早めに着きすぎたが時間を潰せるような所は無い。
外をうろついてみるも余りに寒く、入り口に戻ると整理券の配布が始まっていた。
受け取って整列、しばらく待って開場。 番号順に入場し、近すぎず遠すぎず、全体を俯瞰できる位置に着席。
開演前の前説で携帯・スマホの電源は完全に切るようにお願いがあったが、まぁ聞いちゃいない。 良い年をした大人がそれを聞き流して弄っている。
案の定着信音がなる場面も。
例によって土橋亭の冗長な挨拶で始まる。
出演順はこれから籤引きで決めるとのことで、番号札の入った封筒を選ばせて中を改める。
錦魚、談奈、らく里で中入り。 ヒザでらく朝、トリは志ららの順。
サラ口は軽い噺を、中トリは中トリ、トリはトリらしいネタを遣るだろう的な事を土橋亭はパァパァ喋っていたが、手前ぇの人生が掛かったところでそんなことになる筈も無く、五人が五人大ネタを掛けていた。
このあたりからも企画としての雑さ加減が垣間見える。
一人目は義理でも二人目は良いと思った演者にとのお願いもあったが、二人目は義理のある演者に有利になるように入れるのが人間の
エゴと言うものであり、そうしたものと向き合った落語家の後継者が吐く科白でもなかろう。
「寝床」 錦魚
「井戸の茶碗」 談奈
「谷風情相撲」 らく里
<中入り>
「佃煮屋」 らく朝
「包丁」 志らら
「寝床」
義太夫に因んだマクラを振り始めたところでそれと察した客がざわつき、大根多が並ぶ会になることを覚悟する。
さら口で大根多と言うこともあってか始めは硬さもあったように感じられたが、尻上がりに調子を上げてサゲまで大過無く。
「井戸の茶碗」
細川の家来の筈が加藤清正の家来と言ってしまったり、細かいウッカリや仕込み違いなどはありつつ、そのあたりをうまく丸めて一席遣りおおせるところがこの人らしくあった。
ところどころで妙に現代に繋げるクスグリを入れたのは余計だったように感じたが、ベタな方が受ける真打ちトライアルの客筋からするとこれで良かったのかも知れない。
「谷風情相撲」
「佐野山」で演られる事が多いが、講釈由来の噺と断っていたので「谷風情相撲」としておいた。 相撲噺を十八番にしている文字助師もこれでやっていたと記憶している。
相撲の小咄のマクラで都々逸の後半が出て来ないハプニングもありつつ、そこは端折って先に進み、全体としては上々の出来。
中入りで
「あそこはどれくらい減点すれば良いんですかねぇ?」
「致命的ですよね。」
などとしたり顔で喋っている客が居た。 こうした本質の見えないバカでも審査員気取りでおやかってしまう。 客に評価を委ねると言うことは、こんな悲喜劇も生む。
噺が本筋に入って盛り上がるとマクラの些末な瑕疵はどうでもよくなる。 まぁ、それと分からぬようにウヤムヤにするのもうでなのであるが。
「佃煮屋」
心筋梗塞をテーマにした自作の健康落語。 「細かいことを気にしすぎずおおらかに暮らすのが予防になる」と言う教訓を織り込んである。
商社の食品部門の部長が心筋梗塞の発作で仮死状態からの臨死体験を経て江戸時代の佃煮屋の番頭に転生。
そこでおおらかに暮らすヒントを得る筋書き。主人公以外の役柄が希薄だったり、筋が刈り込み不足のところもまだあるが、これまで聞いた健康落語の中では出来の良い部類。
細かいところを気にしすぎる例として血液型の小噺。 マクラとは言え医者が疑似科学ってのはいただけない。
「包丁」
真打ちトライアルにあたって師匠から出された課題を真に受けすぎて萎縮していた感はあったが、前回今回と「らしさ」の片鱗くらいは垣間見られた。
小唄はまぁナニがアレだが、スラップスティックコメディとしてはそれなりの出来で、 酔った振りをして口説きに掛かって肘鉄を喰らう下りの馬鹿馬鹿しいやり取りに「らしさ」の片鱗は見られた。
このあたりを膨らませつつ他を端折るくらいに思い切ってしまっても良かったのではないか。
開票までの間繋ぎに理事3人(里う馬、談四楼、志らく)で講評めいたもの。 途中で演者5人を呼び込む。
当初「一位は無条件で真打、あとは状況によって」的な話であったが、5人全員十月一日を以て真打と言う事で決定したと発表。
満場の・・・かどうかは判らないが、大きな拍手が起きていた。
私も落としどころとしては良いと思う。 終演後に話した知己も概ね同意見であった。
「この日の一位は志らら、全6回の総合得点では らく朝一位」とのみ発表。 この日の2位や全得票全順位などは発表されず、 土橋亭がダラダラ喋って居るうちに時間切れと言う感じ。
最悪の結果は避けられたが、様々な禍根も残した訳で後味としては悪いトライアルであった。
山下、工藤が休み。
色々あった工藤も、なんとか高校を卒業できたようだ。 山下が何故休みなのかは、例によってよく判らない。
前半はネット配信するバラエティー番組の体。 「携帯早打ち」と告知してスマートフォンを持ってこさせておいて、身内即レス王選手権。
家族に感謝の言葉をメールなりラインなりで送りつけて、反応の早さと面白さを競う企画。 ドッキリでもこう言うものなら心が痛まない。
電話に出たメンバーの家族は昼間からきこしめしていたり、要領を得ない受け答えだったり、石橋哲也の乱暴ヨイショがそれなりに上手いこともあって面白く見ることは出来た。
ただ家族相手で間合いが測りにくかったのか、いつもと較べると石橋の踏み込みは浅く、生ならではと言えばそうなのだけれど電話待ちの時間が冗長。
後半はライブ。
選抜組とALLOVER組、アンダーで入ることの多い森崎あたりは動ける身体になってきており、アンダー出演の少ない連中との差が開きつつある。
高城はその容姿に磨きが掛かってきつつあるし、瑞野も聡明さが状況判断に生きているのだけれど、より場数を踏めている連中と較べると伸びが鈍く、客前に出る場数の差が舞台の上で振る舞う上での体力的精神的な余白の少なさに繋がってしまっている。
選抜組は靴までが衣装なのだけれど、そうでない連中は思い思いの靴。
だいたい黒のローファーなのだけれど、栗城は動きやすさと足首の保護を考えた白い靴。
ローファーでも黒ではなく茶色のものを選ぶ高城のセンス。
永瀬は踵厚めのスニーカー的なもので上背補正、牛島あたりと丁度釣り合う。
場数を踏めている連中は、試行錯誤をする習慣が身に付いており、(そうならないような準備はした上で)失敗を恐れず舞台に立てている。
ハウリングの兆候を感じると微妙にマイクを逃がす柚木。
北川や永瀬と較べるとALLOVERに入った事による上積みが見えにくい空井も、動ける身体にはなっている。 選抜になって自分のパートが明確になり、且つ休んだメンバーの穴埋めまで経験したことにより、ためらいのない歌いかたを会得。
元々気働きは良いので、それを生かせる精神的・体力的ゆとりが出来たのは、本人だけでなくグループにとっても良い影響。
空井は初芝清のように、衒いがないのが何より良い。
自己紹介は変則的に三列で。 一列目が濱野、橋田、柚木の三人で Triumviratus への以降なのかと訝しく思ったがさに非ず、生誕月のソロで演る曲の着替えが後に控えている為にこうなったようだ。
柚木はメロン記念日のThis is 運命、業の深さを感じる選曲。 客の多くよりも筋金入り。
濱野は中島美嘉のDear。
高音を無理に張らずに裏声で逃げるのも上手くなった。 頑張り過ぎないので聞いていて肩が凝らない。
栗城と森崎が組みで歌うと、ここ数ヵ月での「舞台勘」の差が現れていた。
栗城は学生時代のスポーツ経験とPIP以前の活動時に培った土台を生かしてはいるがそれ以降の上積みが少なく、森崎はチアリーディングの経験を最近のアンダー出演やメンバーユニットのプロデュースで応用出来るようになって本気で演る栗城と並んでも遜色無く歌い踊れている。
牛島のユニット曲でも出番のある森崎はそのまま数曲。
曲調もバラバラなのを見せ方を変えつつ、上手くこなしていた。
涙腺が途中で決壊してしまったのは御愛嬌だったが、北川は歌にも振り付けにも情緒が出てきており、良い育ちかたをしている。
泣いても身体は動いている。
栗城と牛島の最期屁のような曲、出来は悪くないが余計な煽りが興醒め。
誘惑のハートビートは、メロディーラインからの大幅な変更。
作曲者からのより歌いこなせるようにとの提案とのこと。
まだあやふやなところもあり、音源化までに安定させて欲しい。
これまでに無かった不快な点としては、メンバーが喋っている最中にもウィットの欠片もないガヤを入れ続ける無粋なのが居たのと、椅子の上を歩いて前に押し寄せる馬鹿がいたのと、盛り上がり同調圧力のようなものが働いていたこと。
感極まるほどの盛り上がりでもないのに特定の楽曲が始まると自動的に盛り上がり同調圧力が働いて無闇に肩を組んだりタオルを振り回したり左右に歩き回ったりラインダンスをしたりするような野暮は蒙真平御免りたい。
送り手の側は創意工夫をしているのに、客の側は創造力に欠ける他所の現場の手法の劣化コピー。
急激な客民度の低下は頭の痛いところではあるが、突発的なものである可能性もあり。且つ差し引きではまだプラスなのが救いと言えば救いではある。
散発的にメンバーが辞めていく最中と言うこともあってか、微妙に重苦しい空気もありつつ、顔を上げて前は向いていた。
駿河台下の交差点から程近く、再開発街区の手前にある小さなギャラリーでの写真展。
モノクロームのヌードなのだけれど、ざらついた粒感の強いプリント。
被写体もぶれたりボケたりしているので顔かたちなどは判然とせず、美しいが淫靡ではない。
そして銀の絵の具で何やらフランス語の箴言めいたものが書きつけてある。
「ブレ」「ボケ」「ざらつき」
いつか来た道ではありつつ、今これをやる事に意味を見出したのであろう。
被写体以外は漆黒の中に在り、銀塩の頃はこの黒が出せなくて苦労したのであるが、反面プリンタ出力のベッタリとして階調のない黒からは「黒と灰色の間の黒」や「黒より黒い黒」を目指して現像液の中で印画紙を撫で回しながら仕上げた呪術的なプリントから漂う妖気のようなものは感じられず、かつては出来なかった事が出来るようになり出来ていたことが出来なくなる。
その中で抜け落ちてしまったものを補完しようとする意図で書き連ねられた文字列なのかもしれない。
私の好きな写真とは対局にあるプリントでありつつ、嫌な感じはしないし見応えもある、そしてとても疲れる写真展であった。
銀塩からデジタルに移行してどう写真と向き合って行くのか、それを突き付けられたような気がした。
コラム的な何か
「野に放たれた戸島花の首に鈴を付けた日本棋院に感謝するの記」
「立川らく朝「錦鯉」考」
を更新。
マラソン渋滞に嵌り、一席目の途中で入場。
「道具屋」談奈
「歌うスタンダップコミック」寒空はだか
(略)
「明烏」錦魚
仕込み忘れたり言い間違えたところは流してしまっても良いのだけれど、仕込み直したり自虐的に敢えて触れたりする談奈さんらしい寝技たっぷりの一席。 出来としては良くないのだと思うが、悪いなりになんとかする時の妙味。
はだかさんはハズレが無い。 確実に客を楽しませて降りる。
錦魚さんの「明烏」は間が良かった。 客をグイと引き付ける。
不愉快な事の方が多い真打トライアルではあるが、やらざるを得ない状況を作る事で出来た伸び代を感じた。
青山の、平日はカフェになっているスペースを借り切ってのイベント。 閉館したベルコモンズが廃墟化しつつあるが、街の雰囲気も多少変わったような気はするが、並びの立ち食い蕎麦屋は健在だった。
雑居ビルの7階にあるカフェは如何にも青山のカフェと言った感じのしつらえで、下町の人間には些か居心地が悪いが、営業日では無かったのが救い。
