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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


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ザ・インタビューズ

投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2014-10-16 野暮と肉屋 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2014 46号

和田彩花
巻頭グラビア7ページ11カット、撮影は桑島智輝。
肌の質感の全く無い、何処の講談社かと思うような塗り絵レタッチ。
セットの趣向に合わせて深度を変えていたり、さりげなく厳しい構図であったり、見るべきところはあるのだけれど、絵画的表現を狙ったのかも知れないが、モデルの息遣いが感じられない紋切り型の表情と漆喰で塗り固めたような肌が興を削ぐ。
ハロープロジェクト全般に言える事なのだけれど、力を入れれば入れるほど野暮になる。

ヴァネッサ・パン
巻末グラビア5ページ8カット、撮影はTakeo Dec.。
こちらもレタッチをしていないかと言うとまぁしては居るのだけれど、被写体が生き物として写っている。 瞳を大きく見せるコンタクトレンズが機能していないカットの方が表情に味がある。
2ページ目の右端に縦に並べられた小さな写真4カットは生きた表情。 残りは肉屋のショーケース。

_ 週刊ヤングジャンプ 2014 45号

西野七瀬
表紙と巻頭グラビア8ページ14カット、撮影はTakeo Dec.
水着はやらない人のグラビアで青少年のリビドーを如何に刺激するか考えられた部分も悪くは無いのだけれど、そうではない「普通に服を着たカット」の出来が良い。
全体的に表情が単調(特に笑顔に諧調がない)なのだけれど、由比ガ浜の古書店で撮られた3カットは良い。

深川麻衣
巻末グラビア5ページ11カット、撮影は大江麻貴。
表情の種類が多く諧調も豊かな被写体に寄りかかって撮った11カット。 巻末は紙幅を割けない事情もあるとは思うが、決め手に欠けるカットを並べてお茶を濁した印象。
どのくらいの距離でどれくらい絞るとどこからどこまでが被写界深度になるかが感覚的に掴めていないので肝心な所で逃してしまっていて、それが散漫な印象に繋がっている。
そして相変わらず寄れないし引けない。 すべてが中途半端。

_ 週刊ヤングジャンプ 2014 44号

サキドル エース トーナメント
12人のアイドルが1ページずつ貰って、添付葉書の投票で勝ち負けを決めるトーナメント企画。 撮影は細居幸次郎。
ヤッツケ仕事にはなっていないのが救いではあるが、じっくり撮って貰えている訳でもないので可もなく不可もなく。
この手の企画は写真の出来不出来でもなく、被写体の魅力でもなく、どれだけ太い客が付いているかで勝敗は決まってしまうので、血眼になって投票するのはよしたが良い。

2014-10-13 津軽から米俵担いで出てきた [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 定期公演(26.10.13)

副題は「PIPはメンバー数が多いのでまとめてやります!10月生誕メンバー(福田・小林・牛島)合同生誕祭!」公演。

台風は大きいだの強いだのさんざ脅かされたが、いつごろやって来やがるのだか判然としない。 開演時間を繰り上げて台風が来る前に終わらせると言うので足を運んでみた。
体調不良や交通機関の都合で濱野、御坂、高城、山下、瑞野、栗城がお休み。

出囃子から一曲目「夢見る 15歳」(福田、橋田、小室、工藤)。
津軽から米俵担いで出てきた工藤は背負っているものの重さが出ちゃっていてどうにも辛気臭いのだけれど、このあたりは私の好みに合わないだけで質としては悪くない。
橋田はフワリと柔らかい表情。 小室は緩急のつけ方に一日の長があり、上手く抜いているから重くならない。 福田は天然の妙と言うか、考えてやっている訳ではなさそうなところが上手く嵌っている。

「さくらんぼ」(羽月、小林)。 ガイドメロディ付きのオケをしれっと使ってしまう濱野の拘りの無さは、今は身軽さとして吉と出ているが、外部のライブやイベントに出る際には凶と出るのではないか。
歌える二人だけに破綻無く。 ただカラオケ大会然としていて面白みは薄い。
チョーカーやニーハイソックス(もしくはタイツ)など、小林のさり気無いお洒落に唸る。

「ハート型ウィルス」(澤村、石川、豊栄)は衣装も秋服に移行。
動きそのものは抑制されていて慎み深いのに妙な色気のある石川のハニートラップ感。 どこまでも健全な澤村との対比の妙。
華はあるが脇にも廻れる豊栄。

「向日葵」(永瀬・空井・牛島・森崎)、久し振りに生気のある空井。 歌も振りも上手いかと言えばそうでもないのだけれど、妙な味があり目を惹く。
森崎は例によってねっとりと。

「てもでもの涙」(北川、柚木)。 北川の衣装がカーテンから作ったようなサウンド・オブ・ミュージック感。
柚木は髪を下ろしていたが、良い手入れをしている。

全員出てきて「RUN RUN RUN」。 曲が終わって自己紹介、お題は「欠席しているメンバーの秘密」。

自己紹介では、自分の名前までははっきり言えていたが、お題の話に入ると当該メンバーを渾名でしか呼ばない。 「初見の客も居るかもしれない」と言う心配りは常に有って然るべきだと私は思う。

ここから福田、牛島、小林の生誕企画。 濱野が心境などを軽く聞きつつ、それぞれ一曲。
福田は「secret base 〜君がくれたもの〜」。 歌詞は飛んだが遣り切ったのは良かった。
牛島は「虫のバラード」、これが面白かった。 音符を細かくなぞるように歌う「つんく♂唱法」に似ているのだけれど母音が弱く子音で抜くところは坂本九に近い。 押し付けがましくなくて良い。
小林は「明日も」。 これは以前一度歌ったことがあったが、歌う予定だった曲が喉の調子が悪くで出来ないのでこちらにしたとのこと。 小林は音域に合わない曲でも歌いこなせるのだけれど、無理をしない曲の方が声の質に合っているように思う。

生誕の三人で「ハート型ウィルス」、全員で「竹内先輩」「タンポポの決心」で〆。
全体曲では後列の石川が良い。 前に出ていない時の方が凄みが増す。 騙されたい。

会議室で公演を打てるのも、あと半月余。 遅きに失した感は有るが、全体曲でのフォーメーションや振りはサマになって来た。

ディアスポラ(神学的ではなく今日的な意味に於ける)から暫くは出稽古と言うか巡業と言うか、オリジナル曲で他所のライブに出て、新規の客を掴んだ上で改めて定期公演をやるとの事。 暮れか、遅くとも年明けか。
ともあれ、この会議室とは「長いお別れ」。

濱野は会議室からの実質的追放を「エクソダス」と表現しているが、原因はPIPメンバーにあり、能動的ではなく受動的なものであるので(私の表現が正しいかはさておき)「エクソダス」と言うのは自らを美化しすぎなのではないかと思う。


2014-10-08 私財を擲つ濱野智史 [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 定期公演(26.10.5)

副題は「奇跡の全員参加なるか!? 久しぶりの定期公演で新カバーもやるぞ!いよいよPIPRO体制やPIP-KYOTOも明らかに!?」公演。
第10回になる訳なのだけれど、そのあたり特に言及無し。

70の予約枠は早々に埋まったが、台風が接近しており、またロハと言う気楽さもあってか入りは薄め。
予約が熾烈さを増している割に実際の動員は頭打ち。 公演の構成が「訳知り向き」に成りつつある事も要因の一つになっているように思う。
公演時間に対する意識を持たせる為か、会議室の掛け時計は舞台よりに移動。 マイクスタンドの出し入れや入り捌けへの意識は高まってきている。

出囃子代わりにボビー・ウーマックを丸々一曲掛けて、「タンポポの決心」のイントロで入場。 無理やり付けた物ではなく、濱野が矯めなかった結果極端化して個性が際立ちつつある空井と森崎だが、森崎は歌っているときの表情もなんと言うかヴェロニカ・ベネットの様なソウルフルな感じになり、目を惹く。
続けて「RUN RUN RUN」を演って自己紹介。 平安時代の合戦作法のような冗長で退屈極まる「名乗り」をやらなくなったのは良いが、自分の名前をはっきり言わなくなっている。 外部のライブに出演するようになれば訳知りの客だけを相手にしている訳には行かぬ訳で、些か客に狎れてしまっているように思う。 これはメンバーのみならず濱野の進行についても言える。 初見の客もいる前提でやれていない。

Google+のハングアウトで京都と繋いでPIP京都の新メンバーのお披露目をしてみたり、LINE通話で体調不良欠席メンバーに話を聞いたり、この辺りは濱野ならではの趣向。

台風が来るので短めにと前置きはありつつ、ユニットコーナー。
福田、橋田、小室、工藤の「夢見る 15歳」は初披露の時より練れて来ており、小室が突出しなくなった。 ハロプロ楽曲は地味に難しいので技倆の差が目に見える形で出やすいのであるが、なんとか見られるものにはなっていた。
歌って踊る部分が平均化すると、橋田の放つ「華」が際立つ。

澤村・瑞野の「高嶺の林檎」は見るたびに良くなっている。 外見はそうでもないが、気質の点で似ているのだと思う。 綺麗な相似形。

北川・柚木の組と濱野・羽月の組で続けて「てもでもの涙」
北川は柚木からしっかり盗めているようで、立ち居振る舞いが目に見えて美しくなっている。
北川が良くなると、それに比例して柚木も良くなる。 柚木が上手くなるのではなく、相方の技倆に合わせて無意識に自制している部分が解き放たれる。
見せる北川・柚木に対して、聴かせる濱野・羽月。 体調不良が長引いていた羽月はまだ声に張りが無いように感じられたが、歌唱そのものは安定。

永瀬・空井・牛島・森崎の「向日葵」
永瀬は何をやっても破綻しない。 器用貧乏のきらいはあるが、公演の下支えにはなっている。
こちらも体調不良が長引いている空井。 声は出ていなかったが、それ以外はいつもの空井。 森崎はここでも振り切れていて面白い。

4本立っていたマイクスタンドを1本だけ片付けて豊栄・石川・小林の「ハート型ウィルス」。
隙だらけの豊栄と隙の無い石川。 どのユニットに突っ込まれても自分の色は変えず、ユニットの色も変えずにユニットに溶け込む小林。

濱野智史が私財を叩いて購入した怪しげな機械を使用して、ウソ発見企画。
緊張のあまり余計な汗をかいて機械にウソ判定され、「違うの!違うの!!」と取り乱す橋田が可愛らしい。

プロデューサー候補生として入った森崎、濱野、石川、牛島、栗城、羽月でその辺りの話をしたあと、「孤独なランナー」
私はSDN48には良い思い出が欠片も無いので興醒めしつつ見ていたが、客の受けは悪くなかった。

羽月・濱野・小林の「初恋サイダー」、小林・橋田の「Hello, Again 〜昔からある場所〜」で〆。

短いと言っても何時もと比較しての話で、内容としてはテンコ盛り。

お行儀の悪い振る舞いの高齢ピンチケ層、転調に付いて行けずに表拍で手拍子をし始める壊れたゼンマイ仕掛けのチンパンジーみたいなの。 気が滅入るような事が無いでもないが、概ね平和裏に。


2014-10-05 [長年日記]

_ UTB+ 2014 5月増刊

松井玲奈
表紙と巻頭グラビア10ページ11カット、見開き1箇所。 撮影は表紙が桑島智輝、ポスターがMARCO、グラビア本篇が新津保建秀。
写真集の other cut で構成。新津保建秀らしさの色濃く出た11カット。 松井玲奈の実体だけでなく、身に纏った空気まで含めて「その日その時の松井玲奈」が封じ込められている。
最初のページからの4カットは、割り付けも含めて見れば見るほど良い。
一瞬の中に永遠を閉じ込める、錬金術写真の極北。

小嶋真子
7ページ12カット、撮影は桑島智輝。
屋外、住宅地でセーラー服。 屋内で水着。 相変わらずポーズは硬く表情も単調なのだけれど、動かし考えさせないことで解し、変化を付けている。
人間のモデルとしては落第、動物モデルと考えれば及第点。

木元花音
6ページ9カット、撮影は細居幸次郎。
顔が小さく、顎が尖っているので細そうに見えるが、水着になってみるとそうでも無い。 それをポーズと構図で何とか絵にしている。
細居幸次郎は屋外で撮ると一寸落ちることもあるが、曇天が幸いして割と均質な出来。

衛藤美彩
6ページ8カット、見開き1箇所。 撮影はサトウ ノブタカ。
乃木坂46のグラビアは水着で誤魔化せない分、今回も工夫が凝らされている。
ボーイッシュ、ガーリィ、露出度高めの部屋着的なもの。
グループ内で置かれた状況が影を落としてか、表情に若干の暗さはありつつ、悪くは無い。
廻ってきたチャンスを物にしようと言う気概は買えるが、もう少し力の抜けた柔らかい表情にこの人の妙味はあるのではなかろうか。

穴井千尋
6ページ8カット、撮影は佐藤裕之。
佐藤裕之らしい、屋内での窓から射し込む光で陰翳を付けたカットが美しい。
表情そのものは単調だが、被写体を三次元的に捉えて上手く切り取っている。

佐野ひなこ
6ページ7カット、見開き1箇所。 撮影は桑島智輝。
体形を含めた造形美は確かに素晴らしいが、仕草や表情に曲が無く、退屈。

北山詩織
6ページ9カット、撮影は細居幸次郎。
着ている服ではなく、自分自身を見せる為の写真を撮られる仕事の中での変化が垣間見られる9カット。
作りこんだ表情、作らない表情、解釈を委ねられた表情。
正と負の感情が綯い交ぜになったいる表情のカットは、仕草も柔らかい。

星名美津紀
6ページ7カット、見開き1箇所。 撮影は熊谷貫。
珍しく熊谷貫が気圧されている。
カメラに対して臆する所が無く、これ見よがしなポーズを撮らなくても扇情的。
魅力的ではありつつ、撮る側としては荷厄介な被写体。

岡田ロビン翔子
4ページ6カット、撮影は細居幸次郎。
見る側・撮る側から委ねられているようでいて、向こうからグイグイ迫ってくる。 ポッシボーらしさの出た写真。
リーダー一人でグループを体現。

神志那結衣×指原莉乃
6ページ7カット、指原と並びのカットのみ見開き。 撮影は國方大。
今回のテーマは不幸美人。 指原も幸薄めの顔立ちだが、神志那は一寸趣が違っていて、跳ね返さず耐え忍ぶ感じ。
何処から持って来たのか花売り娘らしく仕立ててガード下に立たせる趣向で2ページ、白ホリの前に白のキャミソールワンピースで2ページ。
指原はアイデアを出すだけで、ロケーションや道具立ては編集部の仕事だと思うが、良く出来ている。

Juice=Juice
6ページ9カット、撮影は佐藤裕之。
こと構図に於いては佐藤裕之らしさの全く出ていない6ページ。 駄作と断じてしまって良いであろうページの無駄遣い。
植田正治の五番煎じくらいの整列写真。 実に酷い。

鞘師里保
6ページ9カット、撮影は大江麻貴。
中学校卒業に合わせてセーラー服を中心に。
相変わらず大江麻貴の写真は構図が甘いのだけれど、これまで見た中では良く撮れている部類。 2カット目は良い。
しかし構図の切り方や余白の取り方がどうも中途半端。 逃げがある。

矢島舞美
7ページ8カット、見開き1箇所。 撮影は佐藤裕之。
写真集からの other cut なので、海辺で撮ったものになるのだけれど、それでも柔らかく光を廻して撮っているので、辛うじて佐藤裕之らしさは出ている。

2014-10-04 笑ってさえ居なければまあまあ良い [長年日記]

_ UTB 2014 10月号

宮脇咲良
表紙と巻頭グラビア15ページ14カット、撮影は佐藤裕之。
先に書いてしまうが、これまでの宮脇咲良の撮られる仕事の中では最高の出来。

髪のあしらいやポーズの一寸した変化。 例えば耳に挟むか否か、顎を上げるか下げるか程度の些細な事でもガラリ印象が変わる。
まじまじと見るのが憚られるような真っ直ぐな視線、可愛らしく・綺麗に見える角度の広さ。 表情の諧調も豊かなので、カメラマンに引き出しを開ける技倆さえあれば、宮脇咲良の良さは無限に引き出すことがで出来得るが、佐藤裕之は様々な角度から撮って映える表情を探りつつ、決め顔も押さえて要所で使っている。 屋内での光の廻し方も矢張り上手く、柔らかく当てていて表情に無駄な緊張が無い。

7ページ8ページ目の見開き。 このカットを見開きで使う編集者の審美眼も含めて良い。

渡辺美優紀
9ページ10カット、うち見開き1箇所。 撮影は佐藤裕之。
線香花火をするカットの照明の組み方が良い。 花火の光だけではなかなかどうしてこうは写らないのだけれど、補助光は最低限にして「花火をしている雰囲気」を上手く出している。
渡辺美優紀のように生娘感が希薄な場合、和室で撮るとどうしても淫靡になり過ぎるきらいがあるのだけれど、広い和室で襖を開け放つことによってその辺りを緩和。
カメラマンの人選もロケーションも、日の光が似合うタチではない渡辺美優紀の、色々ケチが付いてからの新規蒔き直しには適っている。

小嶋真子
10ページ9カット、見開き1箇所。 撮影はサトウ ノブタカ。
キャミソール的な部屋着、大き目のYシャツ、白い三角ビキニ、白セーラー。 スタジオを含めて白ずくめ。
下瞼が緊張気味で一寸眩しそうでは有るが凶相にはなっておらず、試みとしては面白いし、出来としても悪くない。

薮下柊
7ページ10カット、撮影は細居幸次郎。
笑顔は紋切り型で単調なのだけれど、作り笑いさえ封じれば味のある表情も見せる。
この先撮られ慣れていく過程で「世の中こんなもの」的なヒネかたをしないことを祈りたい。
2ページ目5ページ目はなかなか良いし、6ページ目は細居幸次郎が上手い。

大島涼花
7ページ10カット。 撮影は小池伸一郎。
構図の切り方が厳しく、前景背景の縦横線を画面に上手く嵌め込む小池伸一郎ならではの写真。 これが見たかった。
扱いは小さいが、2ページ目右下のカットなどは実に上手い。 人口構造物を使った画面構成の妙
大島涼花は表情が二種類しかないが、笑ってさえ居なければまあまあ良い。

深川麻衣
10ページ11カット、見開き1箇所。 撮影はサトウ ノブタカ。
水着グラビアはやらない乃木坂46であるが、その中でどう夏らしさを出すか(必然性のある薄着にするか・身体の線を出すか)についてはUTBのみならず各誌工夫しており、面白いものが見られるという点に於いては良い。
7ページ目8ページ目あたり、なんと言うか「人の悪い」撮り方。 カメラマンが常に善人である必要は無い。

小芝風花
5ページ8カット、撮影は長野博文。
白ずくめスタジオで部屋着、屋外で制服の二本立て。 高いレベルで均質。
4ページ目、斜め下から撮った横顔が良い。

小池里奈
4ページ7カット、撮影は桑島智輝。
9月に出る写真集からの先行掲載。 子役時代のイメージを保ちつつ成長した被写体を腰を据えて撮った経験が生きたと見えて、スルリ懐に入り間合いを詰めて撮ったカットが良い。

