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墨田ペトリ堂の身辺雜記 「二面楚歌」


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投票などするな!

投票行為は君たちの人間性の否定なのだ。
投票を依頼してくる連中など無視せよ。
連中は諸君の敵だ、連中は権力を握りたがっている。
すべての政治家はそれが共和派であれ、王党派であれ、
共産党であれ、われわれの敵だ、
投票用紙を破り捨てろ、
投票箱をぶち壊せ、
候補者だけでなく、選挙管理委員たちの頭もなぐり割れ。


1933年11月 CNT(Cofederacion Nacional del Trabajo)の声明より


2016-05-06 早起きのサイクル [長年日記]

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(七日目~千穐楽)

黄金週間 十日間連続読みの会(七日目)
「任侠流れの豚次より"任侠流山動物園"」玉川太福/玉川みね子
「清水次郎長外伝 荒神山の間違い (6)仁吉の焼香場」神田春陽

黄金週間 十日間連続読みの会(八日目)
「天保水滸伝より"鹿島の棒祭り"」玉川太福/水乃金魚
「清水次郎長外伝より"小政の生い立ち"」神田春陽

黄金週間 十日間連続読みの会(九日目)
「青龍刀権次(6)涙の刑事部屋」玉川太福/水乃金魚
「清水次郎長伝より"次郎長の生い立ち"」神田春陽

黄金週間 十日間連続読みの会(千穐楽)
「青龍刀権次(7・大団円)権次の改心」玉川太福/玉川みね子
「清水次郎長伝より"心中奈良屋"」神田春陽

荒神山は七日目で大団円。 次郎長の株は上がるが、差し当たって誰も得をしない幸せにならない結末。
八日目は読み切り、九日目と楽日は次郎長の生い立ち。
侠客ものと言うのは題材としてあまり好きではないが、淡々と楽しく聴けた。

青龍刀権次も七話なので「任侠流山動物園」と「鹿島の棒祭り」。
「(春陽先生が次郎長伝なので)そのあたりのものを」で何を演るのかと思ったら「三遊亭白鳥作・・・」ここでまず一と笑い。
その件には触れずにじわじわと空気を換えて荒神山に入る春陽先生も良かった。

青龍刀権次は馬鹿で強欲な小悪党の情けない上にも情けないエピソードを味わう演目だと思っていたが四日目から風向きが変わり、白浪物から探偵小説へ。 強引なまでに登場人物の因果が絡み合う江戸風味と、理詰めで犯人を追い詰めていく開化めかした部分の同居。 派手な登場のわりに殆ど何もしない爆裂お玉など、物語として詰め切れていない部分をどう聴かせるかと言う苦労は有ったと思うが、刑事が登場して以降の部分は特に面白く聴けた。

十日興行に九日通うと言う酔狂な連休。 流石に最後の三日は草臥れ果てていたが、お陰で早起きのサイクルを崩さずに済んだ。

_ 声かけ写真展

「中年男性が女子小中学生に声をかけて撮影しただけの写真を集めました。 それが、声かけ写真展。」

池上中学校の使われていない部分の校舎を利用した世田谷ものづくり学校の三階が展示会場。 冊子が付いて入場料1000円。

教室の机の上に写真が並べられている。 「声かけ写真展」なのだけれど望遠レンズで撮ったものもあり、そうなると合意形成についても怪しくなってくるのだけれど、その辺りには触れずに冊子のコメントが「懐古」「肯定」「夢よもう一度」ばかりだったので頭が痛くなる。
まぁ否定する立場からコメントを寄せることも無いと思うが。

四人四様で被写体の選択、相手との距離、撮り方、似たような状況乍ら写真として出来上がった物はさまざまで、自分の欲望をオブラートに包むか隠すか、もしくは欲望が顕在化としてしまっている事に本人だけ気付いていないところまで写真に現れている。
青山静男の撮る写真は自律的且つ抑制的で良かった。


2016-05-04 ソプラノ [長年日記]

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(六日目)

「青龍刀権次(5)乳母の義心」玉川太福/玉川みね子
権次が出て来ないエピソードの続き。 わたくしといたしましては、いない方が楽しんで聴ける。
これまでのあらすじを語った後、眼鏡を外して本編に入るのだけれど、そこまでの時間が日に日に長くなって行く。
浪曲に耳が慣れてきたので、節回しを味わう愉しみ方も分かりかけてきた。
ここから面白味が増していくのだと思う。

「清水次郎長外伝 荒神山の間違い (5)仁吉の最期」 神田春陽
ついにクライマックスの切った張った。 血生臭いところなのだけれど、ねっとり演らずに、さらり淡々。
湿っぽくなりそうな部分も適度にクスグリを入れて軽く明るく。
引き込まれて聞き入ってしまうが、草臥れないのが良い。

明日から後半戦である。 気を引き締めて早起きしたい。

_ 第16回 靖国講談会(28.5.4)

湿度は低いが日差しは強く、真夏日となった。
靖国会館は本日も大入り。

「村越茂助 左七文字の由来」田辺凌天
「回向院 猫塚の由来」神田こなぎ
「太閤記 本能寺の朝駆け 右大臣信長の最期」宝井梅湯
「石川一夢」一龍齋貞寿
<中入り>
「赤穂義士本伝 楠屋勢揃い」一龍齋貞弥
「爆裂お玉 三泥棒出会い」神田すず
「加賀騒動 紅葉山の闇試合」一龍齋貞花

こなぎさんは初見だが、特徴のある声。 ソプラノ。
この声がしっくりくる口調と演目が出来てくれば面白いのではないか。

中トリの貞寿さんが良かった。 語り込むべきは語り込み、客を引き込んだところで一寸はぐらかす。
基本的なところがしっかりしているので崩しても変な崩れ方はしない。
気持ちよく手玉に取られる。

良否の否では必ずしもないが、好き嫌いだと嫌いで、まぁ耳を塞ぎたいような局面もあったが、出たり入ったりも出来ないので心を無にして耐える。

貞花先生は今聴けて良かった。


2016-05-03 どうなりますかと気を持たせてまた明日 [長年日記]

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(四日目)

初の平日開催と言う事で、さすがに満員とはならなかったが、それでも中々の入り。
お席亭も含め、はねた後に出勤と言う向きもおられた由。

土日でもつばなれしないどころか客一人なんてことはザラにあったと感慨深げに暗黒時代を振り返る春陽先生。
客一人演者一人の状況をPK戦に例えていたのが可笑しかった。
平日で来られない人が多そうだと言う事で、続き物は一と休みして抜き読みで二席。

「天保六花撰 河内山と直次郎」 玉川太福/水乃金魚
曲師の違いでどう変わるかも見ていただきたいと語っていたが、幕が開く前の調子の合わせ方から違う。 衝立の向こうで座る位置も一寸奥の方。
一音々々に張りがあると言うか、引き立てるより掛け合いと言った趣の弾き方、食い気味のグルーヴ。

河内山と直次郎だと河内山の方が一枚も二枚も上なんだが、直次郎も権次と較べれば格段に肚が据わっている。 その辺りの悪い奴の描き方の違いもまた、面白かった。

「柳沢昇進録 浅妻舟」 神田春陽
柳沢昇進録だが生臭い話ではなく、英一蝶と宝井其角の友情譚。
私は毒にも薬にもならないがほのぼのとした、こう言う話が好きだ。

連続読みの箸休め、のんびり聴けた二席。

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(五日目)

十日間連続読みの会も漸く半分。
再び暦も休日となり、ほぼ一杯の入り。

「青龍刀権次(4)血染めのハンカチ」玉川太福/玉川みね子
前回爆裂お玉が登場してさてどうなるかと盛り上がったところが切れ場で、さてどうなるかと思ったら、並行する別のエピソードが挟み込まれる憎い演出。
上手く出来ている。
曲師も戻って何というか耳への当たりは柔らかいが勁い音、合わせて被せてくるようなグルーヴ。

「清水次郎長外伝 荒神山の間違い (4)仁吉の離縁場」 神田春陽
段々に役者が揃って、緊張感が増してくるのだけれど、殊更張るようなところもなく、淡々と語るので聴いていて草臥れない。
登場人物も格が上がるほど声を荒げないので、静かに盛り上がって行く。

さぁて、どうなりますかと気を持たせてまた明日。

_ 第十回ノンライツRF友の会写真展

日本橋亭がはねて、午後の靖国講談会まで時間が空いたので、近くで開かれている写真展へ。
レンズは確かにノンライツだがカメラはライカだったり、ノンライツのレンズだがRF機では撮っていなかったり括りとして看板に偽り有りや無しやと言う感じがしないでもなかったが、写真展としては面白く拝見。
落ち着いて見られる環境と言うのが先ず良い。
新しくは無いビルなので天井は低いが、照明の当て方は考えられていて、見難いところは無い。

作品として一本立ちをしているものにも唸らされたが、私個人の嗜好としては作例と作品の間で揺蕩うような感じのものに惹かれた。

アンジェニューのアリフレックス用シネレンズをライカLマウントに改造したものにL-Mリングを噛ましてXマウントアダプターに付けてX-Pro1で撮ると言う回りくどさにも痺れたし、昼寝から目覚めたら目脂が溜まって目が霞んだようなアンジェニューならではの芯はあるもやもやも良い味。
アンスコシネマットの40mm/f6.3の、これぞ三枚玉と言う感じの暴れ方も良かった。

R-BIOTAR 5.5cm/T0.85レントゲンレンズで撮ったもの。
イメージサークルが狭いんで写真は文字通りの日の丸なのだけれどド真ん中の写りは良く、それを生かしてきっちり絵にしてきているのには感心した。

好事家ならニヤリとさせられる道楽の極み。

_ 第16回 靖国講談会(28.5.3)

半蔵門のJCIIフォトサロンから靖国神社へ。 下って上って靖国通りに辿り着いたら、丁度ペトリカメラの東京営業所のビルのあったところだった。
境内で火遊びをしたバカのお陰で未だ空気はピリピリしており、其処彼処に背広を着た警備。
偉そうに踏ん反り返る村田蔵六の野郎を右に見つつ、拝殿に額づいてから靖国会館へ。
貞花先生の差配なので年寄夫婦の客が多く、携帯鳴らしたり一人で三席占拠したり傍若無人気味乍ら、女流にちょっかいを出す厄介は少な目。

貞花先生以外は若手からの顔付け。

「酒呑童子」宝井琴屯
「熊田甚五兵衛」田辺いちか
「沢村才八郎」一龍齋貞鏡
「魚屋本多」神田山緑
<中入り>
「赤穂義士銘々伝 大高源吾」宝井琴柑
「円山応挙の幽霊画」田辺一乃
「関ヶ原異聞・八丈島物語」一龍齋貞花

貞鏡さんは硬さと柔らかさのバランスの良い口調になっていた。
琴柑さんは演出過多と説明的に過ぎる部分(これは客層を考えると仕方がないのかもしれないが)気になったが、安心して聴いていられる。

トリの貞花先生、「面白い話ではないですが、情景を思い浮かべていただければ」と前置きして八丈島に配流された宇喜多秀家の話。
途中で先代文楽の大仏餅の一件の一歩手前の、間なのか絶句なのか良く分からない沈黙が何度もあってヒヤリとしたが、それ以外は流石の「聴かせる芸」。
顔付けを見て逡巡したが、行って良かった会。

貞花先生、中入りで引き出物を配ったり募金箱を持って回ったり八面六臂。
まだまだお元気そうだったので安心した。


2016-05-01 境界の有無 [長年日記]

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(三日目)

三日目になって中々の入り。

「青龍刀権次(3)爆烈お玉」玉川太福/玉川みね子
五年喰らって市ヶ谷監獄に入っていた権次。 生まれ故郷に帰って地道に暮らそうと思い立つも、生き別れた家族を探すうちにまたもや仇敵に巡り合ってしまう。
すぐに頭に血が上り、怒ると粗忽に拍車が掛かる小悪党の悲哀。
爆烈お玉は最後の最後に漸く出て来て、さぁこれから・・・と言うところで続きは次回。
良く出来ている。

「清水次郎長外伝 荒神山の間違い (3)飯田の焼き討ち」 神田春陽
こちらもおっちょこちょいの馬鹿が先走ってしくじる話。
大立者の出番は少ないのだけれど、脇役に味が有るのでじわじわと盛り上がり、さぁこれからと言うところでまた次回。

