ構成。
中村綾3
このバラード調の曲のオケと普段演っている曲のオケの造りに乖離が有り過ぎて、一寸勿体なかった。
バラード調の曲のオケはシンプルで歌声が聞き取りやすいのだけれど、普段の曲のオケはコーラスが厚く重ねられており、大音量で浴びせるには良いが歌声を聞き取りにくく、静かな環境で聞かせるには不向き。
出演するライブの環境に合わせてオケを準備できれば良いのだけれど、そうも行かないのであろう。


ユメトコスメ
女性ボーカルとピアノ、サポートでヴァイオリンが入るスリーピース。
ユミ(ユメトコスメ)
心が浮き立つようなピアノ伴奏、脇を支えるヴァイオリン、落ち着いた歌声。
長谷泰宏(ユメトコスメ)
ヴァイオリンの人
耳にして「そうそう、丁度こう言うのが聴きたかった。」と腑に落ちる音楽。
ヴァイオリンのピチカート奏法が至近距離で見られた(聴けた)のも嬉しかった。


K&Mミュージック(小林清美、飛弾せりな、森田さき)
それぞれ浴衣で登場。 先ず森田さきがギター弾き語りで一曲。 今後K&Mミュージックの所属になるとのこと。
森田さき
「何か面白い事が出来たら良いな、と思っています。」と小林清美。
この人の思い付く「何か面白い事」は常人の想像を超えるようなものなので期待したい。
飛弾せりなは持ち歌の「カード戦士飛弾せりな」を。
飛弾せりな
この曲も割とどうかしているのだけれど、楽曲としてはちゃんとしている。
小林清美は目を見開くと岡本太郎のようになることが有るのだけれど、その辺りもあの「謎のひらめき」に繋がっているのかもしれない。
小林清美1
小林清美2


姫乃たま
初見がPIP: Platonics Idol Platformのイベントのゲストでの「濱野智史が連れて来た『地下アイドル』に詳しい人」としてであり、知識の蓄積を自らの周囲に起こることに頼る探求心の無い人と言う印象を持ったのだけれど、実際にライブを見ると、見世物としてちゃんとしている。
姫乃たま1
まぁ「『地下アイドル』と言う言葉の成り立ち」を知らなくても、そもそも資料が皆無なので仕方がないと言えば仕方がないのであるが。
姫乃たま2
ライブの進行にもじわじわと客を巻き込む大道芸的なしたたかさがあり、巻き込まれさえしなければ、見ている分には楽しい。 姫乃たま3


2016-08-02 予想だにしなかった未来 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 34号

深田恭子
巻頭7ページ11カット、撮影はND CHOW。
2016年に深田恭子が青年漫画誌の巻頭で水着になっているとは、徐々に肌の露出を減らしていったあの頃には思いもしなかったが、然程の違和感はなく溶け込んでいる。
3ページ目など、笑うと目尻に烏の足跡が見え隠れすることもあるが、体形や肌の張りからは一体何歳なのか見当が付かない。
正面から撮ると頑健さが際立ちすぎるが、そのあたりを誤魔化すと言う発想そのものが無い撮り方。
悪くは無いが、些か逞しさを引き出し過ぎているように感じられる。

江野沢愛美
巻中7ページ18カット、コラージュ的に見開き1か所。 撮影はMARCO。
相変わらずざっくりしたピントの合わせ方で、引きの構図になると些か散漫なのだけれど、割り付けで何とかした7ページ。
モデルとカメラマンだけでなく、様々な裏方の仕事が噛み合って初めて良いものが出来る。 編集が良い仕事。

江野沢愛美は表情は些か単調なのは瑕だが着ている服を見せる仕事が多い割に自分を見せる撮られ方も出来ており、表情を生かす撮り方をして貰えていないのが惜しまれる。

唐田えりか
巻末5ページ9カット、撮影はTakeo Dec.
上手く撮り、撮られている。 表情に作為が出過ぎているような気がしないでもないが、カメラに意識だけを向ける撮られ方は巧い。 きちんと芝居が出来ている。
その隙の無さは面白味の無さと紙一重なのであるが、Takeo Dec.の切り取り方が良い。
4ページ目、シャッタースピード遅めで動きを出したカットに唸る。 眼福。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 35号