浜田彩加(キュピトロン)
2ページ2カット、撮影は國方大。
悪くは無いのだけれど、どうも煮え切らない2カット。 構図は良い。

栗原紗英×指原莉乃
6ページ8カット、見開き一箇所にのみ指原。 撮影は桑島智輝。
浴衣と部屋着、指原と並んだカットのみ袖なしブラウスにスカート。 露出度の高い部屋着は1カットにとどめて浴衣で押す構成、ロケ地は根津辺りだろうか。 指原絡みだとやりやすいのか、桑島智輝も珍しく攻めた撮り方。
3ページ目右上左下、4ページ目などが秀逸。 寄って撮ってもピントが適切で構図も厳しい、それでいて写真としては優しい。

石橋杏奈
最新写真集からの5ページ7カット、撮影は舞山秀一。
上手く出来ていてハズレカットも無く、洒落乙。
しかし私の見たい写真では無いと言うジレンマ。

真野恵里菜
最新写真集からの9ページ11カット、撮影は西田幸樹と佐藤裕之。 東京撮影分と山口撮影分をそれぞれ担当。
光の扱いの巧みさについては定評のあるカメラマンに、それを判った上で撮らせているので曇天・夕刻・屋内etc...柔らかく光を廻して真野恵里菜の表情を引き出している。
7ページ目の濡れ髪が顔に掛かったまま破顔一笑するカットが実に良い。
財政は厳しいが手元に置きたい写真集。

_ 落語立川流真打トライアル(第1回)(26.10.2日暮里サニーホール)

家元談志亡き後集団指導体制と言うか親睦会というか、そう言う形に移行して真打昇進の仕組みも様変わり。 試験でもなく、年功序列でもなく、密室での会議でもないやり方として、真打トライアルを開催して客の投票に委ねることにしたのこと。

ちなみに私の考えはこちらに

「批評と審査 (私の規範について)」

平日開催で18時開場の18時半開演、開演後の入場者には投票資格無し。 見てもいないで投票する手合いを避けるのは判るとして、18時半開演に間に合う勤め人なんざ何処にどれ位居ると思っているのであろうか。 5人が演り終えて時計を見たら20時20分。 仮に21時完全撤収だったとしても、あと40分ある。
何が始まるのかと思ったら開票作業。 志らく師と談四楼師が出てきて繋いでる間に開票して上位二人を発表。
やりたい事は判らないでも無いし、チケット販売の仕組みなどで買収が行われないように頭を使っているのは判ったが、準備や後片付けが大変な催しをケツの決まった箱でやるこっちゃ無いと私は思う。

客に審査を投げてしまうと言うのが、そもそも判らない。 世渡りで審査する・されるのは仕方ないとして、素人に審査を投げっちまうってのは立川流としてどうなの?と言うこと。 出ている五人は他の協会ならとっくのとうに真打になっていてもおかしくないし、立川流に於いて真打にしても問題ないと思うのだけれど、その判断を客に投げる了見の問題。
談四楼師は客を信用しているのだと思うが、私はまったくとは言わないまでも信用していない。 一番後ろから見ていれば、誰の客がどれくらい来てるかまで分かり、誰の客か分かれば、どんな所で笑うか見ていれば質も分かる。
この日は何時もの日暮里より、些かものの分からない客であった。

「近日息子」らく里
「目黒のさんま」談奈
「合コン老人会」らく朝
<中入り>
「時そば」→「かっぽれ」錦魚
「五人廻し」志らら

定時で逃げ出したが、着いたのは七時前。 丁度一人目が終わった所で入れた。 前座さんが申し訳なさそうに投票は出来ない旨説明。 それはそれで私は構わない。

談奈さんの「目黒のさんま」はマクラで探ってから噺に入り、トチリもなく、客は重かったが悪くはない出来。
らく朝さんは自作の新作。 途中ダレ場はあったが、前の方の年寄りには実によく受けていた。
錦魚さんはマクラもそこそこにスッと噺に入り、軽い噺をテンポよく聴かせてからかっぽれ。 足元が悪く踊りにくそうではあったが、やった意味はあったと思う。
志ららさんの「五人廻し」は上手くはないのだけれど賑やかに楽しく。

志ららさんとらく朝さんは手銭で見ようとは思わない芸(好悪の点に於いて)なのだけれど、真打に相応しくないとは思わない。 客が付くのも受けるのも理解は出来た。 

帰りがけ「そばが食いたくなった」「さんまが食べたくなった」と語る客も複数人見かけた。 わたしも一由そばまで歩いてゲソとマイタケ乗っけたのを手繰って帰宅。
会としての後味は良くなかったので口直し。


2014-09-21 訳知り向け [長年日記]

_ 「PIP秋のバラエティ/MC満載企画!どの企画がウケるかはやってみないと分からない!もしかしたら11/23沖縄選抜も決まるかも!?」イベント

23日に外部イベントに呼ばれていて、そちらに力点を置きたいとの事で日曜は軽めのイベント。 カラオケと踊ってみたが挟まった以外は出し物らしい出し物はなく、訳知りなら楽しめるが今日が初会だとチト厳しいイベント。

濱野も忙しいらしく金曜の夜は所用で間に合わないとの事で、土曜の夜に予約スタート。 ヨーイ・ドンで申し込んでも30番台と出遅れたが、まぁなんとか座って見る事は出来た。 2時間からの長丁場なので、年寄りに立ち見は辛い。

訳知りの椅子取りゲームが熾烈さを増しているだけで集客が殖えている訳ではないなのが気がかりでもあり、のんびり見られる有り難さが無くも無いのと綯い交ぜになる複雑な気分。

演目としては

「踊ってみた」 (橋田・永瀬)
「パワースポット溺愛系オススメポイント講座」 (森崎)
「ハロプロ天動説講座」 (工藤)
「私立恵比寿中学『頑張ってる途中』みどころ講座」 (柚木)
「猫背矯正ポージング講座」 (先生:石川 生徒:豊栄・羽月)
「都道府県シルエットクイズ」 (濱野・澤村・栗城)
「エヴァンゲリオンと私」 (高城 聞き手:濱野)
「『逆転力』読書会補遺」 (栗城・北川・豊栄)
「厄介女子生徒の休日再現」 (御坂・福田・小室)
「メンバー似顔プッチョ絵」 (澤村)
「ディズニーランド/シー楽しみ方講座」 (栗城)
「カラオケ声色三変化」 (濱野・羽月)
「私服ダサイ系女子改造講座」 (コーディネイター:小林 クランケ:小室・空井・柚木)
「踊ってみた(当日振り入れ ver.)」 (橋田・永瀬)

モーニング娘。について語る工藤は先カンブリア紀だかデボン紀だか、ハロプロ天動説に基づく後付け史観用語を多用。 熱意は伝わるが共感は出来ない。
「これが凄いんです」と見せられたものも、寺田特有のねっとりした田舎臭さが鼻につくもので、野暮の極み。 まぁこのあたりは好みの問題。 蘇易簡曰く、適口者珍。

森崎はパワースポットの、主に豊田早姫への熱情を例によって情念過多でお送り。
無情に聞き流しバッサリ斬り捨てる濱野とめげない森崎の夫婦漫才。 豊田早姫は、少なくとも森崎の中ではキリストを超えているものと思われる。

柚木は工藤や森崎と較べると訥々としているのだけれど、その分重みがある。 北風と太陽。

石川のポージング講座は猫背の目立つ二人に分かりやすく即効性のある指導。 15で何も考えずに東京に出てきたと言う石川の東京での年月の重み。 ただの鼠ではない。

素直に言う事を聞く豊栄と、いちいち混ぜっ返す羽月。 いちいち混ぜっ返しつつも気にはなるらしく、なんだかんだで言われたことは試してみる羽月が楽しい。

小林によるPIP私服ダサイ御三家の改造は、とりあへず3人に自分の考えた洒落乙な格好で来てもらい、小林が持参した服に着替えさせて事前事後を見比べる趣向。
いつもよりは良い評価を貰う小室と柚木、いつもどおりの酷評に慨嘆するいつもどおりの空井。
小林のコーディネートは流石に上手く、三人三様それぞれの個性に合わせて上手く仕上げていたが、空井だけはくるんだオブラートを突き破る空井の個性、なんと言うか「ウーマンリブ臭」のようなものが勝ってしまい、「山武郡の村中で一番モガだと言われた女」みたいになってしまっていた。 恐いところは東京の銀座 泣くに泣かれぬモガ。
小林の見立てが悪い訳ではなく、空井もそれなりに似合ってはいたし、小室のプレッピールック、柚木の原宿系女子もそれぞれの個性を生かしつつ矯正できていた。

前述の通りメンバーの人となりを知っていれば楽しめる企画だったが、今日が初めての客には厳しかったのではなかろうか。
それでもダレ場もそれなりに有ったが、曲がりなりにも面白おかしく過ごせたのは濱野の司会の面白さに依る所が大きい。


2014-09-15 自習と読書 [長年日記]

_ spring closet 定期自習イベント20~23限目

今回はマイナビルーム9F-B、いつもより少し狭い部屋。
盛大に寝坊したが、なんとか1コマ目には間に合った。
今回はリーダーの生誕企画があったりもした所為か出席者も多く、ぎっしりとまでは行かないものの3人掛けの机に少なくとも一人は座っている状況。
隣と近いと何をやっているのか気になって気が散るので、混んで来ると私のように「勉強では無い何か」をしている者は肩身が狭くなるが、そうなったら勉強をしに来ている人に譲ろうと思っている。
高校三年生の私を思い起こすとなるべく勉強から身を遠ざけようとしていた訳で、不純と言えば不純な動機でも、勉強をしようと思い立った人は尊重したい。

今回は後述する別件の為、2コマ終了後に退出。

_ PIP秋の読書会!第一弾は指原莉乃『逆転力』をみんなで読もう!

メンバーの出欠もイベントとしてどうなるかも分からず、「濱野の独演会になって終わるのではないか」「指原の本にかこつけて説教でもするのではないか」などの憶測が飛び交っていたが、蓋を開けてみれば課題図書を与えて感想を書かせたり言わせたりすることでメンバーの人となりを浮き彫りにしていく、面白いイベントとなった。

読書や考える習慣の有無がはっきり出て、それを身につけた方が良いかどうかも人夫々。
読書の習慣が無い方の筆頭が小室と福田。 しかし小室には考える習慣があり、福田には無い。 小室は読了していないながらも感想と自分の考えは話せたが、福田は読了こそしたものの感想も自分の考えも堂々巡りしたあげくはっきりとは話せない。
同じく、考えてはいるもののそれを上手く言葉に出来ないでいたのが永瀬。 永瀬が損をしているのはこの「やるべきことはきっちりこなしているが、それをそうと分かりやすく明示できない」ところ。 性格としては好ましいのだけれど、現在自分が受け持っている役回りとしては好ましく無い。 アンダー制度が導入されれば「何が出来るのか」についてはっきりさせなければならない。

本を読むということ、考えを纏めることについて慣れていたのは橋田・小林・瑞野。 きっちり読み込んでソツの無い感想。

森崎の保育士としての経験も交えた「叱ること」「叱られること」への考察が面白かった。
二足の草鞋を履いて初めて見えてくる世界。

空井は本の内容より当人が直面している「私服ダサい問題」と、それをキャラクターとして受け入れるか否かについて。
濱野がテレビ出演などの経験からキャラクターがはっきりしていること利点について説明。 私服がダサいと言うキャラクターを受け入れ・演じるのではなく、私服がダサいと言う指摘に抗う現在のキャラクターを受け入れ・否定しないと言うことだと思う。
気になったのは大学のレポートの形式に囚われすぎて本来力点を置いて語られるべき部分が薄くなってしまっていた事。 森崎もそうなのだけれど、簡潔に纏める事がこの先求められて来ると思う。

意外にと言うと失礼だが、豊栄の考察が深く、視点も面白かった。 小室もそうだったが、アイドルを見る側と演る側の両方の視点から考えている。
指原莉乃とファンの関係性に触れ「どう応援して良いか分からなくなっているのではないか。」「私は応援し甲斐のアイドルが良い」と遠慮がちに表明。 正鵠を得ているだけに反発も招くかもしれないが、良い切り口だった。

工藤はハロープロジェクトのファンだったこと、地方出身であることの類似性に惹かれつつ、現場より書斎で楽しむ嗜好の違いについてなど。 現場で見るにしても「黙って見ている方が楽しい」と語る工藤。 このあたりは大いに頷けた。

MCが苦手だという話から始める柚木。 恐らく完璧ではない自分を見せることへの嫌悪だと思うのだけれど、やりたいと思うことでも反射的に拒絶してしまい、「やっておけばよかった」と後悔することがよくあるらしい。
柚木の面白さであり欠点でもあるのが「分かりにくさ」であると思うのだけれど、出来ていないこと・苦手な事も曝け出せればとっつきやすさも増すのではないかと思う。 初期の大島優子がそうだったのだけれど、どこまでやって良いのか計りかねているように私には見える。

最初に書いた通り濱野智史独演会になる事を危惧していたのだけれど、アイドルと言う共通項を持つ指原の本を使って、メンバー一人ひとりの嗜好と思考を掘り下げていく良いイベントになった。

<9/21 追記>
PIPブログに空井、豊栄、御坂の感想文が掲載されたのでリンクを貼っておく。

PIP秋の読書会:指原莉乃さん『逆転力』を読もう! 空井美友・豊栄真紀・御坂ゆき乃の読書感想文

豊栄の「二重の視点」が面白い。
純粋にアイドルが好きでアイドルで在りたい豊栄には理解しつつも許容はし難い指原莉乃が、不純な大人の目には面白く映り重用される。 これは指原本人にとっても「引き裂かれた自己」に対するそれぞれの評価であり、この上ない幸福であると同時に絶望的な不幸でもある。


2014-09-14 God is in the details. [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 第9回定期公演

副題は「いよいよお披露目から3ヶ月経過!PIP第9回目公演は、ついにPIP初のオリジナル曲第一弾の”選抜”メンバー発表!波乱の予感!」公演

例によって開場10分前位にぞろぞろ集合して開演15分前に入場。
他所と被ったのかもしれないが、客の数が目に見えて減っていて驚く。
前回は遅れるどころではなく完全に狂っていた壁の時計は、電池を入れ替えたらしく正確に時を刻んでいた。
5分遅れで開演。

出囃子から3曲演ってチームごとの自己紹介からトークコーナー。 濱野智史曰く「Ustream での配信を行うのでMCを多めにしている」との説明。 現場で見ていると些か冗長なのだけれど、権利絡みの問題などもあって曲中は無音にしなければならないらしく、仕方無いっちゃ仕方無い。 録画したものを見るなりして次への反省と修整はしてくるだろう。

お題は「PIPの中で『これは私が一番』と思うこと」、これを濱野の司会で廻していくのだけれど、碌に考えていない答え・考えが浅い答えについては手厳しく対応。 それでも全否定はしないのが濱野らしさか。
濱野がメンバーに求めているであろう思考と観察の反復を一番実践できているのは空井ではないかと思う。 それだけに昨今の空井の服装について、とりあへず全否定して遊ぶ風潮はどうにもやりきれない。
空井が何故それを最適解として導き出したかの過程を紐解いた方が、少なくとも私は面白い。

新曲も含めてユニット曲をいくつか。
御坂・小林・豊栄で「天使のしっぽ」。 小林は何をやらせても平均点以上の出来には必ずして来る。
豊栄は上手くは無いのだけれど破綻もなく、だいたいソツなくこなしてきて華もある。
凄いのは御坂。 歌は不安定だが声に魅力があり、振りもぎこちないのだけれど挙措は美しく、ぎりぎりのところでとっ散らからず狼狽えない。
出来ていない状態でこれなので、伸びてくると面白いのではないかと思う。 鳳雛。

小室・空井・石川で「ハート型ウィルス」。
スタンドマイクにぶら下がるようにしして元気に歌い踊る小室の情緒の無さが却って良い味。
石川は珍しく野暮ったい服でどうしたのかと思ったら、空井から借りたとの事で納得。 それでもブラウスの下に着るものを考えて撰んでいたり、どうにかしようとする工夫は感じ取れた。

澤村・瑞野で「高値の林檎」。
瑞野は歌って踊ると可愛らしさにプラス補整がかかって魅力が増す。
澤村は振る舞いと atmosphere が「アイドル」。
この二人は見るたびに息が合ってきている。

濱野(舞)と柚木で「てもでもの涙」
PIPの中でも歌って踊る技倆に於いては上位にいる濱野と柚木で組むと金の取れる芸。
柚木の芸は分かりにくく凄い。 God is in the details.