一回が30分としても十日で300分=5時間。 木戸銭が千円ポッキリと言う気楽さもあるが、続き物を細切れでじわじわ聴いていくかつての寄席の愉しみを追体験。

_ Photo Infinity Tokyo 2016

北島明、小林幹幸、笹口悦民、設楽茂男、中村和孝、舞山秀一、皆川聡。 6人のカメラマンがお仕事抜きで撮った写真展。
(それは恐らく世間的には写真なのであろうが) 私には写真であるようには思えなかったものもあったが、美術・工芸として捉えれば確かに美しくはあった。

会場は南青山の小原流会館の地下にあるhpgrp GALLERY TOKYO。 入口に扉の無い開放的な空間で入りやすいが、それは内と外との境目が無いと言う事であり、落ち着いて見られないのはいただけない。

地下一階に入る他のテナントは全て飲食店で、昼時に行った所為もあってか厨房からの排気が滞留し、様々な食べ物の匂いで溢れている。
悪臭ではないのだけれど、五感のうちの一つが常に刺激され続けている中で別の五感の一つを働かせると言うのは、中々に骨が折れた。

高いところから照らされているので、額装されたガラスの反射などは然程気にはならなかったが、照明は天井の蛍光灯のみ。 カラーの作品もある中、色温度についてどう考えているのか、考えていないのか。
写真を「見て貰う」と言う点に於いて、会場選びが雑だったのではなかろうか。

設楽茂男
木の葉や木片、貝殻などをじっくり撮った静物。
蝋燭の炎を撮った一点のみ、ガラス有りの額装だったが、ほかは全てむき出しのプリント。
スーっと浮き上がってくるように見えて驚き、瞬きをすると元に戻る。

小林幹幸
いつものスクールガール物。
写真そのものではなく、何かを足すことによって作品として成立させている。
自己模倣に陥りかけているような、美しくはあるが哀しい写真。

北島明
物と人の組み写真で7点。
真っ黒も真っ白も無い、黒に近い灰色と白に近い灰色とその間の色のなだらかな諧調が美しいプリント。

舞山秀一
長い事撮り続けている動物園の写真。
ぱっと見て全体を見渡せる大きさを超えると、受ける印象がガラリと変わる事を改めて感じる大写しの孔雀。
他の写真もそうなのだけれど、寄って細部を見て、離れて全体を、行きつ戻りつして見ていると、動物の居る部分に視線か吸い寄せられるような不思議な感覚。
これが面白かった。

前述の通りで私の思う「写真」とは異なる出品作も多く、図録のサイズにすると判らなくなってしまう作品も有ったので図録は見送り。


2016-04-30 有意義な「人生の暇潰し」 [長年日記]

_ 黄金週間 十日間連続読みの会(二日目)

朝練講談会を主催する神保町講談会(わかりにくい)の連休特別企画。 続き物を毎日十日間読み継ぐ。
毎日来る客もいるので、チラシが要るかどうか一々訊いてくれるのが嬉しい。
この会は差配をする人が「わかってる」人なので、客としてのストレスが送り手には溜まらないのが良い。


「青龍刀権次(2)偽札」 玉川太福/玉川みね子 
開演前、幕の向こうから三味線の調子を合わせる音が漏れ聞こえて来て、徐々に聴く気分が盛り上がってくる。

マクラまでは黒縁眼鏡の太福さん。 本編に入る前にスッと外して畳む。 この儀式めいた所作が絵になる。

小悪党が巨悪を強請ろうとして嵌められて翻弄され続ける、情けなく救いもない話なのだけれど、全く感情移入出来ない奴しか出て来ないのに、きっちり聞かせて飽きさせない。

「清水次郎長外伝 荒神山の間違い 三本椎ノ木お峰の茶屋」 神田春陽
時節柄ナニですが、博奕打ちのお話をと一と笑いさせてからおずおずと。 まだ導入部で小競り合い程度。 次郎長の乾分も出て来ないのだけれど、そこは巧く作られていて、個性的な脇役が見せ場を作るので楽しく聴ける。

落語で言うと子別れの上とか中とか、単体では物語としての魅力に欠けるし大して面白くもなく、端折っても見せ場の部分だけで物語として成立する場合端折られてしまう部分。
そう言う「つまらないなりに味のある部分」。 ゲラゲラ笑うだけではない部分の話芸の魅力。
全員が全員受ける根多で勝負してくるホール落語みたいな会では味わえない、有意義な「人生の暇潰し」。

_ 石川栄二写真展 「みずとか はなとか はっぱとか」

四谷四丁目のギャラリー・ニエプスへ。 小体だが静かで見やすい。
文字通り「みずとか はなとか はっぱとか」をスクエアフォーマットのモノクロで展示。

水や濡れた葉、泥濘などを撮っても乾いた感じになり、ピントが合ったところはきっちりと、アウトフォーカスは暴れる三枚玉っぽい描写。
ポストカードを購った際にどんなカメラを使っているのか尋ねたところ、リコーフレックスを使っているとのこと。(他に国産スプリングカメラなども)

これで腑に落ちた。 確かに富岡光学の三枚玉らしい描写で、これがトリオターとかノバーとかツァイスの三枚玉だとしっとりしてしまうし、テッサーだとカリカリしてしまう。
柔らかくも乾いた感じなレンズの味が、作風に合っていた。
プリントも芯がしっかりしていて美しい。 私の好きな、風邪を引いた時に見る夢の様な写真。

_ 二人展+グループ展『part of the whole』

Gallery NIW は江戸川橋から鶴巻町方向へ少し行ったところに出来た新しい展示スペース。 二人展と四人でのグループ展を同じ会場で開催すると言う珍しい形態。

面白かったものを掻い摘んで。

Nishi Norimasa
黒と灰色の間の色と黒の間の色合いが美しい、風景と静物の間の暗がりを切り取った写真。
暗闇で目を慣らすように、じっくり見ていると諧調のはざまの色まで見えてくるような、何時までも眺めていたい写真だった。

黒滝千里
凍らせた花で6点。
凍らせることによって細胞壁が壊れ、透けた花びらの濡れ濡れとした美しさ。

Megumi Michelle Kawaguchi
動物園で撮ったカラー4点。
キャビネより更に小さいプリント。
大きく伸ばさないからこそ感じられる、 黒い台紙の向こうの覗き穴の世界。

写真もさること乍らギャラリーそのものも居心地の良い空間であった。


2016-04-26 どうとでも解釈できる曖昧な表情 [長年日記]

_ 松岡菜摘ファースト写真集「追伸」

HKT48に所属する松岡菜摘の初写真集、撮影は佐藤裕之。
期待はしていなかったと言うか、そもそも買うつもりもなかったのだけれど、積んであった週刊ヤングジャンプ 2015 43号のグラビアを見直して驚いた。 これは買わねばならない。

セーラー服で始まり、セーラー服で終わる構成。 その間に水着やランジェリーも含めた様々な衣装で撮ったカットが挟まる。
水着やランジェリーは体形には合わせていて、布面積が小さめな物もあるが穏当なデザイン。 煽情的なポーズを取らせる訳でもなく、Les sucettes的な暗喩を込めた小道具を使わせる事も無い。

松岡菜摘は撮られるにあたって「撮られるに任せる」と言うか、感情を露わにしない。
時折笑顔は見せるが、機嫌が良いのか悪いのか、楽しいのか楽しくないのか、眠いのか。
どうとでも解釈できる曖昧な表情が大半を占める。

主張はしないのだけれど、その分よく分からない負圧の様なものが働いていて、知らず知らずのうちに引き込まれてしまう。

Femme fataleと言う物は、実に意外極まるところに転がっているもので、斯く言う私も松岡菜摘に躓いて転んで途方に暮れているところである。
何が良いのか何処が好きなのか、説明らしい説明をする事が出来ないのだけれど、説明のつかないもどかしさに、答えを探してまたページを繰ってしまう。
おそらくそうさせるような意思が、この写真集を作り上げる際にハンバート・ハンバート氏によって込められていて、それに我々は踊らされるのだと思う。

さっきまでは好きでも嫌いでもなかった松岡菜摘を、最後のページをめくる頃には好きになっている。
まだ四分の一も終わっていないが、今年一番の悩ましい写真集。


2016-04-21 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 21号

篠田麻里子
巻頭7ページ14カット、撮影はTakeo Dec.
04・05合併号で「ラスト水着」と言うのをやってしまったので、薄着のグラビア。
水着にはならないと言うだけで、撮られ方はいつもの篠田。
1~3ページ目は抜けるような青空の砂丘で大き目に、4・5ページ目はモノクロ、6・7ページ目は光を強めに当てた屋内。
4ページ目の右下、鏡に向かうカットが美しい。

加藤里保菜
巻末5ページ8カット、撮影は西村康。
眼鏡込みで「顔」になっている人が、敢えて外したカットを後半に3枚。
眼鏡ではにこやかに、外して睨めつけるように。
アイデアとしては面白い。


2016-04-20 蠱惑と魅惑 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 50号

西野七瀬
全篇屋久島ロケ。 巻頭「麓の章」6ページ12カット、巻末「山の章」6ページ16カット。 撮影はTakeo Dec.。
降らないがすっきり晴れない、私好みの空模様。 11月の半ばの発売だが、南の島と言う事もあってか全体的に薄着。
仕草やポーズも、不器用と言うか馬鹿正直と言うか、思わせ振りなものにはどうやってもならない。
誘いの隙のようなものは無いので蠱惑的ではないが、嘘偽りは無さそうで、そこが魅惑的ではある。
煽情的なカットは無いのだけれど、ページを繰って行きつ戻りつ眺めていても飽きない、不思議な出来。
眼福。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 51号

おのののか
巻頭6ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
ビキニのみで4着、水着のみで押す構成。 ポーズやら何やらでの補正が目に付くが、そう言う方針なのであろう。
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔と作った笑顔の二態で6ページ。 凄いものを見た。

松元絵里花
巻末6ページ20カット、撮影は佐藤裕之。
大きく使えるカットが少なかったのか、コラージュ的に小さめの写真を鏤める割り付けが過ぎて煩わしい。
まぁ顔見世と割り切ってみれば悪くは無い。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 52号

馬場ふみか
巻頭7ページ13カット、撮影は佐藤裕之
光を強く当てると眩し気な表情になって険が出るのだけれど、柔らかい表情を切り取れているのは夕景の一枚のみ。
身体の線を切り取ったカットも少なく、何を目指したのか良く分からない7ページ。

松田るか
巻末5ページ13カット、撮影は唐木貴央。
前後左右から映える角度を探りつつ撮っている。
笑うと些か品下がるのは瑕だが、軽く俯いて目を伏せた表情などは実にどうも。


2016-04-19 充実は欠落の不足 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 40号

最上もが
巻頭7ページ14カット、撮影は桑島智輝。
髪型からカラーコンタクトから作り込んで人前に出る姿が「最上もが」なのであろう。
裏方もしっかりしているのだと思うが、綻びを見せることは先ず無い。

松本愛
巻末5ページ9カット、撮影は桑島智輝。
ファッションの撮られ方を引き摺っているようなところはあるが、囚われ過ぎていないのは良い。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 41号

武田玲奈
巻頭6ページ18カット、巻末3ページ6カット。 撮影はTakeo Dec.
悪くない、寧ろ良いのだけれど、やはり目に生気が無いのが気になる。
素材の良さに寄り掛かってばかりで、生かそう伸ばそうとする工夫が感じられない。
撮る方は何とかしようとしているのであるが。

藤原令子
巻中4ページ4カット、撮影は細居幸次郎。
すっかり大人びて役者の貌である。
4ページ目の睨め付けるような表情が良い。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 42号

佐藤美希
巻頭7ページ16カット、撮影はTakeo Dec.
とっかえひっかえほぼ水着。 程の良い体形と煽情的でありつつも遣り過ぎないポーズと構図。
4ページ目のみ、上に一枚着たカット。 タートルネックの白いニットの描き出す肩から二の腕にかけての線が美しい。

伊藤しほ乃
巻末5ページ10カット、撮影はHIROKAZU。
巻頭とは打って変わって「これでもか」と煽情的な5ページ。
そう言う売り方なのだと思うが、狙い過ぎているのが一寸鼻につく。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 43号