白井と高橋が病欠、姫川は受験期間中と言う事で金沢と四宮のみの出席。
公開英単テストやアイドル時事ネタ討論会などの合間に歌が挟まる格好。 風邪が本復していない四宮は咳込みがちだったが、ふわふわした口調でのんびりと平和に喋るのが面白い。
撮っても良いとのことで、四宮中心に。
身に纏った空気がアイドル。
姫川が途中から参加。
受験の結果待ちでニート状態に在ると言う姫川だったが、やはり場数が違って飛び入りで踊っても動きの質が違う。
歌はほぽ゛金沢が支える形。
試行錯誤が上手く行っていない部分はあるけれど、面白さ楽しさとは対極にある「受験」を有意義なものにしようとする企画意図は買える。
今後も足を運びたい。 次回は3/21(土・祝)とのこと。
栗城、瑞野、山下が休演。 PIP京都から安斉が来演。
イレギュラーな公演と言う事もあり、送り手側がリハーサルで手一杯らしく、客が自主的に整列したりさせたり。 統制されないが故の横紙破りをするような手合いは今のところ居ないので平和裏に入場。
舞台中央に何やら棺状のものが置かれており、ヴァンパイヤだと言い張る羽月の門出に因んだ演出がなされることが分かる。
何やらおどろおどろしい曲で開演。 やろうやろうと言いつつ出来なかったハロウィンにからめた演出で幕開け。
血みどろのネグリジェに球体関節ストッキング、背中には天使の羽を背負い切腹した塩冶判官みたような青褪めメイクで口の周りを血糊で汚した羽月が棺桶から出てきて歌い出し、曲の途中からは最初期のチーム分けで出来た所謂「Babyチーム」の連中も仮装で加わる。
この辺りも含め、羽月の最後っ屁と言うか、好きなことを好きなだけやらせた、纏まりは無く冗長だがのんびり楽しめる新富町時代のような公演となった。
前半は羽月の持ち歌をユニットも含めて持ってけドロボー式に蔵浚え。 小林希望と「てもでもの涙」、濱野舞衣香と久しぶりに「ライオン」など。
中盤は選抜組によるオリジナル曲多め。 予約受付が深夜にずれ込んだことによる偶発的事故により前の方で見られたので何時もとは視界が異なり、細部に目が行く。
選抜の衣装はそれぞれの管理に委ねられているらしく保管状態にも個性が出ていたが、アイロンの設定温度が高すぎるのか、テカりが出てしまっていたのが気になった。 既製品ならタグに素材と選択の仕方やアイロンの推奨温度が記載されるが、誂えだとそうも行かないし、素材も組み合わせて作られているので扱いも難しいのであろう。
これに限らずなのであるが、石川野乃花の自負心の強さ。 「ちゃんと(しゃんと)しよう」とする意識の強さが空回りしている。 状況や立場からしてそうせざるを得ないのも解からないではないが、ちょっと肩肘を張りすぎているように思える。
これは石川の置かれた立場上必然的に起こり得る事態であり、補佐職の働きでのみ緩和できるのだけれど、これもまた難しい。 忍従の時なのかもしれない。
「僕を信じて」で小室の靴が脱げるハプニング。
何食わぬ顔で一曲務めおおせたのは良かったが、舞台上に靴が在り続けたので気を揉んだ。
出来れば本人若しくは気づいた人間が端に寄せるべきなのであるが、そこまでのゆとりはまだ無いようだ。(この手の事はAKB48の小林香菜が目ざとく、処理も上手い)
入れ替わり立ち代わり目の前にメンバーがやって来るのだけれど、同じ振付けでも柚木だけ桁違いに情報量が多い。
誘蛾灯の様に目が引き寄せられ、植芝盛平翁の空気投げの如く「柚木が見た客」ではなく「柚木を見た客」が投げ飛ばされて行く。
以下、散文的に雑感など。
泣かないと決めたら意地でも泣かない橋田。
身体的辛さや感情の乱れを意志の力で抑え込んで平静を装い切る。 Triumph des Willens.
その中で見せる「揺らぎ」に惹きつけられる。
「誘惑のハートビート」の濱野舞衣香ソロパートは大分聴けるものになって来た。
これが歌いこなせれば表現の幅はかなり拡がる。
ALLOVER兼任組に目を見張る進歩。 特に北川が良い。
これ迄意識してやっていた事が無意識下で出来るようになり、その分視野が広がっている。
側頭部で二つ縛りにした柚木。 後頭部の髪の分け目がジグザグになっており、石川の手によるものと思われるが芸が細かい。
こうしたヘアアレンジのセンスには毎度唸らされる。
羽月あずさがなぜ辞めるのかについては最後まで具体的な説明が無かったが、濱野舞衣香が読んだ送辞的な手紙の中で昨年の晩秋には決めていたようなくだりがあり、辞めることを決めた時期だけは分かった。
辞めるに至った経緯について触れられず、もやもやしたまま卒業の美名の下に送り出して感動してしまうところに私は違和感を抱くが、もっともらしい嘘を語らせないところも濱野智史の流儀なのかもしれない。
石川の表情が公演を通して硬く、羽月の件以外にも何かありそうだとは思っていたが、最後の最後で牛島千尋から3月末で辞める旨発表。
濱野智史のツイートで撮影可であることを知ったのが17時過ぎ。
そこから自宅に蜻蛉返りして押っ取り刀で押上へ。
着いたころには佐藤遥生誕祭も終盤。
PIP と notall で20分ずつのライブ。 まずはPIP: Platonics Idol Platformから。
羽月と濱野がお休み、アンダーで森崎が入る布陣。
初めは固まった笑顔だった森崎の表情も次第に和らぐ。 曲に合わせて表情に変化と諧調を付けられるようになると、選抜メンバーとの差も埋まって行くと思う。
やるべき事をやった上で周囲に目をやるゆとりが持てている福田。 高いレベルで安定。
濱野が休みで難しいソロパートのお鉢が回ってきた空井。 予想以上に歌いこなせていた。
20分の持ち時間を借り物の歌は一曲だけで乗り切れるようになり、なんとか他所へ出しても恰好が付くようになって来ている。
ライブハウスでの出番毎の客の譲り合いの延長線上での振る舞いなのかもしれないが、PIPのライブが終わったところで席を立つ手合いが多かったのには驚き呆れた。
こう言う場合は主催者を立てて最後まで見て行くのが礼儀と言う物であろう。
後半は notall 。
一曲目が「学園天国」でどうなるかと思ったが、あとはオリジナルで押す構成。
撮りやすくて絵にもなる。 思わぬ拾い物。
定時で逃げ出しても着くのは七時前。 一人目の途中からこそこそと入場。
「片棒」志らら
「蚤のかっぽれ」らく里
「妾馬」錦魚
<中入り>
「鮫講釈」談奈
「錦鯉」らく朝
「片棒」
前述の通り途中から。
お囃子や手古舞のあたり、端折らずにやった上で混ぜっ返したりしていたが、些か中途半端。
もっとぶっ壊してしまってよいと思うのだけれど、真打ちトライアルとなるとやりにくいのか、お題を課した師匠の意図を汲みあぐねているのか。 前回より肩の力は抜けており、楽しんで見られた。
「蚤のかっぽれ」
ネタ下ろしからなんだかんだで三度目だが、これまでで一番の出来。
コンサートホールで返りが良いからか、唄も伸び伸び。 かっぽれの所作も付け焼刃ではないので実に良い形。
蚤の子供と杯の遣り取りをするのが馬鹿馬鹿しくも面白い。
マクラの危険球気味のクスグリが野暮な客に蹴られた感じもしたが、そこはセコな客だったと言うことで。 出来としては非常に良かった。
「妾馬」
二月になってしまったが、おめでたい話。
軽くて、様子が良くて、明るく楽しい。
あやふやな部分などもありつつ、上手く丸め込んで演っていた。 良いものを見た。
客席の沸き方は今日一番。
「鮫講釈」
中入りを挟んで空気が変わったところで、マクラを振らずに噺へ。
この噺のどのあたりでどうウケるかでその日の客のスノッブ度が測れるのだけれど、今日はお寒い感じ。 修羅場読みも立て板に水と言う感じではないが、淡々と。
あぷなっかしいようでいて、なんとかなってしまうのが「らしく」あった。 客がずるずると巻き込まれて行く。
一席終えて「縁かいな」。 踊りも綱渡り。
扇子の先が小刻みに震える様に真打トライアルというものの重圧を見る。
「錦鯉」
糖尿病をテーマにした自作。「抜け雀」「宗珉の滝」「景清」あたりからの掴み込みで筋を作り、粗食をして身体を動かせば糖尿は改善すると言う教えを織り込んである。
脈絡なく登場人物が出入りし、複数の話からの掴み込みによる矛盾もあって全般的に冗長。
糖尿の進行による手の痺れを治すために日参した川崎の宿の外れの観音様が実は子宝観音だったと言うのが落ちに繋がるのだけれど、子宝を授かるためなら妊婦は通わないし、安産祈願なら授からない悩みの人は通わない。 そのあたりがどっちつかずで描けていないし、観音様を「神様」と表現するのもおかしい。
兎に角、話が練れていないし刈り込んでもいない、言葉も撰べない。 実に長い弁当幕。
そうなると俯く客が増える。 頭の上をやり過ごす「寝床」のような状態。 鼾すら聞こえた。
回収して開票・集計する間、志らく師が出てきて講評・・・のようなもの。
途中で集計終了の太鼓がドドンと鳴り、結果発表。
一位 らく朝、二位 錦魚。
落語立川流は今日死んだ。
客が殺した。
ミサワホームの主催する建築関連のシンポジウムにゲストとして濱野智史、PIP: Platonics Idol Platformも出演と言う事で新宿へ。
参加申し込みから当落の発表まで間があったので家を買いそうもない私のようなルンプロは足切りされたのかと思ったら、当選のメールが来ていた。
企画の詳細はこちら
全体の流れを記録したブログ → 「アイドルと建築」シンポジウムに参加!(空き家の活用で社会的課題を解決するブログ 1/31更新分)
建築家二人のプレゼンを受け、濱野が「プラットフォーム」「アーキテクチュア」と言った共通項からテーマに沿うような話に持って行く流れ。
場に札が揃ったところでPIP: Platonics Idol Platformによるライブ。 腹の探り合いめいた緊張が一気に和み、元々アイドルが嫌いでは無いと言うか、建築家二人も嵌った経験があったり現在進行形で嵌ったりしている事もあり、具体例が示されたことで話が一気に膨らみ転がって行く。
アイドルと言う存在は、人生の一定期間限定でそうした状態に在る謂わば仮設建築のようなものであり、「アイドルと建築」から私が想像したのはアルベルト・シュペーアが「廃墟価値の理論」として主張した
「千年後にギリシャやローマのような美しい廃墟となるよう建築するべき」
であったり、立原道造が「方法論」に於いて記した
「すべての建築は結果において廃墟となる。ゆえに建築は廃墟になることまで想定して構築されなければならない」
であったり、二次利用出来ない記念碑的公園的なものだったのだけれど、坂東幸輔が示した空き家再生による地域活性化とそれを踏まえた濱野のアイドルのセカンドキャリアについての展望はアイドル時代に培ったものを違った形で生かす具体的な手段まで考えており、内定を蹴ってアイドルとしての人生を選択した空井美友の就職活動経験談も含めて、従来型のキャリアパスが崩壊した社会で生きていく道を示すものとなっていたように思う。
「空き家・空き店舗を利用したアイドルによる地域おこし、アイドルを育む街づくり」のようなものは酒田のSHIPを嚆矢としてさまざまな場所で生まれてきたが、現在に至るまで大成功とまで言えるようなものは出ていない。 RYUTistなども好事家層の評価は高いものの、一般的な認知はまだまだ。
坂東幸輔が徳島で行っている空き家再生による地域おこしが過疎を食い止めるのではなく、軟着陸させる方向に持って行くものである事、地域に根差した活動で一定の評価を受けているアイドルは地元にも客を呼べている事などから考えると、目標設定次第でやりようはあるのではないか。