永瀬・森崎・北川・牛島で「アイドルなんて呼ばないで」。
牛島が調達してきたと言う LIZ LISA のワンピースに身を包む4人。 北川の罰ゲーム映えする引き攣り笑顔。 牛島の淡々とた歌いっぷり。 森崎の状況に流されない強さ。
永瀬は何を踊らせても形にはして来る。 歌はもう一と伸び欲しいが、踊れる面子として計算できるのは強みになりうると思う。

橋田・工藤・福田・小室で「夢見る 15歳」
難易度の高い曲なので、どうにかこうにか踊れていても上手くは見えない。 その中で一人気を吐く小室。
解釈による表現より規定の動きをより正確に再現することを求められる振り付けになると、確かに小室は頭抜けている。

こから、初のオリジナル曲の選抜メンバー発表。
「選抜は・・・11人です。」→「『11人いる!』!!!」
「曲名は『僕を信じて』です。」→「トラスト・ミー!!」
と、会場のごく一部で静かな盛り上がり。
「誰が」の前に、パワーポイントで作ったプレゼン資料を使って選抜のやむなきに至った理由から説明。

・10月末以降は会場の制約から全員での公演が難しくなること
・ニ十数人分の振り付けとフォーメーションの作成の大変さ
・休演者が出たときの振り付けとフォーメーション修整の難しさ
・衣装作成のコストと、作成に掛かる時間
・全員分の交通費は捻出し切れていない


現状で商業ベースには乗っておらず、物販での収益と濱野の個人所得からの持ち出しで動いている現実に直面したということであった。



仮の立ち位置表を表示しつつ、後列メンバーから発表。

(5)濱野 舞衣香(はまの・まいか)
(6)羽月 あずさ(はづき・あずさ)
(7)小林 希望(こばやし・のぞみ)
(8)空井 美友(そらい・みゆ)
(9)石川 野乃花(いしかわ・ののか)
(10)豊栄 真紀(とよさか・まき)
(11)工藤 千里(くどう・ちさと)

前列は

(4)小室 志織(こむろ・しおり)
(3)福田 蘭奈(ふくだ・かんな)
(2)柚木 萌花(ゆずき・もか)
(1)橋田 唯(はしだ・ゆい)


後列は歌えて踊れる、喋れるメンバーで下支え、前列は中高生の活きの良いのとエースである柚木。

今回漏れたメンバーの処遇については、アンダー制の導入、プロデューサー候補生メンバーによる企画立案の開始など。 煮え切らないっちゃ煮え切らないんだが、これはもう致し方ない。

悲喜交々で半分お通夜の中、「たんぽぽの決心」で終演。

物販で悲しみの極みにあるメンバーのところへご機嫌伺いにいってみたが、予想以上のこの世の終わりのような落胆振りに掛ける言葉もなく。
ハナっから諦めざるを得ない連中は選抜制度発表時に落ち込み済だったらしく、発表当日は当落線上に居た連中の落ち込み振りが激しかったようだった。

しかしそれも会議室劇場と言う楽園を追われる原因を作ったメンバー自身に原因がある訳で、因果応報と言っちゃ酷だが濱野を責めるのは筋が違う。

2014-09-08 殺伐の度合いを増すル・マン式スタート [長年日記]

_ PIP:Platonics Idol Platform「PIP初の私服イベント!私服のダサイしおりん(+もかろん)は大ピンチ!? ゆるゆるだけどお許し下さいね」公演

通常公演ではなく、イレギュラーなものであるとのことで公演に通し番号は付かず。

例によって金曜の夜に予約開始となったのだけれど、濱野が予約開始のツイートをしたタイミングが悪く、乗り遅れて40番台。
客の分母が増えたのではなく、客が椅子取りゲームのルールに慣れて来た感じ。 年々殺伐の度合いを増したル・マン式スタートを思い出す。 当日並んで入った知己も椅子にはありつけていた。

通常公演ではなく、私服ファッションショー的なものである旨、濱野から説明。 パタゴニアTシャツの上にパーカーを羽織っている濱野の姿に驚く、目にもさやかに見える秋の訪れ。

メンバーからファッションに一家言ある連中が審査員として4人。 気ままに批評・批判する役で羽月、いい所を見つけたりフォローしたりする役で小林、メンバーの服装から妄想を膨らませて気持ち悪い事を言う役で森崎、思春期特有の残酷さでブッタ切る役で橋田。

以下短評。

永瀬 綾香 郊外の中学生の夏休みと言った趣。 洋品店で買って貰ったよそ行きのワンピース。

空井 美友 マリンスタジアムでよく見かける、行き返りの私服より球場で着る服に金を掛けるロッテファン女子。 ブラウスに畳み皺があるところにお洒落し慣れない初々しさがあった。

牛島 千尋 昼酒を飲む為にとりあへず外に出る服を引っ掛けた感じ。 一寸弄れば映える所を突き詰めないところに取っ付きやすさを感じる。

橋田 唯 休日の優等生。 可愛らしいが品があり、よそ行きだが華美ではない。

小林 希望 阿佐ヶ谷以西の中央線沿線に居そうな、落ち着いた洒落乙感。

森崎 恵 デニムのワンピースのウエストを白いベルトでキュッと〆て細く演出。

石川 野乃花 涼しい顔して落としに掛かっているようなさり気無い怖さ。 清楚なようでいてスカートは短く、動くとフワリと広がる。

豊栄 真紀 日大文理学部社会学科の仲川ゼミに居そうな。 頑張りが二割弱空回りする感じ。

工藤 千里 都会へ出てきて肩肘張っている、筋は悪く無いけれど微妙に垢抜けないお洒落好き女子の切なさ。

瑞野 由佳 秋らしい色のサスペンダーワンピース。 「いいうちの子」感。

澤村 まどか 想像上のアイドルが着ている、絵に描いた様な「アイドルの私服」。

御坂 ゆき乃 本日唯一の「誂えた服」。 フルオーダーではないらしいが、布地をたっぷり使ったゆるいギャザーで広がりを出すスカートの贅沢な構造などは誂えならでは。

濱野 舞衣香 思ったより地味な服。 こちらの想像が華美に過ぎただけであって、「勤務地:東十条」の夜のお店ではなく、「勤務地:上中里」の軽作業の人の休日と言う感じで、落差に持って行かれる。

北川 萌恵 頑張る方向が微妙に間違っているのをスタイルの良さで帳消しにしつつ、便所の火事で自棄糞になったような膨れっ面も微笑ましい。

柚木 萌花 服装のセンスに自身がある訳ではないが、あからさまに貶され論われれば臍の一つも曲げたくなる、そんな心象風景。 頑張ってお洒落をしつつ、頑張ったねと言われると否定する乙女心。

小室 志織 バンザイ突撃。 余計なアクセサリーの満艦飾。 自棄は起こしつつ、頑張るべくは頑張る、突き抜けたダメさ加減。

羽月 あずさ 自前のロリ服で気合は入っているが、素材が化繊である為か帯電して吸い付けた埃でくすんでしまっていたのが惜しかった。

山下 緑 広小路から京橋辺りの中央通り沿いを根城にしていた婆さんとか、六区に居たティアラつけてた婆さんとか、そう言った「アジールに暮らす人々」のような服装。

森崎は濱野に話を振られたらその場で当意即妙の妄想を開陳せねばならず、頭脳労働と言う点に於いては一番草臥れたのではないかと思われる。
簡潔に纏められなかったり冗長だったりしたところはあったが、全員分妄想し切ったのは良かった。
羽月はマイク無しで喋る癖は相変わらずだが、加点減点を自分の物差しで決めて批評出来てはいた。
小林は他のメンバーが減点すれば良いところを探し、加点すれば「もっとよくなるところ」を探す。 与えられた役割をソツなくきっちりと。
橋田は可愛いから何をどう言っても赦される特権を生かしてもっとバッサリ袈裟懸けにやってほしかったが、そうしないさまもまた良かった。

私服ファッションショーでありつつ、間々には歌も挟み込んでいたが、歌って踊るにはあまり適していない「動くと危うい服」も散見された。
石川あたりはそこまで考えてやっているフシもあるが、目のやり場に困る局面も屡々。

会議室使用の猶予期間もあと一と月余、其れまでの間にやっておかなければならない事は山積している訳で有るが、イベントを楽しみすぎてしまっていて「そろそろ追い出される立場」にあることを忘れているようなメンバーもちらほら。 プロデューサーとしての役回りを視野に入れている連中はもう少し危機感を持つべきなのであるが、拍子抜けする位暢気だったのには驚いた。


2014-08-31 [長年日記]

_ spring closet 定期自習イベント16~19限目

受験生アイドル Study☆Stars project の自習イベントの為、朝から竹橋へ。
企画としての名称が「Study☆Stars project」、その中のユニットが「spring closet」と言う事になるらしい。 このあたりの区分が調べてもよく分からないのだけれど、楽しいのであまり気になっていない。

東京メトロ東西線の竹橋駅を九段下寄りの改札から出た所にある1b出口に直結しているパレスサイドビルの中にあるマイナビの研修室的なところが自習会場となっており、その時借りられた部屋によって微妙に場所は異なるが、兎に角パレスサイドビルの中でやるのは確からしい。

今回は二階の一番奥の広い部屋。 平川門を見下ろす眺望。

学生で且つ受験を控えていて部活やら文化祭の準備やらで大変な時期にある為、出席できるメンバーが毎週変動。 今週は工藤利彩と姫川れおなが出席。
10:30から、何度か休憩を挟みつつ16:30まで4コマの自習。 その間、昼休憩の後にミニライブ、自習終了後に特典会と言う流れ。 教室の一番前に設えられた特別席に座るメンバーの背中を見ながら自習する格好。

空調は適度に効いていて、下界の音はしないでも無いけれど平日と較べると交通量も少なく、気が散る程ではない。 (私を含めて)受験のための勉強をしている訳ではない人も居るのだけれど、読書をしたり仕事をしたり書き物をしたり、勉強の邪魔をする人が居らず、監視されている訳ではないのだけれど「真面目にやらなければならない」空気が適度にあり、読書にしても書き物にしても実に捗る。

昼休憩は昼食の為に長めの設定。 自動販売機は飲み物のみ、ビル内のコンビニやら食い物屋やらは土日とも休み、外に出ても学士会館あたりまで行かないと店が無いので、弁当でも何でも持っていくのが吉。

昼休み明けにミニライブ。 夏休み最終日と言う事もあってか、浴衣で2曲。

急に涼しくなって夏の疲れが出たのか、体調が思わしくないとの事で自習中は冷えピタにマスクと言う出で立ちであったが、ライブとなると気合を入れてくる。

ライブで4時間となると身体が持たないが、空調の効いた部屋で自習となるとこれがまぁ実に快適で、あっという間に終わってしまう。

一週お休みで、次回は9/15とのこと。

2014-08-30 操り三番叟 [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 第8回定期公演

ざっくりと散文的に。
今回の副題は「久々のPIP定期公演は、高城桃花・御坂ゆき乃の合同生誕祭!夏休みの最後に会議室で沸くしか!」

贔屓の生誕公演と言う事で進物など仕込みつつ、いつもの「踊る会議室」へ。
こう言うときは銀座と言う立地が有り難い。

並び並ばせるのにも慣れてきて、恙無く整列→入場。 
出囃子からメンバー入場。 会議室の時計はここ数ヶ月5分遅れのままだ、濱野の手元の時計で進行している様だ。

生誕公演と言う事で出番もやる事も盛りだくさんなのであろう。 御坂の挙動が如何にも怪しく、さながら操り三番叟。
それでも糸が絡まるような事も無く、動きも徐々にほぐれて大過なく。
とっ散らかることもあるが、おどおどした所は無くなって来た。

さらに怪しく、衛星中継でディレイが掛かっているかのようなズレで踊っているのが居て、よくよく見たら山下緑だった。
立ったまま踊るだけで四苦八苦していたのが、ついにここ迄来た。

石川が髪色を暗くしていた。 リーダーとしての決意の表れであろうか、前に出て仕切るより、俯瞰してフォローする場面が増えた。

小林が2006年式板野友美のような、自動空戦フラップ付きの髪型。 高い位置の二つ縛りが動くたびに撥ねて目を惹く。

北川に良い変化。 やるべき事はきっちりやった上で楽しめている。 自信が持てるようになった故の事であろう。

濱野智史の投資はインフラから衣装に移行。 誂える程の贅沢はしていないのでサイズが合っていないものも有るが、曲のイメージに沿ったものにはなっているし、センスは悪くない。
濱野本人は例によってティーシャツにバミューダ、無精髭に寝癖という出で立ちではありつつ、着た切り雀だったパタゴニアティーシャツではなく、沖縄で入手したと思われる別のティーシャツに変わっていた。

自分の客を認識し始めたのと、歌い踊る中で客席を見るゆとりが出てきたのとで、釣った魚への餌付けが始まった。
これに囚われ過ぎると客席を大掴みで見られなくなるので注意が必要なのだけれど、PIPには舞台監督としての視点を持つスタッフが居ないのが危うい。

柚木は評価が高い割に三味弾いてやがる感が鼻に付いて碌すっぽ見ないで来たのだけれど、周りのレベルが上がってきたり外部イベントで格上と当たったりしたのが刺激になったのか、目の色が変わってきた。
さらりと踊っているのだけれど、割と踊れているメンバーでも鎧袖一触にするシームレスな動きと切れ。
客席を見渡しても目配りの三点バースト。 流さず一寸ずつ止めて客を確実に仕留めて行く。

柚木は鮎は鮎でも琵琶湖の鮎で、外に出さないと大きくならない。 どんどん外部イベントやライブに出して格上にぶつけて欲しい。

帰省していた柚木と乗り込んだ橋田・福田と自腹切って連れて行った濱野とで沖縄の話しで繋いでから生誕企画へ。

御坂は「ラッパ練習中」、早い動きではあたふたするところもあるが、表情には出さない。
息継ぎにもあやうさがあるが、こちらも表情には出ない。得体の知れない大物感。 鳳雛。

高城は危なげなく「夜風のしわざ」。 きっちり歌い切って聴かせる。

運び込まれたケーキの蝋燭の火を吹き消させるのは定石通りだが、PIPはここからが違う。
メンバーが一と匙ずつ掬って食べさせて行く。

主役の二人でもう一曲歌ったあとは通常公演に戻り、空井・濱野・羽月で一曲ずつ。
難しい曲だったので不安そうに出てきたところは猫背のタヌキ然としていた羽月だったが、歌い始めると背筋もシャンとして貶す所の無い歌いっぷり。

オケの音量にマイク音量が負けてしまうバランスの悪さは気になったが、ハウリングの収束は大分早くなってきた。
ただ、モニタースピーカーが無い事によるトラブルは散見され、マイクが入っていない事に気付かなかったり、オケの音を取り損ねたり。

終演後は「追加発注したポロシャツが届いていない」との事で、2ショットチェキ会のみ開催。 最初期の時間と体験を換金する種のアトラクションは無くなったが、客の求めているものと提供できるものを勘案してこうなったのだと思われる。
前回までの反省を踏まえ、システムを変えて流れを良くしていた。

まだまだこんなものでは無いと思うが、柚木の凄みが垣間見られたのは収穫だった。
本人は手を抜いているとは思っていないのだと思う。 周辺状況が柚木の尻に火を付けつつある。


2014-08-24 自習イベントさまさまで宿題消化週間 [長年日記]

_ フォトテクニックデジタル 2014 6月号

久保ユリカ
表紙と巻頭グラビア14ページ26カット、撮影は魚住誠一。
魚住らしい自然光と人口光取り混ぜた写真。
破綻は無いし良く撮れてはいるのだけれど、感興は催さない。

オキナワタイムスリップ 1986-2014
6ページ9カット。 撮影は小林幹幸、モデルとしてSERINA。
光の強い海辺で撮ったカットも眩しさに必然性のある写真になっている。温黒調に仕上げたモノクロも流石の仕上がり。

高須力のライブ a GOGO!
4ページ21カット。 今回は恵比寿のリキッドルームで撮った THE ポッシボー。
ホールコンサートではなく、広めではあるがライブハウスなので位置取りの自由は或る程度あったようで、これまでよりは幾分マシな出来。
それでも矢張り視野が狭く、足で稼いで構図を切っていないし、かぶり付きで撮れるのに24mmまでしか持って行っていない。
編集も悪い。 割り付けが冗長で、細かい写真を並べただけでお仕舞い。 写真になっているカットもこれだけ小さいと良さは伝わらない。
結局スポーツ写真のやり方をそのまま持ち込んだものの、勝手が違ってまごまごしているうちに連載が終わってしまった。

梨里杏
6ページ9カット、撮影は長野博文。
長野の白ずくめスタジオと屋外の二本立て。
新鮮な驚きは無いが、よく撮れてはいる。

6月号はヌード特集に力点を置いた所為か、それ以外のグラビアは薄味。

_ フォトテクニックデジタル 2014 7月号

上坂すみれ
14ページ24カット、見開き1箇所。 撮影は根元好伸。
声優グラビアとしては珍しく、ニコパチではない。 共産趣味テイストは東欧の民族衣装っぽいもの程度に抑えているのは事務所の意向だろうか。
キャリアの取っ掛かりがモデルだったこともあってか、カメラと向き合えているし表情にも幅がある。
声の芝居しかしない声優と声の芝居もする声優ではできる事の幅に開きが有るのだけれど、この14ページを見る限りに於いては後者であると見て良いかもしれない。
海辺のカットは声優グラビアにありがちな「見せたい自分の押し売り」に近いが、それ以外はカメラマンに委ねている。

浜辺美波
6ページ10カット、撮影は長野博文。
制服と部屋着と半々。 メイクはごく薄く、光も当てすぎず頃合。
動かして思考を停止させて撮ったカットも悪くないが、向き合って撮ったカットの表情が良い。

宮沢佐江×緒方一貴
4ページ3カット。 ブツ撮りで且つ塗り絵。 論外。

田代ひかり
6ページ6カット、撮影は関純一。
古びた畳の部屋で撮っても湿っぽくならないのは良い。
AF任せで撮る人特有の焦点の置き所の隔靴掻痒感はあるが、特に貶す程ではない。

_ フォトテクニックデジタル 2014 8月号

モーニング娘。'14(譜久村、生田、鞘師、鈴木、石田、小田)
表紙と巻頭グラビア14ページ19カット、見開きとそれに準ずるものが4箇所。 撮影は小林幹幸。
色味は揃えてデザインは微妙に異なる白い長袖のワンピース、クロシェやキャノチェなど形も様々なストローハット、色違いの編み上げショートブーツ、折り返した履き口にレースのあしらわれたソックス、摘んだハルジオンやシロツメクサで作った花冠etc...、サイズもデザインもそれぞれに合わせて誂えてある衣装や小道具。
リップグロスが強すぎる恨みはあるが、メイクや髪のあしらいも良い。

これが出来るのが小林幹幸であるだけに、松井玲奈の巻頭グラビアでの剣道着と防具の道具立ての雑さ加減が今でも解せない。

閑話休題、群像劇のような道具立てとロケーションは映画から寓意を得たものであるようだが、そうした背景抜きにしても良く出来た14ページ。
割り付けも練られていて、写真の扱いにも恣意が無く、メンバーは写っていない空の写真や山を登って行く後姿の写真などをブリッジとして絵を繋いで行く。

撮られる技術(才能と努力によって得られたもの)に於いては鞘師が矢張り頭抜けており、何処にどう置いても絵になるし、その時求められている表情や仕草を厭味なく出せている。 そして鈴木が思いのほか良かった。 衒いが無い。

価格改訂以来安かろう悪かろうに堕した印象の有ったフォトテクニックデジタルであったが、久し振りに写真に対する審美眼の確かさと編集の力を見せてもらった。

2014 FIFA World Cup Brazil
6ページ12カット、見開き1箇所。 撮影は件の高須力。
アイドルのライブを撮る連載では味噌を付けた高須力であったが、本業では見応えのある写真を撮っていた。
寄っても引いても絵が作れるし、状況判断も良い。 どうしてこの技術とセンスがライブを撮る際に援用出来なかったのか。

飯田祐真
6ページ7カット、見開き1箇所。 撮影は長野博文。
見開きの、斜交いに撮ったアップのカットが良い。
吸い込まれるような瞳の中に撮っている長野が写り込む入れ子構造。
ページ数が少ないと小さいのを無理に押し込むような割り付けになりがちだが、選びに撰んだカットを適切な大きさで配置。
大きく使ってこそ映える写真も、小さく使えば粗の目立たない写真もある。 その辺りの見極めがきちんと出来ている。

宮澤佐江×山岸伸
大病以来すっかり枯れた写真になった山岸伸。OM-D E-M1 で撮影する企画なのだけれど、ファインダーを覗かずに液晶モニターを見ながら撮っているとのこと。
その所為かフィールドカメラで撮ったような構図の切り方になっている。 覗き穴から見た世界ではなく、広い視野から切り出した構図。
構図の細部に集中力を切らしたような雑さの見えるカットもあるが、表情は良い。

宮澤は相変わらず宮澤らしくあり、器用ではないが誠実で丁寧。 頬に当てた手で意味ありげな何かを仄めかすことは出来ないが、嘘くさい表情を作ることなくカメラと向き合えている。
ただ、向き合うカメラの前に一枚何かあるような硬さはあり、それは流転に任せざるを得ない境遇の中で身に付いてしまった物であるような、そんな気がした。

齋藤明里
6ページ6カット、見開き1箇所。 撮影は松田忠雄。
ソニーのα7で撮影。 Mマウントのツァイスとライツのレンズを併用。
レンジファインダーのカメラでは撮り難かった、中央にピントを合わせたいものが来ない構図での近接撮影でも博打を打たずに済んでおり、ここぞと言う所に合ったピントと適切な深度、厳しい構図。 AFに頼らないからこそ出せる精度と言うものもある。
ライツとツァイスの描写の違いはありつつ、全体としての統一感は出すレタッチも憎い。
名代の銘玉を使いつつ、レンズに撮らされていない。