松岡菜摘
写真集の未使用カットから巻頭7ページ12カット、撮影は佐藤裕之。
水着とセーラー服なのだけれど、どちらを着ていても表情にブレが無く、カメラと素で向き合えている。
上だけセーラー服だったり、水着の上に薄物を羽織っていたり、暗喩で青少年のリビドーを刺激するようなカットが憎らしく巧い。
何気なくページを繰っているうちにコロリと殺られる。
買わずに済まそうと思っていたが、この写真集は買わなければならない気がしてきた。

太田夢莉
巻末5ページ8カット、撮影は門嶋淳矢。
気が付いたら死んでいる(こちらが)感のある松岡に対して、向こうから積極的に殺しに来る太田夢莉。
前門の虎、後門の狼。
物怖じせずにカメラの前に立つ太田夢莉は、カメラのその先を見ている。

アイデア勝負の大道具も含めて面白い8カット。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 44号

伊藤萌々香
巻頭7ページ20カット、撮影は桑島智輝。
10月1日発売なのであるが、夏らしい南国の浜辺で撮った20カット。
惨憺たる出来。
眩しがると眠そうになるので太陽を背負わせたり出来る工夫はしているのだけれど、如何せん光線が強すぎる。
モデルにもカメラマンにもこの不出来の責任は無い。

松井珠理奈
写真集からの未公開カットで巻末5ページ12カット、撮影は渡辺達生。
全編商売用の松井珠理奈。 そのままお蔵入りさせた方が良かったようなカットが並ぶ。
獣脂とグルタミン酸ナトリウムがコッテリと効いたようなのが好きな向きには堪らないのかもしれないが、私は真っ平御免被る。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 45号

篠崎愛
巻頭6ページ、撮影は桑島智輝。
全編肉感で押し捲りつつ、くびれるところはくびれていることを見せてバランスを取った15カット。

内田理央
巻末5ページ、撮影は桑島智輝。
好対照な「線で見せる」14カット。
巻頭もそうだが、美点を生かすことで被写体を生かしている。
充実は欠落の不足であり、欠落は充実の不足であって表裏をなす・・・とか何とか埴谷雄高が書いていたような朧げな記憶があるが、対称的な巻頭と巻末であった。


2016-04-18 恍惚と不安 [長年日記]

_ UTB 2016 5月号

今泉佑唯・小林由依・平手友梨奈(欅坂46)
表紙と巻頭グラビア12ページ13カット、うち見開き1か所。 撮影はサトウノブタカ。
三人で撮ったカットと一人2ページ2カットずつで構成。 三人で撮ったカットは小林と今泉を脇侍にした三尊形式。 平手の上背が拳半分ほど大きく、実にバランスが良い。

小林と今泉は真っ直ぐおろすか軽くうねらせるか程度のアレンジに止めているが、平手友梨奈は編み込んだり前髪の分け目を変えたり三態。 ちょっと弄るとガラリ印象が変わる。
眉尻が少し下がっているので、隠すと意志が強そうに、出すと心細げになり、「撰ばれてあることの恍惚と不安」を象徴するかのよう。
小林と今泉が居てこそ成り立つ三幅対。

鈴木美愉・渡辺梨加(欅坂46)
10ページ12カット、撮影は西條彰仁。 一人2ページ2カットずつ、残りは二人で。
洋館の中と庭での撮影。 強い光を直接当てずに撮っているので、総じて柔らかな表情。
表情の変化は少ないのだけれど、その分造形美は素直に切り取れている。

伊藤万理華(乃木坂46)
探偵と依頼者の少女の二役を演じる10ページ10カット、見開き2か所。 撮影は佐藤裕之。
2か所ある見開きでは合成して二人の伊藤万理華が向き合う。
視線と意識の何れかだけを向ける事も出来るし、外す事も出来て、カメラに対して正面も切れる。
空恐ろしい選抜の三列目。

高山一実(乃木坂46)
10ページ9カット、見開き1か所。 撮影は西村康。
ミニ丈のニットワンピースでガーリィに、デニムのショートパンツと襟ぐりの広いTシャツに刺繍の無いスカジャンと言った趣のものを羽織ったカットを中心にボーイッシュに。
表情を作らずにカメラと向き合う戸惑いが出たような表情が良い。
3ページ目の光が柔らかく廻り過ぎて顔の立体感が希薄なカット。 顎に添えた人差し指とそこに連なる右手の醸し出す ennui な表情に唸る。
このカットに限らず、高山一実は手の作る表情が美しい。

川本紗矢(AKB48)
9ページ10カット、撮影は佐藤裕之。
擦れること狎れることなく、カメラと自然に向き合えるようになっている。
意味があるような無いような腕や指の絡みが、写真に奥行きを持たせている。
カーディガンやセーター越しに出る身体の線を斜めや背後からの光で描き出したカットが美しく、冬らしいグラビアに仕上がっている。

後藤萌咲(SKE48)
8ページ10カット、撮影は長野博文。
長野博文の毒気に中てられてか怯えたような表情や笑顔になり切れずに開けた口を歪めたようなカットも散見される。
引きのカットは然程悪くないので、撮られ慣れていないのが災いしたのだと思う。
5ページ目は辛うじて良い。

中井りか・荻野由佳(NGT48)
8ページ11カット、撮影は門嶋淳矢。
雪の降り積む屋外でセーラー服、壁も床も白いスタジオで水着の二本立て。
丸顔の中井と瓜実顔の荻野。
水着と部屋着のパーカー、バスケットシューズを、中井は暖色、荻野は寒色で纏めた対比の妙。
冬の新潟の鉛色の空から差す光を廻したような屋内撮影分のライティングも相まって、季節感が上手く出ている。

長濱ねる(けやき坂46)
10ページ10カット、撮影は長野博文。
背後からの光で起こしたハレーションをアクセントにしたり、ハイキーに飛ばしたり、白ずくめのスタジオで撮ったり、如何にも長野らしい10カット。
上手く撮られてくれており、破綻は無いのだけれど自己模倣の陥穽に落ちていると言うか、定石通りで面白味は薄い。

松野莉奈(私立恵比寿中学)
7ページ11カット、撮影は河西遼。
彩度を落としてハイキーに。 こう言う撮り方だと諸々雑になるカメラマンが多いが、ピントや深度、露出は丁寧で且つ適切。 構図を切るセンスも良い。
撮られる側も肚が据わっていて、カメラときっちり向き合えている。
大当たり。

植村あかり・工藤遥・矢島舞美・宮本佳林・佐々木莉佳子(ハロープロジェクト)
8ページ7カット、見開き1か所。 撮影は佐藤裕之。
集合で2カット、あとは光を強く当てて背景紙の前で 一人1ページ1カットずつ。
まぁ、詰まらない。 カメラマンの仕事以外の部分がどうしようもない。


2016-04-17 あるのはただ、かっこよくて素敵な講談とそうでない講談 [長年日記]

_ 朝練講談会「朝練二扇会」vol.7(28.4.17)

今週の朝練講談会は「朝練二扇会」は神田松之丞さんと上方落語の月亭天使さんの二人会。
松之丞さんの出る回は熱心な人が早くから並ぶが、遅く行っても入れないと言う事は未だ無いので何時もの時間に何時ものバスで向かう。

「太閤記 太閤と曽呂利」田辺いちか
開口一番で短めに。
落ち着いて聴ける。

「寛永宮本武蔵伝 偽巌流」神田松之丞
悪い奴が出てくるとねっとりと実に悪そうに、職人が出てくると早とちりとおっちょこちょいをてんこ盛りに演る。
この過剰であるが故の面白さと言うのは、今の松之丞さんならではのものであると思うので、見られるうちに見て聴いておこうと思う。

「饅頭こわい」月亭天使
米朝-可朝-八方-八天-天使、となるので、米朝師の玄孫弟子にあたると言うマクラから。
上方ではこう演るのかと感心しながら聴く。

朝練講談会を主催している滝田ゆうが化けて出たような容貌の神保町講談会の人は毎度面憎い顔付けをしてくる。
二人出るうちのどちらか片方は観たい(聴きたい)ようになっているので、うーむと唸りつつも日曜の朝に早起きをする羽目になっているのだけれど、これが実のところ私の食わず嫌い(女流忌避)を治すのに効いている。

東京かわら版の人がツイッターで

講談に男も女もなくて、あるのはただ、かっこよくて素敵な講談とそうでない講談だけだなあ


と書いていたが全くその通りで、女流だから全部駄目で、野郎だから全部良いと言う事ではなかった。

実に有り難い会。


2016-04-16 瞳の自然な輝きと表情 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 16号

深川麻衣
巻頭6ページ18カット、オマケポスター(これが実に良い)付き。 撮影は藤本和典。
兄弟誌のミラクルジャンプとの連動グラビアになっているようだが、そちらは未見。
水族館の新米職員と言う設定なのだけれど、「自分ならざる誰かになってもらう」と言うやり方は深川麻衣を撮る上で有効だったようで、いつも以上に柔らかい表情。
些か塗り絵が過ぎるのが疵だが、オマケのポスターの表情も実に良い。

広瀬すず
写真集の宣伝方々巻末4ページ11カット、撮影は倉本GORI。
薄着になると骨太で且つ肉々しいのを隠してみたり、意図しない形で強調してしまったり、ポーズを付けている割に意味がない。
商売用の自分が出過ぎる被写体をコントロールしきれていないので、面白味も薄い。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 17号

麻亜里
巻頭8ページ18カット、撮影はTakeo Dec.
顔を顔として認識できる角度と身体の線が綺麗に見える角度が広いのでポーズの自由度が大きく、何処からどう切り取っても絵になる。
粗を隠す必要が無いので窮屈なボーズをとる必要がないのも表情の柔らかさに繋がっており、撮られ慣れてはいるが擦れたところは無いから上手く隙が作れている。
余計なものを入れていないから瞳に自然な輝きと表情があるのも良い。

渡辺幸愛
巻末5ページ7カット、撮影は桑島智輝。
表情は諧調に乏しく、水着になると硬さもあるが、妙に作り込んで誤魔化さないのは良い。
1ページ目の危険なようで安全に切り取ったカットが良い。 桑島智輝には珍しい、人の悪い写真。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 18号

武田玲奈
発売される写真集からのダイジェストと言う位置付けで巻頭7ページ15カット、撮影はTakeo Dec.
服を着ても水着になっても絵になり、道具立ても舞台も衣装も、カメラとの向き合い方も良いのだけれど、文字通り画竜点睛を欠くのはあからさまなカラーコンタクト。
表情は生きているだけに、目が死んでいる事に薄気味悪さすら感じる。

後藤萌咲
巻末4ページ7カット、撮影は門嶋淳矢。
鼻の標高が高く下顎が小さい。 軽く顎を引いたところを斜めから撮ると実に絵になる。
笑顔と真顔と、唇つんと尖らせて何か企む表情くらいしか出来ていないのだけれど、そんな細かい事はこの際どうでも良い。
目の前にある美を小細工せず誠実に切り取った門嶋淳矢が良い仕事。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 19号

畠山愛理
巻頭7ページ13カット、撮影はTakeo Dec.
新体操日本代表である。 笑顔は絵に描いた様な作り笑顔なのだけれど、練習風景になると表情が生きて来る。
Takeo Dec.がスポーツも撮れる事に驚く。

鈴木優華
巻末7ページ13カット、撮影は細居幸次郎。
ファッションの仕事をしていると、自分を見せなければいけない仕事でも服を見せるための撮られ方をしてしまう事が良く有るが、鈴木優華は自分を見せる撮られ方が出来ている。
意識しないと口が閉じないタチなのか歯見せ笑顔が多いのだけれど、口の開き方で変化が付いているのは面白い。
外で撮ったカットも悪くは無いが、屋内で撮った分の出来が実に良く、4ページ目が秀逸。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 20号

内田理央
巻頭7ページ11カット、撮影は桑島智輝。
台湾での撮影なのだけれど、桑島智輝の「その場にあるもので絵を組み立てる」技術とセンスが生きている。
後ろから撮ると映える内田理央であるが、要所々々でそれを挟み込み、ほぼ1ページ1カットにして大きめの写真で押す構成も良い。

牧野真鈴
巻中4ページ8カット、撮影は西村康。
原駅ステージAで歌って踊っている時は堂々として見えたのだけれど、打って変わって借りてきた猫のような大人しい表情。
どういう力が働いているのかは判らないが、写真の取捨選択が不可解。 小さく使われているものの方が良い表情。
「こう売りたい」に合致しないのかもしれないが、実に勿体ない。