西野七瀬
巻頭8ページ17カット、撮影は細居幸次郎。
どきりとさせられる瞬間だけを切り取って作ったような17カット。
ページを繰るたびに寿命が縮んで行く。

ヴェニスではないが海辺の町で「美そのもの」と出会ってしまい、対象の生活を覘き込むことにのめり込んで行くグスタフ・フォン・アッシェンバッハのような視点。
細居幸次郎がそう撮ったと言う事ではなく、西野七瀬も何も企んでいない。 その写真を目にした者(例えば私)が精神をコレラに侵されて病膏肓。

ここまで心臓に悪いグラビアもなかなか無い。

渡辺梨加
巻末5ページ11カット、撮影はTakeo Dec.
撮られ慣れていない硬さもあるが、そこは状況設定と道具立てでほぐしている。
美形感とお茶目さの程良いバランス。


2016-07-31 理想の余暇 [長年日記]

_ 神田愛山独演会(28.7.29)

前の晩に行った両国亭にチラシが有ったので、仕事帰りに神保町へ。
前講無し、前座さんと頼まずに愛山先生が一人で、たっぷり二席。

「徳川天一坊 越前切腹」
続き物を読むときには、それまでの粗筋を簡潔に纏めて初めて聞くお客さんにも分かるようにすべき、ここには自信を持っておられるようで、実際粗筋だけで一席成立するのではないかと思うほど。
春陽先生と松之丞さんを引き合いに出し、「あいつらに後を託すことになるとは・・・。」と慨嘆しつつ、嬉しそうでもある。

粗筋から始まり、何故大岡が切腹せざるを得ない状況まで追い込まれているのかが示されてから、緊迫した場面が始まるのだけれど、愛山先生が化ける。

「骨の音」
結城昌治の短篇を講談に仕立てたもの。 冒頭に説明方々多少有るくらいで地の文は少なく、温泉地の盲目のマッサージ師と客となった初老の紳士会話で進む。
始めは勇ましかった紳士が怖気を発し、下手に出ていたマッサージ師が次第に雄弁になって行くさまに引き込まれる。 不気味だが腑に落ちる、恐ろしくはあるが後味は悪くない結末。

楽しいより愉しい。 心地よい言葉の海に揺蕩う一と時。

_ 講談貞橘会(28.7.30)

愛山先生の会に行って翌日が貞橘会であることを知る。
午前中に用足しをして午後から神保町へ。

「渋川伴五郎」田辺いちか
「黒田節の由来 呑み取りの槍」一龍斎貞橘
「情けの仮名書き」宝井琴柑
「小猿七之助 永代橋網打因果噺」一龍斎貞橘
仲入り
「一心太助一代記 彦左と太助の出会い」一龍斎貞橘

いちかさんは見るたびに確実に良くなっている。 口調の骨格がしっかりしてきたと言うか。
渋川は確か二度目だが、こなれて来ている。

琴柑さんは久しぶりに。
学生時代を山形で過ごした縁からか、米沢藩を題材にした「情けの仮名書き」。
藩校であった興譲館が県立一の進学校となっている話なども織り込みつつ。
嫋やかさもありつつ、講釈の口調は崩さない。 程が良い。

貞橘先生は例によって緊迫し過ぎると安全弁を開けて客の肩の力を抜いていくのだけれど、見せ場では畳みかけて引き込むし、聴かせるべきはしっかり聴かせる。

気楽に聞けて肩が凝らず、楽しく過ごせて充実感もある。
余暇の過ごし方としては理想に近い会。
八月は休みで次回は九月。


2016-07-18 目の奥がひりひりするような感覚 [長年日記]

_ 中悠紀写真展「AUTUMN LEAVES 2」

四谷四丁目のギャラリーニエプスへ。
2013年から2015年にかけてのパリを撮った、厳密に構図を切ったりピントを合わせたりする工程の無い種類の、構えたら撮る写真。

出合頭に撮られた被写体は怪訝そうな顔をしたり、不快感を顕わにしたりしていて、私には撮れない(撮ろうとも思っていない)種類の写真なのだけれど、生々しく瑞々しい、パリと言う都市の現代が切り取られている。