_ UTB+ 2014 9月増刊

山本彩
表紙と巻頭グラビア12ページ10カット、見開き2箇所。 撮影は山口勝巳。
判型の大きさを生かした贅沢な構成。
「求められる山本彩」を完璧に演じつつ、そこからはみ出す部分を出せなくなっているような息苦しさは有るが、それ故の美しさと言うものもまた有る。
人をブツ撮りにするような山口勝巳の作風が、どんな変わった水着でも誂えたかのように収まってしまい、どう撮っても正体を現さない山本彩には良く合っている。
体調や精神状態がどうでもシャッターを切られる段になれば撮られる人の貌に戻ってボロを出さないところは大島優子にも通ずるが、大島との違いは悪戯をしないこと。
決して逸脱をしない隷書の芸。
色々思う所は有ったが、山本彩はこれでこれで良いような気がしてきた。 詰まらないのもここ迄突き抜ければ却って面白い。

宮脇咲良
8ページ9カット、見開き1箇所。 撮影は西田幸樹。
スタジオと屋外、雨天が災いしてか外で撮ったものは傘を差した1カットのみ。 曇りなら良かったのであるが。

一時期は判で押したような困り顔しかしなかった宮脇咲良も一と皮剥けたようで多彩な表情。
柔らかく微笑むことも、素でカメラと向き合うことも、意識だけをカメラに向けることも出来ている。
歯見せ笑顔が画一的なのは瑕だが元々素材は良いので、これだけ出来るようになれば仕事の幅も拡がる。
素でカメラと向き合ってアップに耐え得る顔と言うのも、そうは無い。

高柳明音
7ページ9カット、撮影は佐藤裕之。
カメラマンとの相性もあると思うが、実に良く撮り・撮られている。
額を顕わにしない髪型への拘りは相変わらず有るようだが、海苔で固めたような頑なさは無くなり、隙を見せるようになった。 その髪のあしらいは変えずに衣装のみ3パターン。 じっくり撮っている。
矢張り「在るべき自分」に囚われ過ぎなくなったのが良かったのだと思う。 チームKIIを背負って立つ気概は時として重苦しく感じることすらあったが、それも無くなった。
撮られ慣れてきたからか、口角の上げ下げで表情の諧調を豊かにしており、様々な角度から撮り分ける佐藤裕之も上手いし、編集者もよくそれを拾っている。

白石麻衣
7ページ6カット、見開きはコラージュ的に1箇所。 撮影は桑島智輝。
水着はやらない(やらせない)乃木坂だけに、色々考えて試行錯誤して撮っている。
衣装や髪型のみならず、背中越しに振り向いた横顔など、どう撮れば映えるかについての工夫が詰まった7ページ。

高橋朱里
6ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
諧調に乏しい表情だが、妙に作ったようなところは無く、カメラと向き合えているのは良い。
水着になって特に表情が硬くなるという事は無いが、水着以外の方が表情に幅が出る。
雨上がりの屋上に赤いワンピースで立つカットが良い。

太田夢莉
幻想から現実へ、成長と共に移ろう太田夢莉の今を捉えた6ページ8カット、撮影は細居幸次郎。
制服と水着っぽいチューブトップと魔法使いサリー的なワンピースの3本立て。
絞りを開けて撮ったカットにピントの置きどころのズレを感じるようなものも有るが、構図と表情は良い。
幼さからくる可愛らしさで売れてしまうと、後から来た成長期に迷走してしまう事がまま有るが、このグラビアはそんな時期の太田をどう撮るかについて探りながら撮って答えを導き出している。

アップアップガールズ(仮)(関根、仙石、佐藤)
7ページ8カット、撮影は西田幸樹。
仙石みなみは口を開けっ放しにする悪癖が矯正され、それをコントロールすることで表情に変化を付けている。
佐藤と関根はカメラから視線を外す際に「外すこと」に囚われてしまっていて国策ポスターのような堅苦しさが出てしまっている。
写真に限った事ではなく、アップアップガールズ(仮)は「斯く在るべし」が強すぎるのではないか。 その暑苦しさを美点と捉える人も居り、勘弁して欲しいと思う者も居る。 私は後者である。

つりビット(聞間、安藤)
2ページ4カット、撮影は國方大。
スタジオに閉じ込められてしまうと味が出ない。 それが國方大が今ひとつ売れ切れない原因なのではないか。 一寸光も強すぎる。
聞間彩は真ん中に立つには一寸弱いと言う人も居るが、置かれた状況に左右されず、常に一定水準の仕事は出来ている点は評価されて然るべきだと思う。

駒田京伽・指原莉乃
6ページ10カット、指原と一緒のカットのみ見開き。 撮影はHIROKAZU。
全般的に表情が硬く、水着になると顕著。 それでもカメラと向き合おうとしているのは見て取れる。
指原曰く、駒田の魅力は「ご近所感」。 今回のテーマは"隣の大学生"とのことであるが、意図しない微妙な色香を漂わせていると言う指摘は頷ける。
指原莉乃を面白がる層と指原莉乃が求める異性はおそらく一生重ならないので、私生活に於ける幸せには縁遠いのでは無いかと思われるが、仕事で利害や興味が一致する大人に支えられて、仕事面での充実は暫く続くのではないかと私は考えている。

松岡茉優
5ページ5カット、撮影は佐藤裕之。
佐藤裕之らしい屋内での光の廻し方。 芝居畑の人は役ではない自分ではカメラの前に立ちたがらない事が多いが、立たせ方や仕草についての指示が良いのかきっちり絵になっている。 これは「真正面からは撮らない」と言うのも奏功しているように思う。

ハロプロ研修生
事務所が現場に口を挟みたがる所為か、同じ佐藤裕之でもこうも違うかと一驚を喫する退屈なカットの数々。
何故この事務所は並べて撮らせたがるのか。 腐った社会主義リアリズムのような配置やポーズは、アップフロントの官僚的体質を示しているように思う。

萩原舞・工藤遥
6ページ14カット、撮影は鈴木さゆり。
生きた表情を捉えようとしているのは感じられるが、兎に角構図が凡庸。 臆面の無い日の丸構図には苦笑するほか無い。
モデルではなく服を撮る習慣が抜けないらしく、服を生かしてモデルを殺したカットも多い。
ファッション誌の仕事からの切り替えが出来ていない。

道重さゆみ
7ページ9カット、撮影は鮫島亜希子
ハロープロジェクトでありがちな、節目の写真集に力を入れすぎておかしくなるパターン。 
2ページ目などはモデルに助けられて写真になっている。

2014-08-17 四つ打ちの魔法 [長年日記]

_ エレクトリッリボン「波音チューニング」インストアイベント(8/15 タワーレコード錦糸町店)

盆休みにはなったもののやる気も起きず、外に出ようにも自棄糞な雨が降ったりしてウンザリしていたが、夕方になってカラリ晴れたので散歩がてら錦糸町へ。

セッティングの様子を見たかったので早めに出向いたら、仕事帰りに押っ取り刀で駆けつけたメンバーの入りに出くわす。
若干草臥れた勤め人然としていたのが、衣装に着替えて出てきたらしっかり舞台の上の人の貌になっていた。

このグループはアイドルとしては異端といってよい変わった成り立ちで、リーダーが楽曲の全てを作っている。 ライブでの曲出しもリーダーの操るノートパソコンからで、そこに効果音やキーボードでの煽りが適宜加えられてライブならではのグルーヴになる。
そこでセッティングから見ていたのだけれど、作業中は完全に裏方の顔。 てきぱき仕事をして音を確認し、修正指示を出しながらその先の作業を進める。

軽くリハーサルをして、ほぼ定時に開演。 新メンバーは途中から出るらしく、既存メンバー3人でスタート。
メインボーカルの erica は兎に角上手い。 その上手さが押し付けがましくないのも良い。 目を三角にして歌っていないので周囲に目配りするゆとりがある。
これ見よがしな所がなく、醒めた部分も残しつつ羽目も外せる。
もう一人のボーカルである NAOMi は、兎に角細い。 手足が心配になるくらい細いが、顔色は悪くないので体調が悪いということではないと思われるが、それにしても細い。
リーダーは曲中もコンピューターで微調整し、効果音を叩き込み、キーボードで煽り、コーラスを入れ、踊り、スタッフに指示も出す八面六臂。
裏方の顔と舞台の上の人の貌が目まぐるしく入れ替わるのが面白い。
新メンバー Azumi はまだ一寸硬いが、このメンバーの中に居れば厭でもほぐれてくるだろう。

この八月一杯でエレクトリックリボンも含めた凡ての芸能活動から足を洗う NAOMi はインストアライブも残り少ないからか目を潤ませる場面もあったが、そこは堪えて笑顔で終演。

メンバーにトラックメイカーが居るというのは矢張り強みで、オケをただ流すのではなく、その時々の状況に合わせてオカズを入れたり煽ったり、生ならではの演出も出来る。
大人が音楽活動をする方便としてやっているアイドルなのであるが、凡百の専業アイドルより余程アイドルとしての自分を全うしている。

_ RYUTist タワレコ・インストア・ツアー(8/16 タワーレコード新宿店)

あまり早く行くのも野暮だがリハーサルも見ておきたい。 そう言う下衆な思惑が裏目に出て、開演30分前に着いたらちょうどリハーサルが終わった所で且つ寿司詰め。 それでもまぁ見えないことも無い位置を確保。
早々に店舗スタッフからお膝送りのお願い。 開演を待つ間にも人は増え続け、振り返ると奥まで人、人、人。

RYUTistのマネージャーA氏(a.k.a 天の声)の縄文人化が著しく進行していたり、振り付けの未来先生が人妻の色気を放っていたりするのを観察しているうちに時間となり、時報のの出囃子に乗ってメンバーが登場。

「Wind Chime!〜街のトンネル〜」からスタート。 客が沸くような曲ではないのだけれど、一曲演っただけで室温が上がる。

入れる必然性の無いところで脊髄反射的にmixを入れようとしたのが尻すぼみになったのが象徴的だったが、客の側が演者にちょっかいを出すような振る舞いは自然に淘汰され、目に見えて沸騰はしないがふつふつと煮えるような盛り上がりがそこにはある。

「Beat Goes On!~約束の場所~」から「ラリリレル」と畳み掛けて、鳴り止まぬ拍手の中終演。

「ラリリレル」を聴くと時空が歪み、金曜の夜なのに日曜の夕方のような切なさが胸に去来する。
しみじみと帰宅。

_ 南波一海のアイドル三十六房 Presents RYUTist HOME LIVE #112 "3rd Single Wind Chime!~街のトンネル~リリースライブ"

嚢中も寂しくなってきたので家に篭ってボーっとしようかとも思っていたのだけれど、昨日の興奮冷めやらず、そぞろ神のものに憑きてふらふらと渋谷へ。
12時過ぎに当日券を購うと整理番号は既に280を超えていた。 私の後からも陸続と入っていたので、有料入場者は優に300を超えていたのではないかと思われる。

流石に殆ど見えないので、「見える」より「快適」を採って空調の下の壁際へ。
一番上背のある乃々子さんでも首から上くらいしか見えないけれど、モニターである程度の状況は把握できるし、重低音に身体の芯から揺さぶられつつ音の波にたゆたえるのは現場ならでは。
その日その時その場に居合わせて初めて共有できる何か、共有できる喜び。

一曲目の「Zero and Perfect Moon ~変わらない想い~」は新潟でのライブでしかやっていなかったのではないかと友人が話していたが、曲が始まるたびに客が唸ったりどよめいたりする。 「哲学するのだ」から始まって終わるメドレー、「若者のすべて」でしんみりさせておいて「チュララ」で柔らかく浮揚させる繋ぎ etc... 練りに練られた選曲。

「チュララ」は聴き込むと味わいの増す佳曲なのだけれどリズムが複雑で、他所から定型の盛り上げツールを持ち込んで嵌め込もうとしても噛み合わない。 そう言うものを無理に使う必要はそもそも無くて、曲の中に散りばめられたヒントを読み解けば振る舞いの最適解も自然に得られる。
その点では客の側も試されていると言える。

アンコールは「Wind Chime!〜街のトンネル〜」「Beat Goes On!~約束の場所~」から「ラリリレル」。
「Beat Goes On!~約束の場所~」を歌い終えての拍手は将に万雷。
四つ打ちの魔法を振り掛けられ、五割増し幸せな気分で帰宅。

_ 【spring closet 定期自習5~8限目】~4時間自習コース~@竹橋 マイナビルーム

受験アイドルStudy☆stars projectの自習イベントの為、竹橋へ。
案内には「1b出口直結」と書いてあったが文字通りの直結で、改札を出た所にビルの入り口があり、そこから会場であるマイナビスペースへ。
まずイベントの説明があり、1コマ1時間の自習と休憩が繰り返される。 自習は計4コマで、最後に特典会。

その時々で借りられる部屋は異なるそうだが、今日は一番奥の広い部屋。 南面と北面は天井から床までガラス窓。 北側は殺風景な高速道路だが、南側はお濠を隔てて平川門。 皇居の緑が目に優しい。

メンバーは教壇の上に設えられた机に向かい、こちらに背を向けて自習。 椅子の背もたれに名前が大書してある。 我々はその背中を見るでもなくも無いでもなく自習。
「自習」と言っても受験勉強をしなければならないわけではなく、或る者は読書し、或る者はメンバーと同じ小論文の課題に挑み、私はと言えば溜まりに溜まったグラビアレビューなど。

ボールペンをノックする音、ページを繰る音、筆記音がかすかに聞えるくらいの静寂。 適度に効いた空調。 容積が大きいので二酸化炭素濃度もさほど上がらず、書き物が捗る捗る。
物販で幾らか使っても自習室を借りるより喫茶店に居座るより、自室で煩悩を刺激するアレコレに囲まれるより、遥かに集中できる環境。

長めに取られた昼休憩の後、ミニライブとミニ特典会。

イベントの性格上、騒いで盛り上がりたい向きにはお奨めできないが、読むのも書くのも考えるのも驚くほど捗るので、締め切り前の物書き連中などには特にオススメ。

_ PIP: Platonics Idol Platform 第7回定期公演

今回の副題は「PIPのエースもかろんが沖縄帰省中で不在だけど頑張るぞ!いよいよPIPポロシャツ販売も開始!新曲というか初オリ曲に関する発表もあるかも!?」。
沖縄に帰省中の柚木が不在と言う事もあってか、大胆に組み替えられたセットリスト。

いつもは端に寄せてある教卓がプロジェクターの下に置いてあるのを訝しく思っていたが、暗転してイントロが掛かるとコスプレめいた和装の空井が飛び出してきて「檄!帝国華撃団」からスタート。 サイズがまったく合っておらず、胸元がはだけて危うい場面もありつつ、零れるものも無かったようで大過なく。 喩え茶番でも遣り切る空井。
20分教卓の中に着物で隠れていたので汗だくだと息せき切って語る空井。 さながら「青菜」の植木屋のかみさん。
うーん、弁慶にしておけ。

そのまま空井、北川、牛島、永瀬で「ひまわり」。
北川はこの曲も含めて様々な場面で登場。 上手くは無いが兎に角遣り切る姿勢は買える。 これは空井もそうだし、御坂や永瀬などもそう。 濱野の薫陶が効いているのではないかと思う。
その濱野、なんとパタゴニアのティーシャツを新調していた。

石川は今日も大胆な丈のミニスカート。 黒のニーハイに黒の厚底スニーカーを合わせて脚を細く長く見せようと言う戦術。
戦術としては悪くないのだけれど、石川は「目に見える部分」を整える方に神経を使いすぎているようにも見える。 戦術があって戦略に欠けると言うか。
プロデューサーとしての濱野は客から見えにくい部分での振る舞いを改善させようとしているように感じられるが、そこで客から見える部分を整えようとすると、どうしても衝突はする。 その折り合いを何処でどう付けて行くか。

各チームごとに歌ってから自己紹介とお題トークと言う流れだったのだけれど、これの段取りが周知されておらず、チームごとに違ってしまっていたり、間延びするし時間も掛かる平安時代型の名乗りを始めてしまって濱野に止められたり。
濱野はマイクを持って介入するのを極力控えるようにしているらしく、ミキサー卓の前でうずうずしているのも視界には入っていたが、それでも最低限の介入に留めていた。 その親心をメンバーがどこまで汲み取れているか。

頭にひまわりの髪飾りをつけた小室は「頭に花が咲いてしまった」かのようにすら見えたのだけれど、歌って踊っての部分では愚直。 手抜きが無い。

御坂が珍しくユニットとソロで登場。 うろ覚えの部分もあり、決して上手くは無いのだけれど動きの端々に出る日本舞踊の素養が面白い。 スーっと動いてピタリと止まり、軸がぶれない。

入り捌けは大分スムーズになってきた。 羽月・濱野(舞)は前の出番の連中が手持ちマイクで歌っている間にスタンドの高さと角度を調整するなど、客の目に触れにくい部分でもきちんと仕事をしている。 これが波及していくと良いのだけれど、優先順位として後回しにされがち。

「Hello,Again~昔からある場所~」は橋田が担当。 驚いたのは客の手拍子が裏で揃ったこと。 まぁヨレヨレのppphを入れるようなのも居たのだけれど、そう言う手合いは間の悪いmixを入れたがり、ハンドクラップのストロークも長いのでリズムも取れない。 カスタネットの練習からやり直した方が良い。
閑話休題、橋田の歌の話。 先週はウィスパーすぎる掠れ声でどうなるかと思ったが、今週は歌えるまでに回復。 小林と同じ系統で、切々(訥々)と歌う。

アンコールの「初恋サイダー」は羽月・濱野(舞)と小林。 音のとりにくいオケらしく、歌は上手いメンバーが歌っても、何故か外れる。 外れると言うか、ずれる。
オケの音量としては十分出ているので、打楽器の音(リズム)が取りにくいのであろう。

今回から物販にポロシャツが導入された。 生地は薄く、裏をめくると洗濯の際の禁忌も幾つか書かれているのだけれど、下手なティーシャツよりは選択耐性もあるだろうし、他所のファンとの差別化も図れる妙策。
シンプルな白のティーシャツにお馴染みのロゴが入っているだけなので、懐に余裕のある向きにはラルフ・ローレンかどこかの生地の厚い(高い)のを買って刺繍でロゴを入れる富豪プレイをオススメする。


2014-08-10 アインシュテュルツェンデ・ツンツルテン [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform MC大会&PIP最大危機発表

開場前に現地へ。 並ぶともなく壁際に屯している感じだったが、人が増えるにつれて圧縮され、なんとなく二列に整列。 その間に先頭に居た若い衆の所へ後から来た仲間らしいのがなし崩し的に合流。 そろそろ客の自治ではどうにもならない状況になりつつあるのではないか。
それでも20人凸凹なので、揉めずに入場。

衣装をお願いしている人が見に来ているとかで、メンバーの人となりを見てもらうために何曲か。
急遽出演できることになってクリーニングに出しっぱなしのままの北川以外は全員浴衣。
さすがに踊りにくそうではあり、また和装に慣れていないとすぐに着崩れてしまうので、あちこちで軽い事故が起きていた。その辺りは着付けの心得のあるメンバーで修整。