渡邉理佐
巻末5ページ11カット、撮影は藤本和典。
きりりと濃く引いた眉が前髪の分け目から覗く。
黒のニットワンピースのカットが良い。 
クーラーの無い部屋でもそんなものは着ないであろうと思われるような布面積の少ない部屋着で無理に薄着にさせるより、着せることで身体の線を美しく見せる工夫。
ページ目の、本で鼻から下を隠したカットが秀逸。 口元を隠すことで、視点が誘導されて目の表情が生きて来る。


2016-04-14 平手友梨奈は目で殺す [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 10号

植村あかり
巻頭7ページ19カット、うち見開き1か所。 撮影は細居幸次郎。
細居幸次郎で屋内、外れようがない。 水着中心ではあるがどうやっても煽情的にはなりようもなく、そう言う狙い無しに仕草や表情を切り取ったカットは良く撮れている。
無理に水着にすることも無いと思うのであるが、これも商売。

西岡葉月
巻末ページ5ぺージ9カット、撮影はTakeo Dec.
肉感的なところを前面に出して9カット。 粗を隠しつつ見せたいところを強調する定石。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 11号

石川恋
巻頭7ページ15カット、撮影は佐藤裕之。
佐藤裕之は強い光を好んで使う作風でも無いが、眩しがるタチなのか下瞼が上がったカットは硬さのある表情。それでも壊滅的に駄目と言う事にはなっていない。

倉持由香
巻末5ページ、一点豪華主義 の18カット。 撮影はHIROKAZU。
自分の売りになる部分を如何に効率よく見せるかについて突き詰めた倉持由香の職人芸。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 12号

金子理江
巻頭6ページ7ページ、撮影は桑島智輝。
金子理江のみが写っているカットは悪くないのであるが、所属しているユニットの3人で写ったカットが挟み込まれており、全体として私の嗜好と正反対のものになっている。
「カワイイに国境も法則もない」との事であるが、私の基準に照らすとカワイイではなく醜悪である。

麻亜里
巻中5ページ8ページ、見開き1か所。 撮影はTakeo Dec.
一服の清涼剤。 見開きの写真が良い。

RaMu
巻末5ページ14カット、撮影は熊谷貫。
熊谷貫ではあるが「お仕事モード」。 引いたカットが多い。
悪くはないが良くもない。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 13号

宮脇咲良
巻頭7ページ10カット、撮影は桑島智輝。
撮られ方の傾向がまた変わって来ており、指原の影響を強く感じる。
何処からどう撮られても動じない肚の据わり方。
こう強くなってしまうと、かつての儚げな表情も懐かしい。

松田るか
巻中4ページ9カット、撮影は唐木貴央。
映える角度の探し方が上手い。
演出過多なところは好みではないが、3ページ目に唸る。

平手友梨奈
巻末5ページ16カット、撮影は細居幸次郎。
14歳らしいあどけない笑顔も見せつつ、カメラと素で向き合うと引き込まれるような凄みも見せて来る。 3ページ目が秀逸。

諸国諸大名は弓矢で殺す、平手友梨奈は目で殺す。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 14号

松岡菜摘
巻頭7ページ16カット、撮影は佐藤佑一。
HKT48は誰が出てきてもカメラときちんと向き合えていて驚かされるが、松岡菜摘も表情を無理に作らないのが吉と出て、上手く撮られている。

今泉佑唯・小林由依
巻末4ページ10カット、撮影は佐藤裕之。
実際に弾けるだけあって、楽器の持ち方も様になっており、そうした道具立ても功を奏してか柔らかな表情。

河村美咲
さらに巻末4ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
古びた旅館で撮られているのだけれど、四畳半グラビアになっていないのは良い。
しかし煽情的な方向に舵を切らねばならないのは判るが、あからさますぎると醒めてしまう。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 15号

白間美瑠
巻頭7ページ10カット、撮影は山口勝己。
前号の巻末に次号予告のページが無く、目次のページに小さく告知が有っただけだったので何かしらあったのだとは思うが、災い転じて福と言うか、面白いものが出てきた。
顔が顔として認識できる角度は狭いが造作に瑕疵は無く、体形にも粗は無いので山口勝己も余計な仕事に煩わされずに「綺麗に撮る」事に注力出来ている。 4ページ目と6ページ目が秀逸。

宮脇咲良
13号のアザーカットで巻末4ページ7カット、撮影は桑島智輝。
上手く大人になれて来ている。 若くして売れるとこれが難しい。

松永有紗
さらに巻末4ページ7カット、撮影はサトウノブタカ。
1ページ目で既に顔見世グラビアとして成立している。
構成の妙。


2016-04-13 見禮俗之士、以白眼對之 [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 04・05号

篠田麻里子
表紙、巻頭、巻末、オマケ写真集が2冊。 1号丸ごと総計37ページ。
巻頭は5ページ8カット、巻末も5ページ13カット。撮影はTakeo Dec.
「ラスト水着」「総計37ページ」と大きな事を書いてある割に寂しい紙幅。
写真の方はいつもの篠田。 可もなく不可もなく。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 06・07号

武田玲奈
巻頭7ページ16カット。 撮影はTakeo Dec.
素材としては悪くないのであるが、例によって瞳を大きく見せるコンタクトレンズで目が死んでいる。
にこやかな表情でも、カメラを拒絶するような。 「見禮俗之士、以白眼對之」と言う事なのか。

高橋ひかる
巻末4ページ5カット、撮影は桑島智輝。
鎖骨を見せたカットが有るくらいで、きちんと服を着ている。
それが心穏やかにカメラと向き合える効果を上げたのか、柔らかな表情。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 08号

生田絵梨花
7ページ10カット、A3の割と良い紙のオマケポスターが付く。 撮影は細居幸次郎。
写真集の販促グラビアなのだけれど、選り抜きで良い写真を使っている。
写真集にはあるが、正直申し上げて蛇足だった水着部分は無し。
諸般の事情やら決まり事でそうなっているのだとは思うが、それが吉と出ている。
高緯度で光が柔らく廻っていると言うのもあると思うが、屋外で撮った細居幸次郎の写真としては出色。

北野日奈子
巻末6ページ14カット、撮影は細居幸次郎。
生田絵梨花の写真集は、細居幸次郎にとっても転機となる仕事だったのかもしれない。
前半の屋内で撮った部分は高いレベルで安定した仕事だが、後半の屋外撮影分がまた良い。
北野日奈子の表情はまだ諧調に乏しいところがあるが、動かすと生き々々してくる。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 09号

麻亜里
巻頭7ページ18カット、撮影はTakeo Dec.
整った顔と肢体に年齢が追い付いてきた。 発掘されたような扱いにはなっているが、そう言う売り出しになっているのだろう。
温泉で水着と言う趣向のページ。 当たり障りのないカットを大きめに、煽情的なカットを小さめに使っているところに編集者の苦労が偲ばれる。

生田佳那 巻末4ページ8カット、撮影はTakeo Dec.
顔見世グラビアとしては、良く撮れている。


2016-04-10 室町→四ツ谷 [長年日記]

_ 朝練講談会(28.4.10)

「円山応挙の幽霊画」田辺一乃
「徂徠豆腐」一龍斎貞寿

一乃さんは浚っている感じで、チラリチラリと何やらメモのようなものに目をやる。 客前で演って練り上げていくものなのでこれはこれで良い。
完成したものをまた聴きたい。

貞寿さんはパァパァ良く喋ってガチャガチャと入れ事が入る。 「洒落小町」のガチャ松っつぁんみたいな感じ。
嫌いな人は嫌いであろう。 私は好きな種類。
貞心先生の「徂徠豆腐」と較べると矢張り早口で、単位時間当たりの情報量に占める言葉の割合が多い(溜めが少ない)。
早口でも不快ではないのは間が良いからだと思う。
まだ花粉症は辛そうだった。


今日の朝練講談会は客筋が聴きに来ている客(面白ければ笑うが、笑うためには来ていない)と、笑いに来ている客(演芸は「笑う為のもの」と言う先入観がある)に二分されていた。
笑いに来ている客は「入れ事=ギャグ」だと思ってるので、息詰まる場面で空気を入れるためにやってるのも説明のために入れるのも全部笑う。 義務ででもあるかのように笑う。
今日は笑い袋みたいなのが後ろに来てしまい一寸不快。
まぁ、こう言う客が笑わないと、釈場の空気なんざ重くて演りにくいとは思う。

_ Elizabeth Char 写真展「巴里画」

四ツ谷のギャラリーニエプスで開催中の写真展へ。

現代の(現在の)パリで撮影されたストリートスナップ。
撮り方は相手に気配を感じさせない掏摸的手法と、相手に正面からぶつかる強盗的手法の丁度中間の、かっぱらいの様な感じ。 撮られている事に気付いている人もいるし、気付いていない人もいる。

サン・セヴラン教会、サン=ポール駅etc...街そのものはブラッサイやドアノーやエルスケンで見てきた、紛うことなきパリなのであるが、闊歩する人々の肌の色や服装は、これ迄に見てきたパリのストリートスナップより多種多様。 アフリカ系でも東西南北様々。 
闊歩するのはスマートフォンを手にした現代のパリ市民。 それでも依然としてパリはパリなのであった。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 01号

大和田南那
巻頭グラビア7ページ11カット、撮影は小池伸一郎。
腰回りを正面から撮らず、腰から下を出来るだけ太く見せないように秘術を尽くしたような撮り方。
珍しくハイキーに仕上げているのも含め、粗を隠して良いところを引き出そうとする努力は見て取れ、或る程度は成功してている。
表情は単調だが、カメラと素で向き合えているのは良い。

入山杏奈
5ページ7カット、巻末には珍しく見開き1か所。 撮影はサトウノブタカ。
割り付けが上手い。 巻末で紙幅は少ないながら、訴求力のあるカットを厳選して大きく使っての5ページ。
それだけ入山に被写体としての魅力が有るという事でもある。
1ページ目と見開きが特に良い。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 02号

最上もが
9ページ29カット。 カラーコンタクトで読めない表情まで含めて「作り込まれた最上もが像」を愛でる為の写真としては良く撮れているが、ブツ撮りに近いので、質としての高さは認めつつも好きには慣れない種類の写真。
どう作り込んでも最上もがらしく在ると言う事については称賛に価すると思う。

御伽ねこむ
巻末も作り込み系グラビアで6ページ12カット。
瞳孔が開いたまま硬直したような表情が多く、良し悪し以前に生理的に受け付けない。

_ 週刊ヤングジャンプ 2016 03号

長澤茉莉奈
7ページ10カット、撮影はTakeo Dec.
放プリユースと言う、ライブを中心に活動しているアイドルを視野に入れている人々以外には未だあまり知られていないグループに所属する、童顔のトランジスタグラマー。 講談社主催乍ら講談社色の薄いオーディションでファイナリストに選出される過程で注目された事からの抜擢人事なのか、表紙無しでの巻頭グラビア。
どうしても肉感で押す感じになるのだけれど、カメラを見つめる眼差しは強く、陰惨さを感じさせないのは良い。

松井咲子
巻末5ページ9カット、撮影は山口勝己。
長身痩躯乍ら凹凸は少なく、水着にしても映え難いところを人を使ったブツ撮りの名手が職人の技と言うか錬金術と言うか、無から有を生み出して9カット。
皮肉なことに、1ページ目の服を着ていて且つ身体が殆ど写らないカットが実に良い表情。


2016-04-07 [長年日記]

_ 更新情報

コラム置き場に大島優子の判り難い演技についての一文。

光を吸い込むような芝居をする女

_ 今日の一枚

谷中霊園の夜桜
谷中霊園の夜桜


2016-04-03 春雨に濡れて行く [長年日記]

_ 朝練講談会 前座勉強会 vol.10

前座勉強会なのだけれど、ゲストが琴調先生。 客の出足は読めないが入れない事も無かろうと何時も通りに家を出て、何時も通り軽く手繰ってから福徳稲荷に額づき、のんびり歩いて日本橋亭へ。
開演時間まではまだ少しあったが、既に20人から並んでいた。

「熊田甚五兵衛」田辺いちか
前に聴いた時は半ばまでだったが、通して演っていた。
途中で絶句してとっちらかったりもしたが、持ち直して最後まで。
口調も声も悪くないので、あとは場数であろう。

「三方ヶ原軍記 五色備」神田みのり
修羅場読みである。 客の前で演らない事には 身になっていかないので出来不出来は兎も角、こうした場があるのは良い。
リズムも抑揚も些か単調ではあったが、先ずは読めてからの話。