プジョーやルノーが走り、石造りの建物も並ぶ、紛うことなきパリなのだけれど、肌の色や服装からそれと分かる中東やアジア・アフリカの人々が当たり前のように暮らす街。
今のパリを今のパリとして切り取るには、この激しい撮り方が適しているのだと思う。

ひりひりした感覚を醒ますために、何時もより少し先のバス停まで歩いて帰宅。


2016-07-17 年増の色気 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 30号

佐藤麗奈
巻頭7ページ、「宇宙にいちばん近い島」種子島で撮った18カット、撮影は細居幸次郎。 撮られ慣れているのが良い方に出ており、カメラの前に気負わずに立てており、直視することも出来るし、意識しつつ視線を外すことも出来る。
屋外撮影分も悪くないが、屋内で弱く柔らかい光を廻したカットが巧い。
6ページ目の2枚に唸る。

佐藤優樹
巻中3ページ6カット、撮影は佐藤裕之。
モデルを泳がせて撮った、動物写真的なカットのみ、表情が良い。
「超速緊急アンコール」と銘打たれているが、そこまでのものでもなく、政治的な臭いのする煽りには興醒め。
煮ても焼いても食えない素材をとりあへずグラビアとして形にした佐藤裕之の苦心惨憺のみ、評価に値する。

るぅ
巻末5ページ8カット、撮影はTakeo Dec.。
写真としては可もなく不可もなく無難な出来。
構成の妙で見せている。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 31号

齋藤飛鳥
巻頭8ページ22カット、撮影は細居幸次郎。
晴れた屋外で撮ったカットは少々塗り絵が過ぎるようなものもあるが、旧公会堂やハリストス教会の辺りから港を見下ろす坂でハイキーに撮ったカットは白昼夢の如く。

屋内で撮ったカットは高いレベルで安定。
終点に着いたと思しき、乗客が降りて行く市電車内で撮ったカットから、夕暮れの浜辺で焚き火。
谷地頭で降りて浜に出たのだろうかなどと足取りを考えつつ見る。
そして函館山の展望台からの夜景をバックにしたカットで〆。

このロケだけで写真集一冊作れるくらいの濃密な8ページ。 眼福。

長澤茉里奈
巻中3ページ21カット、撮影は山口勝己。
1ページ目は4分割、2ページ目をコラージュ的に詰め込んで3ページ目をウエストアップで大きめに。
セーラー服の下に横縞のビキニ、ファストフード店員的な縦縞の制服の下に白のビキニ。
メイクそのものは変えていないと思うのだけれど、頭頂部でサイドポニーっぽく一つ縛りにするのと、サンバイザーの上あたりで高めのハーフツインにするのとでは、受ける印象が異なり、成熟した身体と童顔とのバランスも変わってくる。
紙幅は短いが面白いグラビア。

福原遥
巻末6ページ16カット、撮影はTakeo Dec.。 連載漫画に連動したコスプレグラビア。 原作の世界観の縛りが有るので面白味は薄いが、表情は良い。 子役から上手く大人に成れつつある。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 32号

武田あやな
巻頭6ページ15カット、巻中3ページ17カット、撮影はTakeo Dec.。
夏らしく、ほぼ全篇南国の晴れた浜辺で水着。 どう撮っても眩しい状況とあってか、作ったような笑顔にならざるを得ないこともあって
表情は些か単調。
物怖じせずにカメラと向き合えているのは良い。

生田佳那
巻中4ページ12カット、撮影はTakeo Dec.。
美点に成り得るが強調し過ぎる瑕にもなり兼ねない量感のある部分をうまい具合に切り取って見せている。

高橋胡桃
巻末5ページ7カット、うち見開き1か所。 撮影は渡辺達生。
新鮮味は無いがスタジオで撮らせると矢張り巧い。 少々無茶な道具立てからライティングから、中高年向け週刊誌的な味付けではあるが、写真としての質は高い。
南国の浜辺で撮ったような渡辺達生の写真は全く評価に値しない(それは渡辺達生の側ではなく、依頼する側の安直で怠惰な思考に起因するものであるがそれはさておき)と考えているのであるが、こうしたスタジオ撮影となると、必ずしも私の好みではないけれども、払われた代価に見合った以上の写真は出して来ていて毎度唸らされる。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 33号