ヘアアレンジに凝る者も多い中、敢えて垂れ髪にした御坂が異彩を放っていた。

MC大会と言うことで、いつものグループと重複しないよう濱野が選んで3~4人ずつのフリートーク。
空井の生ものとしての強さが際立つ。 静止画で見ると girl next door なのだけれど、目の当たりにするとそんじょそこらには居ない過剰さ。 常に何かしら考えているようなギラギラした瞳が細い目の奥にある。

古狸然とした羽月ののらりくらりとした喋りが楽しい。

喉を痛めた橋田は昨日以上のウィスパーヴォイス。 これが実にエモーショナルだった。

着付けの巧拙はあからさまに出ていて、浴衣と帯さえ持っていれば着られると思っている向きは裾もつんつるてんで、つんつるてんの浴衣を着ている連中は着崩れるのも早かった。 アインシュテュルツェンデ・ツンツルテン。

ワンポイントのお洒落で帯留めを付けていた御坂、橋田、工藤は理に適った着付け。 このあたりは生育環境に左右されてしまう部分なので、送り手の側が平均化する必要がある。
浴衣、帯以外の紐であったり大き目のバスタオルであったり、必要な小物を準備させて玄人が纏めて着付けるのが効率的。 プロの着付けの人でなくても、着物を着せなれた人なら良い。

石川も綺麗に着こなしてはいたが、帯の下に詰めるアンコが少ないので身体の線が出すぎて色気過多になっていたのは惜しかった。 もう少し清楚に見せた方が良い。
着物は職業によっても年齢によっても相応しい着こなし方が異なるので、そのあたりも含めて分かっている人が居ると間違いが少ない。 その点に於いても橋田と御坂は最適解に近かった。 工藤は着こなしは良かったが、浴衣を着るにしてはヘアアレンジが華美に過ぎた。

重大発表は10月の末でこの会議室が使えなくなるというお話。 ディアスポラの始まりである。
原因は客が何かをしでかしたと言うことではなく、騒音問題でもなく、メンバーの楽屋・練習場所としての会議室および化粧室の使い方があまりにも汚いと言う予想外の理由。 化粧室については、同フロアの女子社員から強硬なクレームがあったとの事。 女子の聖域を聖域として尊重して自主性に任せたのが裏目に出た形となった。
覆水は盆に返らざるものであるにしても、立つ鳥としての後始末はきちんとしていただきたい。

ここのところ、濱野の石川への当たりがきついような気がしていたのだけれど、リーダーとして求めていたものと、石川がリーダーとしてやろうとし、やっていたことの乖離があったのかもしれない。 MC大会でも、石川の盛り上げ方と濱野の考える其れの間にズレがあるように感じられた。
濱野と石川の遣り取りを見ていると、石川の側に「かくあるべし」と言う固定観念が強いように感じる。 濱野は考えに考えて導き出された答えを欲しており、定型文の回答には価値を見出さない。

濱野の職場の会議室はロハで借りられて交通至便で冷暖房完備。 よほど羽目を外さない限り苦情も来ないと言う、立ち上げ期には実に有り難いイベント会場だったのだけれど、一年持たずに石もて追われることになった。
現状で濱野が思いつくライブハウスで22人からのメンバーが出られるような所は無いとなると、出演者は絞らざるを得ず、賃貸料も掛かるので物販の還元率も下げざるを得ないし、入場料も取らねば成り立たなくなる。
現状で集客できているのは無料であるのが利いている訳で、外へ撃って出るにして、もう少し地力を付けたかったと濱野。

八月一杯で追い出されても文句の言えないところを頼み込んで得た猶予期間。 暫くは現状の公演が続けられるにしても、その間に次の拠点を見つけなければならないし、金の取れるコンテンツに仕立てねばならない訳であり、諸事多端の濱野にとっては頭の痛い出来事であろう。
しかし「劇場があって劇が演じられるのではない。劇が演じられると、劇場になるのである。」との寺山の言にもある通りで、神は祈らるるところに坐し、噺家も扇子と手拭いと座布団があればそこが高座、アイドルもまた然り。
交通至便で冷暖房完備などと言う都合の良い施設が見付かるとは限らないが、あばら家でも廃工場でも、志を持ってやっている限り、そこは劇場たり得ると私は思う。


2014-08-09 不当判決 [長年日記]

_ NHKオンデマンドWONDERアイドルステージ

NHKの「恋する地元キャンペーン」に連動したイベント。 地方発のアイドルが良い環境で纏めて見られる機会なので足を運んでみた。

NHKオンデマンドのイメージソング的なものを歌うOS☆Uが口開け。 司会の芸人さんとOS☆Uの清里千聖が進行役。 どう言うシステムでそうなったのかよく分からないが、シード権のあるOS☆Uとasfiが1曲ずつ披露し、残りの6組が二手に分かれてライブ対決と言う流れ。

Aグループは愛の葉ガールズ(えのはがーるず 愛媛)、アイリス(元テクプリの3人 宮城)、フルーティー(北海道)
愛の葉ガールズは歌って踊って耕すアイドルと言う事で、小麦色に焼けた肌が新鮮。 サウンド・オブ・ミュージックに出てくるカーテン生地で作った服のような衣装が面白い。 粗さは有るが明るく元気なのも良い。
アイリスは歌もダンスも頭抜けていて場違いな位であるが、売れそうな切っ掛けを何度も掴み損ねてきただけに、こういう機会でも何とか利用していただきたい。
フルーティーは土地柄なのか煽りがしつこく、口上まで強いるような下衆なステージ。 私の好みではなかった。

Bグループはミルクセーキ(長崎)、JK21(大阪)、アイくるガールズ(福島)
ミルクセーキについては後述。 JK21は曲もPVもナニワな感じが強く、興が乗らない。フォーメーションも有機的な変形や移動ではなく、陣形の組み換え中心で物足りない。
アイくるガールズは曲にMIXが組み入れられているなど、客に媚びたところが鼻につく。 こちらも立ち位置の切り替えのみで、舞台の広さを演出に生かせていない。

客前で見せる芸として一頭地を抜くアイリスの勝ち抜けは分かるが、曲もパフォーマンスもぱっとしなかったアイくるガールズの勝ち抜けには疑問が残る。

準決勝は「バラエティ適正も必要」と言うこじつけで、グルメレポート対決。 別府温泉の「地獄蒸しプリン」を食べてレポートする体だったのだけれど、こちらは観客ではなく「別室にいるNHKの偉い人が決める」とのこと。
厭な予感はしていたが、ここでもアイくるガールズが謎の勝ち抜け。

決勝はasfiと「(ライブの)煽り対決」。
キラーチューンの「HAPPY DRIVER」を持ってきたasfiは押し付けがましくなく客を乗せていく術に長けていて、この日一番の盛り上がり。

これで勝負あったかと思いきや、案に相違して優勝はアイくるガールズ。
アイくるガールズは特に酷かったと言う事はなかったが、特筆すべき美点もなく、福島県でもいわき市が地元となると、官邸→籾井ラインの圧力による「政治的に正しい結末」として作られたヒロインではないのか・・・と、下衆な勘繰りの一つもしたくなる不可解な結末。

イベントとしては金の掛かった茶番であり、判定もインチキに過ぎたが、設備の整った広い舞台の上でアイリス、ミルクセーキ、asfiを見られたのは収穫だった。
歌と振り付けの完成度ではアイリスが、広い舞台を広く使う演出の巧みさではミルクセーキが、厭味なく客席を盛り上げる技術ではasfiがそれぞれ飛び抜けており、審査結果がどうでもそれぞれ収穫はあったように思う。

_ ミルクセーキの八月九日

原爆忌を東京で向かえたミルクセーキは、曲に入る前に

「長崎では、今日、8月9日は69回目の原爆の日を迎えています。私の、そしてあなたの、当たり前の日常がこれからもずっと続きますように。」


と前置きして "Just 2 of us" を披露。
広い舞台を広く使う複雑で有機的なフォーメーションチェンジにより、そこかしこで並行して物語が紡がれるようなフラクタル。

前回の上京時に感じられた振り付けの独自解釈の進行は上手く刈り込まれており、それぞれの個性は損なわずに全体としての統一感を醸していた。
結果的に一曲だけの披露となってしまったが、実際の時間以上に濃密な六分余。 眼福。

_ PIP: Platonics Idol Platform ゆるふわカラオケ大会

振り入れをする時間が取りたいとのことで、定期公演の変わりに軽いイベントとしてカラオケ大会。 いつもと変わらないのではないかと思ったが、このカラオケ大会の為の練習はしないと言うことらしい。

会議室は会議室としての配置のまま開催する為、余り人が来ても(また来なくても)困ると言う事で告知は薄めに。
それでも開場時には20人から集まっていた。
先週買い足したと言っていた照明が早速稼動。 カラオケボックスの個室のような感じでは有るが、大分雰囲気は出てきた。 機材への投資金額は、ぱっと見ただけでも洒落の利かない額になりつつあるが、それを自慢するでもなく自嘲するでもなく。 野暮に堕しないのは良い。

濱野の前説のあと、メンバーを招き入れるが肝心の歌う順番を決めていない。 結局、立っていた順と言う事になり、出入り口に近いところに居た御坂ゆき乃から。

カラオケとは言え、一人々々を見る時間は長く、それなりに人となりも見えてくる。

御坂ゆき乃は度重なる機材トラブルなどありつつも、とりあへずは歌いおおせていた。
機材トラブルで出来てしまった「間」を埋める事までは出来ないが、動揺を表に出さないのは良い。

小室志織の撰んだ「フィンランド・ミラクル」に向田茉夏を思い出し、うろたえ取り乱す濱野智史(34)。

機材トラブルからの「繋げ」指示にUFOを見た話を始める高城。

ボソッと呟いた「出るかなぁ・・・」が下の音域の事だった牛島。

「濱野さん、嫌いでしたよね?」と渡り廊下走り隊から選曲する羽月。

上手いと褒めるほど上手くはないが、大きな声で自信たっぷりに歌うことで大物感を出す空井。

カラオケ以上になっていたのは石川、羽月、濱野(舞)、長瀬、柚木、牛島、小林、福田あたり。

福田のセットリスト構成力を褒める濱野。 

先日の受験アイドルStudy☆Starsの自習イベントで濱野は「科目が違うだけで、国語も英語も数学も、問われるのは"論理的思考"」と語っていたが、「やりたい事」「出来る事」「求められている事」を勘案してその時その場所でやるべき曲を選ぶ能力も、やはり論理的思考に係ってくるのではなかろうか。
「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を撰んだ福田本人はそこまで深くは考えていなかったようだが、濱野が何故其れを良いと思ったのかについて、他のメンバーも含めて訊いておくと良いと思う。

この流れの中でトリを取る事になった石川の選曲は、ホワイトベリーの「夏祭り」。
「この曲で本当に良いのか?」と濱野。
これもセットリスト構成能力の話だけでなく、濱野と石川の「リーダーとしての責任」の捉え方の違いから出た遣り取りであったように思う。

石川の自分を殺してまで全体に尽くそうとするリーダーとしての在り方は、PIPの空気を自由にしない方向に働く危うさは有るにしても、自律的なリーダーと言うのも得がたいものであり、既にやっているとは思うが、考えていることを擦り合わせて行く必要はあるように感じられた。

今日も酷かったのが客のリズム感の無さ。 クラップケチャの悪影響だと思われるが、殆どの曲で手拍子が表拍で始まり、転調が入るとひっくり返ったり、また元に戻ったり。
表で打つ手拍子は、時としてオケの打楽器と喧嘩をしてリズムを取りにくくする弊害もあるのだけれど、それにも気付けない。

浴衣の(※一部甚兵衛)線香花火をやりつつツーショットチェキと言うアトラクションを導入し、「他に無いでしょう」と豪語する濱野。
アイドルに於いてありえないようなアレコレは、前世紀の段階で制服向上委員会がやってしまっていることが多く、下手に自慢すると車輪の再発見になりかねないが、顧客満足度とValue for Moneyを追求する姿勢は買える。

_ 更新情報

コラム的備忘録

リーダーとしての責任と自己犠牲

をアップロード。


2014-08-04 真夏の定点観測 [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 第6回目定期公演

今回の副題は「猛暑に負けず、新富町の会議室で鈴木伶奈生誕!今回は久しぶりのチーム曲も披露!もちろん二時間を超える大ボリューム公演!!」。
2時間どころの騒ぎではない長丁場だったが、ダレ場も無く、気が付いたら終わっていた。

今回から入場が整列ではなく呼び出しに変わり、客の側でスマートフォンの画面に整理番号を表示し、番号順に入場。
確かに酷暑の中、短時間とは言え密集して並んでいなければならない必然性は無いし、客の自律性を信頼するところはPIPらしさなのかも知れない。
これまでで最もスムーズな入場。

大規模屋外イベントと日程が重なったので、集客はいつもより少なめ。 特に沸ければ良い系の客にその傾向が顕著。
これはPIPに何を求めてきているのか、その層の優先順位が何処にあるのかが、その選択と行動に影響しているのではないかと思う。
少なくとも私がアイドルに求めるものは、件の大規模イベントには無かった。

入場が一段落し、影アナは空井。 元気がありすぎるくらい元気だが、それだけ充実しているということだろう。
開演時間になり、暗転して出囃子。 曲が終わる頃合で並び終えて一曲目。 入り捌けについても考えられ、練習も重ねられているのが見て取れた。
例によってDreamin' girls から RUN RUN RUN。 狭い所で歌い踊りながら移動するのと、まだ不慣れなのでぶつかりそうになることがあるのだけれど、お見合いになってしまうのはいただけない。 ぶつかってもよいくらいに躊躇無く動き、見切って交わすのが理想。
曲が終わってからの自己紹介は簡潔にして、お披露目の際にざっくり分けた3グループ対抗ので歌とMCの対決。 それぞれ工夫が凝らされていたが、空井がパワーポイントと言う飛び道具を駆使し、自らは脇に回ってメンバーの個性を引き出すのに専念したのは実に良かった。 一歩引く事で空井自身の個性も浮き出ていた。
石川は髪型から衣装から妙に気合が入っており、MCも主導していたのだけれど、漲るやる気は空回りするところもあり、いつも通りのメンバーの中で独り一寸硬いのが気になった。 この理由は最後の最後で氷解するのだけれど、リーダーとしての責任感が石川を育てているのが見ているだけでも判る。

プロデューサーの濱野智史は洗濯し過ぎて透け掛かったパタゴニアのティーシャツに七分丈のパンツと言ういつもの出で立ち。
照明を購入した事を前日の別のイベントで話していたが、早速3つ買い足したとのこと。

ユニットコーナーは入り捌けにしてもマイクやマイクスタンドの扱いにしても、かなりこなれて来た。
セーラー服など、衣装然とした衣装では畳み皺が目立ったが、小道具を含めて充実させようとしているのは評価できる。

リーダーの石川はユニットでもピリピリする気合と、細部まで神経の通った動き。 これがさり気なく出来るようになれば本物。
羽月・濱野(舞)で新カバー曲「ライオン」。
只の鼠ではない二人による金の取れる芸。

小林希望はソロ・ユニット含めて大車輪。 押し付けがましさが無く、丁寧で味のある歌声。 オケはガイドメロディー付きのショボさでも、小林の歌声に説得力が増した所為か気にならなくってきた。

ユニットコーナーのあとは、鈴木の生誕企画。 ソロで一曲歌い終えたところで、本人から辞める旨発表。
石川のピリピリしていたのも、牛島の冴えない顔をしていたのも、鈴木の噛み締めるように歌っていたのも、全てはこの事に起因していた。
知らなかったメンバーの方が多かったと見えて動揺が走り、そこかしこで嗚咽、そして号泣。
本業のイラストの仕事が多忙を極めての決断とのことで、今後はイラストレーターとしてPIPに関わって行きたい、と鈴木。

読み上げられた濱野からの手紙は、まさに担当教官からの惜別の辞であり、文字通りの「卒業」であった。 
La Dernière Classe...

このタイミングで新メンバー加入の発表。 新メンバーと言うか「PIP京都」立ち上げのお知らせ。 世界同時革命さながらの無茶な展開。

アンコールの「初恋サイダー」は、派手に泣いた後なので歌い出しが安定せず、悔しそうに声を整えつつ持ち直していく羽月が良かった。
何故斯界で歌われすぎているこの曲なのかと訝しく思っていたが、濱野智史曰く「地下の定番曲ですが、その中でも一番を目指します。」 確信犯だった。

見る度に何かしら変わっているPIP、その多くは良い変化であり、悪い変化も無くは無いが、着実に前に進んではいる。
回を重ねるごとに(まぁ、前回はヒド過ぎたが)ダレ場も減っており、3時間からの長丁場であったが楽しく過ごすことが出来た。
木戸御免でそこにしか金を落とす場所が無いと言うのもあるが、アイドルの接客業としての側面には惹かれない私ですら物販に行くくらいには楽しい。


2014-07-27 悲惨な戦い [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform 第5回定期公演

「ついにゲストを呼んでPIP初対バン!かかってこいや、あヴぁんだんど!そして姫乃たまのアイドル卒論をみんなで手伝うしか!」とのサブタイトル付き。
その所為か予約の椅子取りゲームも熾烈なものとなり、80からの枠が早々に埋まっていた。
私は何とか若い番号が取れたので開場時間少し前に現地へ。 スマートフォンを利用した本人確認システムには、客のほうも慣れて来たようだ。 暑い中然程長い時間並ばずに入れるのは有り難い。

整列入場の仕切りは大分こなれて来ており、スムーズに進行。
スタッフごとの習熟に差があるようなので、積み上げたノウハウの共有が次の課題。

ゲストに鑑みてか立ち見に「沸きたい人ゾーン」を設定。 濱野曰く「様々な嗜好のお客さんを共存させたい」との事であったが、客の理性とモラルに頼った施策なので、自己中心的な客が大挙して押し寄せた場合には簡単に破綻してしまう危うさがある。 今回は完全に破綻、企画倒れに終わった。
ライブの流れを止めてまで制動は掛けないと言う事だったのかもしれないし、止める気がそもそも無かったのかもしれないが、スピーカーに体当たりし、ケーブル踏み荒らし、床にお茶をぶちまけ、椅子を蹴飛ばし、機材が壊れようが会場が使えなくなろうがお構い無しの手合いを招き入れてしまった以上、予め最悪の事態迄想定しつつ、そうならないように手を打つべき。 それが送り手としての責務。

マイクは、前回使った中古品が使い物にならなかったので、新品を買ってシステムから組みなおしたとの事。 音響方面に関しては会議室で出来ることを突き詰めてやっており、音量的にはスピーカーの性能的にも近隣への配慮からもこれ以上は難しいくらい上げていたし、ハウリングもごく初期で収束させており、耳障りな所はなかった。
ただ、客が騒ぐとオケの音が演者も客も取れなくなり、それぞれがそれぞれにずれていると言う笑えない事態も。
打てる手としてはモニタースピーカーだが、ハウリングの問題もある。 さてどうなりますか。