「中村仲蔵」宝井琴調
前座時代、三方ヶ原軍記の稽古をする場所に困って開場前の本牧亭で浚っていたら前進座の面々が見学に来てしまった思い出から話に入る。 張り扇をパタリと鳴らして場面転換、会話と地の文を行き来。 聴く方が前のめりになってくると軽く入れ事をして空気を入れる。 程が良い。
言葉が綺麗。 仲蔵が蕎麦屋で出っ食わす御家人の江戸言葉が、実にらしくあった。

_ 里咲りさ 「WALCALLOID/TURE」発売記念イベント(タワーレコード錦糸町店)

タワーレコード錦糸町店の十周年を記念したイベントウィークの最後に里咲りさ。
例によって仕込みから進行から特典会まで、全部ひとりでやる里咲。 勿論歌もうたう。
うたう里咲りさ
リハーサルの最中も間繋ぎに喋っているくらいで、歌っているか喋っているかなのだけれど、黙っているときは黙っているときで何かしら考えている。 企んでいるて言った方がより正確だろうか。
ポケットに隠しているのが別れの気配ではないことを祈りたい。
何かたくらむ里咲りさ
機材の扱いであるとか、拙いところはまだまだあるのだけれど、客の転がし方は実に上手い。
無手勝流で出たとこ勝負のイベントも、顧客満足度は高い。 

なんだか良く分からないまま足を運んでも、なんだかんだで楽しめることは私が保証する。

その他の写真はこちらに。

_ 今日の一枚

里咲りさ
里咲りさ
ペンタックスK10D
ノボフレックス ノフレクサー240mm/f4.5
iso=800 1/100s f5.6 -1補正


2016-03-30 長いお別れ [長年日記]

_ Negicco「矛盾、はじめました。」発売記念インストアイベント

亀戸サンストリートも明日で閉館。
様々なリリースイベントが行われてきたマーケット広場の掉尾を飾るのはNegiccoであった。

仕事を片付けてから押っ取り刀で向かったが、着いたのは六時半過ぎ。
既にベンチは埋まり、立ち見も三列目くらい。

開演が30分近く遅れたこともあるが、始まるころにはステージ前は大入り。
二階通路も鈴生りになっていた。 足を止めた通行人かと思ったら光る棒を振っていることで「目当てで来た客」と判る。

2004年頃にやったリリースイベントはベンチすら埋まらなかったと話していたが、そうした「過去の自分たち」への落とし前を付けに来たような気がした。
「リトルレンズ」「ハレンチパンチ」「SHIP」etc... 話の端々に懐かしい名前が出て来る。
同じ時期に始まったSHIPはとうの昔に活動を終え、 Pinkishも先週末に最後のライブを終えた。
紆余曲折は有りつつも、Negiccoが続いている事に感謝。

リリースイベントなのでタイトルチューンとカップリングの曲を先に歌うが、あとは持ち歌からの選り抜きを予め繋げた音源で畳み掛ける構成。
持ち札から場に相応しい曲を撰ぶと、やはり connie 楽曲が多めになる。

叩き上げの強さで押しつけがましくなく場を盛り上げて行き、最後の曲を歌い終えて捌けるや否やスッとBGMが流されて妙に引っ張らない。

特典会の喧騒を聞き乍ら駅へ向かう。
亀戸サンストリートとも、長いお別れ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

# らっくす [ご無沙汰してます。 ミランダ研究会の一員?だった らっくすです。 Negicco 聞かれるのですね~ サンスト..]

# 新潟のたけだ [どうもお久しぶりです。  Negiccoってホント凄いですねえ。 10年以上続けているのですから。 「SHIP..]


2016-03-28 たつぷり [長年日記]

_ 朝練講談会(28.3.27)

開場一寸前に行って縁台に腰掛けて待って観たい席に座る。
その日観たいものをその日の気分で選べる幸せ。

開演する頃合いにはそれなりに埋まった。

「寛政力士伝 谷風七善根 出羽屋幸吉の改心」神田すず
下手ではないし話の運びに破綻も無いのだけれど、どうにも合わない。
良否ではなく(私の中では「否」なんだが)好悪の問題で全く受け付けない。

以前も「蘇生奇談」の中だったか、五世団十郎の 「たのしみハ 春の桜に 秋の月 夫婦仲よく 三度くふめし」を「三度たべるごはん」に変えていた事があって呆れたことがあるのだけれど、表通りに店を構えていることになっている出羽屋幸吉に職人言葉で喋らせてしまうところにも、美学の欠落を感じる。
嘘でも誇張でも、最後まで騙して気持ち良く聴かせてくれれば文句は無いのだけれど、あちこち引っ掛かって醒めてしまう。
それで良いと言う人が少なからず居るから生業になっている訳で、そっち方面を相手に演っていただき、私は避けて通ろうと思う。

「笹野名槍伝 海賊退治」一龍斎貞橘
相変わらずいい加減なところはいい加減なのだけれど、締めるところは締めて来る。 

主人公がなかなか出て来ない不思議な構成の話を、言い訳はしつつも妙に変えずに読み進めていく。
こういうところで「脱線して、戻って、また脱線して」と言う遣り方が利いてくる。
面白いんだか面白くないんだか良く分からない部分を端折らないのが良い。
刈り込めばすっきりはするかもしれないけれど、聴いていて草臥れる話になってしまうのだと思う。

ひとしきりへらへら笑って過ごす。

_ 第七回 玉川太福・神田松之丞二人会

「溝口半之丞 産女の指物」田辺いちか
太福さんのテーブル掛けが釈台に設えられており、張り扇で叩いても張り合いの無い音しか出ないらしく、序盤は一寸やり難そうではあったが尻上がりに良くなった。

「曲垣平九郎 梅花の誉れ」玉川太福/みね子
お馴染み「出世の石段」である。 時間の都合で上がるところまで。
マクラの間は眼鏡を掛けているのだけれど、取ってパタパタと畳むと本編へ。

「曲垣平九郎 曲垣と度度平」神田松之丞
寛永三馬術 リレー口演と言う触れ込みながら、途中すっ飛ばして国詰めになった曲垣先生のお話。
琴調先生に習ったとかで、上げて貰うまでのエピソードがマクラ。
昨日の今日で聴き比べになるとは思わなかったが、端折るところあり、膨らませるところあり、 まるで違うので驚いた。
曲垣先生、かなり変な人になっていたが、これはこれで面白い。

二つ目んなって漲ったやる気と、これでいいのだろうかと逡巡する心と、微妙なバランスの上に在るから聴いていて面白くはあるが草臥れる。
聴く者に真剣勝負を強いる談志のような芸で行くのだろうか。

お仲入り

「トメ」神田松之丞
最後の最後で講談っぽくなる以外はほぼ年寄り夫婦の会話で進行する落語に近い新作。
遣る事の幅が広すぎて、もう少し聴き込まないとなんだか分からない。

「祐天吉松 飛鳥山親子対面の場」玉川太福/みね子
生き別れた親子が期せずして対面する、泣かせる場面。
こう言う情景を描き出すにあたって、これでもかとドラマを盛り上げて来るのだけれど、これが嵌まるか嵌まらないかで浪曲との相性が測れるのではないか。
私は一寸引いてしまう。

こってり、たつぷりな五席。


2016-03-26 一日十席 [長年日記]

_ 講談 貞橘会(第53回)

らくごカフェにはビルの裏から回らなきゃいけないのを忘れていて上がって降りてまた上がる。

「熊田甚五兵衛」田辺いちか
落ち着いた口調、作り過ぎない声。
悪くない。

「真田の入城」一龍斎貞橘
今年はそこら中でいろんな人が演ると思いますが、と前置き。
大坂の陣は終盤だと思われるので、来年の初めまでは使いまわされ続けるネタだと思われる。

「木村又蔵 鎧の着逃げ」一龍斎貞寿
花粉症が酷いと言う話から始まるが実に酷そうであった。
本編に入る前に「木村又蔵が如何に好きか」についてひとしきり。
講釈の愉しさは、実在するんだかしないんだか判らない人物のエピソードが活き活きと詳細に描かれているところにもある。

「相馬大作 最初の本懐」一龍斎貞橘
本所の上屋敷から平井聖天へ野駆けの途中で哀れ藩主は縊り殺されるのであるが、丁度住まっている辺りでもあり、しみじみ聴いた。

<仲入り>

「裸川由来」一龍斎貞橘
青砥藤綱が川に落とした銭を落とした額以上の投資で回収する納得の行くような行かないような美談。
美談の部分より駆り出された人足の狡く情けない部分に重きを置いたような感じで楽しく。

たっぷり五席なのであるが、肩に力が入り過ぎていないので草臥れない。
貞橘先生目当てで行った会だが、貞寿さんもいちかさんも当たりだつた。

_ 花形講談会「宝井三兄弟の会 Vol.2」

昼の会の受付の時に訊いたらまだ空きが有ったので予約を入れて出直し。

「一心太助一代記 喧嘩の仲裁屋」田辺凌天
「寛永宮本武蔵伝 狼退治」神田みのり
講釈で苦手なのは女を全面に出す媚びたようなのと、声が甲高くて耳に付くのと、無理に男になろうとするのなのだけれど、前座二人がそれだったので一と休み。
こなれて来たらまた違うかもしれない。

「寛永三馬術 度々平住込み 」宝井琴調
小津安二郎の映画や先代文楽の落語にも通ずる、「心地よいフレーズ」を浴びる心地よさ。
侍は侍らしく、中間は中間らしく在り、活きた科白が流れるように耳に入ってくる。

「法然上人御一代記 明石定明」宝井琴星
平安時代の地方豪族の話が発端で、法然上人は「のちに法然上人となる少年」としてちょろっとしか出て来ないのだけれど、琴星先生が悪い奴をヤニっこく悪そうに演ると、それだけで面白い。

<仲入り>

「清水次郎長伝 小政の生い立ち」宝井琴柳
最初の師匠の芦州先生の思い出をひとくさり。

「仕事したくないんですよ」「あ、読むのは好きなんですよ。」
なかなかそうも行かないけれど、出来れば好きなことだけしていたいと言う事だと思う。
そのあたりの心持ちと口調に芦州先生を感じる。

三人三様みっちり三席、満足しつつ聴いていて草臥れない。
良い会だった。


2016-03-22 ほっとする歌声 [長年日記]

_ callme 2ndシングル「Can not change nothing」リリースイベント@サンストリート亀戸

サンストリートも今月限りと言う事で、ここでリリースイベントを打ってきたところが名残を惜しむようにスケジュールを入れて来ている。
callmeのリリースイベントは発売日が閉所後と言う事で、引き渡しが近隣店舗になると言う変則的なもの。
それでもやろうと言う義理堅さもこの三人らしい。

時間にはゆとりをもって出掛けた筈だったのであるが、何時からか始まっていた歩行者天国の余波でバスが遅れに遅れ、着いた頃には四時を回っていたが、準備も遅れていたと見えて丁度リハーサルが終わるところ。
一旦引っ込んで定刻より少し遅れて開演。

楽曲資産がゼロになったところからの新規蒔き直しでキラーチューンがまだ無いのが辛いところではあるが、聞くに堪えない曲もなく、芯になる曲が出来れば構成も楽になるだろう。

振り付けで頑張り過ぎるスクール出身アイドルの悪癖を危惧していたのだけれど、半分当たっていて半分は外れていた。
矢張り動きの難易度や正確さに重きを置きすぎるところはあって、体系の嫋やかさまで損なわれていたりもしたが、三人三様違った振り付けで動きのタイミングのみを合わせてみたり、判りにくくはありつつも遊び心は感じられたし、激しい動きの中でも歌を届けようとする姿勢は感じられた。

秋元瑠海の歌が、嫌味無く上手くなっている。 これは核に成り得るのではないか。
ほっとする歌声。

動画で見ただけでは、本当のところは矢張り判らない。
この三人は、また生で観たい。


2016-03-20 多種多様な躓きの石 [長年日記]

_ 朝練講談会(28.3.20)

昨日のあれは何だったんだと言う感じの平和な開場待ち。
開場前はぱらぱらと云う感じであったが、開演までにはそれなりに埋まった。

「寛政力士伝 小田原遺恨相撲」宝井梅湯
漁師上がりのならず者である荒岩の腕を雷電が閂で圧し折ってしまうと言う凄惨な場面もあるのだけれど、温和な口調もあってめでたしめでたしで終わる。
のんびり見られて、程よく面白くて草臥れない。 こう言う芸も良いと思うのである。