柏木由紀
巻頭8ページ13カット、撮影は渡辺達生。
薹が立って来つつはあり、色々有り過ぎたあれこれが髪の傷みや塗りの厚さに出てしまっても居るのだけれど、それ故に、またこの年頃だからこそ出せる匂い立つ色気と言うものもあり、渡辺達生が巧く掬い取って写真に収めている。

そこそこ上背があって手足も長く、色が白くて皮膚が薄い。 見せたい自分しか客前で出さない頑なさのようなものは疵だが、金の取れないものはお見せしないと言う矜持でもある。
それ故の紋切り型の表情が、今も昔も私は嫌いなのであるが。

面白いのは6ページ目。 ソファに寝転ばせて膝を畳むことにより、体形に於いて唯一の瑕であるところの胴の長さを隠しつつ足の長いのと白いのを効果的に見せている。

最後の最後で胴の長いところも見せているが、吸い付くような皮膚の薄さを感じさせるのはこの部分であるので、これはこれで良いのだと思う。
長い事見て来た柏木のグラビアであるが、褒めるに値するものは初めて目にしたかもしれない。

熊江流唯
巻末5ページ9カット、撮影はTakeo Dec.。 身の丈170cm余、ヒールを履かなくても身体の半分が脚と言う体形を効果的に見せるために腐心。
表情の面白味は薄いがカメラとの向き合い方は素直で良い。
全身が写るカットは水着の上に一枚羽織っており、水着のみのカットはバストアップであったりウエストアップであったり、謎の縛りが垣間見られて後味としてはあまり宜しくない。


2016-07-10 その日観たい聴きたものを観たい聴きたい [長年日記]

_ 朝練講談会 第185回(28.7.10)

「四万六千日、お暑い盛りでございます」でお馴染み、ほおずき市の日に、浅草を通り越して日本橋室町へ。
今週も朝練講談会。 そこそこの入りではあるが、講釈を聴きに来ている客の比率は高め、反応で判る。
私には居心地の良い客層。

「関東七人男 溝呂木新太郎 潟沢屋の強請り」宝井梅湯
人気と言うものについて語るマクラ、多数派ではないからここに居る客としては、どうして反応してよいか分からない。
侠客物の演目としては次郎長や国定忠治、天保水滸伝があるが、天保より少し前の文化文政年間の関東(と言っても武州上州のごく狭い地域らしい)の侠客の興亡を描いた「関東七人男」と言う演目。
御一新で侠客稼業に見切りを付けて講釈師になった人の作った、謂わば小悪党の実録物なのだけれど、実録だけにカタルシスが無いのが疵とのこと。
名の知れた登場人物は出て来ないが、話は練れており、盛り上がりは無いが腑には落ちる展開。 じわじわ盛り上がってこれから・・・と言うところで惜しい切れ場。
これもまた講釈の愉しみ。

「朝顔日記 宇治の蛍狩り」一龍斎貞弥
出自が声優である所為か芝居をし過ぎるところがあり、老爺などは少々臭く感じることもあるが、登場人物が増えて話が込み入ってくると演じ分けが利いてくる。
そして女性が出てくると衒わない抑えた色気が漂う。 程が良い。
続き物の発端なのでじわりじわりと物語は進んで行き、ロマンティックに盛り上がり始めたところで「続きはまた」。

思い立ってふらりと行っても入れて、じっくり聴ける。 実に有り難い会。

_ 田中長徳写真展『TODAY TOKYO 1966』

四ツ谷のギャラリー・ニエプスへ。 先週は折悪しくトークショーの時間にぶつかってしまい、早めに行ったつもりだったが、すでに大入りで写真を見られる状況ではなく、体を交わして出直し。
私は長徳氏そのものより、長徳氏のカメラ趣味評論を好む人々とあまり相性が良くないので、トークショー目当ての人が居ない頃合いを見計らって写真だけを落ち着いて見られそうな時間帯に四ツ谷へ。