全体的に良くなると、手を付けられていない部分が粗として見えてきてしまう。 マイクスタンドの高低・角度の調整しにくさが入り捌けを遅滞させてしまっていたし、調整をあきらめた結果歌声を拾わなかったり(返しが弱いので「拾っていない」事にも気づかない)、一寸勿体無かった。

今回は借り物の劇場 overture ではなく、インストゥルメンタルな出囃子を長めに流していた。 口開けは Dreamin' girls から RUN RUN RUN。 立ち位置や移動の間違いはまだ有るが、表情は大分柔らかくなってきた。
ゲストに時間を割くためか、全体曲はこれだけ。 自己紹介のお題トークも割愛で、ユニットコーナーに出ない連中は碌に出番も無く。 これでゲストが良ければ救われるるのだけれど、残念ながらそうでは無かった。

ゲスト一と組目は、濱野が同時進行で手がけている「あヴぁんだんど」
AKB48の「制服が邪魔をする」から始まったのだけれど、これがまた酷い。
歌えてもいないし踊れてもいない。 そもそも音程からして怪しい。
原曲レイプをやるなら、それ相応の覚悟を持ってやっていただきたい。
ついている客も酷いもので、「別の現場にまでBiSのティーシャツを着て来るのはそれを免罪符にして無法を働く連中」と聞いてはいたものの、いざ目の当たりにすると予想を超えた駄目っぷりに驚く。 群れないと暴れられない蝗のような連中と言うのは実にタチが悪い。 バカの受け皿としてのアジールであるアイドルが成立し得ることが判ったのは収穫であった。

続いて登場した姫乃たま。 ヌルいとは聞いていたのだけれど、こちらも想像以上。
「みんな盛り上がってください」だの「声が聞きたい」だの、しつこく煽るのが鬱陶しい。 「北風と太陽」の例を挙げるまでも無く、盛り上がる環境を作るのが演者の仕事であり、それを客に強いるのは筋が違う。

地下アイドルについての卒論を書きたいとの事であったが、所謂「地下アイドル」と言うものの成り立ちも定義も知らないし、身の回りに教えてくれる人も居ないようだった。
「地下アイドル」を業者として自称した嚆矢がアルテミスプロモーションの野間真(現在は撮影会業者「いちごはうす」代表)ではなかったかと思うが、その地下アイドルの定義は「売れることを志向せず、小規模なライブや自前のイベントでの少数の客からの収奪で生計を立てる」ビジネスモデルであったと記憶している。 だから「地上に出よう」「売れよう」とする意欲のあるものは、現在いる階層が地下であったとしても、本来的な意味に於いては「地下アイドル」ではない。

姫乃たまは今すぐスタイルキューブの門を敲いて野口社長に教えを請うべき。 いちごはうすの野間は、おそらく自分に都合の良い話しかしない。
「ソロは嫌いなんですか?」と自虐的に問い掛けていたが、ソロが嫌いなのではなく、腐った魚は食べられないという事。
ここ迄、長すぎる弁当幕。

姫乃たまが残って、濱野が卒論の構成を考えて差し上げるコーナー。
面白いと思った事については損得抜きで関わる濱野らしさが出ており、賑やかしのメンバー2人と姫乃から色々聞き出しつつ、勝手に論文の構成を進めて行く、そしてそれはホワイトボード上で完結し、見ているこちらは楽しいがメモも採っていない姫乃には殆ど得るところが無いと言う、よく出来た喜劇。 まぁ、その辺りは個人的に聞き出していくのであろう。
姫乃たまには、現場経験以外のアイドル知識が殆ど無い、そんな「なんにもない机の引き出し」の状態で論文を書こうとしているのが空恐ろしい。

漸くユニットコーナーに移ったが、盛り込みすぎた所為か濱野の進行も端折り気味。
演出、道具立て、歌唱も練れてきており、総合的に良くなりつつある中、改善されていない部分の粗が目立つ。。
前述の通りモニタースピーカーが無く、返りが弱いからか歌いながら音が取れなくなる場面が見られたし、マイクスタンドの使い勝手の悪さ、メンテナンスの不備も目に付いた。
面白かったのは同じユニットでも濱野舞衣香はスタンドマイクの扱いが上手く、羽月あずさは手持ちマイクの扱いが上手い。 補い合えれば更に良くなると思う。

小林希望のソロ。 今日も客の手拍子が裏になったり表になったり。 

予定調和で姫乃たまにアンコールをやらせて「初恋サイダー」。 振る舞いも含めて羽月が上手い。

今回はゲストコーナーが蛇足な上にも蛇足で、特に「あヴぁんだんど」は客も含めて二度とお目に掛かりたくない。
姫乃たまも浅薄で且つヌルく、本人の言動もライブも退屈極まるものでありつつ、その隙の多さが濱野の研究者気質を刺激しており、灰色の脳細胞を働かせる為の触媒としては上手く機能していた。


2014-07-23 [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform オフィシャルブログ開設

PIP: Platonics Idol Platform オフィシャルブログ

今更アメーバブログと言う欠陥システムを選択する理由が判らないが、メンバーの書いた纏まった量の文章が読めるのは有り難い。

反省、感謝、謝罪。 重い文章ばかりではあるが、良し悪しは別としてここまで熟読を強いるグループアイドルのブログと言うのは無かったのではないかと思う。

沸ければ何でも良い客、廉価な濃厚接触に価値を見出す客が多くを占める現状で、そうではない客への呼び水になる事を期待したい。

繰り言になるがアメーバと言うシステムは、幾つか有ったであろうブログシステムの選択肢の中で最悪のものであり、物事を深く考えているようでいて関心の薄い分野への知識は非常に浅薄な濱野の欠点を象徴している。

2014-07-20 自動人形テレーズ [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform "お披露目から一ヶ月経過"記念公演

15:15開場、15:30開演と言う事で、15:00位までは並ばないで欲しいようなことを濱野がツイートしていたが余り浸透しておらず、14:20の段階で既に並び始めるものがちらほら。
散歩をして時間を潰して15:00少し前に戻ってみると、既に30人からの当日枠待ちの行列。 気軽に見られるのも今のうちかもしれない。

予約者の列は15:00を過ぎてもなかなか伸びなかったが、開場間際にバタバタと。 暑い中長時間ならば無くても時間通りに来れば入れるシステムと言うのは有り難い。 スマートフォンによる本人確認のシステムも、入場をスムーズにしている。
惜しむらくは入場待機列を作るノウハウが無い事で、「1~10」「11~20」みたいな札を先頭の客に持たせるなり、床に置くなりすれば客が勝手に並んでくれるのを、スタッフが一人ひとり誘導して並ばせる非効率。
これが省力化出来れば待機列全体への目配り手配りが効いて来るし、客の数が増えても対応できる。 そもそもプロデューサーたる濱野が現場仕事にまで駆り出される状況はあまり宜しくない。 全体を掌握する立場の人間は、それを第一義とすべき。

前述の通りスムーズに入場。 場内の椅子は予約者+αで並べられており、立ち見最前列を取るために予約して入場する向きも多く、座りたい人は座れる幸せ。
前回と同じく手荷物持ち込み不可。 隣室に並べられた机に荷物を置いてから入場。 性善説に立った仕切りではあるが、まぁ仕方が無い。

暗転(・・・と言っても螢光燈が消されるだけだが)からAKB48劇場のオーバーチュアが掛かり、一曲目は「Dreamin'GIRLS」(AKB48)から。 オーバーチュアには失笑したが、この曲はそれとセットで一曲なのでこれはこれで良い。 更に2曲演って自己紹介まで済ませたら既に30分。 自己紹介のお題は「私の大切なもの」。 濱野が見せようとしているのは歌って踊っての部分、物販アトラクションでの接客能力だけではなく、人そのものであり、それを自己紹介に絡めて曝け出させているのだと思う。

自己紹介の後は一旦捌けさせてユニットとソロのコーナー。 メンバーを呼び込んで人となりや近況・その曲を選んだ理由などを引き出した上で(ネタバレがある場合は曲の後に)、歌わせる「ドキュメント女ののど自慢」方式でみっちりと。
オケはガイドメロディー付きの物を使い、歌も振りも金の取れるレベルでは未だ無い(鉦も取れないであろう)のだけれど、何者かになろうとする生々しさに惹き付けられる。
手元のメモに「空井美友、下町の大矢真那」

強く印象に残ったのは、御坂ゆき乃の「シンクロときめき」。
平嶋夏海唱法で不安定に安定。  口元がアルカイックなので笑顔に見えるが、鼻から上の表情は読みにくい。 緊張からだと思われるがマイクが常に口の左側にあり、透けるように白い肌は白いのを通り越して青みがかってすらいて、その圧倒的な美形感とぎこちない動きは「黒死館殺人事件」に於ける自動人形テレーズを想起させる。
御坂ゆき乃は他のメンバーが歌っている時も、没入のあまりリズムを刻まない手拍子を打っていたり、何にどう生きるかは分からないが得がたい逸材であることは間違いない。
古人曰く、此奇貨可居。

山下緑が喪服で「喝采」
思考は面白いと思うのだけれど、紡ぎ出される言葉は借り物が多く、インパクトはあるものの心に深くは響かない。
作り出した虚像に既に振り回されつつあるのではないか。

今日も客席を一番沸かせていたのは濱野

「スピーカー買いました(3万円)」
「ワイヤレス(マイク)も買っちゃいました(4万円)」
「マイクスタンド、これ安物でダメなんですよ、買いなおさなきゃ。」
「既にPIPに100万円注ぎ込んでます。」「でもヲタ活費用を廻しただけなので問題ない」
「照明も買う予定」

やっている事は趣味の域を大きく脱して「道楽」と呼ぶのか相応しく、桜組の西山由之会長にセンスと教養を足して財力を引いた感じ。 まったくどうかしているが、どうかしているが故に清々しい。
楽曲がAKB48系のものに偏っていたり、オケがガイドメロディー付きのショボ過ぎるものであったり、未だ文化祭の出し物的なヌルさがあったり、ダメな所もあるのだけれど、濱野が突き抜けたバカなので許せてしまう。
家庭不和は招きそうだが、良い道楽だと思う。

客層は座ってじっくり見たい向きと、騒げればいい手合いに二分。
騒ぐのにも必然性があれば許容できるのだけれど、その雑兵感はスターリン大粛清後のソ連軍。 フォン・ゼークトの四番目みたいなのが指揮を採っているのでやかましい割に統率もとれず、ただただ五月蝿く煩い。
手拍子は走ったり遅れたり、裏になったり表になったり忙しく、リズム感がないから野次も間が悪い。 機知にも欠けるので、野次と言うより怒号と呼ぶのが相応しい。 それがてんでばらばらに叫ぶものだからさながら学級崩壊。

その雑兵にすら負ける音響が情けない。
客が入る→入った客が騒ぐ前提で音場設計していないのでオケの音も歌声も掻き消されがち。 オケの音を取れなくなって歌唱に支障を来たす場面も見られた。
これは客席に向けたスピーカーが二基あるだけで、モニター用が無いからでもある。

濱野はアイドルそのものにしか目を向けておらず、それを支える諸々について関心を持って来なかったのではないだろうか。 アイドルと言うものの送り手になって初めて見えてきたそれらに手配りが追いついていないように思う。
「設計」という言葉がよく使われるが、濱野のそれはモデルルーム的であり、モデルハウスにすら備わっている「そこで暮らすための様々な物」が欠けている。
改善する意思は見て取れるので、暫くは静観したい。

2014-07-18 媚薬系 [長年日記]

_ Dorothy Little Happy 「sky traveler」リリースイベント(7/18 サンストリート亀戸 マーケット広場)

仕事を遣り繰りしてサンストリートへ。 18:20過ぎに着くとベンチは既に埋まり、立ち見で二重三重の人垣。 早く来てベンチに座っている連中は比較的自由な服装。 立ち見はサラリーマン風の出で立ちが多い。

18:30頃からリハーサル。 一曲だけ浚う感じ。
結果が付いて来ているからだと思うが、ステップワンも漸く"東京"と言う場に対して肩の力が抜けてきた。

スタッフからの諸注意のあと、ライブスタート。 短めの自己紹介と告知を挟みつつ、既存曲から3曲、新しいシングルから3曲。 みっちり30分。

新曲の衣装はまた形容しがたい形状で、前から見るとコートのようでありつつセーラーカラーの付いた淡いピンクのワンピース。 立っていると身体の線にぴたりと合っているが、プリーツは深く取ってあって、クルリと回るとフワリと広がる。
カチューシャなのかカチュームなのかヘアバンドなのか、遠目からは判然としないが、同じ素材でそれぞれ違うデザインの髪飾り。

5人それぞれに見せ場があり、聴かせどころもあるのだけれど、早坂香美が目を惹いた。 すーっと動いてぴたりと止まる、激しく動いても決して流れず、柔らかく静かに収束。

今度のシングルはタイトルチューンの "sky traveler" 、白戸佳奈が作詞を担当した "keep on tryin' " 、そして"恋の花火"。
昨秋に出た "ASIAN STONE" の頃から売り方が変わり、私は非常に好きなのだけれど、これで売れるのか些か不安でもある。 その極みが"恋の花火"。
バックバンドがバックバンドに徹しつつ、とても楽しそうに演奏しているオケも素晴らしいし、歌がそれに乗っかって更に楽しそうに伸び伸びと。
「渋谷系」のレッテルを貼られて怒った川勝正幸が「渋谷系じゃない、媚薬系だ」とライナーに書きそうな洒落乙なポップス。

こう言う曲を聴きたい層に上手く届いて、広く売れて欲しい。


2014-07-15 ミルクセーキは食べ物です [長年日記]

_ ワンコインBOMBER!!(26.7.13 六本木BeeHive)

BeeHiveは、六本木の路地裏、住宅地の中にある。
この街は路地が入り組み、高低差もあるので地図を見ながらでないと辿り着けない。
開場15分前に着いたのだけれど、既に数名。 三々五々集まってくる客に対してライブハウス側からの整列の指示などはなく、なんとなく屯して時間を潰す。

駄目だこりゃと思ったのは客の質の低劣なこと。
ライブハウスの敷地内ではなく、その前の、住宅地の中一方通行の路地に並ぶともなく屯して、携帯灰皿を使うでもなくところ構わず煙草を吹かし、音を出したまま動画を見る。 他者への想像力とモラルの欠如した客層。

ライブハウス側も当たり前のように15分遅れで開場する目糞鼻糞感。
列が出来ていた訳でもないので、なし崩し的に入場。

峰尾こずえ
「トップバッターで出ることは良くあるんですけど、こんなに人が居るのは初めてです」と腰を低く始まったものの、「はいみんな声出して行こう!」と居丈高になったり、歌が終わればまた神妙になったり忙しい。
ほぼ親の年であろう客を相手に声優系お兄ちゃん小芝居など。
歌はそれなりに歌えているが、振る舞いが素人。

MilkShake
曲が良いのは知っていたが、歌って踊っての部分もしっかりしていた。
振りの独自解釈が進み過ぎているきらいは無きにしも非ずだが、止め撥ね払いはしっかりしており、敢えて刈り込まないようにしているようにも見える。
分かりやすく可愛らしいのと、噛んで味の出るのが混在。 牧歌的なようでいて、背筋はピンと伸びている。
ミルクセーキで驚いたのは、九州の同種のモノより都会的だったこと。 土着性の薄さ。肩肘張らない古くから開けた国際港湾都市のゆとりと言うか、城下町にはない「都市の空気は自由にする」おおらかさのようなもの。
長崎で、街の空気を吸いながら観てみたい。

KOTO
頭を両手で掴んでクイッと動かすような振り付けが目を惹く。
「三倍速の操り三番叟を踊る、捨てても捨てても帰ってきちゃうカラクリ人形」みたいな上質な不気味さ。

亜利美里
元々は声優を目指していたそうで、出自を感じさせる歌い方。
オリジナル曲の出来は悪くないが、オケの出来がチャチなのが気になった。
本人作詞の曲は言葉が直截的で含みがない。

シブヤDOMINION
「今日は○○と××の卒業セレモニーにお集まりいただき、ありがとうございます」で始まり、腰を抜かす。 湿っぽいまま進行。
片手にマイク、片手に光る棒。 これを暗転中も消さないのが、このグループが負の連鎖の中に居るのを象徴しているように思われた。
やってはいけないこと、やらないほうが良いことに気付けない。 見ているのが自分たちの客だけだと思ってしまっていて、まぁそれはそうなのだけれど、より多くの客に知らしめよう届けようとする気概が感じられぬ縮小再生産。

動きも良く、歌割りも複雑だしハーモニーも綺麗なのに、何故かうらぶれた感じが痛々しい。


2014-07-06 「顔だけで撰んでないです、そんな詰まらない事はしない。」 [長年日記]

_ PIP(Platonics Idol Platform)定期公演(26.6.29)

「PIP3回目イベント「PIPの拠点は新富町!会議室で毎週日曜定期でやるよ!そしてメンバー羽月さん(あずにゃん)生誕もやるしPIP初のチェキ解禁もやるぜ!」公演」と題されていたものを観覧。

入場予約分はあっと言う間に埋まってしまい、当日券で入るために開場15分前に現地へ。 看板やポスター・貼紙の類は無く、客もどうして良いやら思案に暮れてなんとなく屯しているところにスタッフ登場。 相変わらず段取りは悪く、予約者50人を10人ずつ並ばせたいにしても、番号札を用意するなどの工夫は見られず。
列を整理しようとする姿勢が見られるようになっただけでも進歩と考えるべきか。
濱野がPIPについて設計した部分は、地面から上に出ている部分のみ。  モデルハウスではなくモデルルームに近いもので、アイドルグループを支える「基礎にあたる部分」がすっぽり抜けており、水周りや電気ガスなどについても考えられていない。 ここが危うい。

ロハの気軽さからか予約するだけして来ない客も多く、実際に入場した予約者はざっと見て2/3くらい。 昨今の情勢に鑑みてなのか、荷物は別室に置いてから入場して欲しい旨、主催者側からお願い。
番号札を荷物に付けて預けるでもなく、机の上に荷物を置くだけ。 荷物番は付けていたが、テーブルの上に鞄を置くだけの、客の善意に頼ったやり方。
板の間稼ぎをしようと思えば出来る状況で荷物を置かせるのは如何なものか。

オフィスビルの会議室でやる意図が分からなかったのだけれど、濱野の勤め先だそうで。 土日は休みなので気軽に借りられて、大きな音を出しても苦情が来ない。 先週の公演のあとも怒られなかったそうで「もっと沸きましょう」(濱野)
備え付けのプロジェクターに、濱野の私物パソコンから背景画像的なものを壁に投影。 左右にスピーカーを配して上手側にPA。 ワイヤレスマイクはそれなりの数揃えつつ、ハウリングが起きないのは良い。
ただ、無闇にレベルを下げてしまう傾向があったのは気になった。
その所為か、スイッチが入っていてもマイクが死んでいることがままあり、マイクを叩いて確認するメンバーが居た。 マイクの扱いに関してはきちんと教育すべき。
スピーカーは仕方ないにしても、舞台を客席と明確に区切らない、高さを付けないのはいただけない。 教壇程度のものでも舞台としてのスペースを意識して演らなければ、お遊戯会意識は抜けない。