「金比羅利生記 金比羅船」一龍斎貞橘
枕から本編に入っても脱線と余計な入れ事が入って、肝心なところを忘れてしまうようなぞろっぺえなところもあるのだけれど、締めるべきところは背筋を伸ばしてきっちり締めてくる。

梅湯さんは「良い人の良い講談」、貞橘先生は「胡散臭い人の胡散臭い講談」 。
昨日今日ではっきり判ってきたのは、私が欲するのは「胡散臭い人の胡散臭い講談」であると言うこと。

そうならざるを得なかったというのは有りそうだが、ネット上に落っこちてる講釈も「軍記物」「忠臣蔵」「偉人伝的新作」が多く、「感心」「感動」「笑い」ばかりで、猥雑・陰惨なものは見かけない。
これは落語でもそうなのだけれど、救いのない話でも良い演目はある。
探して拾って観て歩きたいと思う。

貞橘先生、来週の朝練講談会にも出演。

_ 原宿駅前ステージ「原宿乙女&ピンクダイヤモンド 公演」(28.3.19)

一度は観ておきたかったので原宿へ。 まぁ、それで秋葉原でも木乃伊取りが木乃伊になった訳であるがそれはさておき。

事務所の入っているビルの上の階なので、飛んだり跳ねたり多少暴れても文句は出ないと言う事のようだ。
もっとも文句が有っても言いやすい事務所ではないが。

天井や壁に吸音材は貼ってあるが、アリバイ的なものであろう。
その代わり音響や照明には手間も金も掛かっている。

内張りを剥がしたところで天井は低く、舞台は10cmくらいの高さ。
幅も奥行きも取れない代わりにランウェイと言うか出舞台と言うかを設えてある。
それでも上背のあるメンバーは梁に手がぶつかりそうになっていたくらいで、天井そのものが低い。

こんな感じの舞台を取り囲むような客席は、少々高めの座面の椅子を床に螺子で固定。
入口に同じデザインの椅子が積んであったので、多少は増減させる事が出来るものと思われる。

椅子には番号が振って有って、座席指定チケットにはなっているものの、客の間で融通するのは黙認されているようで、座りたい場所がある客は交渉次第ではあるが、目的を達しているように見て取れた。

身の回りの連中の中ではTPD(旧)の客が食いついたので、そっち方面の偏差値とプライド高めの面倒臭い客が主流なのかと思いきやそうでもなく、屋内では帽子は取るものと言う常識を持ち合わせていない手合いが片手に余ったところから考えて、少なくとも偏差値は低そう。

開演時間が迫り、スタッフから携帯電話やタブレットの電源を切るようお願い。
それとは別にメンバーの影アナで注意事項など。
影アナで印象に残った言葉としては「ショー」「ご鑑賞」。
何を提供しようとしているかが読み取れる。

CD発売に伴い、リリースイベントで4チーム中2チームが不在。 留守部隊による公演。
自社楽曲遺産を上手く使った構成だが、その分古さも感じる。
喋る際には生きているマイクも、歌う段になると切られているのか被せが強いのかほぼ生歌感は無い。
それでも歌おうとする意志は感じられて、手抜きとしての口パクではないのが視覚的にも分かる。

自己紹介やらファッションショーやらで花道に出てきてぐるぐる回る場面があるのだけれど、幕内土俵入りの緩い顔見世感が楽しい。

販売されているグッズ類は、メンバーの名前入りTシャツやタオルなど、客の側が忠誠心を示すためのものが多く、メンバーの方もそれに合わせて餌をやったりやらなかったり。

フリの客としてただ見ているだけでもそれなりに楽しくはあるのだけれど、通っている客の多くは曲に合わせて踊り、棒状の光るものを振り、メンバーの名前入りのTシャツを着て名前入りのタオルを掲げて忠誠心を示し、それによって餌を貰ったり貰わなかったりする遣り取りに興じており、ショーの構成もシアターの構造も、そうした楽しみ方に即して作られているように感じた。

花道を挟んで客同士が向かい合う形になるので、相互監視下にあって横車は押しにくいが慣れあいはし易く、集団の中の個人としての振る舞いに長けていればより楽しめるだろう。

私向きでは無いだろうと思っていたが、面白くはあった。 ただ、即物的な楽しみ方(楽しませ方)に寄せすぎている観はあり、或る程度出来上がった物を出して来ていることもあって咀嚼し解釈する愉しみ方には向いていない。
要するに私向きではない。

スイス人傭兵部隊みたいなピンクダイヤモンドと、ランツクネヒトみたいな原宿乙女。
ピンクダイヤモンドの「近代化改修した岡部マリ」と言うか「ノックダウン生産したオリビア・ラフキン」みたいな子がなかなか良く、原宿乙女では「装甲を厚くして突撃砲に改装したマルシア」みたいな人が異彩を放っていた。

_ 原駅ステージA&ふわふわ「Rockstar / フワフワSugar Love」予約購入特典イベント(28.3.20)

こうなるとリリースイベント中のチームも見たくなるもので、知己に手引きしてもらって池袋。
会場は東京総合美容専門学校7Fホール。 こういう箱をよく見つけたものだと思うが、学校だから長期休暇中なら借りやすく、廉価でもあるのだと思う。

客席前方は着席観覧、後方に立ち見の区画を設けていた。
音響は簡素な持ち込み機材で、照明も申し訳程度のものなのだけれど、舞台が高いのでどこに座っても(立っても)舞台全体が見渡せる。

ふわふわ
先に登場して2曲。
練度は高くないが兎に角ありとあらゆる種類の「かわいい」が詰め込まれている。 「かわいい」の飽和攻撃。 呆れるほかない。
蝶よ花よとちやほやばかりはしてくれない事務所ではある訳で、楽しいばかりではない日々の中で、どこ迄やる気を維持させることが出来るか。
大衆に見つかるまでどうにか出来れば、売れるのではないかと思う。

原駅ステージA
叩き上げである。 本来の感情と全く関係のない表情を、作り、維持しながら歌って踊れる地力がある。
高いレベルで安定していてブレが無いことは、時として生ものとしての魅力を削いでしまうことにもなるのだけれど、その辺りは本人たちも分かっているようで、ゆとりが持てる部分では客を煽りに行ったり動きにオカズを入れたりして、その日その時のそのライブでしか味わえないものを出せている。
恐らくはカイロスの前髪をすんでのところで掴み損ねてきた悔恨を、一回々々の仕事を遣り切る力にしているのだと思う。

_ 原宿駅前パーティーズ雑感

執拗なまでに多種多様な美形を集めた原宿駅前パーティーズ。 
既視感の正体は銀座「白いばら」の「47都道府県から女の子集めました」システムであった。

原駅ステージA・・・第1SS装甲師団
ふわふわ・・・イエニチェリ
原宿乙女・・・ランツクネヒトもしくはフランス外人部隊
ピンクダイヤモンド・・・スイス人傭兵部隊

ライジングが多種多様な美形を揃えて、客を皆殺しに来ているのはよく判った。
余程のグルメでもない限り、自分に合った躓きの石は見つかる。


2016-03-19 [長年日記]

_ 朝練講談会(28.3.19)

朝八時に家を出て三越前の駅に着くのが九時前、軽く手繰ってから福徳稲荷に詣でて日本橋亭へ。
顔付けからして出足は早そうだったのだけれど、予想以上の客足で開場前に既に30人から並んでいる。
満員とは行かないがほぼ一杯の入り。

「海軍カレーの父 高木兼寛」神田真紅
発声に少々無理があり、低い声を出そうとして喉を絞め過ぎているのが疵だが、演技過剰になっていないのは良い。
二つ目になってSNSを始められるようになり、食べ歩きの写真を投稿するのが趣味になったと言う話からカレーどら焼きを食べた話、そして本編へ綺麗に繋がる構成に唸る。
気になったのは軍の階級が把握出来ていない事。 兵、下士官、士官の別がついておらずあやふや。
詳述する必要は無いのだけれど、「判ってますよ」と言うのは仄めかしておいた方が良い。

海軍の脚気対策の手柄を全部高木に持って行くのは正確では無いと思うのだけれど講談なのでそのあたりの脚色は許容範囲か。

「大岡政談 村井長庵」から「雨の裏田圃」神田松之丞
見巧者の知己が揃って嵌まっているので興味はあったのだけれど、漸く観る機会に恵まれた。
顔が大きく、首から上がぐいと迫り出した写楽の役者絵のような容貌。
松鯉先生の口調の名残は感じられつつ、猥雑で胡散臭く、色気がある。

師匠である松鯉先生が食って行くために編み出した「ビジネス講談」的な物とは逆の芸になっているのが先ず面白い。
ホームページが出来た話、渋谷らくごの話など、マクラは面白いのだけれど、本編に入るとガラリと変わる。
目先の笑いは取りに行かず、ピカレスクロマンを聴かせることに徹する。
そうそう、これこれ。 これなのである。 笑わせるだけが話芸ではなく、聴かせる芸。
楽しいと言うか、愉しい。

陰惨なうえにも陰惨な話なのだけれど、後味は悪くない。

_ 鎌田紘子Presents『シースルー写真展』

浅草橋駅西口にほど近いギャラリードレインで開催されている写真展を見てきた。
鎌田紘子Presentsだが、撮影はすべて黒澤奨平。

エンピツビルの三階にあるギャラリーで、一階から真っ直ぐ伸びた、擦れ違うのにも難渋するような細い階段を昇って行くのだけれど、こちらが昇り切ろうかと言う頃合いで「微笑みデブ」みたいなのが無頓着に降り始める。
客筋はそういうところに在り、写真そのものより写っている人にのみ興味のある向きが中心。

肌色の水着的な何かを着用した上から紗と言うか絽と言うか、透けた生地を羽織っている。
カラーコンタクト着用、肌のレタッチは強目。 分かりにくく書くと「写真見世」のような感じで、可愛らしくない写真は一枚も無いが、人物写真としての面白味は薄い。

見応えがあるのは構図の妙。 癖のある顔、地味な顔でも、可愛らしく見える角度を探して撮っている。
それでいて自撮り的な決まり切った角度だけで凝り固まった窮屈さも無い。
見に来ている客には全く伝わっていないと思われるが、巧い。


2016-03-13 豪華三本立てな一日 [長年日記]

_ 朝練講談会(28.3.13)

ここのところ宵っ張りで起きられなかったり、顔付けに魅力を感じなかったりして足が向かなかった朝練講談会であったが、久々に聴き応えのありそうな会だったので早起きをしてみた。

9:15開場だが、早く着きすぎてしまい9:00過ぎに日本橋亭へ。
既に5~6人が開場待ち。

「楠屋 義士勢揃い」 一龍斎貞弥
「動員が必要な会がある」とかで告知から入って、しかもそれが長いときて一寸ダレたが、媚びるようなところは無いので鼻に付かないのは良い。
場面展開で張り扇を使う際、静かにパタリとやるのが口調に合っている。
大島だったろうか、華美でない装いにも好感。

「CCN25周年物語」 田辺鶴遊
岐阜のケーブルテレビ局の25周年で頼まれたという新作。
本邦放送の父である後藤新平と板垣退助の縁から語り起こす、地方ケーブル局の社史とは思えないスケールの大きな話。
創業時の貧乏臭い逸話なども織り込みつつ、聴く者を飽きさせない一鶴門下らしい一席。

講談の会と言うのは平日の早い時間から始まるのが殆どで、働いていると中々行く機会がないのだけれど、この会は若手中心乍ら日曜の朝に定期で開いてくれているので実に有り難い。

_ Mezzo Forte vol.1

日本橋亭を出て、さてどうするかと思案しながらツイッターを開いてみると、Chelipの出る渋谷のイベントに間に合いそうだったので三越前から銀座線で渋谷へ。

会場のチェルシーホテルは初めて行く箱だったので少々迷ったが、何の事は無いテイクオフセブンの入っていたビルの地下であった。

入ると遠藤麻生の出番が佳境に入ったところ。 恋するBeatが30分演ってから目当てのChelip。

主催が中村綾(ex.ミラクルマーチ)と鈴木花純(テレジア)なのに実質的なトリがChelipなのは、元々この日のイベントはChelipの主催だったところが運営主体の変更などもあって白紙になってしまい、付き合いの深い二人(と裏方)が代わりに打ったライブであり、且つ新規蒔き直しとなったChelipの壮行会のような意味合いもあったようだ。