1966年、高校3年から大学1年くらいの頃に撮影したネガをプリントし直した写真。 確かすべてノートリミングだったと思う。
ネガキャリアに細工がしてあって、1齣分よりほんの1mmほど鑢を掛けて拡げてあるので、それと判る。
プリントは瑞々しいのだけれど、ネガは60年代の色調。 黒が潔く潰れている。
その塗り潰された黒が締まっているのに驚く。 銀の使用が制限された最近の印画紙では、なかなかこうは行かない。

前述の通り黒が黒々と潰れているので、説明的になりがちなこの種の写真にしては情報量が少ないが、それが写真としては面白い。
切り取り方に出る外連の部分と硬く黒を潰す焼き方に好みは分かれると思うが、見応えのあるプリントではあった。

締めてしまったのでそれは叶わぬ夢ではあるが、「そうじゃないんだよなぁ」と自分好みの写真を焼くために暗室に入りたくなる、罪な写真展だった。


2016-07-03 荒唐無稽 [長年日記]

_ 朝練講談会 前座勉強会vol.13

猛暑日の予報が出ていたが、朝から既に暑い。
暑い中並ぶのも物憂いので開演前に着くよう、蕎麦を手繰ってからゆるゆると。
今日も太鼓の音が聞こえてくる。

ゲストで鶴遊先生と言うのもあってか、なかなかの入り。

「渋川伴五郎」田辺いちか
世話人からの前説が無いのでどうしたのかと思ったら、前座の仕事の一環でもあり、演者の口から。
発声と口調は悪くないのであるが、一度蹴躓くと後を引くきらいがある、考えなくても出来ることが増えてくれば、何食わぬ顔で読めるようになっていくと思う。

「寛永宮本武蔵伝 偽巌流」神田みのり
寛永年間、武芸もの、根多は被ってしまっているがそこはまぁ前座勉強会。
灰汁が抜けたと言うか、きっちり読めるようになってきた所為か癖が気にならなくなってきた。
はたり、はたはた、ぱん、バン、バンバン。 張り扇で句点読点段落分け場面転換、使い方に幅が出てきた。

二人とも未だ前座。 瑕疵もあるが伸び代も感じるので、今後も足を運びたい。

「山田長政遠征記 シャム王国」田辺鶴遊
若手真打が出演すると自分達の頃の前座勉強会の話になる。
私が講釈の会に行くようになったのは黒門町の路地裏の料理屋になっていた本牧亭が無くなる少し前からで、鶴遊先生が出ていたころには間に合っていない。 興味深く拝聴。

九時過ぎから始まる会とあって、眠たげに目をしょぼしょぼさせながら昔語りをしているうちにシャッキリしてきて、山田長政を生い立ちからシャム渡航までみつちり。

織田信忠のご落胤と言う設定に先ず驚いたが、立川文庫的な荒唐無稽な話も楽しい。
時折挟み込まれる一鶴先生のエピソードも懐かしく聴いた。

_ ミスiD×青山裕企 写真展「わたしだけがいない世界。」

早稲田(住所としては文京区関口になる)の YUKAI HANDS Gallery (ユカイハンズ・ギャラリー) で開かれている写真展を見てきた。
最寄駅は有楽町線の江戸川橋か東西線の早稲田、もしくは都電荒川線の早稲田電停になるが、どこからも等しく遠い。
都バスなら鶴巻町と関口一丁目の間になり、さほど歩かずに済む。

大きなガラスの引き戸を開けて中に入る。 傘立てがあるので辛うじて入り口であることが分かるが、引き戸には見えないデザインであり、入り口としての表示もない不親切な設計。

モデル一人辺り三枚ずつ、壁二面半くらいにズラリ。 動画をプロジェクターで壁に投影しているので室内は暗くて、写真を見やすい環境ではない。 見やすい見やすくない以前に、見せるための工夫が無い。
中央の机に写真集が山積み。 写真を見せることより、写真集を売ることに重きが置かれているのが視覚的に判る。