開場前の客の扱いであったり、クローク未満のクロークであったり、音響担当者の拙さであったり、何度も書いているが濱野はアイドルグループそのものの設計はしているかもしれないが、それを支える部分が実に杜撰。 イベントの運営について拙さは自覚しているようには見受けられるが、改善しようとする意思はありつつも意志ではないような、やりたいけれど重要度は低い事とやりたくないけれど重要度は高い事だと前者を優先してしまうような、送り手としての甘さも気になる。

例によって3チームに分かれて、それぞれの持ち歌を1曲ずつ披露。 衣装は揃いのポロシャツにチームごとの小物(リボンやスカーフなど)を身に付けていたが、キャプテンマークを付ける事にしたようだ。
お披露目から較べれば硬さは取れてきたものの、未だ金の取れる見世物にはなっていない。 なってはいないが「そうなろう」「そう在ろう」としているのは見て取れる。
全体曲の「タンポポの決心」のオケがガイドメロディー付きだったのに象徴されるのだけれど、どの曲をやるかについての拘りはあるものの、それをどう見せる・聴かせるかについてについては拘りが感じられない。
曲によってオケの録音レベルもバラバラ、それを使うに当たって調整もしない。
マイク音量とオケの音量のバランスは取っている形跡はあるが、客が入ったときにどう聞えるかは考えていないし、ライブ中にそれをチェックすることも無い。 客が騒ぐとオケも歌も掻き消されてしまって、それに音響担当者が疑問を持たない。 これでは「物販・接触重視」「ライブ軽視」ととられても文句は言えまい。


ソロコーナーは濱野がそれぞれの人となりを熱く語ってから歌わせる「ドキュメント女ののど自慢」方式。
特設MCコーナーとして山本緑の思考について3次審査で書かせたアイドルについての文章を叩き台にして詳らかにして行ったのも含めて、容姿のみならず思考についても精査した上で採用し、それを客に伝えるためにどうするか考えている所は濱野の美点であると思う。
送り手としての拙さ至らなさは大いにありつつも、濱野の人としての面白さで相殺されてしまって、イベントの後には不快より愉快が多く残る。

羽月あずさの生誕コーナーも、グループ加入前からの友人である濱野舞衣香の手紙、羽月による生い立ちなども絡めた重めの挨拶など、考えるアイドルとしての側面を強く押し出していた。

現状では沸ければ良い層、触れ合えれば良い層が客の中心になっているが、上手くアウトプットすればそこに重きを置かない客層にも届くのではないかと思う。


2014-06-24 センター機関説 [長年日記]

_ 移転のお知らせ

濱野智史プロデュースのアイドルグループ「PIP: Platonics Idol Platform」を観察するサイト「日本革命的濱野主義者同盟 革命的ハマノ主義者派(革濱同・革ハマ派)」は、Yahoo!ジオシティーズによる不当な弾圧により、正常な表示がなされない状態になっております。
フレームの切り分けと自動挿入される広告表示用のスクリプトが喧嘩しているようなのですが、自動挿入である以上こちらからソースを弄ることも不可能であり、スタイルシートを使うことも考えましたが、そんな知識は既に脳内で腐敗しており、面倒になったのでサーバーを借りて移転しました。

日本革命的濱野主義者同盟 革命的ハマノ主義者派(革濱同・革ハマ派)

ffftp を再び使う日が来るとは。

_ 更新情報

先日来、書きかけで放置していたものの続き。

つりビット「つりの恩返しvol.1~まずは表参道を釣り上げます♪~」(2014.6.14 表参道GROUND)(2)

聞間彩の一歩引いたセンターぶりが面白かった。 機関としてのセンター。 センター機関説。


2014-06-16 私にしては珍しく、真ん中に目が行く [長年日記]

_ つりビット「つりの恩返しvol.1~まずは表参道を釣り上げます♪~」(2014.6.14 表参道GROUND)(1)

表参道に待機列が出来ており、先ずはそこに並んで入場待ち。 並んでいる間に金属探知機などを使って軽くボディチェックなど。
やる側もやられる側も空しい。 これで何かやらかす奴が捕まるとは誰も思っていないが、世間様に対してのアピールとしてやっておかねばならない。

入場時には荷物チェック。 入場開始は少し遅かったが、スタッフの動きが的確で、開演は遅れなかった。
スポンサーの生コマーシャルなどもあった後、ほぼ定時に開演。

昼夜2回公演の両方を観たのだけれど、一本のライブをこなせる持ち歌が漸く揃い、メンバーの技倆や体力が追いついた頃合を見計らってのワンマンライブであるのが伝わる作り。
楽曲にしても衣装にしても、手持ちのものを丁寧に組み立てて見せる工夫がなされていた。

暴れたい盛りの客は居らず、昨今の風潮で発光持続時間を気にせずに済む書類の光る棒を常に手にしているので、手拍子も静か。
煽るような曲が少ないこともあり、落ち着いて見ていられる。
縦に長い箱なのだけれど、舞台が高いので後ろからでもメンバーの首から上くらいは辛うじて見える。 天井が高いので音の回りがよく、空調もそれなりに効くし、二酸化炭素濃度が上がり過ぎないのもあり難い。
それなりに歴史のあるところなので、照明は LED ではなく、普通のライト。 発熱量は大きいと思うが、明滅が緩やかで目には優しい。

トベタ・バジュンの手がける楽曲は、中田ヤスタカが作るものがカルピスだとすると、コーラスとかミルトンとかそういう物であるような印象を持っていたのだけれど、つりビットの曲はあまり歌声が加工されていないので、危惧していた「まがい物感」は無かった。
但し、曲によってオケの出来不出来の差が激しく、シンセサイザーでは再現しにくい種類の楽器の音を、その楽器を使っているようにして作った楽曲の安っぽさはいただけない。
オケに被せた感じは無く、ほぼ生声だったと思うのだけれど、マイクの持ち方はかなり荒っぽく、口と正対しておらず、口からの距離も変動するのに何故か拾っているのが不思議だった。

_ つりビット「つりの恩返しvol.1~まずは表参道を釣り上げます♪~」(2014.6.14 表参道GROUND)(2)

青ショートボブ、赤ボブ、緑ツーテール、ピンクポニーテール、黄色ゆる巻きロング。 それぞれ顔立ちに合った髪のあしらい。

イメージカラー赤の聞間彩が真ん中に立つ曲が多く、その際は周りが中心を守り立てる様な形になるのだけれど、そうではない曲もあり、そんな時は聞間彩が守り立てる側に廻ることになる。
面白かったのはこの聞間の「曲ごとの振る舞いの違い」。 守り立てるときは大きく、守り立てられるときは控えめに。
真ん中に立ったときは我を張らず、象徴としての振る舞いになる。 機関としてのセンター。

2曲~3曲やって、間繋ぎの喋りで小休止と言う構成は、メンバーの体力を図った上で練られており、喋っている間にも代わる代わる捌けて行って暫く帰って来られなかったりもする状態ながら、歌って踊っての部分では疲れを見せることも無く、金の取れる出し物としての質は最後まで保たれていた。

聞間彩はダンスも歌も飛びぬけて上手くは無いが目立って下手でもなく、それでいて立っているだけでも目を惹く。
自然に目を惹くので殊更張り切って踊る必要も無く、そうすることで守り立てる側の見せ場も作っている。
驚いたのはマイクと口との距離と角度がほぼ一定に保たれていること。 顔を隠さず、きちんと音を拾う位置にマイクがある持ち方が崩れない。
仕込まれてそうなっているのか、個人の資質としてそうしているのかは分からないが、やっていることの質が高い。 質は高いのだけれど、その質の高さが実に分かりにくいところにあり、それが実に面白かった。

次のシングルは山下達郎のカバーで「踊ろよ、フィッシュ」。
山達が許したからシングルとして出せる訳で、許したからには及第点は付けているのだと思うが、さてこの曲がサンデー・ソングブックで掛かるかどうか。
とりあへずリクエスト葉書を書いてみようと思う。


2014-06-15 メタ化した物販 [長年日記]

_ PIP: Platonics Idol Platform お披露目イベント(於:SHIBAURA HOUSE)

※周辺に迷惑がかかりますので、入場開始前に並ばれる場合は14:00頃からでお願いいたします。
・・・と注意書きがあったので 13:50 頃に様子見がてら現地へ出向いたのだけれど、その時点で既に建物の端くらいまで列が出来ており、時間の経過とともに伸びて行く。
ガラス張りの建物なのでその様子は主催者やスタッフからも見えていた筈なのだけれど、結局客入れが終わるまで列が整えらるなどの対策は取られず、混乱に終始した。
ネット経由でのチケット販売は、中間詐取をなるべく排する濱野の方針にも合致していたし、本人確認を特別な機械を用いずに行える点からも良い方法だったと思うが、専用アプリをダウンロードしないと整理番号が出てこない事を知らない客が居たり、使い方を周知する努力には欠けていた。
また、ネット経由でのチケット販売分は整理番号順入場であること、当日券の販売方法など、広報が後手に廻っているところも多く、チケットの種類によって待機列を分けるなど、基本的なイベント運営のノウハウを持ち合わせていない事には呆れるしかない。
並んでいる最中の会話の内容から濱野本人の客が多かった様に思われたが、並んで待つことに慣れておらず、歩道を完全に塞ぐような自己中心的な振る舞いが目に付いた。

会場はライブハウスではなくイベントスペース。 それがライブよりアトラクションに重きを置くお披露目イベントには合目的的であったように思われるし、「ドリンク代」を無くす事による閾値の引き下げにも成功していた点は評価できる。
然しながらステージに高さを点けなかった事や音響設備のお粗末さから「ライブを見せる」と言うアイドルイベントの根幹を為す部分を閑却した感は否めない。

客席は前方が丸椅子、後方が背もたれ付きの椅子。
会場の SHIBAURA HOUSE は妹島和世の設計によるイベントスペースであり、背もたれ付きの椅子も21世紀美術館などでお馴染みの源氏パイ型のものなど。 このあたりの洒落乙さ加減は濱野らしさの良い部分。
長机で仕切って窓際に関係者席、二階バルコニーから父母や家族が見守る格好。 関係者枠で入りつつ、客席にシレッと座っている手合いもおり、身内への甘さは少し気になった。

プロデューサーである濱野智史がこの企画の趣旨説明。
マイクを持ったまま徘徊しつつ熱く且つ暑く語る姿には、学究の徒としての本来が垣間見られた。
語られる内容は細胞分裂の如く増殖を繰り返して規模を拡大して行きつつ、客とアイドルとの距離感を保つ工夫を技術的にもしていくというもの。
アイドルでありつつプロデュースにも携わり、やがてプロデューサーとして分派して増殖と言う考えそのものは面白いが、革命を担った層が官僚化していた事がレーニンの存命中に既に問題として表出しており、人類はそれを克服できないまま21世紀を迎えてしまった訳なのだけれど、その「裏切られた革命」を解決する手段は語られなかった。

いよいよメンバーが呼び込まれてお披露目。 現在3チームに分かれているとの事で、順に出てきて自己紹介の後で一曲。
「Baby!Baby!Baby!(AKB48)」「アーモンドクロワッサン計画(NMB48)」「禁断のカルマ(私立恵比寿中学)」 最初の曲はAKB48最暗黒期のCDとして発売されなかった曲とあってか、客席もほぼ無反応。 そう言う客層なのだろう。

衣装は揃いのポロシャツにリボンやネッカチーフでグループごとの差異を付けていたが、スカートを自由に選ばせる組もあり、意匠と色を統一する組もあり、選曲も含めてチームの色は出ていたと思う。
振り付けは未だ器械体操の域を出ないものであったが、揃えた動きを見せる努力は為されており、見世物として最低限のレベルには達していた。
段取りが上手く行かない間繋ぎで、濱野がなべおさみの「監督コント」みたいなことを始めるなど、イベントとしての組み立ては稚拙だったが、お披露目会の主眼は終演後のアトラクションにあったようだ。

中間搾取を排した持続可能なアイドルとして、どんな収益構造を考えているのかと思ったら、矢張り接客営業による回収であった。
メンバー手書きのメッセージの入ったリボンを手首に巻いてもらえる会と1分間で好きなメンバーに似顔絵を正方形の付箋紙に描いて貰える会がそれぞれ1000円。

濱野が提示した中で、唯一納得が行ったのはこの 「体験を換金するアトラクションによる収益モデル」
音の入った円盤やインスタントカメラで撮影した写真などではなく、手元に残るモノを可能な限り簡略化して「紙切れ・布切れ」に付加価値としての接触を付けて売る事により、取引がよりシンプルになった、「モノに仮託した思い出を売るメタ物販」。 体験を思い出す為のスイッチとしての、最低限のモノとしてのリボンと付箋。
この日、濱野が最も生き々々していたのはこの物販アトラクションの仕切りであったのだけれど、濱野が楽しんでいたのは、物販イベントの進行ではなく、メタ化した物販がうまく回っている現象そのものだったのかもしれない。

二十数人からなるメンバーは普遍的な美形から木喰上人系であったり天平美人であったり古代ケルトの豊穣の女神であったり未来派であったり、非常に幅がある。
客の多くは普遍的な美くしさ・可愛らしさを好むので、そうではない連中は当然お茶を挽く羽目になるのであるが、この「機会は平等にあるが結果の平等は保証されない正当な理不尽」は、理屈で解っても感情の面で受け入れられないことがままある。
そこで生ずる必然性のある淘汰をどう乗り越えるのか、また乗り越えないのか。
濱野は現実と正対することを極力避けているように思われるが、持続可能なアイドルとしての成否はこの辺りにも係ってくるとのではないかと、私は考える。

2014-06-12 [長年日記]

_ 更新情報

濱野智史プロデュースのアイドルグループ「PIP: Platonics Idol Platform」を観察するサイトを作りました。
とりあへずはカキワリ的に玄関のみ。

日本革命的濱野主義者同盟 革命的ハマノ主義者派(革濱同・革ハマ派)

興が乗れば随時更新予定。


2014-06-08 団塊向け政治的自慰雑誌にアイドルが取り上げられる不幸 [長年日記]

_ 週刊金曜日(2014 6/6号)(その1)

特集が「アイドルを守れ!」と言う事で購入。 図書館で済ませようかとも思ったが、買わないで貶すのもセコいなと思った次第。

特集を読む前に記事をざっと斜め読みしたのだけれど、或る程度金も地位もあり、勉強はしなかったがとりあへず大学までは出た、意識の高さについては自負のある中高年向け雑誌であることはわかった。 あらゆる揉め事が「ひとごと」に終始し、当事者意識のカケラも無い。 この雑誌の読者層が我が国を破滅に導いてきたことは明らかであるのだけれど、それについても全く無反省。
この雑誌の立ち位置を象徴しているのが「舞の海氏の「排外発言」記事についての見解」と言う編集長による署名記事。

「最大の差別・排外行為は戦争という殺人行為です。 日清戦争、日露戦争、太平洋戦争などで、多くの日本人や外国人が昭和天皇のために亡くなりました。 それを正当化する集会そのものが排外的な意味を帯びています。」

とある。

"行為"と言う単語を一文の中で重ねた悪文であるところからして物書きの風上にも置けないのであるが、日清・日露まで昭和天皇の責任に帰すると言うのは歴史認識以前の非常識である。
こうした乱暴な物言いをする編集長の雑誌にアイドルを語られる事も不愉快であるが、そこに寄稿してしまう・対談に出てしまう連中の政治性の強い媒体に対する警戒心皆無の無邪気さも気味が悪い。

特集記事の口開けはBiSのインタビュー。
BiSそのものについては語るべき何も持たないのであるが、アイドルに対して暴言を吐く手合いに対しての

「君のそのひと言で、ひとりの女の子の人生を失わせる可能性もあるんだよ?」

と言うのは重く受け止めたい。

「グラドル自撮り部」については、岡島紳士による状況説明と中心人物である倉持由香と吉田早希へのインタビューの2本立て。 岡島紳士の筆による部分は「アップトゥボーイが隔月刊化した」と言う一文以外、目立った事実誤認や歪曲は見られない。 アップトゥボーイは元々が隔月刊だったのだけれど、隔月増刊を発行して実質月刊化している。 然し乍ら所謂「グラビアアイドル」が掲載されることはあまり無いので、掲載機会が減少傾向にあるのは事実である。
倉持の自分が売れることによるシーン全体の底上げをと言う狙いは当たって、大手事務所に所属するアイドルも巻き込むことによってマスメディアにも取り上げられるようになった訳であるが、それ故に客も含めた既得権益受益層からの反発も顕在化した。 それでもこうして畑違いの雑誌にも取り上げられている訳であり、一定の成果は上げているように思われる。

さわやかによる「『接触』による活況が生み出した"触れないアイドル"の可能性」は、接客業に偏したアイドルによって齎されたジャンルとしての活況が、接客業としての側面を切り捨てた形でのアイドルとしての在り方を可能にしていると言う論考。
CD以降の未来も見据えた、読みでのある文章。

_ 週刊金曜日(2014 6/6号)(その2)

濱野智史の「アイドル共産党宣言」。 
「アイドル共産党宣言」と言いつつ共産主義的では全く無く、マルクス以前のフーリエやサン・シモンの性善説に基づく空想社会主義に近いし、引用も比喩も無いことから見て、共産党宣言でマルクスが何を語ったのか、おそらく濱野は知らないし、興味も無いのであろう。
因みにこの号の裏表紙広告は「経済と国家 宇野経済学を通して『資本論』を21世紀にどう生かすか」。
講師は向坂逸郎と宇野弘蔵の弟子である鎌倉孝夫と元外務官僚の佐藤優、講義2時間×3回で金弐万円也。 全ての講義が終了するまでに2年間と言うディアゴスティーニ商法。これに食い付く読者層に向けたアイキャッチとしての「共産党宣言」と考えれば得心が行く。
労農派の末裔が日本資本主義発達史講座みたいな事を始める21世紀に我々は生きている。

運営側による中間搾取をなるべくゼロに近付けた、搾取されないアイドルグループを実現したいとのことであるが、堅気ではない既得権益受益層との利害の対立も想定しているように見えないし、それらと向き合うことなく、摺り合わせる努力も無しに実行に移してしまおうとする厄介さはナロードニキ運動に通ずる。

結局のところインテリが主導する "上からの革命" であり、そうした地に足の着かない運動が繰り返してきた失敗の歴史からは何も学んでいないように見える。
濱野が痛い目に遭うだけなら未だ自業自得で済むが、巻き込まれた女の子たちの人生への落とし前はどう付ける心算なのであろうか。


2014-05-17 [長年日記]

_ あるある甲子園 東京1次予選-1(モエカワガールズ、PLC、メグリアイ、パステル☆ジョーカー)

開催前から物議を醸したイベントではあったが、実際現場で見ない事には何とも言えないのでとりあへず足を運んでみた。
会場の STAR RISE TOWER はかつての東京タワースタジオであり、ライブ会場としてはあまり使われていないのではないかと思う。
入り口に受付があり、そこで当日券を購入。 開演10分前に到着して整理番号が11と言う惨憺たる集客に驚く。