当初カバーも取り混ぜて7曲と告知されていた PIP: Platonics Idol Platform のライブは音響トラブルもあってオリジナルの4曲に変更。
音響トラブルへの対処などで濱野が飛び回っている間、柚木や石川が繋いでいた。 やはり只の鼠ではない。
マイクが2本しかなかったり、オケの音が聞き取りにくかったり、セットリストがいきなり変更になっても対処できるあたりに進歩が見て取れる。
石川野乃花(PIP: Platonics Idol Platform)
この他の写真はこのあたりに。
カメラはいつものK10D、iso=400で開放。MC JUPITER-9 85mm/f2にて撮影。
85mmの距離感がどうも合わずに放置気味だったのだけれど、デジカメに移行してから1.5倍になって感覚が変わり、久しぶりに引っ張り出してみたら意外に撮りやすく、色のりも好み。
ライブをプリセットとか手動絞りのMFレンズで撮るからそうなるのだけれど、背後の光源に惑わされてAEが機能しないとシャッタースピードもマニュアルにしてしまい、デジカメなのにフルマニュアルで撮る羽目になる。
碌でもないカメラをとっかえひっかえ使って勘露出で撮ってきた経験が意外なところで生きている。
例によって金曜夜十時に予約スタート。 疲れて寝てしまって気が付いたら朝、慌てて予約を入れたが71番。 予約枠は埋まってしまっての立ち見も覚悟していたが、思ったより伸びていない。
入場待機列が作られる頃合いに足を運んでみたが、思っていたより更に少なく、するすると入場。
椅子席後方は埋まらないまま開演。
前半はバラエティー番組としてネット配信を一時間。 司会はカオポイントの石橋哲也。
ちょっと早めにメンバーを呼び込んで前説など。
山下緑がインフルエンザで、濱野舞衣香がよんどころない家庭の事情でお休み。
バラエティ部分は新春かくし芸大会のボツ根多供養で瑞野の書初め(山下が指定した謎の文言を書いたもの)の披露などのあと、実在のテレビ番組のそれに似せたアンケートをメンバーに書かせ、それを元にメンバーの人となりを暴いていくようなドッキリ企画。
人間性クイズ的なものでありつつ、為にする不幸めいたところは無く、へらへら笑って楽しめた。
最後に一曲演ったのだけれど、豊栄のところに澤村。
これまでアンダーで入った際には紺のポロシャツ着用だったのだけれど、選抜衣装で出てきたので軽く驚くもこの時点で説明はなく、次点繰り上がり当選で選抜昇格なのだろうなぁ、となんとなく納得。
柚木や小室、小林など、それぞれの髪の長さ・髪形に合わせて編み込み。 これは良かった。
スタイリング剤で固めると艶が無くなるので、踊って邪魔になる場合はこんな感じで纏める工夫をした方が見栄えが良い。
柚木は元の髪質も良いのだと思うが、綺麗な黒髪を保っている。
ライブ前半はオリジナル曲で畳み掛ける構成。 豊栄パートには前述の通り澤村が入り、急きょ休みになった濱野の穴は永瀬・森崎・瑞野あたりが順繰りに。
瑞野は止め撥ね払いが美しく、振りの独自解釈控えめ。 常に身体の正面で打球を処理するような堅実さで、アンダーとしては良い仕事。
4曲目のオリジナルである「誘惑のハートビート」は、曲としては好みなのだけれど、まだ一寸バタバタしている。 練れて来つつはあるので、外で勝負する際にはキラーチューンになり得るのではないかと思う。
選抜の筈の羽月はこの曲では出番なし。 「体調不良が長引いたので振り入れが間に合っていないのだろう」と、この時点では軽く考えていた。
ユニットコーナーは「スカート、ひらり」(福田、空井、柚木、橋田、小室)から。
小室はスカートの翻し方が控えめで、初期チームAの趣。
前田パートの橋田は、少なくとも2005年当時の初期型前田敦子よりは出来ており、三段論法的に考えるとキリストも超えていた。
空井は歌も振付も初期型小林香菜に近く、見ていて和む。
やる気に満ち溢れた柚木、「華のあるコマタニ」。
「キラキラ冬のシャイニーG」(工藤)、ハロプロ流れの客は殆ど居ないと見えて、ここでぐっと冷え込む。
曲の選び方としては悪くないと思うし、神聖不可侵扱いだったハロプロ楽曲を自分なりに歌いこなそうとする気概は買える。
森崎の選曲と振り入れ(おそらく、と言うかそうとしか考えられない)で「GO!!MY WISH!!」(永瀬、牛島、森崎、北川)。
この辺りの渋好みの曲を持ってくる森崎の該博な知識はこの先も生かして欲しい。
「愛のために。」(栗城)。 間奏でチア風のダンスを入れるなど、自分の色を出す工夫はしている。
濱野智史と澤村が出てきて、選抜衣装の件について遅ればせながら説明してから「やさしくするよりキスをして」
澤村の任には合っていた。 しかしキングレコードの「○○風楽曲」はどうしてこうニセモノ感が強いのか・・・
瑞野が出てきて引き続き「高嶺の林檎」(澤村、瑞野)。 澤村の振りにオカズが増えているのが瑞野との対比で分かる。
「てもでもの涙」(小林、羽月)、濱野が休みで小林なのかちょっとちぐはぐな感じ。 噛み合わない。
1月の生誕コーナーはリーダーの石川。 色々と踏ん張りどころではあり、祝祭感はありつつも年頭にあたっての決意表明の趣。 私は東京の周縁部で生まれ育った根無し草であり、最早人生に目標も目的もないので石川や工藤のように目的を持って上京してきた人たちの心持は判らないのだけれど、そうした人々の滾らせる情念を暑苦しく感じつつも忌避まではしなくなったのは我ながら良く判らない。
「たんぽぽの決心」でライブ本編は終了。
メンバーが捌けても、客席は静まり返ったまま。 encore を促す拍手が小さく始まると、撥ねっ帰りか泡喰って「アンコール行くぞ」と間抜け声。 ヘゲモニーの取り合い、腹の探り合いの醜さ。
アンコールなんざ「もっと見たい」と思った客が手を叩くなりなんなり意思表示をして勝手に始めれば良いものであり、特定の客が胴間声出さないと始まらないような野暮な習慣は犬にでも食わせた方が良い。 実に下らない。
アンコール一曲目は、まさかの「スカート、ひらり」(福田、空井、柚木、橋田、小室)。 石川の着替えの時間を取ったのだとは思うが、2015年に「スカひら二回廻し」を見るとは。 長生きすると、偶には面白い事もある。
2005年から2006年にかけての時期にAKB48劇場に出入りしていた知己と終演後に話したのだけれど、概ね肯定的評価。 「誰が成田枠なのか」と言う話にもなったか、そこはまぁ掘り下げないことで意見が一致。
閑話休題、アンコール。 二曲目の「選ばれたから」で小室が泣き出してしまい、羽月も声を詰まらせてすべてを察する。
「坑道のカナリア」である小室は、感情の揺らぎがそのまま出る。 泣き顔はくしゃくしゃで美しくはないのだけれど、その泣きっぷりの良さで赦せてしまう。 可愛くないが故に可愛い。
羽月からは二月十一日の次回公演を以て辞める旨発表。 理由については語られなかったが、辞めざるを得ない事情がありそうなことは伝わった。
「僕を信じて」で終演。
ジュネス☆プリンセスの枠はお休みで、特番扱いで「アイドルが語るアイドル」なる企画から。
notall から2人、loop から2人、PIPから石川、工藤、小室、濱野、森崎、柚木。
司会はデコ隠しが自然になったカオポイント石橋哲也、アシスタントに北川萌絵(PIP)。
「俺の嫁 Best 3」「2015年 大注目アイドル」などのお題に対してスケッチブックに書いた(描いた)答えを石橋が拾って行く趣向。
石橋からツッコミが入っても、指原莉乃を「さしはら」と呼び続ける北川。 その気持ちはわからないでもない。
トピックとしては「Nゼロにも行く小室」「Jewel Kiss について熱く語る柚木」「熱く語りすぎてもはやなんだかわからない森崎」「バックヤードでカレーを食べている田中れいなに出くわして号泣する工藤」など、アイドルである以前に客としてめんどくさい話に引き笑い。
CM中も仕事に徹する事の多い石橋も、珍しく笑顔を見せるなと、思いのほか盛り上がった30分。
森崎は引き出しが多く、大抵のアイドルの話題には噛んで行けるものの、語彙が少ないので話が単調になりがちなのは惜しかった。
アシスタントとしてはあまり役に立てていなかった北川ではあったが、「弁慶仁王立ち」の体でツッコミ待ちの森崎をバッサリ斬り捨てていたのは良かった。 次に繋がるぶった斬り方であった。
PIPの枠は「かくし芸大会」。 年末に募って名乗り出たメンバーが準備してきたものを順に披露。
出演はしているものの「かくし芸大会」には出ないメンバーも当然居り、そこは石橋が適宜引っ張り出して見せ場は作っていた。 このあたりが、上手い。
空井の「五十音何でもロッテあるあるで返す」が良く出来ていた。 パ・リーグを或る程度知っていればロッテファンではなくても分かる程度に抑えつつ、空井なりの観点から短く纏めており、慶應三田会のイベントで脊山麻理子からダメ出しを喰らった冗長で月並みな部分を修正。
森崎と柚木は「ヲタ芸」(と巷間で呼ばれているもの)。 曲のイントロが流れるやサイリウムを折り、歌い叫び踊る。
膝にサイリウムを叩き付けて折り、髪を振り乱して踊るさまはさながら連獅子。 柚木の迸る狂喜に驚き呆れ笑った。
濱野舞衣香は「五十音何でも『さいたま郷土かるた』で返す」。 仕込んだのか偶然なのか、秩父に絡んだものばかりが出てきてしまい、それを澄ました顔で朗詠するさまには妙な可笑しみがあった。
柚木を誘ったもののフラれた北川は、無謀にも本職の石橋と漫才。
漫協の(と言うか大学のと言うか)先輩の根多フォーマットで組まれた台本で、ボケる北川に適宜そして容赦なくツッコむ石橋。 既に練り上げられているフォーマットがあり、プロが合わせてくれていると言うのを割り引いても、北川の視点と切り口はなかなか面白かった。
オリシナリティはありつつ芸としての練りこみは無かった高城・澤村の漫才、練り上げられてはいるがコピーの域に留まる橋田と永瀬のコント(らしきもの)との対比。
途中入場でアイドル諜報機関LEVEL7の半ばから。 星野瑞映のいるchoice?を久しぶりに見た。
PIPは風邪っぴきが多く、何人か休演。 小室の前髪が額にペタリと張り付いてカールしており、漫画トリオ時代の横山ノックに酷似。 パンパカ感。
今回はPIPに因んだ題での大喜利企画。 「わかんなーい」「できなーい」的なダレはなく、考え・喰らい付いていくのは良いし、考えたことをやり切る姿勢も良い。
フリップに書く為のマジックの蓋が固く「あけれなーい」と羽月。 こともなげに開ける牛島。
小林は細かくお洒落で、わかりにくくチョーカー着用。 山の手より西東京寄りの洒落乙感。
最後に一曲「僕を信じて」。
中学生は出られない時間(出演時間はぎりぎりだが、そのあとの物販がネック)なので、センターの橋田ポジションに福田。 出来としては良くなかったが、やり切っていたのは矢張り良い。 PIPに於いて濱野智史が徹底させている仕事に対する規範意識は、この先どんな仕事に就いても生きて来ると思う。
歌い終えて唇を噛み、表情が翳る福田。 それを引き摺らないのも美点だと思う。
休演・代演で心太式に選抜曲に出る牛島。 物に動じないようでいて、しくじると顔に出るのが面白い。
仕事帰りに受験生アイドル「スタディスターズプロジェクト」のクリスマスイベントへ。 スタディスターズプロジェクトについては、、こちら参照のこと。
内容は
・金澤希美の誕生日祝い
・各メンバーの学習記録tweetに関する検証
・各メンバーの学力、アイドル力分析。期末テストの結果。
11/10~12/21まで、メンバーのツイートは勉強に関することのみに決められており、そのルールに基づいてどんなツイートをどれくらいしたかを検証。