長澤茉里奈などは撮られるのも上手く、素材そのものも良いので可愛らしく写っているが、それだけ。
敢えて日の丸構図で撮りました系の写真で、青山の撮る写真にありがちな被写体を踏み付けにするような底意とか、女性そのものへの呪詛みたいな臭気は無いのだけれど、写真としての面白味もまた、無い。

凌雲閣の「東京百美人」を百年遅れでやっているような顔見世写真。

ギャラリーの造りから展示方法から撮り方まで、すべてが独りよがり。
ここまで不愉快な写真展もなかなか無い。


2016-06-26 手元不如意 [長年日記]

_ 第百十七回 花形講談会「宝井琴調・神田春陽二人会」

珍しく複数の選択肢があり、一日中講談漬け・・・と言う事も出来うる日ではあったが、手元不如意につき一番聴きたい会のみ。
開場前から並んで待つ客は多くなかったが、開演迄にはほぼ満席。


「仙台の豪傑 熊田甚五兵衛」田辺いちか
講談の口調に気を付けているのが見て取れた。
大分こなれて来ており、厭味が無いのは良い。

「大岡政談 小間物屋騒動 万両婚」宝井琴調
鈴本に上がった時の話から落語と講談の協会としての組織の大きさの違い、出来ることと出来ないことの話から「三方一両損」の絵本を出すに至った経緯など。 そこから張り扇を一と叩きして大岡政談へ。 落としどころのあるマクラ。
こうした込み入った話になると、講談の特色でもある地の文の多さが整理する機能として働く。

「小夜衣草紙 蛤の吸物」神田春陽
亡くなった陽司先生の思い出から「化けて出てきてくれないかなぁ」と言う話になり怪談めいた話へ。
大阪が舞台なので登場人物は上方言葉なのだけれど、地の文はそうでは無く、進んでいくうちに曖昧に。
このぞろっぺえなのが怪談で在りつつドタバタ喜劇でもある話には合っていて、ゾッとしたり笑ったり。

<仲入り>
「太平記 楠泣男」神田春陽
軍記ものでありつつ、胡散臭い舌先三寸で身を立てようとする男の悪戦苦闘。
琴調先生と被らない方向に振ったのだと思われるが、面白いものか聴けた。

「国定忠治 忠治山形屋」宝井琴調
私もポスターを見て気にはなっていた六月の新派特別公演「深川の鈴」と「国定忠治」の二本立てを三越劇場に観に行った話から。 悟道軒円玉の書生をしていた頃の川口松太郎の自伝的な演目である「深川の鈴」と前進座から移った市川月乃助が主役を張る「国定忠治」。
(悟道軒円玉は講釈師ではあるが読むより書く方が主の人。 国立国会図書館のオンラインサービスで結構な量の著作が読める。)
良く出来た芝居ながら艶っぽすぎる「深川の鈴」とやくざの話、どちらも三越友の会の奥様方には響いていないようであった、興行と言うのは難しいですね・・・と張り扇一と叩きして「国定忠治」。
代官叩き斬って赤城山に篭って降りて、それからの話。
勧善懲悪だが切った張ったは無く、腕っぷしより機智で山形屋をやり込める忠治。
最後の最後で切る啖呵に溜飲を下げる。

神保町講談会の主催興行は、この会に限らずみっちり聴けて外れが少ない。
心地よい余韻に浸りつつ帰宅。

_ MilkShake(ミルクセーキ)「裏ミル食べin東京・品川」

長崎発のアイドル MilkShake(ミルクセーキ) の定期裏公演の東京出張版。
曲もオケもしっかりしてて、きっちり歌えて、刈り込みすぎず盛り込みすぎず適度な振り付けと頃合いの独自解釈。
緩すぎずきつすぎず良い塩梅の運営。 江戸期以来の国際港湾都市の文化的懐の深さなのか、東京出張公演と言っても変に肩肘張ることもなく、楽しく見ていられるのは良い。

会場の東京アイドル劇場はカラオケボックスのビルの二階に仮住まいしており、音響も証明もソコソコながら安価にさまざなアイドルが見られる(撮れる)興行を打っている。

見たいメンバーが学業多忙につき活動を制限しており、次は何時見られる(撮れる)か判らないので今回は見る聴くより撮るに重きを置いて観覧。
撮ったものはこちらに。
MilkShake@東京アイドル劇場(16.06.26)(その1)
MilkShake@東京アイドル劇場(16.06.26)(その2)