セットリストを組んだり、それに合わせて2~3曲ずつ繋いだオケを作ったり、藤井美音の裏方仕事の確実さに唸る。
井次麻友と言う神の恩寵を賜るために、舞台上で楽しく歌い踊れる環境を整え、横から下から支えつつ、客を楽しませて自らも楽しむ。

セルフプロデュースになった事で、それまでに入っていた仕事は一度白紙になってしまったそうで、そこで言葉を詰まらせる場面もあったが、努めて明るく前向きには振る舞っていたし、多少は危惧していた送り手としての質の低下も見られなかった。

音源制作などで越えなければならない山もあるとは思うが、越えて行こうとする覚悟は見て取れた。

_ アキバアイドルフェスティバル Vol.18(モエファーレ会場 2部)

開場時間に合わせてモエファーレへ。 覚悟はしていたもののなかなかの民度であり、屯した客で路地は塞がり、路上喫煙防止条例のある千代田区内ながらそこかしこから立ちのぼる紫煙。 携帯灰皿を持ち歩かない向きも多い。

多少の遅延は有りつつも開場。
消防法的に大丈夫なのか心配になる入り組んだ細い通路と階段を抜けて中へ入ると、ライブハウスとしてのスペースはそれなりに取られているが、物販を行える余地はほぼ無いに等しい。
見るものを見たら早々に退散する覚悟を決めて開演待ち。

ミルクセーキ
遠征に帯同できなかったメンバーが二人居たようだが、新メンバーを連れてきていた。
これがまた実に初々しい。

前回見たときは刈り揃えられて整った印象のあった振り付けは練度の差などもあってか再び独自解釈が進んでいたが、客とのやり取りに重心を移し、揃えることは程々にしてその場の盛り上がりを大切にしているように感じられた。
これが「いつもの客」だけを相手にした近視眼的なものだとあまり宜しくないのだけれど、会場全体を巻き込む事は忘れておらず、いつもの客ではない私も十分楽しめた。

出番が終わった後、通路で物販と言う事になっていたが、入る客出る客がっつく客で混沌を極めていたので、音源のみ購入して退散。

出来る事なら金を貰っても二度と足を踏み入れたくないイベントであった。


2016-03-06 R.I.P. [長年日記]

_ PIP定期公演(28.2.28 石川小室空井濱野瑞野卒業)

寝て起きて気が付いたら予約フォームは既に公開されており、慌てて申し込んだが後の祭りで81番。
例によって予約するだけして来ない手合いと立ち見の良い場所を取ろうとする人々のお陰で椅子にはありつけた。
立ち見も含め、ほぼ大入りの盛況。 葬式でも賑やかな方が救いがある。

前半のバラエティ番組部分は、後半のライブに時間を割きたいとの事で短く30分。
メンバーには「PIP年表クイズ」と言ってあったようだが、蓋を開けてみると例によって差し替え。 「クイズ卒業メンバーに聞きました」で澤村、高城、福田が登場。
福田は落ち着きが増し、澤村と高城は磨きが掛かっていた。

濱野智史が一筋縄では行かない連中しか採っていない事もあり、辞めた連中の書く「答え」もメンバーの想像して当てに行く「答え」もなかなかの物で、最後だと言うのも忘れて笑わせて貰った。
ネタの爆発力は意図したものもしないものも小室が頭抜けて凄いのだけれど、滑った後の石川の受け身のうまさが光る。

そして瑞野の「常識的対応」の完璧さ。
これがあるので他の連中もボケやすいし与太も飛ばしやすい。


後半はライブ。 開演前の影アナは全員で。 休演が予め発表されていた豊栄を含む六人の卒業公演と言う位置付け。
山下の出演は「未定」となっていたが結局最後まで現れず。
この「未定」と言うのも連絡が取れずに未定になった訳ではなく、出演の可否を訊ねたところ山下から「未定としておいて欲しい」と頼まれた由。

山下は自分の中では理屈として通っているのだとは思うが、それを他のメンバーと擦り合わせる努力を客の目に触れる形では全くと言って良いくらいしておらず、今回が実質的にPIPとして開催する最後のイベントとなるにも関わらず「残る人」としての最後の説明の場も放棄してしまった。

影アナの段階で既に何かを刺激されてしまったのか意味の汲み取れない奇声を発して騒ぎ始める客もちらほら。
こうした「高まり無罪」系の客の何割かは物販に於ける接触が主目的であり、それ以外のすべてを弁当幕扱いしてしまう。
ライブは無料にして客が金を落とす機会を接触営業に集約してしまった事が客民度を下げた事は否めないし、多種多様な趣味嗜好の客の棲み分けを図ろうとした試みによって一定の治安は保たれたにせよ、根本的な部分では失敗であったと思う。
濱野智史がこれについてどう考えているのか知りたくはあるが、そう言う機会ももう無いのだろう。

「Baby! Baby! Baby!」→「アーモンドクロワッサン計画」→「禁断のカルマ」
2014年6月15日に田町のSHIBAURA HOUSEで行われたお披露目の日に初めて客前で演った曲を演った順に。
あの日の3曲はなんとかみられる物に仕立ててきた感じであったが、一年有半を経て、きちんと見世物になっていた。

「ハート型ウィルス」(小室・石川・瑞野)
この曲の為に色違いのタンバリンを三つ買っていたと記憶しているが、今日は使われず。

「てもでもの涙」(濱野・空井)
体調不良で休演することが多く、出演できても体調が万全ではないこともまま有った濱野。
歌で金の取れる連中が軒並み辞めてしまう中、伍して歌える面子も限られてしまい、ユニットコーナーでの出番も少なくなってしまっていたが、最後の最後でたっぷり聴く事が出来た。

全員出てきて「RUN RUN RUN」から間繋ぎMC。
調子の悪いマイクを交換していたが、専門のライブハウスでは無いところは割り引くにしても、レベルを上げていないだけなのか死んでいるのか判断が遅い。

「誘惑のハートビート」
四つ打ちの佳曲。 なぜこっちを音源化しなかったのか理解に苦しむ。
濱野舞衣香がこの曲に手古摺りつつ歌いこなして行く過程を見ていられたのはPIP: Platonics Idol Platformを見に来ていて良かった事の一つ。

「選ばれたから」
オケを魔改造して5人分の二番の歌詞のみで再構築した特別篇。
歌えども歌えども終わらず、さながら鉄道唱歌。

「きっとぐっとサマーデイズ」
歌いっぱなしても息が上がらなくなった。
泣いたり笑ったり忙しい小室。 将に「今泣いた烏」。

「PIP Move On!」
この曲の昭和19年頃の軍歌のような空元気には全く感情が揺さぶられないままだった。
PIP: Platonics Idol Platform のオリジナル曲も好きなものからそうでないものまで色々有ったが、「駄曲」と切って捨てられるのはこの曲のみ。

「僕を信じて」
「桜のまた咲く日まで」

濱野智史は信じられないし、PIP: Platonics Idol Platformも桜が咲く季節を前にして瓦解してしまった。

最後の曲を歌い終え、一礼して去る。 裏に引っ込むや否や嗚咽とも悲鳴とも嘆息ともつかぬ声が響く。 小室志織だった。

「10年桜」
「最後なのでメンバーの名前でお願いします」的な予定調和のアンコールの後、初期衣装を模した紺ポロシャツをで出てくる5人。 本当はこれと一緒にしつらえたメンバーの名前入りタオルを持って出てくる筈だったようだが、見事に忘れていた。

先月の定期公演ではリーダーの石川からの発表のみであったので、改めてそれぞれから辞めるに至った経緯や今後など。

元々裏方志望であった、と瑞野。
舞台の上と下、表と裏の両方を知っている裏方と言うのは実に貴重な人材であり、石橋のイベントの裏方でも何でもサークルではなく金銭の動く仕事としての現場に潜り込んで欲しい。
舞台に立った経験に裏打ちされた聡明さと謙虚さは、必ず役に立つと思う。

空井は内定を蹴ってPIP: Platonics Idol Platformに入った訳であるが、就職した同期には何をやっているのか話す気にならない時期が長かったとのこと。
CDを出して漸くと言うから、PIP: Platonics Idol Platformとして活動したほぼ全てが鬱屈期であった事になる。
今後どうするかは未定であるとの事だが、喋る仕事は向いていると思う。

小室は嗚咽交じりと言うかほぼ嗚咽で何を言っているのかよく分からない大平正芳の答弁のような感じ。

・辞めたくはなかった
・アイドルは続ける
・今後の事は決まっていない
・違う場所に行ってもよろしくお願いします

大意を汲むとこんな感じ。

濱野舞衣香は休演が多かった事について自虐的に。
「健康になりたい」「長生きしたい」
今後も何かしら活動はしていきたい由。

石川はもうすぐ映画の撮影が始まるが、仕事で地元に帰れるようになる迄、まだまだ頑張るとのこと。

山下以外全員卒業により、PIP: Platonics Idol Platformが事実上の瓦解に至った経緯については、傷つく人が居るかも知れないとのことで多くは語らず。
これはまぁ仕方がない。
説明はなされるべきだと思うが、それは石川の仕事ではない。

「タンポポの決心」で〆。
長いようで短く、短いようで長いPIP: Platonics Idol Platformの一年有半が終わった。

山下が残る形になるのでPIP: Platonics Idol Platformが消えて無くなる訳ではないが、歌って踊る部分は覚束無い、運営業務も担っていない、グループどころかセルフプロデュースも出来ていない人に何が出来るのかは考えなくても判る。
改めて何かが始まるにしても、これまでのPIP: Platonics Idol Platformとは全く別のものにはなるであろう。


2016-02-21 まだまだ2016年にならない [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 35号

palet
7ページ10カット、コラージュ的な見開き1か所。 撮影は外山繁。
投票企画で勝ち残っての巻頭グラビア。 顔見世としては成立しているが、光を強く当てて諸々の不都合を白く飛ばしたようなカットが多く、興醒め。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 36・37号

木﨑ゆりあ
7ページ10カット。 撮影は山口勝己。
表紙の訴求力の無駄な高さに驚くも、撮影者の名前を確認して納得。
ヤングジャンプは表紙だけ煽情的で、中は大人しめな事が多いのだけれど、今号は中身もそれなりに。
寄せたり捻ったり着せたり、見せるところと隠すところを切り取り方とポーズで遣り繰り。 お勉強の方はからきしだが勘は悪くない木﨑なので、ややこしい事になっても表情が死なないのは良い。

岡田奈々
巻末5ページ8カット。 撮影は桑島智輝。
「アイドルたるもの斯く在るべし」的な観念の軛から解き放たれてからの岡田奈々は実に良い。
前髪に未だ頑なさの残滓が感じられるが、それもスパイスの様なものとして笑える位には柔らかい表情をカメラの前に晒せるようになった。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 38号

川本紗矢
7ページ11カット。 撮影は小池伸一郎。
直線や曲線の中に被写体を配して絵を作る小池伸一郎らしいグラビア。 首切り・串刺しで不快になりそうなものだが、不思議と気にならない。
川本紗矢の表情は諧調に乏しく、水着になると硬さも見られるのだけれど、これは致し方ない。
人前で水着になるという行為自体が異常なものであり、まぁ仕事の一つではあるので慣れて行かねばならぬ訳ではあるが、肌を多く出す衣装で表情が強張る件について、私は責める気にならない。

閑話休題、川本の話。
硬い部分は硬いのだけれど、笑ったふりをして誤魔化さずにカメラと素で向き合えているのは良い。
伸び代の大きさは感じられる。

結城りおな
6ページ13カット。 撮影は西村康。
かつて細野晋司が担っていた部分のヤングジャンプらしいグラビア。
屋内も屋外も良い構図が切れているし、深度も露出も程が良い。
桑島智輝の弟子筋らしいが、西村康ならではのものと言うのはまだ良く分からない。
求められる質の写真は撮れていると思う。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 39号

石川恋
7ページ20カット。 撮影は佐藤裕之。
煽情より抒情に重きを置くヤングジャンプには珍しく、煽情に振っている。
詰め込み過ぎた観のある割り付けはいただけないが、石川恋の売りになる(売りにしようとしている)部分は(多少のあざとさは鼻に付きつつも)見せられていると思う。