親に携帯を取り上げられてツイートそのものが出来なかったり、私的なことをツイートしたりした件について追及する主催のコムラ氏。 それにメンバーが反論したり、言い訳にならない言い訳をしたり、逆ねじを食らわせたり。 新卒の担任が女学生に翻弄されるさまを見るのは、親戚の授業参観に行ったようで微笑ましく。
2時間のイベントではあったが、メンバーは口々に「短かった気がする」
そこでハタと思い当たるコムラ氏。 普段の自習イベントは朝から夕方までの半日工程なので、2時間と言えば普通のアイドルの現場なら長丁場なのだけれど、相対的に短く感じてしまうと言う事らしい。
イベントはライブを交えつつ、受験生アイドルらしく志望校や将来の夢についての話など。
高校三年の頃には夢らしい夢も持たなくなってしまっていた自らを省みてどんよりしつつ、具体性があったりなかったりする夢らしい夢の話を聞く。
リーダーの工藤だった杉崎が辞めてしまったので、白井がリーダー四宮が副リーダーに就任。 引っ張るより支えられるリーダーとのこと。
ライブでやる曲は主催者の趣味で二期 Tomato n'Pine なので、客は完全に鑑賞モード。 静かに聞いて歌い終えたら拍手する発表会形式。
客はおとなしい受験生と大人なので、実に牧歌的。 絵に描いたような平和。
割と居心地の良い現場でも、一度や二度は不快な瞬間は訪れるものなのだけれど、スタディスターズプロジェクトには例外的にそれが無い。
湧き立つような興奮を伴う楽しさではなく、穏やかで心地よい空間と時間。 精神の半身浴。
インフルエンザなどで小室、羽月、高城、栗城が休演。 PIP京都から3人来演。 そして珍しく山下。
体調不良休演率の高さには、濱野も苦慮しているようだ。 無理をさせるのではなく、風邪予防について考える濱野。
前半はバラエティー番組としてネット配信を一時間。 司会はカオポイントの石橋哲也。
「紅白対抗胸キュン合戦」と題して、客から投稿された告白シュチュエーションをチーム対抗で。
メンバーの人となりを踏まえた投稿は総じて質が高く。 メンバーのやり切る姿勢も相まって楽しめた。
後半は辞める御坂に絡めた客の持ち込み企画。 これが酷かった。
持ち込み企画でも公私の別は付けるべきであり、板に上がったら「仕事」をしなければならないのだけれど、それが出来ていない。 石橋や濱野の司会者としての振る舞いを見ていれば当然分かる筈の基本的なモラルが欠如しており、メンバーを苗字ではなくニックネームで呼んだり、無駄に早口であったり、正面が切れなかったり、時間配分を考えられなかったり。
まだ青い 素人浄瑠璃 玄人がって 赤い顔して 黄な声を出す
蜀山人が五色で詠んだ狂歌があるが、まさにそれ。 玄人気取りで素人以下だからタチが悪い。
出来なければやるべきではないし、やるのであれば出来なければならない。 少なくとも出来るように努力はすべき。 それが欠片も見られない業界人ごっこみたいなのは真平御免蒙る。
グッダグダになりかけつつ、要所要所でカオポイント石橋が助け舟をだして何とか纏めてから後半のライブパートへ。
羽月と小室の休演で空いた選抜の穴には澤村と永瀬と御坂。
華はないがそつなくさまざまなパートをこなす永瀬、兎に角試合を壊さない。 アイドル界の中井康之。
工藤と柚木が並ぶと、その振付の解釈と咀嚼の違いが際立って面白い。 主張する工藤と解釈させる柚木。
配信専門とはいえ放送局なので、ライブの音響に関しては畑違いで拙く、曲出しのタイミングが悪かったりマイク音量のバランスが悪かったり。 ワイヤレスマイクの電池が切れているというのはそもそも論外なのであるがそれはさておき、ハウリングが激しく、兆しの音がしても反応できずに収束が遅れるのはいただけない。 いっそ濱野がやるべき。
歌って踊るさなかに、時折沈思内省する豊栄。 魔法が解けて(解いてしまって)可愛くない顔になってしまうところが愛らしい。
振り付けに情緒が出てきた北川。 それは良いのだけれど、客席を大掴みで見られなくなってしまっていて、自分の客だけに濃厚なサービス。 これはよろしくない。
12月の生誕コーナーは人数が多いので4人で2曲。 クリスマスっぽい赤と白の衣装。
空井のおどろおどろしい歌唱と暗黒舞踏風味のダンスが楽しい。 飛び跳ねると丸見えになるズロースがエモーショナル。
新曲の「誘惑のハートビート」は年寄歓喜の4つ打ちハウス。 隣で見ていた友人曰く「BPM:125、ようやくクラブで掛けられる曲が来た。」 音源化が待たれる。
「捌けるのは上手からって言ったよねぇ。 ・・・まぁ良いんだけど。」と濱野。
濱野が「・・・まぁ良いんだけど。」で〆た際の前置き部分はたいてい「・・・まぁ良いんだけど。」と言いつつ「まぁ良くない」ことなので、メンバーも客も注意されたい。
「在宅は死ね」の件でもそうだが、濱野の言動の厄介なのは言葉通りの意味ではないところであり、それが脊髄反射馬鹿にも扇情的なもの言いを嫌う理知的な向きにも伝わりづらい原因になっている。
PIP京都の三人。 手元のメモには「古代ケルト」「マリファナ感の無い益戸育江」「黒姫山」「妙に艶っぽい人」「小金治」などの文字列。
本日をもって御坂が辞め、豊栄が暫し休演。 いろいろありつつPIPの2014年が終わった。
先日11/30より、押上WALLOP放送局を舞台に新たな月1定期公演を始動したPIP。
定期公演ではWALLOP放送局でのバラエティ番組「PIPEACE」の公開収録を兼ねていますが、今回12/14(日)は、約90分のPIP単独ライブのみのイベントを開催いたします。(ライブイベント後、3Fスタジオにて物販交流会も行います。2ショットチェキ会・サイン付き)
「入場無料(ドリンク代なし)」となりますので、ぜひお気軽にPIPライブまで足をお運びください!
第4週から第1週にお引越し、出番も早まって中学生メンバーも出られるようになった。
司会のカオポイント石橋哲也は今日も割と無理のあるデコ隠し。 それはそれとして司会の腕は良い。 ネタを作る(仕込む)力と、その場での応用力の両方がある。
今回は客から投稿を募り、メンバーに状況に合わせた告白をさせる企画。
驚いたのは、その場で台本片手に演るのではなく、メンバーが科白を入れてきていた事。
このあたりも濱野の評価できる所の一つであり、ネット配信のみとは言え一回々々の仕事から何かを掴ませようとしている。 PIPの美点は考えられていて且つ考えさせている所だと思う。
私は集合知というものをあまり信じていないのだけれど、濱野や裏方が考え、メンバーが考え、客が考えた事が番組として形になっている。
緊張しすぎたのか科白が飛んでしまった小室が泣き出してしまう一幕もありつつ、そう言うことも織り込み済みの進行で恙無く。
番組の最後に「僕を信じて」を出演メンバーで披露。 牛島だけ余ってしまい、袖で見守る形になってしまったが、口ずさみながら手だけで軽く踊るさまが切なかった。
牛島にしても森崎にしても、プロデュース志望の連中が目立たない所で濱野を補完する仕事をし始めており、グループとしての面白みは増してきた。
物販は狭い部屋を共有しつつ行うので制約が多く、改善はされつつあるが回転効率が悪い。 試行錯誤している形跡は見られるので、暫く静観しようと思う。
PIPもロハとは言え公演に一束からの客を集められた訳で、この日の集客も群を抜いていた。
並行物販の弊害と言うか宿命と言うか、オープニングのときにあれだけ居た客が自分たちの出演時間になると根こそぎ居ないと言うのは妬み・やっかみの種になる。 PIPの物販待ちの列にビラを配りに行かされた別のグループのメンバーも辛そうだった。
芸事と言うものは常に理不尽の中に在り、それとどう折り合いを付けて行くのか、もしくは強行突破するのか、跨いで通るのか、濱野の手腕が問われようとしている。
副題として「新たな定期公演の地は押上WALLOP放送局!PIPが日曜の押上を最高に沸かせます!」
築地川のほとりにあった会議室から、十間川のほとりにあるスタジオへ。 楽園を追われたPIPが辿り着いたのは押上WALLOP放送局であった。
入場無料だが事前予約をとるシステムは継続。 100人分の枠はその晩のうちに埋まった。
開演前に司会を務めるカオポイント石橋哲也が話した所によると、PIPリーダーの石川が石橋のイベントのスタッフをしていた縁があり、WALLOPの番組への出演の話を振ったり、次の会場を探している濱野とWALLOPの橋渡しをしたとの事。
スカイツリーが出来て多少開けたとは言え、郊外の私鉄駅近くの住宅地。 100人からの人間が並べる場所が有る訳も無く、試行錯誤しながらビル内に並ばせていた。
何処にどれくらいの人数が並べるのかは見ていたようなので、次回以降の改善に期待したい。
公開収録に使っている三階のスタジオが会場となっており、椅子をあるだけ並べて60席程度確保し、あとは立ち見。
若い番号でも予約するだけして来なかった向きも多く、予約無しの客が来ていたにしてもどれくらい埋まったのかは分からないが、何度も来ているスタジオがこんなに埋まったのは初めて見た。
配信用のトーク番組は1時間とられており、前半30分は夜の番組に出ていない(出られない)年少組メンバーと勤め人の栗城が登場。 面識の殆ど無い石橋哲也との摺りあわせ。
小室、橋田、福田の三人を前列に並べて、司会が突っ込み易い位置に小室を置いたのは上手かった。 一寸刺激を与えると自然に化学反応が起きて、笑いが起こる。
御坂は例によって口を開くと予想外のことを口走って全てを持って行く引きの強さ。
後半30分は中央に司会用のテーブルを置き、下手に年長組(と北川)上手に年少組(と栗城)
議長が公平なようでいて与党(年少組)寄り、野党が不満をぶつけるイギリス下院方式で進行。 風邪で羽月が、仕事の都合で山下がお休み。
振る舞いとして至らないところはありつつ、年長組は役割を理解はしており、石橋の上げたり下げたりが上手いこともあって楽しく過ごせた。
石橋は工藤から澤村に「乗り換えた」体で、澤村を持ち上げたり工藤を落としたりするのだけれど、「体で」やっているのが言外に伝わるので不快ではなく、工藤も灰被り的な役回りを進んで引き受けていた。
企画意図を汲むという点では、北川の嗅覚の鋭さ、大内順子のような柔らかくありつつ芯のある語り口で引き込む小林が出色。
石橋はメンバーの人となりの把握には努め、それを生かしつつ狎れたところは無く、楽屋落ちにもならないよう進行。
CM中に番組スタッフへの指示を出したり、番組としての緊張感を保つ工夫もしているので、手綱の締め方緩め方が絶妙。 年少組のじゃれ合いも度が過ぎぬ所で止まる。
濱野が仕切るとどうしても角の立つ物言いになってしまったり、説明不足で楽屋落ちになってしまうところはあるので、この縁は大事にした方が良いと思う。
オリジナル曲なら配信枠でも出来るらしく、最後に「選ばれたから」で〆。
羽月パートには北川。 八面六臂。
ライブはゲストの meltia から。
funny から pretty そして beautiful や lovely まで、アタナシウス派からカタリ派まで各種取り揃えてお届け。
ジェネリック岡田奈々と言った趣の水木なでしこと、整っていつつ押し出しも強い梨園系の顔立ちの白雪めろが目を惹く。
歌割りと振り付けがしっかり練られており、カバー曲も自家薬籠中のものとなっている。
来月から定期公演を行うとの事。
出囃子に乗ってPIP、「僕を信じて」→「選ばれたから」。 お休みの羽月パートは澤村と北川。
フォーメーションが複雑で且つ振りも激しいのでマイクを持つ手がお留守になるメンバーも多い中、柚木と福田のマイクだけは口と正対し続ける。 柚木は考えてやっているのだと思うが、福田は恐らくそうしようとは思っていないけれど、出来ている。 直覚力の鋭さ。