2016-06-19 居住まいを正す [長年日記]

_ 朝練講談会 第182回(28.6.19)

早めに日本橋へ。 野良猫の毛繕いを眺め乍ら開場待ち。
バス停と違って割り込まないだけマシなのだけれど、並ぶの厭さにその辺に屯していて、開場するや入り口に寄ってくる手合いが居る。 たいていは老人。

「赤穂義士銘々伝 中山安兵衛 婿入り」宝井梅湯
高田馬場の後、留守居役らしい堀部弥兵衛の巧妙な罠に掛かった安兵衛が婿入りするまでのドタバタ。
すっとぼけた弥兵衛の食えない爺ィっぷりが楽しい。
こう言うほのぼのした話は実に良い。

「澤村淀五郎」一龍斎貞寿
暫く長野で学校寄席だったとか。 一と口に学校寄席と言っても、小学校、中学校、高校では求められるものが違うので演り方も演目も異なる。 それに対処する日常から、久しぶりに「講釈を聴きに来た客」向き合う事になり、そうなると演目にも悩むとの事。
「村越茂助なんか演ったら怒られますよねぇ」と軽口。 居住まいを正し、張り扇を一と叩きして「淀五郎」。

講談らしい地の文を読む口調と、情感の籠る会話のバランスが良く、臭くなり過ぎないのが良い。
義士伝と忠臣蔵では登場人物の名前が異なるので、読む方も聞く方もこんがらがりがちになるのだけれど、上手く丸め込んでいた。
団蔵がただの食えない爺ィではなく、茶目っ気もあるところが描き出されていて、仲蔵とは別のやり方で淀五郎を育てようとしていたと言う解釈。 後味良く、読み終わり。


2016-06-16 錬金術 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 29号

指原莉乃
巻頭7ページ13カット、撮影は桑島智輝。
表紙は笑顔であり、珍しい。

体形や面相については何処からどう切り取れば映えるか、撮る方も撮られる方も分かっており、「今回はこうしたい」と言う方向が定まっていて、編集者や事務所も含めて合意形成が為されていれば、良いものは出来る。

無から(零ではないがそれはさておき)有を作り出す錬金術的な部分は苦笑するほか無いが、美点である部分を線で描き出した絵には唸らされる。
生娘感の無さを糊塗するでもなく、安売りするでもなく、居る訳ゃ無いんだが近所に住んでいそうな現実感のある色気として提示。

4分割が2ページ、あとは1ページに1枚。 選った上で適切な大きさに配置。
今年も良いタイミングで良いものを出して来た。 眼福。

井上由莉耶
巻中4ページ7カット、撮影はTakeo Dec.
インタビューはオマケの冊子に収録して、こちらは写真を見せる構成。
右側から撮ったアップが3カット。 引きのカットも右側からのものが多く、些か単調。
冊子のインタビューを読むとセルフプロデュースで自らの道を切り拓いてきた来たことが解り、腑に落ちる。
セルフポートレートで映える角度、それが「井上由莉耶にとっての『井上由莉耶の貌』」と言う事なのかもしれない。
良し悪しではなく好悪と言うか嗜好の部分で私には受け入れがたいところも無いではないが、生き方としては面白い。

込山榛香
巻末6ページ11カット、見開き1か所。 撮影は岡本武志。
硬くて色が濃くて白っぽい、好みではない仕上げ方だが表情は良く汲み取れている。
光の当て方は強めだが、クシャッと笑うと目を細めるので、眩しさからくる緊張も然程感じられず、目を細めると大仰なカラーコンタクトも気にならなくなる。
6ページ目がそれ。 上手く纏めてある。


2016-06-12 日本橋から吉祥寺 [長年日記]

_ 朝練講談会 第181回(28.6.12)