入場料+ドリンク代とのことであったが、ドリンクは無し。 開場時間になり、整理番号順に整列したのち、階下のスタジオへ移動。

大道具然としたものながらステージが設えられており、その両脇にスピーカーが重ねられて小規模ライブハウス的な空間をセットで再現した感じ。
積み重ねられたスピーカーの上にモニタースピーカーが置かれいてる。

約10分遅延して開演。 収録前提のイベントと言うことなのか、司会で吉本所属と思しき芸人さんが司会で登場。 イベント観覧に於ける諸注意と勝ち抜きのルールなどを説明。 この頃になるとそれなりに増えたのだけれど客の入りは悪く、主催者への不信感もあってか反応も悪い。 どうやっても盛り上がらないので苦労していたが、これは仕方が無い。

モエカワガールズ
原宿と秋葉原のメイドカフェが母体で、普段は「お給仕をしている」とのこと。
浴衣風ワンピースにローファー、帯の色がメンバーカラーになっている。
4人で一曲、もう一人出てきてその人がもう一曲(他のメンバーはマイクも置いてバックダンサーに)。
ここでグループ内ヒエラルキーが厭な形で見えてしまう訳であるが、その「特別なひとり」が衒いなのか照れ隠しなのか、告知をするにしても何にしてもテキトーな事を言っては横に居るメンバーがマイク引っ手繰ってフォローすると言う修羅場。
「かわいい」を鼻に掛けてしまった瞬間に全てが終わってしまうことを知らないで生きて来られたのであろう。

PLC
友人が入れ込んでおり、なるほど可愛らしく、曲もしっかり作りこまれている。
七色パニエを中に着たワンピースで、足元はローファー。 動きやすさと見栄えと価格を天秤に掛けると、落としどころとしてローファーなのだろうか。
6人中5人がセミロングのストレート。 見せ方としては美しい。
ただ、認知度を上げるために出てきた筈の投票系イベントで既存の客との馴れ合い前提の自己紹介を長々やるなど、ブロック経済的小規模収奪の構造に嵌っている悪循環が見られた。

メグリアイ
他が一曲演って自己紹介してもう一曲と言う流れなのに対して、二曲演ってから自己紹介と告知を纏めてやる構成。イベントの趣旨に合わせて練られているのは良い。 告知も直近のものに絞り、「詳しくは片仮名の『メ グ リ ア イ』で検索してください」と簡潔に。
惜しむらくは、このイベントが不特定多数のアイドルを見に来る祝祭空間としては機能しておらず、目当てのアイドルが出るので仕方なく見に来た客だらけであった事。
方向性としては正しい。

パステル☆ジョーカー
太陽系の端っこ系の色味のセーラー服衣装で、足元は矢張りローファー。 付け襟なのか踊っているうちに外れかけたりずれたりしてしまっていたが、目立つ所なので気になった。
歌の上手い下手はさておき、声の量と圧は4組の中で一番であったように思う。

総評
4組終わってほぼ一時間で終演。 一と組あたり二曲と非常に短い。番組で流すために「ライブやってました」と言う絵さえ撮れれば構わないと言う事なのであろう。 持ち時間の終わりに司会者との冗長なやり取りの時間を設けていたのも、その為であったと思われる。

呆れたのは物販。 千円のタオルと二千円のティーシャツが公式グッズとなっており、これの売上高が審査に反映されるとあって、それぞれそのグッズに接触権を付けて販売。 入場券には握手券が一枚付いてきて、それも投票権として扱われるとの事であったが、それ単体で行使できるような状況ではなかった。

小規模ライブハウスで行われているアイドル対バンライブの収益構造を明確化し、約款で呑めるか呑めないかギリギリの線を定める作業に血道を上げた結果、イベントとしての魅力を演出としてすら示せず、アイドルの送り手にも客にもソッポを向かれて鳴いた閑古鳥なのであるが、見捨てられても仕方が無い、淘汰されて然るべきイベントあることは間違いない。

別項にて述べるが、ムービーカメラは常に客席にも向けられており、司会者の客弄りは例によって「ヲタ晒し」。 
まあ、予想通りではあるのだけれど、送り手も客もあるある甲子園は無かったことにした方が良い。 ライブは2曲、空調も音響も悪いスタジオでヲタ晒しに遭うために千円払っても良い鷹揚な人にのみ、お薦めできる。

企画そのものについては別項にて。

_ 更新情報

コラム置き場に

あるある甲子園雑感

をアップロード。
出演者以外の、イベントそのものについての纏め。
うまく行っていない事への危機感を持っているスタッフと持っていないスタッフの温度差もあり、何故上手く行かないかについては結局誰も理解していないような、絶望的なお祭りであった。

_ 戦国アイドル無双 ~巡り会いの乱~

押上ワロップ放送局の「戦国アイドル無双」と言う番組を勝ち抜いたということで、ご褒美の特番。 椎名七海を除く全員が出演。 メグリアイの出演者変動の仕組みが、今もって分からない。

前半はアンケートやお題トークでメグリアイのメンバーの実像に迫る趣向。 進行役としてワタナベエンターテインメントのパイナップリンと言うコンビが入っていたのだけれど、これが良かった。
アイドルイベントの司会などでアイドルに興味も関心も無い芸人が入ると、その場しのぎの進行に終始することが多いのだけれど、事前に取られたアンケートも読み込んでいたし、それぞれが名札を付けていたというのもあるが、ちゃんと名前で呼んでいたり。 何処まで乱暴に扱って良いかと言うところでの戸惑いは多少あったが、媚びもせず粗暴に過ぎることも無く、上手く扱っていたと思う。
加入当初は仕切り癖が強くて如何なものかと思った野月まいだが、押し引きが上手くなっていた。 混ぜっ返しておいて他のメンバーに振ると、そのメンバーも生きるし、野月の印象も悪くは無くなる。
これまで誰もコントロール出来なかった山田渚を或る程度制御できているのも良い。

最後の30分はライブ。 進行表には無かったようだが、パイナップリンの二人はライブの呼び込みまでやってから捌けて行った。
8人中5人でライブに出ることが多いからか、5人以上出演する日でもステージの上には5人と言う事が多い。 今回もそれで、メンバーが入れ替わりつつ30分。
まだポカは多いし、動きにも情緒は無いのだけれど、白鳥愛花の振りが大きく早くなってきたので、大分見栄えは良くなった。 踵重心でドタドタ動いていた頃とは違い、爪先で立って踵を飛ばして動けるようになったのが大きい。 岡崎に次いで足が長く重心が高いので、自信を持って踊れば華がある。

驚いたのは佐々木澪で、暫く見ないうちに長足の進歩。 歌はまだ不安定な所も有るが、振り付けの、こと表現力と情緒については岡崎に次ぐところまで来ている。

メグリアイは新規加入のメンバーが何とかなってきた頃合でまた誰かが辞めて、次に入ったメンバーがどうにもならないうちにまた誰か辞めるという悪循環の中にあり、坂本寿里が辞めた頃が負の連鎖のピークであったように思うが、漸く上向いて来た。


2014-05-07 [長年日記]

_ フォトテクニックデジタル 2014 2月号

仙石みなみ
14ページ17カット、見開き1箇所。 撮影は松田忠雄。
グラビアの仕事も多くこなしている割に仙石みなみの表情が単調。 顔の構造上仕方が無いのかもしれないが、意識しないと口が閉じられない。
13ページから15ページまでの4カットと17ページの後ろ向きになったカット以外、全て口が半開きで、意図してかどうかは判らないが笑顔寄りの表情になってしまっている。
口を閉じきらないまでも開かないように意識したカットでは表情に諧調を出せているので、これまでそうした事が求められて来なかったのだと思われる。
指示されれば出来るけれど、自らはそれが出来ない。 反骨を売りにする割に、考える努力をしない。 これがアップアップガールズ(仮)と言うグループを私が評価しない理由の一つであり。 アップフロント傘下で成り上がることしか考えていないような「内輪受け」感がどうにも鼻につく。

閑話休題、前述の13ページから15ページに掛けての4カットはモデルとしての可能性を感じる佳品。 放っておくと同じ顔になってしまうのだけれど、それを松田忠雄が矯めつ眇めつして撮った過程をなぞりながら見ると面白い。

香音
6ページ8カット、撮影は長野博文。
前半の屋外撮影分は些か塗りが厚く見えてしまっているが、後半のスタジオ撮影分はそれなりに。 背景の緑はまさしく長野のそれなので、地の肌の色が浅黒いと長野マジックが逆効果になってしまうのかもしれない。

カールツァイス・ラヴァーかく語りき(松田忠雄インタビュー)
松田忠雄の語る、コシナが復活させた旧ヤシカ・コンタックスマウントレンズ群についてのあれこれ。

― ところで、お使いのツァイスはマニュアルレンズですけど不便なところはないですか?
松田「個人的には、オートフォーカスの測距点でピントを合わせてから、再フレーミングをするというのが大嫌いで、マニュアルしか使いたくないんだよ。だからそういった面では全然。鏡筒の"鉄"という感じとか、リングの感触もいいしね。
(フォトテクニックデジタル 2014 2月号、54ページ)


私の機材や撮り方では参考にならない上に不愉快になることすらあり、レクチュア系の記事は殆ど読まないのだけれど読み物として面白かったし、このくだりは大いに頷けた。
ファインダーさえ良ければマニュアルフォーカスの方がストレスが少ないこともある。
私は純正ツァイスが写り過ぎるので厭になり、メイヤー系レンズとノフレクサーしか使わなくなってしまったのだけれど、松田忠雄のツァイスレンズ評は概ね正鵠を得ていると思う。

高須力のライブ a GOGO!(LinQ)
相変わらず決定的瞬間狙いで説明的過ぎる写真が多いが、撮影場所を選べて何箇所かで撮ることが出来た所為か、臭いなりに上がりは悪くない。
ただ、ここからLinQのライブの楽しさがどんなものであるかは感じられないので、その点に於いてライブ写真としての大切なものは矢張り欠けているように思う。

_ フォトテクニックデジタル 2014 3月号

小島瑠璃子
14ページ19カット、撮影は上野勇。
体育館、スケートリンク、ゲレンデ。 動かしたり止めたりしてさまざまな表情を引き出している。
スケートリンクで転んだ体でのカットなどは臭すぎるが、表情も多彩。 可愛らしかったりきりっとしていたり、基本的に商売用の小島瑠璃子の顔をしつつ、時折それ以外の顔も出しているのが良い。
事務所の大きさもあると思うが、仕事が引きも切らずあるのは理解できる。

WHY@DOLL
6ページ13カット、撮影は長野博文。
スタジオで4ページ、屋外で2ページ。 肌が白くメイクも薄いことが幸いしてか、スタジオ撮影分は長野博文らしい透明感のある仕上がり。
撮られ慣れてはいない被写体を上手く泳がせて撮った屋外撮影分も良い表情。

高須力のライブ a GOGO!(WHY@DOLL)
引き続きライブの模様を4ページ6カット、撮影は高須力。
狙撃兵が白兵戦に巻き込まれて、まごまごして被写体との距離を測りかねているうちにライブが終わってしまったような虚無感。
そしてスポーツ写真から脱却できずに撮っているのでコントラストとシャープネス(シャッタースピードも)が過剰。 結局のところ、この人は何が撮りたいのであろうか。
長野博文の撮ったものと較べると何が過剰で何が足りないのかが見えてくる。 髪の毛の靡き方、肌の質感、表情の諧調、これらに無頓着。
結局この人は連載の中で読者に何を見せたいのだろうか。

_ UTB 2014 4月号

川栄李奈
表紙と巻頭グラビア12ページ11カット、見開き1箇所。 撮影は佐藤裕之。
生き物としての川栄李奈の愛らしさは十二分に引き出されているが、表情が一種類しかない。 それは無理をして作った表情が無いからでもあるのだけれど、作られたキャラクターに縛られ、消費されていく明るくない未来を暗示しているようにも思えた。
パンドラの匣の底に残された希望のような川栄李奈の笑顔が微かな救いにはなっている。

兒玉遥
6ページ9カット、撮影は桑島智輝。
色調からMARCOの撮影によるものかと思いきや桑島智輝。 何でも撮れてしまう事に改めて感心。 引きで撮った構図の厳しさは矢張り桑島智輝。
真ん中に立つこと、グループを背負うことを強いられる痛々しさが先に立っていたのが、全体的に大人びることで緩和されている。
前髪の分け目を少し横にずらすだけで、顔の印象は大きく変わる。 勿論、良い方に。

渋谷凪咲
6ページ9カット、撮影は小池伸一郎。
先ず感じたのは、怪我をし難そうな足であること。 AKB48グループは足腰の怪我で棒に振る連中が多すぎる。
表情が単調で、笑顔も未だ硬いのだけれど、カメラをきちんと見据えられているのは良い。

大和田南那
5ページ8カット、撮影は門嶋淳矢。
未だ撮られ慣れていない初々しさと、悲惨になり過ぎないぎこちなさが程よいバランス。
1ページ目と5ページ目。 小細工せずにカメラと向き合えているのは良い。

足立梨花
可憐と妖艶の狭間にあって、その両方を見せようとする試み。
体形の上でのチャームポイントは抑えつつ、「抑える」程度で済ませておく程の良さ。
役者仕事が増した所為か、表情にも奥行きと幅が出てきた。

斉藤優里
6ページ10カット、撮影は唐木貴央。
光の良く回るスタジオと公園の二本立て。
表情の諧調の乏しさはカラーコンタクトの所為であろうか、アップになると死んだ魚の目の如く。
UTBが手がける乃木坂46のグラビアは、練り上げられた質の高いものが続いてきたが、今回は残念な出来。
ただこれは、斉藤優里の無自覚に依るところ大。

中山莉子、小林歌穂、星名美怜(私立恵比寿中学)
6ページ12カット、撮影は桑島智輝。
撮られ慣れていない連中を束にして、ワイワイやらせて硬さを取った12カット。
小林歌穂が笑いすぎて破綻しかけているが、顔見世グラビアとしてはまあまあ良く出来ている。 

荻野可鈴
5ページ7カット、撮影は栗山秀作。
水着でもセーラー服でも表情に曇りやブレが無い強さ。
カメラともカメラマンとも臆することなく向き合えており、カメラマンもよくそれに応えている。
昭和の日本家屋、アパートの一室のような所で撮っても、適度な湿り気は感じさせつつ、じめじめさせないのが栗山秀作。

石田佳蓮
4ページ6カット、撮影は井ノ元浩二。
可も無く不可も無く、特筆すべき所も無く殊更貶す所も無い、それなりに良く撮れたグラビア。

若田部遥・指原莉乃
6ページ8カット、例によって指原莉乃とのページのみ見開き。 撮影は藤本和典。
どうしても父親の顔が先に浮かんでしまうところに持ってきて野球場でユニフォームを着せたりするものだから、何とも言えない出来。
これは藤本和典の仕事に係る部分ではなく、見る側の先入観の問題。
父の顔がチラつかないカットは可愛らしく撮れていると思う。

小桃音まい
2ページ2カット、撮影は桑島智輝。
漸くメジャーデビューと相成った小桃音まい、クシャっと笑った顔も良いのだけれど、今回は澄まし顔で2カット。

松浦雅
4ページ6カット、撮影は長野博文。
いつもの長野味。 動かしたほうが表情が生きてくる。

佐々木莉佳子
5ページ8カット、撮影は熊谷貫。
物怖じしない小学生とゴリゴリ迫るカメラマンが対峙した8カット。 熊谷貫を前に一歩も引かず、動物すら手懐けてしまう佐々木莉佳子の胆力。 後生畏るべし。

田名部奈菜美、羽賀朱音、船木結(ハロプロ研修生)
6ページ8カット、撮影は大江麻貴。
国策ポスターのようなインチキ臭い構図多めながら、撮られ慣れていないモデルをあやして表情は上手く引き出している。

中島早貴
6ページ8カット、撮影は小池伸一郎。
ハロプロ写真集のテンプレート通りの詰まらない作りながら、随所に小池伸一郎らしい背景の縦横線を生かした構図が生きているし、過剰に表情を作らない中島早貴の潔さが美しくもあり、出来としては悪くない。

Juice=Juice
この期に及んで白ホリの顔見世グラビア。
佐藤裕之の上手さが全く生かされておらず、論ずる価値も無い。
これは事務所がオタンコナスである典型例。

2014-05-06 金を取って撮るパンチラカメラマンの存在意義とは [長年日記]

_ フォトテクニックデジタル 2014 5月号

筧美和子
表紙と巻頭グラビア14ページ16カット、見開き1箇所。 撮影は樂滿直城。
撮影技術誌なので使用機材と撮影データが載る。 このページはEOS-5D MarkIIIを使用していて、当然レンズもキャノン。
白く飛んだ部分のスッコ抜け方がキャノンかな、とは思うが、然程気にはならず。 破綻の無い写り。
衣装は3パターン、髪のあしらいにも変化をつけていて(残念ながら表情や仕草の引き出しが少なく、モデルの魅力は感じないが)構図の切り方やポージングの多彩さは面白い。
編集の腕が落ちているのではないかと思わせるのが、写真の取捨選択の悪さと割り付けの凡庸さ。
値下げ前はもう少し攻めた誌面構成であったと思うのだが、ニコパチの詰まらない(これはモデルの所為でもあるが)カットを大きく使い、一寸捻ってモデルの表情を引き出したカットは扱いが小さい。

葵わかな
6ページ16カット、撮影は長野博文。
長野博文でなければ撮り得ない素晴らしいカットが二束三文の扱い。 反面、長野博文でなくても撮れるような凡庸なカットを大きく扱う愚。
大きくしないと良さの伝わりづらい写真を小さく扱い、小さくても見りゃ分かる写真を大きく扱う。 これは写真技術誌としてどうなのだろう?
買って貰えなければ、利益率が一定以上でなければ雑誌としての存続が出来ないのも分かるが、値下げした分誌面の質を落とすのはいただけない。
30~31ページに小さく並べられた写真群の質は良い。
雑誌のグラビアはカメラマンの腕だけでなく、編集者の審美眼や割り付けのセンス、事務所の思惑などにも大いに左右される訳であるが、それが撮影技術誌で起こるという悲劇。

松田るか
6ページ25カット、撮影は小林幹幸。
見開き→コラージュ見開きと言う構成。 少ないページ数でさまざまなカットを見せるにはこうするしか無いのは分かるが、もう少しページ数を割いても良いのではなかろうかと思える、コラージュに散りばめられた写真の質の高さ。
見開きで大きく使われているカットには必然性があり、その点でのバランスの悪さは感じないが、無理矢理詰め込んだ感じは否めない。

高須力のライブ a GOGO!(Cheeky Parade)
1ページ目上段、メンバーがジャンプしているところを下から撮影。 パンツ(とかそれに類するもの)が写っていないから掲載したのだと思われるが、そもそもその角度で撮ることからしておかしい。 矢張りこの高須力と言うカメラマンは駄目なのではないか。
寄ったカットは全てピタリと止めた決め顔。 ライブの写真で顔見世グラビアとは此れ如何に。
動いているものを止めて撮るのが上手いが、その日その時その場所でしか撮れないカットが撮れていない。

ただ、フォトテクニックデジタルの編集部の審美眼と編集能力が落ちている事も考えると、高須力にセンスが無い(アイドルという存在を見下している)だけではない詰まらなさなのかも知れない。


「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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