ほんの数十センチなのだけれど、その高さがあることで舞台は舞台としての説得力を持つ。
会議室から出たことで、PIPは舞台を得た。
ハロー・プロジェクトへの耽溺で知られる工藤千里は時節柄と言う事もあり、道重さゆみの「シャバダバ ドゥ~」をカバー。
思い入れのある楽曲とあって硬さは見られたしトチリもあったのだけれど、そこで絶望を顕わにしなくなったのは良い。
採寸して作った筈の衣装が早くも危うくなり掛けていたが、「天高く」的な季節感を伴うそれではなく、年相応の成長と言う感じ。 悪い方向に向いたものではないように思う。
森崎恵プロデュースで一曲。 森崎、澤村、北川、高城、瑞野でドロシーリトルハッピーの「ASIAN STONE」。
森崎の説明は例によって情念過多で「雄弁は銀」。 要は日の当たりにくいメンバーに光を当て、またこれまでとは違う角度から光を当てることで異なる輝きを見たい・・・と意図であったようだ。
濱野智史の楽曲知識はAKB48グループに偏り過ぎているので、幅広く見て聴いている森崎の知識と情報がこうして生きるのは良いことだと思う。
ドロシーリトルハッピーはダンススクールから生まれたグループなので、どの曲を演るにしてもハードルが高いが、とりあへず人前に出せるレベルにはなっていた。
「てもでもの涙」(柚木・橋田)
「ウィンブルドンへ連れて行って」(福田・空井・小林)
三振覚悟でフルスイングする空井のヤケクソ感が楽しい。
革新政党の婦人議員のような無駄に方に力の入った Bluestocking な感じが歌にも出る。 押上のゲバルト・ローザ。
「きっとぐっとサマーデイズ」(選抜組)
三曲目のオリジナルは冬なのに夏の曲。 羽月パートには瑞野。
手っ取り早く盛り上がれる曲はあっても良い。
公演本編はAKB48の「ありがとう」でしみじみして終える予定だったようだが、間奏でメンバーの名を読み上げる所で森崎が飛ばされる意図しない茶番が発生。 不平不満を言う役回りが自然に廻ってくる森崎。 ここで上手く受身が取れると仕事の幅も拡がる。
アンコールで「きっとぐっとサマーデイズ」を披露し直したところで、濱野から「ここで御坂からお知らせがあります。」
血の巡りの悪い客が「辞めないで」と混ぜっ返そうとするも、御坂の口からでたお知らせなるものはそのものズバリの「辞める話」。 実に間が悪い。
年内一杯でPIPは辞めるが、「公の人になる」と言う目標は変わらず、別の道を捜すとのこと。
しんみりする間もなく、物販へ移行。
押上に移っての変化は、音響の質の低下。 濱野はへらへら踊りながらミキサー卓で遊んでいるように見えて、実に細かく音量調整をしており、喋る時と歌う時で音量を変えるのは勿論、マイクの持ち手や曲の質によっても変化を付けていた。
ライブハウスではなく、あくまでも放送用のスタジオなので多くを望みすぎるのも酷ではあるが、オケとマイクのバランスがオケ寄りで有りすぎたり、ハウリングを恐れるあまりマイクの音量を絞りすぎていたり、一寸いただけない仕事であった。
終演後に知己とも話したのだけれど、濱野智史は送り手としては非常に良くやっていて、何か問題があっても必ず対策は講じてくる。
客の側としても、クレームではなく、改善提案的なやり方で行きたい。
アイドルグループが30分ずつ受け持つネット配信のバラエティー番組。
PIPはオープニングと20:30からの30分枠に出演。
PIP以外の出演者の中では、目黒川女学館が地味に面白い。 リーダーが宮下順子に似ている。
20:30からの出番で且つその後に物販と言う事で、大人メンバーのみの出演。 勤め人だったり、体調不良であったりで欠席もあり、全員の出演と言う訳には行かないが、選抜制導入以来出番の減ってしまった連中にも出演機会があるのは良い。
メンバー以外にマネジメントと物販仕切り要員で濱野とスタッフ一人が帯同。
入場料を払う際に目当てを訊かれるのだけれど、開演前の時点でもPIPで入っている客が多く、帰り掛けに見たら更に増えていた。 頭抜けた動員。
司会はカオポイントの石橋哲也。 メンバーの人となりは把握しつつ、楽屋落ちになるような物言いをしないのが先ず良い。
今回の企画は「箱の中身はなんじゃろな」。 ブロッコリーであったり、シラタキであったり、生魚であったり、定番の当て物でワイワイと。
感情の起伏があまり出ない小林が、意を決して箱に手を突っ込む時の複雑怪奇な表情であったり、見所はありつつも淡々と進んでいたが、残り4人となり石川と羽月が出てきたところで目隠しをして口に含んだものを当てる「口の中身はなんじゃろな」に企画変更。
アシスタント役の工藤が匙で口の中に滑り込ませたものを噛んだり舐めたりして二人が答えを出した後、正解として出された写真がタガメ。
取り乱す石川と、割と平静な羽月。 何だろうと思ったら、前回のドッキリ企画で仕掛ける側だった石川を嵌める仕返し企画。
タガメと言うのもウソで、実際は蝦だったらしい。
これで終わりだと思ったら、最後に残っていた牛島と北川は何故か目隠し無しでイナゴの佃煮を食べる羽目に。
実は仕返しの言いだしっぺは牛島であり、人を呪わば穴二つと言うオチ。
驚きはしたが、酷い目に遭っているようで然程でもなく、大変は大変なのだけれど踏み付けにされるような事にはならない。
進行が上手いので仕込みに不自然さがなく、見ている側も疑問をもたずに見られるから後味も悪くはない。
私も話にしか知らない神田立花亭の廃業以来、数十年ぶりで神田に寄席が復活。
古今亭志ん輔師の肝煎りで出来た二つ目専門の「連雀亭」がそれで、「ぼたん」とか「竹むら」とかのあたりの雑居ビル、猫の額の上に立った細長い所謂「鉛筆ビル」と言うの二階に小ぢんまりと在る。
二十日までが定席の興行、月末までは貸席となっており、空いた土曜に立川吉幸による酒の噺三席の会が入ったので行ってみた。
奥の三角になった所に高座が設えられており、照明もしっかり(しっかり過ぎるくらい)当てているが、小体なハコなのでマイクは無し。 肉声で充分伝わる。
雀を図案化したものが描かれた高座の前縁に下からの照明も仕込まれている。
真新しいメクリは墨痕鮮やか。 上手には角樽、下手には胡蝶蘭。
「狸の札」古今亭駒六
「試し酒」「親子酒」立川吉幸
<中入り>
「らくだ」立川吉幸
立川流の独演会に協会の前座さんと言うのも珍しいが、このあたりは寄席の側の差配であろう。
「親子酒」がサゲ近くまで進んだ頃、通りすがって寄席を見つけて上がってきたであろう老夫婦が受付で何やら話し始めた。
「プログラムをくれ」だの「入場料は幾らだ」だの、今訊かなくても良いような事をクドクドと。 耳が遠いらしく無駄に声がでかい。
受付と客席の間には仕切りらしい仕切りもない構造なので、そこで声高に喋られると中まで丸聞こえ。 受付の人も話を遮るなり声を小さくして貰うなり、外に連れ出すなり、対処法は幾らもある筈なのに空バカだから一緒になってくっ喋っていやがる。
演者はサゲまで演って降りたが、聴いてるこっちは堪ったもんじゃない。
結局のところ、残り一席に千五百円は惜しかったと見えて老夫婦は帰っていったが、その客を繋ぎとめようとして中の客が帰りたくなってしまったのでは元も子もない。
目抜き通りにある訳でもなく、名前で客を呼べる大看板が出る訳でもないから来た客は逃したくないのかもしれないが、あまりにも物のわからない対応であった。
着物を替えて残り一席。 演者も客も気を取り直して「らくだ」をサゲまで。
らくだを菜漬けの樽にブチ込むあたりから本性を現す屑屋。 スラップスティックコメディの体で、一気にサゲまで。
途中で邪魔は入ったが企画そのものは良く、見やすいハコでもあった。
早いうちに裏を返したい。
リニューアルして判型が変わり、文字ものページが増えた。 写真そのものより情報に重きが置かれており、ワニブックスが作るBomb!と言った趣。 紙も薄く、印刷は本誌より一寸落ちるが、写真の質も含めてB.L.Tほど酷くは無い。
℃-ute
表紙と巻頭グラビア8ページ20カット、撮影は Shu ASHIZAWA
まぁ何と言うか近況報告。
それ以上でもそれ以下でもない。 褒めるほど良くは無いが、敢えて貶すほど酷くはない。
Berryz工房
5ページ9カット、撮影はSHITOMICHI
こちらも近況報告的顔見世グラビア。
今後はこうした誌面構成になって行くのであろう。
モーニング娘。'14
ハワイツアーのついでに撮ったようなヤッツケ感。
ノーメンクラツーラ層が取り仕切る巨大組織ならではの、統制感溢れる8ページ。 撮影は鈴木さゆり。
小田と鈴木の並び水着だけウエストより上で切ってある、あけすけな「配慮」と言う悪意。
乃木坂46(若月、桜井、生駒)
5ページ6カット、撮影は西田幸樹。
スタジオでポンと撮ったような6カットなのだけれど、きっちり写真にはなっている。
生駒里奈は置いただけで絵になり、すっと目を惹く。
乃木坂PORTRAIT
日の当たらないメンバー掘り起こし企画、初回は永島聖羅。 2ページ2カット、撮影は佐藤裕之。
あまり紙幅は割けない中でもきちんと撮って貰える機会が有るのは良い。
ななせまるが撮らせて頂きます
3ページ3カット、対談で1ページ。
乃木坂46西野七瀬がメンバーを撮る企画。 今回は西野自身がモデルとなり長野博文に撮られるの巻。
長野博文が構図のセンスを褒めているのが面白い。 撮影技術はあとからどうにかなっても、構図を切るセンスだけはどうにもならない。
西野に場を安らがせる力と構図を切るセンスがあれば、この先面白くなる企画なのでは無いかと思う。
長野博文の撮った3カットも、肩の力が抜けていて良い。
川口春奈
8ページ8カット、撮影は佐藤裕之。
カレンダーの other カットで構成。 流石に大人びて来ているが、カメラの前に衒わずに立てているところは変わらない。
変わらぬ良さを残しつつ垢抜けてきた。
小松菜奈
6ページ7カット、撮影は細居幸次郎。
何かしら演じていないとカメラと向き合えない暑苦しさは無きにしも非ずだが、人を惹きつけるものはある。
2カット目が秀逸。 閉鎖空間での光の廻し方は矢張り巧い。
高橋ひかる
4ページ6カット、撮影は長野博文。
撮られる仕事は初めてとのことで、長野博文が撮っても緊張はしているが、カメラと向き合えてはいる。
グランプリになることが貧乏くじであるコンテストのグランプリと言う、厭なものを背負わされた所から始まる芸能活動ではあるけれど、良いほうに転んでくれることを祈りたい。 そう思わせる柔らかい笑顔。
橋本環奈
3ページ2カット、見開き1箇所。 撮影はレスリー・キー。
ポーズから何から作りこんで撮るレスリー・キーにしては自棄にあっさりしているが、造形美の切り取り方の巧さは流石。
そのブツ撮り寄りなところが私の好みとは合わないのだけれど、綺麗に撮れてはいる。
渋谷凪咲
6ページ9カット、撮影は桑島智輝。
3~4ページ目の半見開きのカットや、6ページ目の下から見上げるようなカットなど、桑島智輝にしては人の悪い写真。 ギリギリな線で攻めた構図とポーズ。
キャプションや全体の構成から見て、編集者の方に「こうしたい」と言う腹案があったのかもしれない。
指原莉乃×荒巻美咲
指原莉乃ディレクションのグラビアがUTB+に移転。 6ページ8カット、撮影は桑島智輝。
子供である。 作為も打算もない子供。
小道具の羽毛を舞わせて遊んでいるカット以外、すべて表情が硬いのだけれど、それを宥めすかして撮ったカットに味がある。
島崎遥香
6ページ8カット、撮影はMARCO。
引いたカットも絵になっていて驚く。