カメラをバッグに詰めたりレンズを選んだりしているうちにバスは行ってしまい、いつもより遅れて日本橋へ。
程なく開場。

開演時間に近付くと、曲師が調子を合わせる音が聞こえてくる。

「清水次郎長伝 次郎長出立」玉川太福・玉川みね子(曲師)
大型連休の十日間連続読みの話などから、スッと眼鏡を外して畳み、次郎長伝へ。
この所作が良い。 顔つきも変わる。
拍手をするタイミングであるとか、浪曲の客の作法みたいなものには未だ馴染めないが、耳は慣れてきた。

「紺屋高尾」一龍斎貞橘
何かしくじった訳ではないと思うが、頭を丸めていて驚く。
学校寄席の季節らしく、長野で何公演かした話など。
会話で脱線したり入れ事が挟み込まれたりする事も多いのだけれど、地の文はきっちり読み、締めるべきところは締める。
貞橘先生の講談は、常にそれなりに満足感はありつつ、聴いていて草臥れないのが良い。

_ キチロック!(28.6.12)

むさしのFMの音楽番組「吉祥寺ロックレディオ」の公開収録を兼ねたライブイベント。
ゆるキャラ3組、アイドル2組が出演。
はちきんガールズが現体制での最後のライブと言う事で足を運んでみた。

はちきんガールズ
梶原妃菜子は療養中でお休み。 川村あやのと石川彩楓の二人での出演。
現体制での最後のライブに欠員が出てしまったのは残念だが、出番の最後に司会者が川村あやのが今日限りであることに触れるまでは明るく楽しいいつものはちきんガールズ。
 イベント終了後に「卒業式」ファンからの色紙と花束が手渡され、客が二列になって作った花道を潜って退場。
ライブ中の振る舞いには一寸野暮なのではないかと思うところもあるが、温かさと節度はあり、過度にべたべたしに行かないのははちきんガールズならではの良さであったと思う。
写真はこちらに。

藤田恵名
「シンガーソンググラドル」と言う事で、見せる衣装で聴かせる曲。
付いている客はインディーズアイドルにありがちな定型に縛られた観覧方法に縛られた人々が主で、届いた方が良い層とは微妙にずれているのが気になった。
リハーサルではオケとギターとマイクの音量バランスやオケを流すタイミングなど、マメに調整。 歌うたいとしての矜持が見て取れた。
写真はこちらに。

いち狼&ひよこ豆
八王子市のご当地キャラクター「松姫マッピー」に関連した楽曲制作をしている男女二人組。
曲を聴いた司会の宮口文裕が「間奏でメロトロン使ってますよね?」と良い指摘をして作曲者と盛り上がったり、これからも楽曲制作をするのかとと問われた作曲者が「『お呼びとあらば即参上!』と言う感じです」と答えていたのが面白かった。

_ 今日の一枚

川村あやの(はちきんガールズ)
川村あやの(はちきんガールズ)
ペンタックスK10D ノフレクサー240mm/f4.5

_ 今日のもう一枚

川村あやの・石川彩楓(はちきんガールズ)
川村あやの・石川彩楓(はちきんガールズ)
ペンタックスK10D ノフレクサー240mm/f4.5


2016-06-09 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 28号

佐藤優樹
巻頭7ページ24カット、ほぼ見開きになっているところが1か所。 撮影は佐藤裕之。
北海道出身の被写体を北海道で撮影と言う企画。
流石に詰め込み過ぎで、貶すほど悪くは無いのであるが良くも無い。
要点が絞れておらず、些か冗長。 表情も単調。
構えずにカメラと向き合えているカットが少なく、カメラの方すら向いていないカットは写真として良質。
編集が悪いのではなく(良くは無い)、そもそも被写体に原因のある外れカットが多過ぎる。

稲場愛香
巻中7ページ16カット、撮影は佐藤裕之。
作為の出過ぎた笑顔は興醒めだが、無理に表情を作らず、カメラを見ずに意識だけを向けているカットは良い。 撮影の苦労が偲ばれる。
取り繕った笑顔をカメラに向ける癖はよろしくないが、「そうしている」のか「そう躾けられている」のか。

加藤葵
巻末5ページ、ほぼ水着で10カット、撮影は岡本武志。
可もなく不可もないのだけれど、巻頭と巻中がカメラと向き合えていないので相対的に良く見える。
恥じらうような硬さのある表情もあるが、これはこれで良い。



「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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