柳いろは
5ページ11カット。 撮影はTakeo Dec.
巻末はより煽情的に。
こちらは大き目の写真でじっくり見せる趣向。 編集者の手癖の違いではあると思うが、見せ方としては巻末の方が上手い。


2016-02-20 なかなか2016年にならない [長年日記]

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 31号

私立恵比寿学園中学
巻頭7ページ13カット、巻末5ページ9カット。 撮影は桑島智輝。
何かと縛りの多い事務所のグラビアは連載漫画のアニメ化に合わせたタイアップ。
閉鎖空間にあるものを上手く組み立てており、面白いかどうかはさておき、良く撮れている。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 32号

広瀬すず
巻頭6ページ14カット、巻末4ページ8カット。 撮影は細居幸次郎。
巻頭はロケで巻末はスタジオ。 
スタジオ撮影分は光を強く当ててソツなく撮っているが、こうなると細居幸次郎である必然性は無い。
しかし乍ら巻頭の6ページは細居幸次郎ならでは。 実に良く撮れている。

撮られ慣れていて、カメラとの(カメラマンとの)向き合い方を知っていて、商売用の自分の切り売りの仕方も知っている。 そんな厄介な生き物を前にして、多少たじろぎつつも切り取るべきは切り取る。
2ページ目などは、判っていても持って行かれる。 眼福。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 33号

NMB48(山本彩、渡辺美優紀、須藤凜々花)
6ページ5カット、見開き1か所。 撮影は山口勝己。
素材としては良いが撮られ慣れてはいない須藤凜々花。 撮られ慣れているがスイートスポットが狭く、一寸癖のある渡辺美優紀。 どう撮っても絵になり、破綻はしないが面白味には欠ける山本彩。
三人三様、撮り易いようで撮り難いのを何とかならしてバランスを取り、三人並んでもきちんと絵にして来るところは流石。
人を使ったブツ撮りの上手さ。

石川恋
5ページ7カット、撮影はHIROKAZU。
全カット布面積少なめの水着。 石川恋の身体の線を生かして上手く切り取った5ページ。
煽情的でありつつ、綺麗に纏めてある。

_ 週刊ヤングジャンプ 2015 34号

新川優愛
7ページ6カット、見開き1か所。 撮影は桑島智輝。
これまでの撮られる仕事では「ああそうですか」的なつまらなさしか感じなかった新川優愛。
今回もまた、ソツなく、面白味もなく。 
着ているものに目が行ってしまうと言う事は、本業たるモデルとしては良い仕事をしていると言う事なのであろう。
しかし今回のの仕事で見せるべくは着ている服ではなく着ている自分なのである。
「人」を見せる撮られ仕事で着ている服を見せられても困る。

生駒里奈
5ページ11カット、撮影はTakeo Dec.
光を強めに当てても柔らかく当てても絵になり、絵にして来る。
裏方も含め、歯車の噛み合った仕事。


2016-02-14 今更感しかない蔵出し [長年日記]

_ PIP後夜祭(非公式)ー就職とアイドル、そしてひとり親問題から『エヴァンゲリオン化する社会』まで(2015/11/14)

荻窪ベルベットサンで開かれた、田中秀臣の主催イベント。 出演は常見陽平、豊栄真紀(PIP)、山下緑(PIP)、田中秀臣。

お披露目の22人から現在どれだけの人数が残っているかについて田中秀臣が参考資料を出していたのだけれど、CD選抜の6人、休業2人、開店休業1人、派生ユニット2人の計11人が合同会社プラトニクスと契約があり、これが現在のPIPであると規定していた。
これは公式に発表されたものではなく(※公式サイトは重くてどうしようもないのままの状態で放置されており、公式ブログの在籍・卒業の別も或る時期以降放置。)田中秀臣の認識している範囲での話ではあったが、豊栄も山下も帯同していた裏方も否定はしなかったので、概ね合っていたのだと思う。
ちなみにレーベルのサイトはCD選抜の6人しか載っておらず、派生ユニットの2人がキャンペーンに参加しない事には触れられているが、キャンペーン終了後どうなるかについての表記は無い。
兎に角分からない事だらけではあるのだけれど、ともあれ山下と豊栄が在籍していると言う事は確認できた。

豊栄と山下がこの先どんなアイドルになりたいのかについて明言を避けるのではなく、そもそも答えを持っていないと言う事態は、自分の立ち位置を自分で考え、確立することによって生き抜いてきた常見には理解し難く、もどかしくも有ったのではないかと思われる。
それでも最後まで匙を投げずに豊栄と山下の今後の展開について考えてくれたのは見ている側としても有り難かった。

時計が会議室時代の終わりで止まっている豊栄と、空間と時間を超えたところに存在する山下は、一周年公演以降のPIPが置かれた厳しい状況を肌で感じていないと言う事も有ると思うが、販促イベントを打ったら客がツバナレしなかったと言う修羅場を潜って来て、生き残る為に何をしなければならないかを突きつけられてきたCD選抜組との意識に差があるように感じられた。

仄聞はしているであろうそう言った状況に身を置いていない引け目なども有るかもしれないし、さしあたって何をすれば良いのか分からなかったりもしたかもしれないが、ブログやSNSや動画配信など、使えるものは使って何かしら発信するところから始めれば良いと思う。
その為のヒントは山ほど貰った訳であり、そこから自分なりに何が出来るのか考えて出来る事から始めれば良い。
田中秀臣なり常見陽平なりに面白がって貰えていると言うのは、間接的な濱野の置き土産であり、上手く生かして一歩踏み出して頂きたい。

_ 今更蔵出し

何かしら動きがあれば追記しようと思って寝かせて置いたらブログの更新も殆ど無く、その間にPIP: Platonics Idol Platformに「日本以外全部沈没」的な事が起こって時期を逸してしまった。
そんな訳で今更ながらアップロード。
推敲が雑なのはまぁ、そう言う事です。


2016-02-13 元の濁りの 濱野恋しき [長年日記]

_ tokyo torico(2/9)

第2週のレギュラーは4枠だったのであるが、前の枠に入っていたカタモミ女子が突然の店舗閉鎖からの解散でいなくなってしまい、前倒しで8時半スタート。 まぁ、PIPも今月限りなのであるが。

自分の贔屓のところだけを見て帰ってしまう客と、番組そのものを楽しんでいる客と二た通りいるのだけれど、グループの色が客にも出る。
プロ意識の低いところの客は、民度も低い。
入り口で貰ったパスを首から提げていればスタジオと物販スペースは行き来自由なので、目当ての枠以外は外に居ても構わないのだけれど、わざわざ収録中のスタジオの中で雑談を始めてみたり。

態々そう言う客を選んでいる。 選んでいると言うか、自らの振る舞いによって呼び込んでいるのだけれど、それが分からない。

PIPの客はマシな部類で、石橋哲也の仕込んだ「舞台の上に立つ人としての矜持」が、この番組を見に来ているPIPの客の民度を一定以上に引き上げていたように思う。

石橋も珍しく投げやりな進行だったのだけれど、折角一年以上掛けて育てたグループが瓦解して無くなってしまう遣り切れなさがあったのかもしれない。
それでもそれなりに楽しく過ごせる。

石橋との遣り取りは回を重ねるごとに面白さを増して行ったのだけれど、それは感じる面白さであり、濱野が介在することで生まれていた「考える・解釈する面白さ」は薄れて行った一年だったように思う。
私には落としどころを見たいと言う欲求もあったので見続ける動機も無くならなかったが、橋田や柚木などの中核メンバーが抜けてしまう事により去って行った客だけでなく、グループとしての質的変化から離れて行った客も居たのではないか。

行けば行ったで楽しいのだけれど、私が好きだった楽しさとは別趣のものに、何時の間にか変わってしまっていた。

_ PIP二月定期公演(永瀬綾香卒業)

月末の定期に永瀬が出られない為に打たれたイレギュラーな公演なのに、なぜか「定期」と銘打たれている。
言葉の厳密さに拘らなくなった事からも、濱野の関与が薄れているのを感じる。
何かあったのか、何もなかったのか。 今回はネット予約無しで当日整列順入場。 告知にも遺漏があったり。
石川は恐らく映画の仕事で、濱野(舞)が体調不良で休演。 休業が長引いたままの豊栄は仕方がないとして、山下が出演しない事への言及は理由も含めて丸で語られず。

屯していれば近所迷惑なのは明白、頃合いを見計らって押上に出たら丁度受け付け開始時間。
ツバナレするかしないか位しか集まっておらずどうなる事かと思ったが、開演するころにはそれなりに。 最終的には30くらいか。

影アナは一と足先に辞める永瀬。
盛り上がってますかと元気良く問い掛けられて一瞬言葉に詰まる客席。 苦笑するほかない。
そもそもこの状況でどう盛り上がれと言うのか。

「いや、盛り上げるのはお前ら演者の仕事であってだな。 まぁどうでもいいんだけど。 どうでもよくはないか、しかし(略)」的な面倒臭いことは濱野智史もさんざっぱら言って来たのではないかと思うのだけれど、この辺りの演者としての意識が変わる事は無かった。

暗転して開演、「僕を信じて」から。
今更何を信じろと言うのか。

人数が少ないので瑞野の歌割も多め。 この歌の上手さも殆ど生かされずに終わる。

どうやったって統制は効く人数なのだけれど、今日も撮影は禁止。
濱野隠棲以降、スタッフの官僚化が進んだ事による居心地の悪さは明らかに増した。

「狼とプライド」
小室と永瀬で。 フィル・スペクターっぽいなぁ等と考えながら眺める。 小室の動きは柔らかく細かくなっている。 良い。

「向日葵」
演る側には思い出も思い入れもあるのだと思うが、些か食傷。
今月も既存曲の順列組み合わせの定期公演。 縮小再生産の悪循環から抜け出せぬまま終わってしまった。
空井の歌が「歌」になってきたのが、この半年での数少ない「良かった」ではあった。

歌えてはいるし揃ってもいるのだけれど、こう言う小さく纏まったものを見たかった訳でもなく。

間繋ぎMC、入場整理番号でチョコレートをプレゼントと言う趣向。
「皆さん、チョコは貰えてますか?」と全方位に喧嘩を売る空井。
「盛り上がってね」と何度も念押しをしていたが、これも本末転倒。

永瀬がお色直しで引っ込んでる間に残りの三人で「PIP Move On!」

「未来へ」
白いワンピースに着替えて出てきた永瀬がソロで一曲。
ソツなく歌えてはいる。

辞めて行く連中に遣り切らせて思いを残さないようにするPIPのやり方は、些か内向きに過ぎるところは有ったが、良かったと私は思う。
ただ初めて行くのが誰かの卒業公演と言うのは気詰まりであり、 毎月のように誰かしら辞めて行く状況で一見さんが足を運びにくくなった事は否めない。

「きっとぐっとサマーデイズ」で〆

アンコールは「選ばれたから」
最初で最後の永瀬ver. コピーアンドペースト感の凄まじい歌詞ではあったが、無いよりは良かった。

永瀬と空井がお披露目で歌った「禁断のカルマ」で終演。


2016-02-07 大賢は愚なるが如し [長年日記]

_ 里咲りさ『R-and U』発売記念イベント ミニライブ&特典会 (タワーレコード錦糸町店)

興味はありつつも見る機会がなかったのだけれど、折良く近場で、それも撮れる機会があったので足を運んでみた。

それなりに隙間はありつつも、イベントスペースはほぼ埋まった状態。
PAからライブから特典会まで一人でやるので歌いながらスピーカーの向きを調整し、喋りながらPA卓を弄り、曲出しもする。
弾き語り一曲を含め計五曲、合間にはこれまでのインストアイベントを振り返るフリップ漫談なども織り込んで飽きさせない。
里咲りさ
どんなことをやるとフリの客が足を止めるか迄店内の状況を観察しながらライブを演っているのも面白い。

特典会の対象商品は自家製CD-R、五曲入りで1200円。
ケースには入れず、歌詞カード兼ジャケットに挟んでのり付きビニールカバーに封入。
客は中の曲と特典に用がある訳で、ケースを省けば利益率も上がる。

そんなところも含めて面白いインストアイベントであった。
里咲りさ

_ 今日の一枚

里咲りさ
里咲りさ
ノボフレックス ノフレクサー 240mm/f4.5 + ペンタックスK10D
1/40s f5.6 iso=800
その他の写真はこちらに。



「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。 衆寡敵せずと知るべし」
斎藤緑雨


文責:墨田ペトリ堂
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