白と黒の衣装で二面性を引き出す企画。 白島崎の方はさして面白みもないが、黒島崎は「らしさ」が出ている。
真正面からではなく、上下なり左右にり多少角度を付けて撮ったカットが良い。
増刊のUTB+は別雑誌化し、UTBは月刊誌に戻った。 吉と出るか凶と出るか、試金石となる通巻225号。
宮脇咲良・向井地美音
18ページ17カット、見開き2箇所。 撮影は佐藤裕之。
ブレザー系制服、傾向は揃えつつ意匠の異なる紺ビキニ、白いチュチュ。 衣装三態。
ブレザーは上着の有無で変化を付け、競泳水着を模したような紺ビキニで清楚さを演出し、チュチュであったり小道具としての聴診器であったり、編集者の fetiches が控えめながら通底しており、スパイスとして利いている。
AKB48に未だ在籍するメリットが有るとすれば、それは棒組で仕事をさせることによる化学変化が期待出来るところにある。 撮られる仕事について一つの答えを見出した宮脇咲良と共に仕事をする機会に恵まれた向井地美音は、この先どう変わって行くだろうか。
窓から一杯に射し込む光を受けて、敢えて逆光で撮りつつモデルを浮かび上がらせる佐藤裕之の腕の冴え。
制服もロケ地の校舎も地方の公立高校と言った趣。 ミッションスクールの女子高のように世俗から隔絶された場所ではなく、世俗の中に在りつつ浮き世離れしたような不思議な空気。
宮脇咲良の醸す ennui に向井地美音が引き込まれ、モデルとカメラマンと編集者の仕事が噛み合って生まれた奇蹟。
柴田亜弥
9ページ12カット、撮影は桑島智輝。
衣装4パターン。 上京したスケジュールの中での撮影となると時間的に厳しかったのでは無いかと思われるが、その分工夫が凝らされている。
目が売りであるだけに、カメラを直視したカットで構成。 その中で一枚だけ挟み込まれた横顔。 これが凄い。
空を見上げた横顔を心持ち下から撮っているのだけれど、正面から撮ったカットよりも柴田亜弥の目に宿る力を可視化している。
カメラに視線は行っているのだけれど、衒ったり取り繕ったりする所はなく、自然にカメラと向き合えてはいる。
まぁ、カメラに視線と意識と両方が向いている圧迫感はあるし、視線の行っていないカットも意識はカメラに向いているので、写真を見ている側までもが常にロックオンされているような怖さはある。 自分だけを見ることを強いるような、石にされそうな恐怖。
これも好きな向きには堪らないのであろう。
柴田の目はカメラを捉えているのだけれど、撮っているカメラの方はさまざまな角度から柴田を切り取っていて、前述の横顔のほか、立て膝で振り向いたカットが良かった。
岡田奈々
10ページ11カット、見開き1箇所。 撮影は桑島智輝。
これまでに見た岡田奈々のグラビアは、常に何かに凝り固まったような窮屈さがあったのだけれど、一と皮も二た皮も剥けて柔らかい表情でカメラの前に立てるようになっていた。 ここまで出来れば、カメラマンや編集者でハズレを引いても、撮られる仕事で結果は出せると思う。
凝り固まった部分の残滓はまだ前髪のぺったり加減に在るが、松井玲奈がそうであったように、撮られ慣れていくうちに氷解して行くと思う。 兎に角、カメラと素で向き合えるようになったのは大きい。
真面目とか優等生とかそう言うレッテル貼りが岡田奈々を縛ってしまっていたように私は思う。
見せたい自分が魅力的なものでは必ずしも無く、破綻の無い「岡田奈々」として小さく纏まってしまっていた頑なさが人としての面白みを封じてしまっていたようにも思われる。
意識して閉じられていた扉は開け放たれた訳であり、岡田奈々にとって転機となり得る仕事となったように思う。
込山榛香
8ページ10カット、撮影は國方大。
初めてのソログラビアの割に硬さは無く、撮る側の持って行き方も上手いのだと思うが多彩な表情。
内斜視気味でありつつ、角度を付けて撮った際に遠い方の目が生きてくる面白い造形。 可愛らしく見える角度が上下左右に広い。
口の開き方で表情に諧調を付けるところなどは既に玄人の域。
悪い仕事ではないが、國方大は些か素材に食われた感がある。
AKB48 チーム8(下尾みう、中野郁海、人見古都音、倉野尾成美)
7ページ8カット、撮影は小池伸一郎。
運転資金をトヨタに出させることで、リーマンショック以来些かせせこましくなってしまったAKB48本体とは別趣のものになっているチーム8。
身の回りの古い客も焼け棒杭に火が点いたのか、はたまた燃え尽きる寸前に一と際明るく燃える蝋燭なのかエライ騒ぎになっている。 劇場公演の楽しさを知る層、お台場などで撮れた楽しさを知っている層には堪らないらしい。
ハイキーに飛ばした前半はあまり好きな撮り方ではないが、後半は面白い。
6ページ目の集合などはその場にある構造物を生かして構図を作る小池伸一郎の上手さが生きている。
中元日芽香
10ページ9カット、見開き1箇所。 撮影は桑島智輝。
ピントを薄めにして迫ったアップ、大道具小道具を配して構図を切る引きの絵。 スルリと懐に入り込む技も冴えて桑島智輝の写真を堪能できる10ページ。 ライフワークとしていたものが一つの完結を見たことで、桑島智輝の仕事により厚みが増した。
それもロケハンや道具立てがあってこそのものであり、ワニブックスの編集陣の底知れぬ怖ろしさが垣間見られる。
椎名ひかり
6ページ7カット、撮影は長野博文。
上が白、下が臙脂のセーラー服でリコーダーを吹きながらハチ公前の交差点を渡るカットから始まり、長野博文のスタジオに移動して一枚ずつ脱いでビキニになっていく流れを追った7カット。
既に出来上がってしまっている物を見せるやり方としては上手い。
どう撮ってもそうなってしまう事が予想されるモデルに対しては、こう言うやり方が最適解に近いのであろう。
プリンセスBambina
15歳以下のモデル10人を起用してワニブックスが創刊するファッション&カルチャー誌の宣伝で5ページ4カット、見開き1箇所。 撮影は上原朋也。
あからさまな宣伝の場合は読み飛ばすことが多いのだけれど、なかなか出来が良い。
ファッション誌らしい、コダクローム感のある色合いと作り込まれた構図なのだけれど、道具立てまで含めて詰めてあるのが良い。
佐々木莉佳子の、頭抜けた大物感。
真野恵里菜
9ページ8カット、見開き1箇所。 撮影は西田幸樹。
薄着ではありつつ、水着でも下着でもなく、何かしら着てはいるが部屋着にしては薄い。 この匙加減の妙。
様々な解釈の成り立つ表情で押しつつ、笑顔で〆て落としどころをつくる構成も上手い。
2カット目の魔術的ですらある光の廻し方。 判り難いが質は高い仕事の積み重ねで出来ている。
求められる真野恵里菜ではありつつ、媚びず衒わず。 裏方も上手く大人にしたし、真野恵里菜も上手く大人になった。
鈴木愛理
ビューティーブックなるものからの8ページ10カット、撮影は玉井俊行。
伸ばした前髪も落ち着き、大人びた姿も馴染んで来た。
鈴木愛理の「こう在りたい自分」と言うのはこのあたりなのであろう。
悪くはないし歳相応でもある。 しかしこうした「やさぐれ感」が主たる客層にどう受け取られるのか。
そこから自由になりたいのかもしれない。
UTB+ を別趣のアイドル情報誌として切り離したことで、より写真に注力できるようになり、グラビア1本あたりのページ数が増えた。
そうなると写真を詰め込む必要が無くなり、判型を生かした見開きも生かせる。
私にとっては嬉しい変化であった。
マルイジャム 渋谷6階のイベントスペースをパーティションで仕切ったところにパネルを並べて展示。
入り口付近に大伸ばしされたものが7点、あとは額装された半切くらいのものがズラリ。
展示スペースは狭く、パネルが低いところに詰め込んで二段展示なので、下の段は屈まないと見えない。 場内が明るいので見えづらさはないものの、ライテイングに関しては全く考えられておらず、詰め込み過ぎてパネルを並べる幅も狭いので混み合っても客は行き交えない。
見る価値が全く無いとは言わないが、写真以前に展示環境の点でおすすめしにくいし、写真の方も良くも悪くも魚住らしいもので、見るに堪えない大ハズレは無いかわりに「これは」と思うものもない。
展示枚数こそ多いものの撮り方が単調で、切り取り方は多少変わっても被写体と向き合う角度はほぼ一定で正面からなので、どの写真も代わり映えしない。
大部彩夏は口呼吸の人らしく、口はいくらか開き気味で常に微笑んでいるような表情。 それをどうしようともしていないので、何枚並べたところで似たような写真にしかならない。
たまにある口を閉じたカットや横顔などを見ると、大部彩夏の被写体としての魅力を引き出しているものも有るにはあるのだけれど、それが少ないところから見て、やはりモデルの表情の諧調や映える角度を引き出そうとする意欲は薄いように感じられる。
そこが魚住の持ち味でもあり、無難というか万人向けというか、分かりやすい写真にはなっているのではあるが。
プリントのみなら10800円、額装しても27000円、展示したものからより抜きにした写真集が8640円と値付けも上手い。
ハイエンド向けマルベル堂商法としては良い線だと思う。
折井の担当日と言うと荒天と言うのも今は昔、冬晴れの東京タワーではクリスマスのイルミネーションが始まっていた。
ピンクのニットワンピース、丈が短くて腰掛けると一寸危ういが、そこはそれ膝掛けなどでガード。 役の為か長い髪は明るめの色、長いこと見ているが、今が一番綺麗なのではないか。 通りすがりの客からも溜息混じりの感嘆の声が洩れ聞えた。
目当てで来ている客は、カフェと観覧用丸椅子と立ち見で分散。 観光できたフリの客が相手となる、華やかそうでいて難しい仕事。
初めてのデートらしきカップル、初めての海外旅行と思しき大陸の人など、まわりが見えなくなってしまっている人は、そここでイベントがあろうがなかろうが構わずはしゃぎ回るので、見ていてつらくなることも間々あるのだけれど、ここ二年くらいの折井は実に強くなっており、心が折れない。
相方のDJミズノ氏とは断続的ではあるが付き合いも長く、気心が知れているので話も上手く転がる。
ミズノ氏の選曲の妙がこのイベントの隠れた魅力ではあるのだけれど、曲についての話が弾むのも折井の引き出しが増えて深くなっているからだと思う。
何時にも増して「告白した」とか「付き合い始めて何周年」とかそういうリクエストが多く、そうなると番組としては盛り上がる。
リクエストに書かれた話の流れで「あなたとクリスマスイブ」をアカペラで歌う羽目になったり、歌い終えて大いに照れたり、古い客向けのご褒美などもありつつ、和やかに終演。
AKB48が売れる前に辞めているので、知名度という点に於いては恩恵に預かれていないが、「その後の人生」としては充実しているのではないだろうか。
万年筆の修理に雑司が谷へ出向いたその足で池袋へ。 懸案だった palet のリリースイベントを観覧。 無軌道な若い衆向けに特化したようなグループに渋好みの新メンバーと言うのが気になっていたのであった。
客層は若いのからそうでもないのまでまんべんなく。 お行儀の悪そうな連中は観覧エリア後方と9Fデッキあたりに陣取っており、最前列付近の方が平和だったのには拍子抜けした。 まぁ、ライブハウスなどの閉鎖空間になればまた違ってくるのだろう。
開演前に注意事項としてジャンプ禁止のお達しはあったのだけれど、なぜ禁止なのか客の側がまったく分かっておらず、構わずに飛びまくるもの、飛ばないまでも飛ぶ素振りを見せるものがズラリ揃っているのでまぁ揺れること揺れること。 禁止にした意味が丸で無い。
スタッフは終始ピリピリ。 事あるごと注意に出向くが完全に舐められており、強権を発動しないこともあって、リフトだのジャンプだのと若い連中は遣りたい放題。
禁止事項としてアナウンスされた事を守らない、スタッフの注意にも丸で耳を貸さない一部始終はステージの上からも見えており、その傍若無人な振る舞いは palet と言うグループの活動そのものを否定することにも繋がる訳なのだけれど、特典会にも悪びれることなく参加する神経の働きが私には理解できない。 踏み付けにしている相手に客としてサービスを求める無神経さ。 他者への想像力の欠如。
楽曲はそれなりに練られており、歌って踊る部分も悪くは無いが、活動が近視眼的で拡がりがない。
新メンバーの中野佑美は挙措も美しく、喋りも歌も丁寧。 観に行く動機には充分成り得るのだけれど、周辺環境が悪すぎる。
「"SNOW DISTANCE" は、女の子の切ない気持ちを歌った曲なので、是非歌詞に注目して聴いてみてください。」と語りかけてから歌い始めたものの、騒ぎたいだけの層はまるで聴いていない。
メンバーが舞台上から客に釘を挿すなんざ非常事態以外やらない方が良い(況してやオープンスペースでのイベントに於いてをや)のだけれど、裏方が裏方として機能していないので客の狼藉を誰も止められない。 客をコントロール出来る存在がその場に一人も居ない。
久し振りに見た「地獄感」溢れる地獄であった。
17:00からと19:00からの二回廻し。 このショッピングモールは音量規制など色々と制約が多く、インストアイベントにはあまり向いていないのでタワーレコード錦糸町店内にイベントスペースを作ってイベントを打つことの方が多いが、一定以上の集客が見込まれると狭い店内では流石にやりにくい。 女子流ともなると矢張りそれなりの集客が見込まれるらしく、エントリーコートに折り畳みステージを三枚しつらえてのミニライブ。
あまり早くから張り付くのも野暮なので、開演30分前に行ったら優先観覧スペースはほぼ満員、2階バルコニーも鈴なり。 端の方に潜り込んで開演待ち。
スピーカーは客席に向けたものが一対、モニタースピーカーが二対。 このあたりが女子流スタッフの食えないところで、オケとマイクの音量規制は守りつつ、モニタースピーカーで音をしっかり聞き取らせて伸び伸び歌わせることにより、生の声を響かせようと言う意図。 リハーサルでもモニタースピーカーの位置と角度の調整を入念に行っていた。
南側の入り口にあるステージで歌うと、オケの音は掻き消されてしまっても歌声は北の端まで届く。 歌として聞き取れなくても「何かやっている」只ならぬ雰囲気は伝わる。
目当ての客からの収奪ではなく、より広く知らしむる事を目的としてやっているのがメンバーにまで浸透しており、目の前の客だけでなく、建物全体にいる人々を総体として客として捉えており、海外進出と言うより高次の目標を掲げても説得力があった。
1部2部と構成は変えつつ、聞かせる曲と盛り上がる曲を新旧取り混ぜて5曲ずつ。 自己紹介と告知などの最低限の喋りに止めて歌で押して行く。
新曲の Say long goodbye は、庄司曰く「R&B調のバラード」。 中江の高音で始まり、新井→小西と一番良い音域で歌い継いで行く。 この歌割りが巧い。 目当てで来ている層はグイッと引き込まれ、通りすがりの客の足も思わず止まる。
ことアイドル業界に於いては簡便に盛り上がれる曲が持て囃される傾向があり、バラードは敬遠されがちなのであるが、東京女子流は時折こう言う売りにくい曲を敢えてシングルで出してくる。 それをただ売るのではなく、その曲によって「知らしめよう」とする意志がメンバーにもスタッフにも共有されており、締まったイベントになっていた。
特典を山盛りにして少数の客からの収奪で売り上げ目標を達成しようとする商売をやっていないので、客一人当たりの購入枚数は然程多くないと思われるが、買った延べ人数はかなり多くなっているのではないかと思う。
広く売れて欲しい。
給料日前にリリースイベントが並んだり、曲がどうにも気に入らなかったりで間が開いてしまったが、矢張り見たくはあるので池袋。
パルコの別館のようなファッションビルの5Fと6Fにタワーレコードが入っており、洋楽売り場の端に小ぢんまりとイベントスペース。 開演15分前に着いたが先客は影かたち、つ離れしないどころの騒ぎではなく肝を冷やしたが、三々五々集まってきて開演する頃には店舗スタッフからお膝送りのお願いが出る位には埋まっていた。
きっといい場所
マスカット・スロープ・ラブ
エルスカディ
有頂天ガール
周辺状況には嫌気が差すこともまま有るのだけれど、歌って踊る部分の芯はしっかりしており、そこで客を裏切る事は先ず無いので、「断続的に」では有るが足を運び続けている。
新曲は井上大輔の手によるもの。 未発表曲と言う事はそれなりの曰くがあるとは思うのだけれど、聞き込んで耳に馴染む佳曲。 今回の私服(事実上の衣装)はチアリーダー的なAラインのワンピース。
相変わらず丈は無駄に短いのだけれど、タイツ標準装備なのは良い。 長い手足はスラリとして無駄な肉が無く、指先まで神経の通った動きも美しい。
舞台の下を見ていると相変わらず色々あるのだけれど、舞台上から齎される幸福の量は保証されているので、今後も細く長く足を運びたい。
最後に観たのが「ハニーB」のリリースイベントだったから、丸三年御無沙汰のprdia。 晴れたので足を運んでみた。
まだ間があったのでベンチに腰掛けて時間を潰していたら、チラシ配りが始まった。 綺麗なお姉さんが10人練り歩いて、デパートの屋上で寛ぐ家族連れにチラシを手渡していく様は壮観。
固定客向けの収奪に血道を上げがちなリリースイベントで一見さんにも顔と名前を覚えて貰おうとする姿勢は、当たり前と言えば当たり前なのであるが、物を売る事を生業とするなら矢張り持ち合わせていて然るべき。 嫁さんの手前受け取りあぐねる旦那、固まってしまう嫁、無邪気に受け取る子供。 微笑ましい光景。
固定客囲い込み用の優先観覧エリアを敢えて設けず、観て貰う・聴いて貰う・知って貰うを徹底。 広く知らしめなければ継続し得ない事を判ってやっているのは強い。
メンバー10人にマイクを持たせているので、ワイヤレスを含めて音響機材も持ち込み。 スピーカー2対、モニタースピーカー1対。 ハウリングは起こるが収束も早く、良い腕のスタッフが張り付いている。
湊・村上の二人が矢張り頭抜けているが、他のメンバーも歌えるようにはなっているし、声質にあわせて歌割りも練られており、松本の特徴的な声が良いアクセント。
振り付けもフォーメーションも多彩で切れがあり、あっという間に5曲。
自己紹介の際に村上瑠美奈が「完璧なステージをお見せします」と宣っていたが、見終えて納得。 ここまでの完成度になっているとは思わなかった。 眼福。
副題は『「PIP新富町会議室での公演はこれが本当に最後。11月生誕祭、meltiaゲスト、そしてPIP初オリジナル曲の披露と、超盛りだくさんの3時間超大ボリュームでお届け!」公演』
駆け込み需要なのか、ご新規さん多目で盛況。 予約の80枠は早々に埋まり、20枠増やした分と当日入場で札止めにはなっていないがこれ迄で一番の大入り。 葬式ごっこにかこつけて騒ぎたいだけの連中も多かったようで、客民度も過去最低。
「遅れてきたピンチケ」としての濱野智史の造反有理(子供たちが騒ぐのにも理由はある)的な考えと振る舞いで、何をどうやってもメンバーに危害でも加えない限りに於いては野放しでありつつ、見たい・聴きたい客と騒げればいい客は椅子席と立ち見で或る程度の棲み分けがなされているので現状で目立ったトラブルは起こらずに来たが、流石に今日は椅子席の客にも苛立ちが見られた。
先ずはゲストのロリィタ*アイドル meltia が顔見世がてら一曲。
顔立ちから芸名から個性的で、安田猛の繰り出す七色の変化球の趣。
水木 なでしこ がジェネリック岡田奈々と言う感じで、お得で且つ可愛らしく、印象に残った。
出囃子代わりにウェストミンスターの鐘を鳴らしてから Dreamin' girls 。 歌いながら入場し、4曲続けてやって自己紹介。
お題は「会議室の思い出」であったのだけれど、この時点で既に涙腺が決壊しかかっているのもちらほら。
山下緑はまだ出来る曲の方が少なく、その間は衝立の後ろに隠れているのだけれど、頭隠して何とやらで他の連中の歌い踊るのを楽しげに見ているさまが見えちゃってるのがどうにも可笑しかった。
澤村が何と言うか、聖徳太子の左右に居る人のような髪型。
ユニットコーナーは濱野、羽月、小林の「初恋サイダー」から。
濱野と羽月は喉に来る風邪が漸く本復したようで、伸びやかな歌声。 小林も含めて「質の異なる歌唱要員」が揃っているのは、矢張りグループとしての強みだと思う。
モニタースピーカーが無い所為か、客が騒ぐと音が取れなくなってしまうようなところが有る。
「ウィンブルドンへ連れて行って」(福田、橋田、柚木)、「向日葵」(永瀬、空井、牛島、森崎)、「ハート型ウィルス」(工藤、石川、豊栄)、「てもでもの涙」(濱野、羽月)、「高値の林檎」(澤村、瑞野)、「禁じられた二人」(北川、柚木)、「天使のしっぽ」(橋田、福田、小室)、「夢見る15歳」(橋田、福田、小室、工藤)、「シンクロときめき」(御坂)、「夜風の仕業」(高城)、「枯葉のステーション」(空井)、「君の名は希望」(濱野、小林)とユニットで押す攻勢。
橋田は動きが雅やかで、振りの独自解釈は少ないのだけれど目を惹く。
高すぎるマイクスタンドを、顔色を変えず歌いながら調整する石川。
澤村と瑞野は振りの解釈に微妙な差異はありつつ、止め撥ね払いが綺麗なので調和して見える。 行書の芸。
工藤は妙な気負いが消えて表情が明るくなり、動きも軽くなった。 良い変化。
小室は動くと猫背が直り、激しい動きにも情緒がある。
御坂は振り付けにメリハリが付いてきた。 歌は平嶋夏海唱法の域にあるが、危うさは影を潜めつつある。
高城は間奏時に中手が入るくらいで客の反応が薄い曲を走らず遅れずしっかり歌いこなせていた。
空井の「枯葉のステーション」は技巧より情念で聴かせる。 源氏物語の第四帖と言うか「道成寺」と言うか、旅行をすっぽかした奴の哀れな末路まで見えるような、本家とは別物の凄さがあった。
その凄いのを目の前にして、碌すっぽ聴きもしやがらないで名前を叫ぶしか脳の無い野暮な客。 空井も客筋が悪い。
濱野と小林は歌い方や声の質の違いにヴィオラとチェロのような相性のよさがあり、耳に優しい。
お披露目のときからの3グループに分かれて担当曲を演ったあと、11月の生誕コーナーへ。
「ね〜え?」(工藤)、「コネクト」(橋田)、「Be MYSELF」(工藤、橋田)
ハロプロ本体ではなく、何故松浦亜弥なのかと思ったら、「(「ね〜え?」は)道重さんもカバーしていたので」とのこと。 「やり切れました」と満足げに語っていたが、肩の力が抜けた工藤は表情も明るくなり、これまで感じられた辛気臭さと言うか息苦しさと言うかそう言ったものが無くなり、良い方向に変化している。
再び meltia が二曲。 カバーの曲はピンと来なかったが、最後に演ったオリジナルの曲は振り付けも含めて良く出来ていた。
ここまで来て漸くPIP初のオリジナル曲を披露。 選抜メンバーで「僕を信じて」「選ばれたから」。
歌詞は濱野らしいと言うか何と言うか、言葉からイメージを喚起せしめるものではなく、文章として咀嚼して解釈するもの。 詞であって詩ではない。
その辺りに飽き足らなさはありつつ、歌割りや振り付け、フォーメーションは凝った作りで見応え聴き応えはある。
未だ々々硬く、こなれるまでは暫く掛かると思うが、他所へ打って出て勝負出来得る楽曲には仕上がっているし、その「曲の出来の良さ」からか、本気の柚木が漸く見られたように思う。 選抜メンバーの目の色は勿論変わって来ているし、非選抜メンバーのやる気にもプラスに働いている。
詳細は発表待ちだが、定期公演再開の目処も付いた由。 このまま良い循環で動いてくれることを祈りたい。
アイドルグループが入れ替わり立ち代わり、30分ずつ出てくる数珠繋ぎ番組を観覧。
出演は目黒川女学館、アイドル諜報機関LEVEL7、choice?、PIP: Platonics Idol Platform、notall。 司会のカオポイント石橋哲也は時間帯によって出たり出なかったり。
離合集散世の習いと言えど、choice? が3人になっていたのには驚いた。
受付を済ませると紙を一枚渡された。 今回は瞬間芸をやることになっているが、ドッキリ企画になっており、司会の石橋がCM中など要所々々で番組スタッフやPIPメンバーに当り散らす形で駄目出しを重ね、その緊迫した状況下でメンバーがどのように振舞うかを眺めると言う悪趣味極まる企画。 根多ばらしをしないように釘を挿す為の紙っぺらなのであった。
こう言う仕事をやっていれば理不尽な目に遭うのは日常茶飯ではあるのだけれど、為にする理不尽を知らぬ顔の半兵衛で眺めると言うのはどうにも性に合わない。 仕組まれた茶番とは言え、憎からず思っている連中が踏み付けにされる様を笑ってみている事は私には出来かねるので、顔色が分からぬよう、後ろのほうで観覧。
放送されない部分ではにべも無い駄目出しを重ねる石橋も、放送される部分では司会者としての仕事振り。
声色を作る為にアメ横の魚屋のあんちゃんみたいな咳払いをする牛島に「死ぬ間際の正岡子規かよ!」と突っ込みを入れたり、空井のやる里崎のバッティングフォームの真似に「軸足が違うんだよ」と形を示すなど、石橋哲也の芸人としての冴えは垣間見られたので、企画の悪趣味さの割に楽しめる場面もあったのは不幸中の幸いであった。
最終的には残り5分少々のところで怒りに任せ(たことにし)て司会を放棄して裏に引っ込んじゃう石橋のあとを受けて率先してマイクを握り、顔色を変えずに粛々と進行をした羽月がイイシゴト。
野呂圭介よろしく裏から「大成功」のプラカードを持って出てきた石橋が種明かしをして大団円と言う流れではあったのであるが、茫然自失の体で口を半開きにして立ち尽くす濱野舞衣香にはもののあはれを感じた。
リーダーの石川だけは企画を知らされており、グループのラインやメールで不安感を煽っていたことが暴露されたり、なんとか笑いのめして空気を軽くしようとする石橋。 良い芸風だと思う。
新曲の振り入れやレッスンなどを優先するとのことで、ライブとしての開催の無い週末の会議室で短めに撮影会。 北川、髙城、御坂、山下の4名は予め欠席の告知があったが、気が付いたら瑞野と沢村もいなかった。
仔細あってグリコ製品の細長いお菓子を持った写真を撮る趣向。 そちらはみなさんにお任せして、私は何時もの落穂拾い。
天井の螢光燈のみが光源で、部屋の端に行くと些か暗いという厳しい条件。 最新のカメラで撮っていた知己はisoが10000を超えるという修羅場になったようだが、私の数世代前のカメラにはそんな状態で絵を作る機能は無く、iso=800で撮影。 どう言う撮らせ方をするのか現場に行くまで分からなかったのでレンズは28mmから240mmまで持っていったが、近接で撮りたい人が多く混み合って撮り辛く、ノボフレックスの Noflexer 240mm/f4.5 に固定してでアウトレンジ戦法に徹してみた。
小室志織(PIP: Platonics Idol Platform)
柚木萌花(PIP: Platonics Idol Platform)
工藤千里(※左 PIP: Platonics Idol Platform)
橋田唯(PIP: Platonics Idol Platform)
その他の写真はこちらに。
牛島千尋のみ、撮ったものが全滅。 ひとえに私の技倆不足であります。
場所が慶應日吉キャンパスで、しかもOB・OGの集まりと言う事で気乗りはしなかったのだけれど、撮れるかも知れないと言う事もあり、足を運んでみた。
日吉駅はOG・OGと思しき人々でごった返していた訳なのだけれど、慶應らしいなと思ったのは混雑を極めるトイレの出入り口で行き交う人々が自然に体をかわしていたこと。 このあたりのスマートさは慶應ならではなのかもしれない。
イベントの趣旨としてはどうだったのか知らないが、「アイドルすぎる34歳」で自らを売り出すことに成功した脊山がPIPメンバー(とプロデューサーたる濱野智史)にダメ出しをしていく形。 それが辛辣に成り過ぎないように吉田豪が要所々々で混ぜっ返して行く。
イベントそのものが始まる前から批判的な言動が言葉の端々に出ていた司会の池澤あやかは終始仏頂面で袖から見ていた。
何が語られるか見る・聞く前から「アイドル論」の字面への拒否反応が出てしまっており(其れは「司会」と言う自らに課せられた仕事からの逸脱でもあるのだけれどそれはさておき)、終了後にツイッターで辛辣な濱野・PIP批判。
それが濱野へ向けられるのであればまだ分かるのだけれど、言いっ放し・書きっ放しと言うのが実に子供染みて居おり、自らの前半生への悔恨と呪詛にまつわる遣り場の無い怒りを、ぶつけても問題にならない相手に投げつけて溜飲を下げているようで些か薄みっともなく、且つ業界の闇の深さを垣間見たような後味の悪さがあった。
自らの性を商品として消費されてしまうところから芸能活動が始まった池澤と、自らの性を効率的に商品化して現在の立ち位置を築いた脊山と、アイドルが必ずしも性を商品化したものでは無いと言う事に気付いた濱野(そしてその説明が絶望的に下手だと来ている)では考えも話も噛み合いようも無い。
それを横目で見ている吉田豪は楽しそうであった。 目の前に旨そうな「世相の粗」。
「目当て」で通っている客との馴れ合いに近い環境で微温湯に浸かってきたPIPメンバーにとっては、ブランディングだなんだと公衆の面前で詰問され続ける人民裁判は荷が重く、対応しきれないままダメ出しされっぱなしで終了。
人民裁判部分が予定より延びて、ライブは2曲。
音響も見せる環境も悪いので、このあたりの臨機応変な対応は良かったと思う。
脊山は大島優子を例に挙げて、グループを踏み台にするくらいの気概を求めていたが、AKB48を踏み台に出来たのが過去何人居たのか、考えなくても分かる。 そしてAKB48を踏み台にする事をスタッフも現在の客も許容せず、滅私奉公を強いているのも周知の事実である。
池澤にしても脊山にしても、媒体を通して見た虚像としてのAKB48しか知らないから較べて腐す事に疑問を感じていないけれど、週末ごとに握手をするのが仕事の殆どという現状に鑑みれば、濱野の方が余程「人を預かる」「人を育てる」と言う事に於いて責任を自覚しているように私は思う。
グラビア系カメラマンのグループ展 "sharaku project" も4回目を迎えた。今回の会場は箱崎の路地裏にある、製版会社が新たに作ったギャラリー。
最寄り駅は水天宮前で、駅からの距離は近いのだけれど一寸判りにくいところにある。 新しくは無いビルの入り口部分が不自然に新しく、ギャラリー然とした設えになっているので前まで辿り着けばそれと分かる。
エレベーターで3階まで上がると会場。
柱が邪魔になる部分はあるのだけれど、広い。 梁は低いのだけど、天井板を取っ払ってあるので高さは稼げていて、圧迫感は無い。 暗すぎず明るすぎず見やすい環境。
今回もテーマが「ヌード」と言うことで、18歳未満は入場お断り。
吉田裕之
巨大なカラー7点。 画布のような紙にプリントしてある、吉田らしい遊び心。
ぱっと見て見渡せない大きさになると、写真から受ける印象もがらりと変わるのだけれど、柱が邪魔になる位置での展示になっていて、引いて見られなかったのは残念だった。
ブレザー系の制服(夏服)を脱いだり着たり。 綺麗に纏まってはいるが、気障にはならぬ匙加減が上手い。
野澤亘伸
露悪的と言うか挑発的と言うか、生々しいのをカラーで7点。 こちらも大きなプリント。
エロは好きだしグロも(或る程度は)許容できるがスカは御免蒙る。 好悪の悪の部分しかないので論評はしない。
そのあたりの「感情を逆なでする」部分までが狙いだったとしたら、まんまと術中に嵌った事になる。
小池伸一郎
大小取り混ぜてカラー18点。 オーバー気味に飛ばした白バックで針金と戯れるヌード。
先ず感じたのが「焼き難そう」。 私がプリントする訳では勿論無いのだけれど、思わず暗室作業の煩雑な手間を考えてしまう厳しい構図。
拡大率を大まかに決めて、ピントを合わせて、拡大率を直してピントを合わせ直して、さらに拡大率を追い込んでピントを微調整して・・・と言う、賽の河原の石積みのような果てしない作業が脳裏をよぎってゾッとする。
背景に何も無い所で、間合いの取り方とポーズだけで作った構図。 技術とセンスの高度なバランス。
親指に針金を括りつけた足先だけだけを切り取った小品が実に良かった。
上野勇
カラー4点だが、見せ方が凝っている。
一点は背後に光源を置いて透過光で見せる顔のみ判然としない裸体の群れの組んず解れつ。 もう1点は天井から吊り下げた円筒形のプリントを内側に入って見る、360度パノラマ。 全周から等身大に近い14人の裸体が迫ってくる圧迫感。
仕掛けは大胆だが照明の組み立ては繊細で、一旦梁に当てたライトが柔らかく筒の中を照らすようになっている。
見世物小屋めいた猥雑さはありつつ、写真としては綺麗に纏められていて、見せ方は外連味たっぷり。
写真展と言う形でしか見せようの無い写真のかたち。
松田忠雄
カラー6点+小品1点。 セーラー服の女子を脱がせたり、ビニールテープで拘束したり、ビニール袋で梱包したり、それを集積所に棄てたり。
展示スペースに何気なく吊り下げられた薬瓶。 中になにやら入っているのに気付いてよくよく見たら梱包された裸体像のポジ(ポジと言うか、透明な板にうっすらとプリントされた写真と言うか)が入っている。
あたかも被写体の魂をそこに封じ込めたかのような、儚げな美しさ。
屋内も屋外もピントは薄めだが、ボケがなだらかなので合焦しているところへ視点が導かれる。 展示スペースが隣り合わせの上野勇とは好対照の外連とは無縁の写真。
ざっと流して見た時に引っ掛かったささくれのようなものが、二度三度見返すと正体を現す。 些か判り難くは有るが、じっくりと見れば見るほど何かしらの発見が有り、そこでなければならないところに合焦しているも見えてくる。
三輪憲亮
ブツ撮りとポートレートの狭間にある、ゴリッとしたヌードモノクロで7点。
残酷なまでの質感描写なのだけれど、矢張りレタッチ過多な部分はあり、そこが目に入ると見る側に掛かっていた魔法が解けてしまう。
画竜点睛を欠く感はありつつ、プリントそのものは美麗。
門嶋淳矢
カラー6点。 ナナ・ムスクーリ的眼鏡とショートボブのウィッグを付けた、ほぼヌードだが上手く隠したボンデージ。
目のアップ、口腔内のアップなどもありつつ、汚くは無い。 バイブレーター、開口器、ボールギャグ等の象徴的な小道具を配しつつ、生々しくは使わずに野卑にならぬぎりぎりの線で止めているのが良い。
秘すれば花。 仄めかすだけでも、見るものの心に波は立つ。
それぞれがそれぞれの世界を構築しており、見入ってしまうと切り替えが大変。 ベンチに腰掛けて見た物を咀嚼して、一息ついてから次に進み、行きつ戻りつ過ごす。
見ることと考えることの楽しさが詰まった写真展であった。 会期中にもうニ三度見に行きたい。 十月三十一日まで。